II. 夏期行動
Ⅲ. 昭和基地越冬経過
2.1 越冬隊の運営体制
2.2.5 雪上車の運用指針
1 雪上車・橇の種類と概要:アンダーラインはクレーン車 (1) スノーモービルの種類 <すべて装軌車>
・ スノーモービル(Ski-doo):沿岸調査用
・ スノーモービル(YAMAHA):沿岸調査用 (2) 雪上車の種類 <すべて装軌車>
・ 大型雪上車(SM102 型:ユニック搭載):S16 でのクレーン作業用
・ 大型雪上車(SM103 型):S16 での整地、除雪作業用
・ 大型雪上車(SM104 型):昭和基地での高所作業用
・ 大型雪上車(SM106 型:ユニック搭載):内陸旅行用、クレーン作業用
・ 大型雪上車(SM109 型、SM110 型、SM112 型、SM113 型、SM114 型、SM116 型、SM117 型):内陸旅行用
・ 大型雪上車(PB300 型):昭和基地での除雪、クレーン作業
・ 中型雪上車(SM601 型、SM651 型:カーゴクレーン搭載):氷上輸送、除雪、クレーン作業
・ 中型雪上車(SM652 型、SM653 型:ユニック搭載:氷上輸送、除雪、クレーン作業
・ 小型雪上車(SM411 型、SM412 型、SM413 型、SM414 型:マニュアル変速機):沿岸調査、大陸周縁部
・ 小型雪上車(SM415 型:油圧式無段変速機):沿岸調査、大陸周縁部
・ 小型雪上車(SM302 型、SM303 型、SM304 型):沿岸調査 (3) 橇の種類
・ 木製橇(2 トン橇):ドラム缶 12 本積載可能
・ 幌付き木製橇:食堂橇、機械橇、海氷観測橇
・ 20ft 貨物橇:リーマン橇
・ カブース(モジュール)橇:リーマン橇荷台に箱型建物を搭載
・ 12ft コンテナ橇:12ft コンテナの輸送
・ 内陸貨物橇:恒栄電設橇
2 基本方針
(1) 使用許可:雪上車・橇の使用に際しては、事前に機械部門に連絡を取るか、野外行動計画書の提出により、
設営主任または雪上車担当機械隊員の使用許可を得てから、指示に従って運用する。計画外の用途に個人の 判断で使用してはならない。
(2) 使用資格:各雪上車の運転は、運転講習を受けた隊員が行う。
(3) 使用前後の点検義務:使用前には必ず、点検簿に沿って点検を実施し、異常がある場合には使用せず、直ち に機械隊員に報告する。運転前に暖機運転を行い、その方法については機械隊員の指示に従う。車両返却時 も点検簿に従い、終業点検を行う。運転中に故障または不具合を発見した場合は、機械隊員に連絡する。
(4) 使用の条件:疲れている時、体の調子が悪い時、心配ごとのある時は、注意力が散漫になったり、判断力が 衰えるため、事故を起こしやすくなるので運転はしない。運転の依頼を受けても辞退する。飲酒運転は絶対 にしない。
(5) 使用後の給油の義務:行動終了後は給油を行い、燃料タンクを満タンにする。スノーモービルはガソリン燃 料を使用する。大型・中型・小型雪上車の燃料については、外気温に応じて機械隊員の指示に従い、W 軽油 または南極用低温燃料(南軽)を使用する。
(6) 観測との調整義務:トラック・重機を使用することによって観測に影響を及ぼす場合は、観測責任者と作業 の場所・時間・内容について、事前に相互に調整する必要がある。
・ 宙空観測:灯火制限に従う。
・ 地磁気絶対観測:地磁気観測小屋から気象棟を越えたところにあるアンテナポールを示準にしているの で、これが見えなくならないように、除雪による雪の移動に配慮する。
・ 清浄大気観測小屋(ゾル小屋)の風上側で作業があると観測データに影響が出るので、事前に報告する。
・ 大気観測・オゾンゾンデ観測:重機の排気ガスも大気観測に影響があるため、観測時に観測棟東側(た とえば光学観測棟)や放球等周辺で重機の使用をする場合は事前に報告する。
(7) 海氷上行動の指針:海氷上行動の海氷上の行動については、「基地周辺および沿岸域における安全行動指針」
に従う。
(8) 氷床上行動の指針:氷床上の行動については、「内陸域における安全行動指針」に従う。
