II. 夏期行動
Ⅲ. 昭和基地越冬経過
1.3 安全管理
1.3.1 防火対策 三浦 英樹 越冬内規、安全対策・危機管理委員会規程及び防火・防災指針に示すように、防火・消火体制の確立に努めた。
特に、例年と異なる点は、出火時に点呼を取らないこと、基地主要部の保守に努め、その他の施設 への無理な消火を行わないことが挙げられる。
1.3.2 防災対策 三浦 英樹
越冬内規、安全対策・危機管理委員会規程、昭和基地油流出防災指針に示すように、隊長を委員長とする安全 対策・危機管理委員会を設け、全隊員が、通常時対応、各種非常時対応、消火体制、レスキュー体制、施設管理、
火元責任者、ライフロープ管理責任者を定めて、一元化した防災体制を行うことを試みた。
1.3.3 安全管理点検 三浦 英樹
2月の施設管理責任者立会いで、安全対策危機管理委員会委員長、副委員長、副委員長補佐による建物安全管 理点検によって発見された各問題点を是正した。以後は、施設管理責任者によって報告された問題点について都 度改善を行い、安全の確保に努めた。
1.3.4 安全行動訓練・講習 三浦 英樹
安全行動訓練・講習は、野外主任が中心となって「南極安全講習」としてカリキュラム化し実施した。必要に 応じて医療、通信、機械、気象の各部門に講師を依頼して、隊員のスキルアップと安全行動に努めた。
1.3.5 基地緊急事態対処国内連携訓練 三浦 英樹
昭和基地で事故や災害が発生し、現地越冬隊のみで対処に当たることが困難で事態収束に向けて国内からの支 援を必要とする場合に備えて、国内(極地研南極観測センター)と連携した訓練を行った。56次隊では、越冬前 半(極夜期前)の実施を要望し、5月に実施した。
1.3.6 事故・災害発生状況と経過 三浦 英樹
越冬期間中に発生した事故およびヒヤリハットは次の通りである。
1) 事故 計 2 件
① 基地全停電(5 月 12 日 10:51):2 号機の燃料噴射量を調整するアクチュエーター(1 月の 2 号機オーバーホ ール作業において新品に交換したもの)の不具合が原因。処置としては、予備部品と交換した。国内に持ち帰り、
メーカーに調査依頼を予定。発電機復旧までの時間は 24 分であった。
② 基地全停電(10 月 23 日 22:02):2 号機運転中に過速度(重故障)の発報によりエンジンが停止し全停電と なった。 2 号機のアクチュエーターとコントローラー故障の可能性も考え、復電は 1 号機で行った。停電の原因 は不明であった(後に、UHF 無線機使用時のノイズが可能性のある原因として考えられた)。発電機復旧までの 時間は 18 分であった。
③ 基地全停電(11 月 2 日 10:04):2 号機運転中の集合ポンプのプランジャもしくはレバーの固着が原因と判断 した。処置としては、不具合のあった集合ポンプを交換した。不具合のあった集合ポンプ、使用中の燃料および 潤滑油を持ち帰って調査予定。発電機復旧までの時間は 8 分であった。
④ 基地全停電(11 月 17 日 22:02):1 号機運転中に、潤滑油圧力第 1 段(軽故障)が発報せずに、第 2 段(重 故障)が発報。 電力チャート紙には急激な上昇は見られなかったので、1 号機の再立ち上げを実施。運転に問題 がなかったので、1 号機で復電作業を開始した。停電の原因は不明であった(後に、UHF 無線機使用時のノイズが 可能性のある原因として考えられた)。発電機復旧までの時間は 14 分であった。
⑤ 倉庫棟冷凍庫の室内機側冷凍機の霜取り作業中のコイル破損(1 月 17 日):倉庫棟冷凍庫の室内機側の冷凍 機は 55 次の越冬期間に越冬隊により設置され、実質的に、56 次越冬隊から運用が開始された。当初より室内機
側の冷凍機の銅管コイルに霜がついて氷化するため、たびたび室温が上昇して警報が鳴るため、機械設備隊員が、
マイナスドライバー等を用いて、頻繁に氷化した霜を取る作業を行っていた。この日も今まで通り注意深く霜取 り作業を行っていたが、氷の除去作業も手元が暗かったため氷と銅管(コイル)の区別が確実ではなかったため、
氷と思い込んでしまいコイルを破損させ、冷媒ガスが放出した。直接的な原因は銅管コイルの破損である。冷凍 機のコイルについた霜を鋭利な金属で除去することは、基本的には行うべきことではないが、冷凍機を扉のそば に設置したため、位置的に銅管コイルに霜が発達して氷化することは避けられない状態となっていた。そのため、
械設備隊員としては冷凍庫の室温保持のためにやむを得ない作業であり、根本的な原因は、冷凍機の設置場所の ミスにあると言える。
2) ヒヤリハット(安全ノート) 計 2 件
① 除雪中の雪ブロックの落下による通路等下のケーブルラックの脱落(7 月 10 日):7 月 5 日から 8 日まで続い たブリザードによって、防 C〜防 B の間の通路棟北側にできたスノードリフトの除雪作業中に、雪の塊(2㎥程度) が通路棟側に落下(3m 程度)し、通路棟下のケーブルラックが脱落した。バックホーの建物際の滑落を防ぐため、
19広場側よりブルドーザーにてバックホーのブームが届く範囲まで雪面を下げる除雪を行い、通路棟側に残っ た雪壁をバケットにて引き込む作業を行う予定であったが、ブルドーザーで雪を深く、壁際まで削りすぎてしま い、雪の塊が落下した。原因となった雪塊を手作業で崩し、ジャッキを用いて落下したケーブルラックを持ち上 げ、固定・復旧した。
