II. 夏期行動
6. 観測データ・採取試料一覧
1 .夏期行動経過の概要 2 .夏期観測
3 .夏期設営作業 4 .その他の活動 5 .夏隊行動日誌
6 .観測データ・採取試料一覧
II. 夏期行動
1. 夏期行動経過の概要
1.1「しらせ」で昭和基地に向かう本隊
1.1.1 往路の航海と船上観測
南極観測船「しらせ」は、2014 年 11 月 11 日に東京晴海埠頭を出港し、11 月 26 日にフリマントル港に入港 した。第 56 次観測隊本隊(越冬隊員 26 名、夏隊員 27 名、外国人を除く同行者 12 名)は、11 月 25 日に成田空 港から出国し、26 日にオーストラリアフ、フリマントル港に寄港中の「しらせ」に乗船した。フリマントル港 において、外国人同行者である、トルコからの交換科学者 1 名および観測隊チャターヘリコプターの技術者と してニュージーランド HNZ 社から 5 名が合流した。フリマントル港では、観測隊チャターヘリコプターや現地 生鮮食品の搭載等を実施し、「しらせ」は、11 月 30 日に出港した。フリマントル出港後、航走観測を行い、東 経 110 度線の停船観測等を順調に実施し、12 月 5 日に南緯 55 度を通過、12 月 6 日に昭和基地に向け西航を開 始し、ブイの投入等、航路上で順調に船上観測を行った。「しらせ」は、2014 年 12 月 15 日にリュツォ・ホル ム湾沖の流氷域に進入し、同日海底圧力計の設置を行った。また、フリマントル出港から、各種安全講習等を 船内で実施した。
リュツォ・ホルム湾沖流氷域進入後、観測を実施しながら順調に航行し、12 月 17 日に、南緯 68 度 21.9 分、
東経 38 度 44.9 分(昭和基地北北西約 80km)のリュツォ・ホルム湾の定着氷縁に到達した。その後、砕氷しな がら昭和基地に向け航行を続けたが、昨シーズンより広範囲の乱氷帯に加え積雪も多い海域で苦戦を強いられ 進行が遅れた。12 月 22 日頃から進出距離も延び始め、12 月 24 日に昭和基地北西約 40km に達し、昭和基地へ 第一便を実施した。同日昭和基地への第一便に引き続き、船を進めながら優先空輸物資の輸送を行った。最終 的に、昭和基地から約 24km の地点に達し、この地点において 27 日まで優先空輸物資を実施した。優先空輸物 資輸送終了後 12 月 28 日に、「しらせ」は砕氷航行を再開し、昭和基地接岸を目指し、多年氷帯に進入した。2015 年 1 月 12 日に、「しらせ」は、昭和基地沖約 500mに接岸した。氷状は厳しく、往路のラミング回数は過去最 多の 3,187 回を要した。
1.1.2 昭和基地への輸送
・空輸
12 月 24 日に昭和基地北西約 40km に達し、昭和基地へ第一便を実施した。同日昭和基地への第一便に引き続 き、船を進めながら優先空輸物資の輸送を行った。また、昭和基地第一便の前日、2014 年 12 月 23 日には、観 測隊ヘリの機体移送を兼ねて数名の人員輸送を先行した。昭和基地沖接岸、氷上輸送終了後、1 月 23 日から 25 日の間に、本格空輸を実施した。24 日に全物資の送り込みが終了し、25 日は持ち帰りのみを実施した。その他、
S17 への観測物資送り込みおよび持ち帰りを自衛隊 CH 機で実施した。沿岸域の輸送ならびにしらせ支援員輸送 は観測隊ヘリを中心に実施した。さらに、2015 年 2 月 4 日に自衛隊 CH 機が使用不可となり、2 月 9 日から 10 日に実施した持ち帰り輸送は、観測隊ヘリコプターを使用した。2 月 15 日に昭和最終便、観測隊ヘリの機体移 送を行い、56 次隊における飛行作業を全て終了した。空輸によって送り込んだ物資の総量は 238.1t、持ち帰 った物資の総量は 138.8t である。
・氷上輸送
1 月 12 日昭和基地接岸後、翌 13 日夜間より 21 日早朝まで、悪天による中止を除いて合計 5 夜に渡り氷上 輸送作業を実施した。氷上輸送で予定していた全ての物資(265t)の送り込みを完了した。また、同時に持ち 帰り輸送も実施し、廃棄車両をはじめ廃棄物・一般物資合計約 270tをしらせに搭載した。
