II. 夏期行動
2. 夏期観測
2.2 一般研究観測
2.2.7 しらせ航路上およびリュツォ・ホルム湾の
2.2.7.1 船上の海氷海洋観測(AP40-56-01) 清水 大輔
【概要】
本観測はしらせ航路上の海氷分布(厚さ、密接度、積雪深)および海洋物理環境(水温、塩分、流れ分布)に 関するデータを取得することを目的とする。このために以下の項目について観測を行なう。
1) リュツォ・ホルム湾とその周辺海氷域において、「しらせ」甲板上から電磁誘導型氷厚センサを繰出し、
航路上の氷厚を連続計測する。
2) 舷側設置下向きカメラおよび上部見張所設置前方カメラによる氷況の連続収録により、画像データから海 氷厚および密接度等のデータを取得する。
3) 一時間毎に甲板上から目視による海氷観測を行う。
4) 航海中はADCP による流速観測データ、氷海モニタリングシステムによる各種データを取得する。
5) 東経110 度線上でXCTD による水温塩分分布観測を行う。
6) 開放水面域における停船中に氷厚センサ検定データ取得する。
【実施経過】
1. しらせ船上の海氷観測
氷況モニタリング装置による氷況画像の連続収録を12月13日からから開始し、2月18日に終了するまで連続的 に画像データを取得した。船上設置型電磁誘導式氷厚センサ(電磁誘導型センサによる積雪深+氷厚の計測)は 12月13日に設置作業を行ったが、不具合が判明したため設置を取りやめた。このとき船上局を甲板上に残置して
しまったため、12月14日の荒天(風速30-40kt)によりアクリルケースの中に雪や海水飛沫が入ってしまった。
後日内部の水分を拭き取ったが、一部測器に不具合が発生した。この不具合のため、12月15日にはセンサを舷外 に張り出したが、測定開始は12月18日となった。その後、往路のリュツォ・ホルム湾流氷域、定着氷ハンモック アイス帯、一年氷帯、多年氷帯のデータを取得した。1月3日に定着氷をラミング中にセンサケースが雪面に接触 したと思われ、センサのアンテナ1本が折れていることが確認された。このため、1月5日にセンサを船上に収容 して確認を行ったところ、センサの船上での修理は難しいと判断し、この測器での測定を終了した。早期にセン サが故障してしまったため、検定データの取得はできなかった。
2. 海氷目視観測
12月15日の流氷縁からワッチを組み、1時間毎の正時に観測を実施した。氷密接度、氷盤の大きさ、氷厚、積 雪深、リッヂ率、リッヂ高さ等を流氷縁進入からリュツォ・ホルム湾定着氷縁(12月16日)までの流氷域全てで 実施した。定着氷域では氷厚、積雪深等を3時間毎に観測した。復路でもワッチを組み、上記と同じ項目につい て定着氷域から流氷縁まで3時間毎を目処に観測した。
3. 航海中の各種データ取得
往路・復路を通じて、表層の海洋循環を把握するため、船底搭載ADCPによる観測を実施した。フリーマントル 出港後の12月1日に起動し、2月19日に不具合を確認するまで連続的に測定した。観測最終日に確認した段階では 4つのビームのうち2つの受波レベルが非常に低く、流速が測定できていなかった。ADCPは4つのうち少なくと も3つのビームから流速が測定できないと流速が決まらないので、このままでは測定の意味がないと判断し、測 定を中止した。故障の原因は不明だが、多年氷域でラミング中であった2月8日ごろから受波レベルが下がってい ることがわかった。この後のADCPの国内代理店担当者との情報交換により、故障の原因は船上局ではなく送受波 器(船底側)の基板かセラミックアレイ、もしくはコネクター部の故障と考えられるとのことだった。帰国後の ドライドックで修理が必要である。往路の東経110度の航路上において水温・塩分分布を把握するため、ほぼ1度 毎にXCTD観測を実施した。
【問題点・課題】
船上氷厚観測センサのケースは、前年にも雪面に接触している。この教訓を踏まえ、センサの高さには気を使 ったつもりであったが、結果的にセンサの破損に至ってしまった。この原因としては、船体が大きく右に傾いて センサが雪面に衝突したと考えられる。センサ破損の前からラミングの際の前進速度が約11.5ktまで上がってお り、このために氷に乗り上げた後、左右に大きく傾くことには気づいていたが、これによってセンサが破損する とまでは予想していなかった。今回も多年氷域の海氷は非常に厚く、センサの高さを上げると測定誤差が大きく なったり欠測になったりするので、高さを上げ過ぎたくないという考えもあった。とはいえ、センサを壊しては その後の測定ができないので、ラミングの速度が上がった時点で念のためセンサ高度を上げるべきであった。出 発前にメーカによるキャリブレーションを受けたためか、センサ破損までの氷厚の値は問題が無かったために、
センサの破損は残念だった。
船上氷厚観測装置の船上局のアクリルケースが輸送の段階で破損していた。しらせ積み込み前には破損は確認 されなかったので、第2観測室に積み込んだ後に破損したと考えられる。このことが、観測開始の遅れの原因の ひとつとなっている。ケースの更新時期に来ていると考える。
ADCPについては、原因は不明であるが今回も故障が発生してしまった。次のドックでの修理が必要である。