② スカルブスネス旅行中における雪上車 SM415 排気管によるウェスの焦げつき(9 月 4 日):きざはし小屋の海 氷上の雪上車 SM415 車内において、雪上車の立ち上げ後、出発前に車内で焦げ臭い匂いを感じ、車内の作動油、
エンジンまわりを点検したところ、後部座席床下にある排気管の上においたウェスが焦げていた。原因は、調整 中で、使用してはいけないように指示していた暖房のスイッチを誤って入れてしまった。排気管の上の焦げたウ エスを取り除き、ヒーターのスイッチをテープで止めて操作できないようにした。
③ プロパンボンベ交換作業時に漏れたガスの管理棟への流入(9 月 5 日):昭和基地のプロパンボンベ交換作業 時の空ボンベ搬出中にバルブが開いていたことに気づかず、ボンベ内の残留ガスが漏れた。管理棟外調機の外気 導入ダクト(吸気ダクト)からガスを吸い込み、管理棟内にガスが流入した。通信室にいた隊員が、室内のガス 臭に気づいて、機械隊員に連絡した。空ボンベの取り外し作業を行っていた時は、全閉になっていたが、搬出途 中にバルブに接触して開いてしまったことに気づかず、そのまま作業を継続したことが原因であった。全館放送 と通信で、管理棟内にガスが流入していることを全体に周知した。機械隊員には原因を解明するように指示を出 した。また、喚起のために、管理棟とその周辺のあらゆる扉を開放したうえで、管理棟内から速やかに離れるよ うに連絡した。その際に、発火することを防ぐために、電気関係のスイッチの切り入れを絶対行わないように注 意喚起した。
④ ラングホブデ・袋浦のカブース橇の入り口扉が外れて頭部を打撲(9 月 27 日):ラングホブデ・袋浦に残置 してあるカブース橇を利用するため、入り口扉のかんぬきになっていた角材を取り外したところ、扉の蝶番が取 り外されており、扉が外れてそのまま倒れ、扉の前に立っていた隊員の頭部にあたった。当該隊員はヘルメット を着用していなかった。カブースの入り口に注意喚起の表示がなかった。また、扉のかんぬきを取り外した隊員 が、事前にカブースの扉の状態を十分に確認しておらず、周囲に適切な注意喚起を行っていなかった。また、雪 上車から降りたあとの、調査の時間だったため、ヘルメットを着用する指示も出していなかった。頭部の痛みは あったが、出血はなく、意識もあったため、その場でしばらく座って休んだ。雪鳥小屋に帰着後に医師の診断を 受けて、頭部に湿布を貼った。
1.3.7 越冬期間中の安全対策 三浦 英樹 越冬期間中に実施した安全対策に関する会議・各種訓練・講習等は表Ⅲ.1.3.7-1に示す。
表Ⅲ.1.3.7-1
月日 訓練・講習・会議名 対象 主な内容・特記事項 講師・指導
・司会 2月23日 第1回安全対策・危機管理委
員会 委員ほか 消防体制、ブリザード時の体制について再確
認 三浦
2月28日 計画停電の反省会と停電時
の対応に関する全体会議 全員 夏作業における計画停電の反省会と停電時の
対応の確認 加藤
2月28日 第1回消防訓練 全員 倉庫棟・喫煙室からの出火を想定した初期消 火、反省会
浅野智 加藤・三浦
3月2日 第2回安全対策・危機管理委
員会 委員ほか
各棟の非常食・物品の配置案、野外行動の届 け出、今後の隊の安全に関わる諸指針の作成 について
三浦
3月5日 第1回除雪対策委員会 委員ほか 除雪の方法とスノードリフト対策についての
方針の確認 三浦
3月5日 第1回沿岸旅行準備委員会 委員ほか 沿岸旅行開始までのスケジュールと準備の方
針の確認 三浦
3月16日 基地施設点検
各施設管 理・火元責 任者
管理棟及び作業工作棟の巡回、消防施設、建 屋内の施設配置、電気配線および危険物など の確認・点検と取りまとめ
加藤
浅野智・三浦
3月16日 南極安全講習(野外装備
編):講義 全員 野外装備の使い方について 高橋
3月17日 基地施設点検
各施設管 理・火元責 任者
基地中心部の西部地区と東部地区の建築物の 巡回、消防施設、建屋内の施設配置、電気配 線および危険物などの確認・点検と取りまと め
加藤
浅野智・三浦
3月18日 基地施設点検
各施設管 理・火元責 任者
基地から離れた東部の施設と建築物の巡回、
消防施設、建屋内の施設配置、電気配線およ び危険物などの確認・点検と取りまとめ
加藤
浅野智・三浦
3月19日 基地施設点検
各施設管 理・火元責 任者
基地中心部から離れた施設と建築物の巡回、
消防施設、建屋内の施設配置、電気配線およ び危険物などの確認・点検と取りまとめ
加藤
浅野智・三浦
3月19日 南極安全講習(野外行動
編):講義 全員 野外行動における一般的注意点について 高橋 3月21日 東オングル島内散策:実習 全員 個人装備の使い方と地図・地形図の見方の実
習 高橋
3月24日 東オングル島内散策:実習 全員 個人装備の使い方と地図・地形図の見方の実
習 高橋
3月25日 南極安全講習(医療編):講
義 全員 南極の野外活動における医学的な注意点につ
いて 及川
3月26日 第2回消防訓練 全員 自然エネルギー棟からの出火を想定した本格 消火、反省会
浅野智 加藤・三浦 3月27日 海氷・車両・ルート工作総合 全員 海氷上の行動、雪上車の管理・運転方法、ル 高橋