・貨油輸送
1 月 12 日昭和基地接岸後、パイプラインを展張し、昭和基地貯油施設への燃料輸送を開始した。1月 15 日 までパイプラインでの輸送を実施し、バルクで持ち込んだ全ての W 軽油 492t(600kl)、JP-5 が 40t(50kl)の 計 532tを見晴らし岩タンク送油した。
1.1.3 基地作業
昭和基地夏作業期間は、12 月 25 日から 2 月 14 日までの全 52 日(作業日 47 日、休日 4 日、作業不能日 1 日)
であった。この間に、新汚水施設仕上げ工事、風力発電機 1 号機設置工事(2号機搬入)、第2車庫兼ヘリ格納 庫建設工事(スロープコンクリート除く)、自然エネルギー棟オーバースライダー改修工事(ボトムパネル交換 のみ)、コンクリートプラント運用、補修工事(光学観測棟・情報処理棟屋根防水工事、観測棟天窓設置)、コ ンテナヤード補修工事、解体工事(気象倉庫、航空管制棟基礎)、基本観測棟整地・均しコン打設工事および支 援工事(航空用VHFアンテナ設置、積雪計設置、測風棟背かご設置)を実施した。
また、第 56 次夏期作業で計画されており実施出来なかった作業は、第2車庫兼ヘリ格納庫スロープコンクリ ート打設工事、自然エネルギー棟オーバースライダー改修工事(断熱材貼付け)および補修工事(旧水素ガス 発生機室扉交換・見晴らしポンプ小屋窓交換)等であった。
1.1.4 基地観測
重点研究観測の一つである、南極昭和基地大型大気レーダー観測では、これまでに設置された 47 群のアンテ ナに加え、最後の 8 群分のアンテナ、送受信モジュール、屋外分配装置、群内ケーブルの設置調整を行い、55 群のフルシステムが完成した。また、アンテナの嵩上げ基礎追加を行った。その他、大型大気レーダー観測関 連の各種点検・調整等を行った。また、レイリー/ラマンライダー観測、大気光観測、ミリ波分光計やMFレ ーダーの観測機器の点検・調整等も実施した。
潮位観測装置の保守作業、水位計センサー設置、副標観測、水準測量、絶対重力観測、レーザースキャナ―
を用いた精密地形測量、東オングル島内の簡易空中写真撮影用対空標識新設、衛星電波シンチレーション観測 や電離層垂直観測の装置の保守・点検等を実施した。また、無人航空機等を利用した、大気観測等も行った。
1.1.5 野外観測
・宗谷海岸湖沼の観測
生物多様性や物質循環等の特徴把握に資する試料採集を、ラングホブデ、スカルブスネス、スカーレン、イ ンホブデおよび昭和基地周辺の露岩域において実施した。蘚類・地衣類の採集、湖底試料採集、および採水等 を行った。
ラングホブデぬるめ池、スカルブスネス親子池・長池の 3 湖沼に 55 次隊で設置を行った係留観測装置を回収 しデータを取得し、これらの 3 湖沼に新たに係留観測装置を設置した。また、生物分布域であるラングホブデ、
スカルブスネス露岩域等で長期自動観測を続けている気象観測装置の保守点検(センサー交換を含む)とデー タ回収作業を実施した。さらに、ラングホブデ露岩域の中央部に位置する雪鳥沢のモニタリング調査を行った。
・宙空圏観測
西オングル島での ULF, ELF/VLF 帯自然電磁波動の通年連続観測を実施するため、風力発電システムを増設し、
また既存の風力発電システムの蓄電池を増設した。太陽電池系蓄電池充電の充電作業や無線 LAN の保守・点検、
各機器の操作方法等の引き継ぎを行った。また、H68 およびスカーレンに設置した無人磁力計の点検・引継ぎ を行った。H68 では、機器を収納している簡易雪洞の壁を補強した。
・地殻圏変動観測
白瀬氷河ならびにその流域氷床・氷河の動的状態を定量的に把握するため、リュツォ・ホルム湾沿岸の氷河 や氷床上に 2 周波 GPS を設置し観測を行った。また、リュツォ・ホルム湾沿岸露岩域の GPS 観測点において、