55次から、本課題の各測器を毎日チェックするためのシートを作成し、巡回・確認を忘れないようにした。56 次でもこれを継続したが、問題点の早期発見に有用であった。次回以降も継続すべきである。
2.2.7.2 昭和基地付近定着氷の観測(AP40-56-02) 清水 大輔
【概要】
大陸沿岸定着氷に関する海氷データを取得し、年々変化を把握するため、以下の項目について観測を行なう。
1) 船上設置型電磁誘導式氷厚センサの検定データを取得する。「しらせ」舷側の海氷上に降り、ドリルを用 いた海氷掘削による氷厚実測、可能であれば海氷コア採取を行う。
2) 定着氷に設けた定線上において、橇搭載型電磁誘導式氷厚センサによる計測、氷厚・積雪深の実測を行う。
【実施経過】
2015年1月12日にしらせが昭和基地に接岸したため、翌13日にしらせ上で氷上観測の準備を行い、1月14日早
朝に雪上車で昭和基地入りして北の浦での観測を開始した。観測準備は作業工作棟で行った。
1.定着氷でのソリ牽引型氷厚観測システム(アイスワーム)による観測
1月14日にアイスワームの組み立てを行い、15日から北の浦での観測を開始した。しらせの船首付近から管理 棟下まで30mおきにドリリング点を設定した。15日はしらせの右舷前方においてコアサンプルを2本取得した。
1本は持ち帰るためにしらせ第2観測室の冷凍庫に収納し、もう1本は塩分測定用に環境科学棟に持ち帰った。コ アサンプル取得後には海氷下の水温・塩分の測定を行った。アイスワームによる氷厚測定は、ドリリングの行き 帰りに実施した。定線に沿ったドリリングは1月19日(6点)、20日(12点)、21日(6点)、23日
(12点)、24日(9点)に行い、合計45点のデータを取得した。15日にはセンサの高度を変えた測定も 実施した。また、1月18日は1月15日に取得したサンプルの塩分測定を行った。
2.船上海氷観測センサの氷上キャリブレーション 船上の海氷厚センサが故障したため、実行しなかった。
【問題点・課題】
ドリリングにはスチームドリルを使用した。スチームドリルは、絶対にスタックしないという安心感がある。
北の浦では過去に何度もドリルがスタックし、その回収に多くの労力と時間が掛かっている。問題は、通常のド リルより掘削速度が遅いということにある。そこで、今回はルート工作用に用意されているスチームドリルを借 用することで掘削速度を上げることができた。次回以降も可能であれば同様の方法を取ることを推奨する。
これまでは海氷コアを取得したあとに、掘削した穴から採水器を下ろして海氷下の水温・塩分を測定していた が、採水器がプラスチック製で軽いため、掘削した穴から十分に下げられず、必要な採水ができないことがあっ た。これは、海氷底面に砕けた氷が溜まっていたためと考えられる。今回はこの対策として、手動のポンプを用 意し、海水を組み上げることで水温・塩分を測定することができた。これは非常に有用であった。
2.2.7.3 ヘリコプターによる海洋観測(AP40-56-03) 清水 大輔
【概要】
リュツォ・ホルム湾内定着氷域の海氷厚の空間分布データを取得し、海氷状況の年々変動の特徴を把握し、し らせ砕氷航行を支援するための参考情報を得る。
【実施経過】
本課題は、EM Birdを使った初めての観測だったので、全て昭和基地をベースとして準備・観測を行った。観 測の準備は全て車庫で行い、飛行には全て観測隊ヘリコプターのAS350を使用した。また、車庫からヘリポート までの測器の移動には、ユニック付きの大型車両を使用した。
必要な物資は全て優先空輸で12月25日にCHで輸送され、昭和基地の車庫に格納された。12月26日午前中から組 み立てを開始し、17時ごろからAS350に測器の取り付けを行ったが、測器が正常に起動しなかったため、飛行せ ずに終了した。12月27日も前日と同様の症状であったが、飛んで電源出力が変わることで、問題が解決すること を期待してフライトを開始したが、解決しないため、予定のフライトを短縮して観測を終了した。担当隊員はし らせでの海氷観測があるため、年内の観測はこれで終了し、組み立てた測器はばらさずに車庫に残置してしらせ に移動した。
北の浦での海氷観測終了後の2015年1月26日に準備を再開した。メーカーからのアドバイスに従い、ヘリ搭載 電源ボックスの電源ケーブルをより太いものに交換した。その結果、測器の電源が正常に投入できるようになっ たが、今度はヘリ機内のコントロールPCから測器へのネットワークが繋がらないという問題が発生した。しかし、
PCから見えていなくても測器内にはデータが保存されるということだったので、16時半から1時間かけて2回目の 飛行を行った。結果的にはデータは取得できなかった。この後、しらせでの海洋観測などのために1月27日、担 当隊員は一旦昭和基地を離れた。
2月2日にしらせから昭和基地に戻り、準備を開始した。2月3日までに問題解決の目処が立ったため、2月5日に 3回目のフライトを実施した。この結果、北の浦・オングル海峡・多年氷帯から1年氷までの広範囲に渡って海氷 厚データを取得することができた。観測終了後、車庫においてパッキングを行った。
【問題点・課題】
初めての観測ということで、測器内部の理解がかなり不足していた。安定した観測のためには測器に関するよ り深い理解が必要である。しかしながら、広く販売されている測器ではないので、マニュアルが十分には用意さ