(9) 誘導の合図:前進(直行、右旋回、左旋回)、後退(直行、右後退、左後退)、停止、「ヨシ」、「ダメ」の合図 については、機械隊員が統一した方法を定める。
3 スノーモービルの運用に関する注意点と安全対策
<運転前>
(1) 運転前に、エンジン部に掛けている毛布を取り払う。エンジン部分に雪が詰まっている場合、手で除去する。
その際、シノ棒や金属類の硬い鋭利な物は使用しない。
(2) V ベルト部分、吸気口に雪が詰まっている場合は手で雪を除去する。
(3) 運転前に、後方の車体を持ち上げて落とし、スノーモビルトラック(足回り)部分に詰まっている雪を除去
する。
(4) スロットル(アクセル)レバー、ブレーキレバーがスムーズに作動するか確認する。
(5) エンジン始動時は1回、前進時は2回、後退時は3回警笛を鳴らし合図する。警笛を鳴らした後、最低 3 秒 間、反応をみてから発進する。
(6) エンジン始動時は、必ずブレーキをロックした状態で行う。
(7) 燃料の残量およびエンジンオイルの残量を確認する。
(8) 低温始動の際に、アクセルレバーを使用すると、点火プラグにオイルが付着しエンジンがかからなくなるの で使用しない。エンジンがかからない場合は雪上車担当機械隊員に相談する。
<運転中>
(9) 運転中の走行速度は、雪面の起伏に応じてスピードを調整する。特に、裸氷帯、凹凸を走行する時はフロン トのスキーに負担がかかるためスピードを抑えて走行する。
(10) 小型のプラスチック橇等を牽引する時は橇と車体の距離に注意する(特に裸氷帯や下り坂では要注意)。
(11) ギヤチェンジを行う場合はブレーキレバーを握る。
(12) 運転中に故障または不具合を発見した場合は、雪上車担当機械隊員へ連絡する。
<運転後>
(13) 運転後は、後方の車体を持ち上げて落とし、スノーモビルトラック(足回り)部分に詰まっている雪を除去 する。
(14) 使用後は、ガソリン燃料を満タンにする。
(15) 運転後は、毛布が焼けないまでエンジンが冷却したことを確認後、エンジン部分に毛布を掛け、車体カバー を取り付ける。特に、屋外で保管する場合は、ブリザードに備えた対策を取る。
4 大型・中型・小型雪上車の運用に関する注意点と安全対策
<運転前>
(1) 運転前に暖機運転とならし運転を行う。方法については雪上車担当機械隊員の指示に従う。気温、条件によ り方法は異なるので、雪上車運用マニュアルも参考にする。
(2) エンジン始動時は1回、前進時は2回、後退時は3回警笛を鳴らし合図する。警笛を鳴らした後、最低 3 秒 間、反応をみてから発進する。人がいないことが明らかな場合でも、警笛を鳴らす習慣をつけ、鳴らし忘れ を防ぐ。鳴らし忘れの場合はすぐに停車し、警笛を鳴らしてから動作を行う。
(3) 始業前に誘導者と合図の方法を確認しあい、作業についても打ち合わせを行う。
(4) 発進する前には、雪上車や橇の周りに人がいないことを十分に確認してから、発進する。
<運転中>
(5) 運転時はヘルメットを着用する。降車時には外気温に注意し、凍傷にならないように心掛ける。内陸行動時 は旅行責任者の判断でヘルメットの着用の可否を決める。
(6) ルートは、必ず決められた場所を通行するとともに、ルートの状態を良く把握し、気付いた点があれば、メ ンバーや野外主任、隊長にすぐに報告する。
(7) 走行速度は、基本的に、単車時は 12km/h、橇の牽引時は7km/h とする。ただし、レスキュー時はこの限りで ない。
(8) 走行中は、エンジン冷却水温度(水温)を定期的にチェックする。また、雪上車から出る異常音、異臭、異 常振動、出力低下等には十分に注意し、異常を感知した時には、直ちに雪上車担当機械隊員に報告する。
(9) 走行中、同乗者はドア(特に後部)からの転落、車内での打撲に気をつける。
(10) 誘導が必要な状況では、自分勝手な判断で動かず、誘導者の指示に従う。
(11) 駐車する時は、できるだけ車両を風向きに正対させて停止し、風下にドアが開くようにする。また、風が吹 き抜けて、中のものが飛散するので、左右のドアを同時に開放してはならない。