露岩に埋め込まれたボルト点に GPS アンテナを設置し、2 周波精密 GPS 受信装置を用いて 24 時間以上の連続デ ータを取得した。さらに、無人観測システムが稼働しているサイトにおいてはシステムの保守、データ回収を 実施した。
リュツォ・ホルム湾周辺の沿岸露岩域や大陸氷床上で、連続観測している広帯域地震計の保守整備を実施し た。観測システムの状態確認・補修作業、バッテリー(シール型鉛蓄電池、太陽電池)の状態確認・補修作業、
データ記録メディアの交換に加え、ロガー(LS-8800)のファームウェアをアップデートした。また、ラングホ ブデ北部のザクロ池東岸および西オングル島の大池湖畔の 2 観測点で、地温計の保守およびデータ回収を実施 した。
・測地観測
重力計室内の絶対重力点(IAGBN)を基点とし、周辺露岩域では、ラングホブデにおいて、新設点(5601)で 相対重力測量を実施し、スカーレンにおいて既設基準点(SN-01)及び新設点(5603)について相対重力測量を 実施した。氷床の水平方向への流動速度及び氷床表面高の経年変化を検出を目的とした、昭和基地東方約 19km に位置する氷床上 P50、S16、S17 の 3 か所で、GNSS 測量機を用いて 24 時間の連続観測を同時に実施し、必要 に応じてポールの継ぎ足しを実施した。
ラングホブデにおける GNSS 固定観測装置は、1 年分の観測データを回収し観測を再開させた。また、設置か ら 15 年が経過し、観測機器及び筐体の老朽化が激しく、このまま保守を続けることが困難であるため、丘の麓 のラングホブデ小屋から見える位置に、マルチ GNSS 化に対応したより高精度な新 GNSS 固定観測装置を設置し た。これにより、新旧装置による 1 年間の並行観測を開始した。
・潮汐観測
ラングホブデ雪鳥沢の西側の海岸付近に、架台に取り付けワイヤーに結びつけた水位計を海底に設置した。
また大気圧補正値測定のためロガー式気圧計を観測小屋付近に設置した。さらに、水位計検定のための副標及 び、5 分インターバルで撮影を行う固定カメラを設置し、副標による同時験潮実施した、また副標から水路測 量標識間の水準測量を実施した。一方、スカーレン居住カブース東側の海底に設置され、昨年第 55 次夏作業期 間内の回収を断念した水位計の回収作業を試みたが、第 56 次隊においても回収を断念した。
1.1.6 復路の航海と船上観測
2015 年 1 月 27 日、「しらせ」は本格空輸を終了し、昭和基地を離岸、再び多年氷帯に突入し、復路についた。
2 月 3 日、海上自衛隊士官 1 名が、大陸上 S16 での物資輸送作業中に倒れ、同日逝去した。このため、南極地 域観測統合推進本部は、関係機関等と調整の結果、遺族への配慮ならびに人道的観点から、遺体の早期帰国を果 たすため、南極地域観測隊及び「しらせ」行動計画を変更した。これにより、2 月 15 日昭和基地からの人員物 資の最終輸送、リュッツホルム湾海氷域での停船観測、および 2 月 16 日海底圧力計の回収終了後、航走観測の みを実施し、フリマントルに向かった。1 月 27 日に昭和基地を離岸した「しらせ」は、2 月 11 日に多年氷帯を 離脱した。復路のラミング回数は 2,219 回となり、往復路総計で 5,406 回と過去最多のラミング回数となった。
復路の「しらせ」行動計画変更により、復路予定していた「ケープダンレー沖の係留系 1 基揚収および XCTD 観 測」、「アムンゼン湾無人磁力計データ回収および生物・地学調査」および「ケルゲレン海台付近の生物停船観 測および地磁気・重力航走観測」が中止となった。また、自衛隊ヘリコプターCH 機が 2 月 4 日に使用不能とな ったため、2 月 9 日から 10 日に実施した持ち帰り輸送を含む 4 日以降の輸送作業、および 2 月 15 日に実施し た昭和基地からの人員物資の最終輸送に関しては、観測隊チャーターヘリを使用して実施した。「しらせ」は、
3 月 9 日にフリマントルに入港し、第 56 次夏隊および第 55 次越冬隊は、3 月 12 日に下船し、予定より早く 3