(12) 降車時は、海氷や氷上の状況を確認し、飛び降りないようにする。
(13) 複数台の雪上車が海氷上で停車する時は、一部分に重さが集中して加わると、単車の載荷重限界を超えて海 氷が割れる危険性があるので、前の雪上車に近寄らず、車間距離を長くとることを心がける。
(14) 橇を牽引している雪上車が急発進したり、裸氷上で急ブレーキをかけると、車体の制御がきかなくなったり、
慣性で橇が雪上車に衝突するので行わない。
(15) 雪面上の段差の乗り越えは極力避けるようにする。やむを得ず乗り越える時は、なるべく段差に正対させて 進行し、頂部で速度をゼロ近くまで落として、車の前部に衝撃を与えないように慣性でゆっくり降りる。
(16) 斜面では雪上車も横滑りするので、運転する際には、注意する。特に除雪作業に使用する場合は、斜面の作 業にならないように足場を平らに均してから除雪するよう心がける。
(17) むやみに坂の途中で停車しない。特に、橇の牽引時は重大な事故にもつながる。また、海氷と陸上との出入 りの際の無線連絡は平坦なところで行う。
(18) 海氷上より陸に上がる時や降りる時は、速度を落としタイドクラックの段差に、気を付ける。
<運転後>
(19) 使用後の冷機運転として、エンジンをアイドリングのまましばらく放置する。
(20) 車体の下に油脂漏れがないかを確認する。
(21) 手作業または専用の除雪道具で履帯回りの除雪を行う。シノ棒やスコップ、バール等は使用しない。
(22) エンジンを切る前にすべてのスイッチをオフにする。無線機の電源もオフする。無線機本体以外にスイッチ がある場合があるので注意する(忘れるとバッテリーがあがる)。
(23) ラジエータ前、車体側方、後方のカバーを閉める。
(24) 駐車ブレーキは引かず、解除してあることを確認する。但し、SM30 型雪上車はこの限りでない。
(25) 雪上車内で宿泊する場合、就寝中は必ずエンジンを切る。
(26) 大型・中型・小型雪上車を後退させる場合は、必ず誘導員を付ける。誘導員は車両斜め前方に立ち、後方の 安全を確認しながら、運転者に明確な指示を与える。誘導者が運転者から見えない場合は中継の誘導者を つける。
(27) 雪上車に搭載するクレーンを使用する場合は、「トラック・重機の運用指針」の中の「クレーン車の運用(吊 り上げ作業)に関する注意点と安全対策」に準じて作業を行う。屈曲式クレーンの使用については、使用 経験があるものに従って操作することとする。
5 大型・中型・小型雪上車による木製橇等の牽引に関する注意点と安全対策 (1) 雪上車と橇を接続する場合は、必ず誘導者をつけ、その合図に全面的に従う。
(2) 他の雪上車、橇、人のそばに接近して停止したり、すぐそばを走り抜けたりしない。特に自分の橇列が長い 場合には注意する。
(3) 自分の乗ってない雪上車に繋がった橇に、歩いて近づくときや、橇の前に出たり、橇列を横切ったり、橇の 前でしゃがんで仕事をするときは、必ず、運転手に合図または無線で連絡する。
(4) 走行中はバックミラー又はドアを開けて、橇の状態を確認する。
(5) 慣性で橇が雪上車に衝突するので、雪上車の急発進や裸氷上での急ブレーキは行わな
(6) 物資を積載した橇を牽引する時は、ラッシングベルトがしっかりされているか確認するとともに牽引ワイヤ ーの傷み、シャックルの締め具合も停車時に毎回確認する。
(7) 牽引中は、雪上車と橇を繋ぐ牽引ワイヤーが切れて飛んでくる可能性がある範囲(ワイヤーの延長線上)に は近づかない。
(8) SM40 型マニュアル変速機の雪上車で発進する場合、緩んだワイヤーが伸びて、最初の橇をひきだす前にクラ ッチを繋ぎ終える必要がある。半クラッチ状態で橇を曳くと、短時間でクラッチ板を摩耗させて走行が不能 になる。慌てず確実にクラッチを繋いでから、エンジン回転数を上げる。
(9) SM100 型雪上車で 4 台以上の 2 トン橇を牽引する場合の橇の連結方法については、雪上車マニュアルを参照 すること(一部、雪上車マニュアルの間違った記述を訂正した内容は「内陸域における安全行動指針」に記 述する)