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II. 夏期行動

2. 夏期観測

2.3 モニタリング観測

2.3.3 海洋生態系モニタリング

2.3.3.1 海洋表層観測(AMB04-56-01) 高村 友海

【概要】

しらせ船上において航走観測を実施し、海洋表層環境の経年変動データを蓄積する。表層水温塩分、表層二酸 化炭素分圧、表層クロロフィルa 濃度を自動観測装置により連続的に観測する。また、適宜海水くみ上げポンプ より採水し、クロロフィルa 濃度、栄養塩、植物プランクトンの各サンプルを取得する。

【実施経過】

フリーマントル出港後の2014年12月1日から、第4観側室において表層水温塩分、表層二酸化炭素分圧、表層ク ロロフィルa 濃度を自動観測装置により連続的に観測した。ラミング航行を開始した2014年12月16日から2月19 日までの間はポンプの停止に伴い観測を停止したが、2月19日に観測を再開した後は3月5日にオーストラリアEEZ 侵入に伴いポンプを停止するまで観測を継続した。また適宜海水くみ上げポンプより採水し、クロロフィルa 濃

度、栄養塩、植物プランクトンの各サンプルを取得した。

【問題点・課題】

ラミング航行が開始されると、後進時にポンプに氷が詰まり、装置への充分な海水流量が確保出来ない状態に なった。これは事前に予想されていたことであり、装置を安全に停止する対応を行なった。

ポンプ及び配管の劣化による海水の流量低下が見られたため、気象員による調整を行ったが完全に流量が復旧 しなかった。ポンプ及び配管の確認を改善要望として提出した。

2.3.3.2 浅層鉛直観測(AMB04-56-02) 高村 友海

【概要】

昭和基地へ向かう南下航路上において実施するCPRのカセット交換時間を利用し、メモリー式CTD、ニスキン採 水器、ノルパックネットを用いて浅層鉛直観測を実施する。鉛直的な水温塩分、各層における栄養塩、全炭酸、

クロロフィルa濃度、植物プランクトン、動物プランクトンサンプルを採集する。

【実施経過】

往路の東経110度を南下する航路上の5点において浅層鉛直観測を実施した。以下の各観測点において、メモリ ー式CTDおよびニスキン採水器により鉛直的な水温塩分、各層における栄養塩、全炭酸、クロロフィルa濃度、植 物プランクトン試料を採集し、ノルパックネットを用いて動物プランクトンサンプルを採集した。

L01 (40-09,70S, 110-00.21E) 12/2 07:58 (LT)

L02 (45-07.22S, 110-00.92E) 12/3 07:57 (LT)

L03 (50-06.05S, 109-59.31E) 12/4 08:01 (LT)

L04 (55-07.84S, 109-58.31E) 12/5 13:02 (LT)

L05 (59-58.84S, 109-50.07E) 12/6 15:03 (LT)

【問題点・課題】

特になし

2.3.3.3 氷海内停船観測(AMB04-56-03) 高村 友海

【概要】

季節海氷域および定着氷域に設定したモニタリング定点において、メモリー式CTD、ニスキン採水器およびノ ルパックネットを用いて氷海海洋観測を実施する。鉛直的な水温塩分、各層における栄養塩、全炭酸、クロロフ ィルa 濃度、植物プランクトン、動物プランクトンサンプルを採集する。

【実施経過】

定着氷域、流氷域、開放水面域に設定した以下の5点の観測点において、メモリー式CTD、ニスキン採水器およ びがま口ネット(閉鎖式ネット)を用いて氷海海洋観測を実施した。ニスキン採水器において鉛直的な水温塩分、

各層における栄養塩、全炭酸、クロロフィルa濃度、植物プランクトン試料を採集し、がま口ネットを用いて動 物プランクトンサンプルを採集した。流氷域が非常に狭い乱氷帯となっており、乱氷帯の北側は開放水面域であ ったため、乱氷帯内において観測点Cを実施し、観測点Dはキャンセルとした。また、観測点Cでは吹雪のためCTD が1キャストキャンセルとなった。

A (69-01.85S, 39-18.71E) 1/31 17:50 (LT) B (68-54.99S, 39-01.99E) 2/15 18:00 (LT) C (68-28.27S, 38-38.67E) 2/16 16:10 (LT) E (67-30.88S, 38-35.88E) 2/17 13:20 (LT) BP (66-50.21S, 37-50.01E) 2/18 07:53 (LT)

【問題点・課題】

観測点Cにおいて、吹雪と低温が原因とみられるニスキン採水器の不具合が発生した。アイスフェンスの投入 に非常に時間がかかったため、CTDのラッチに雪が吹き込み、融解・凍結して動作を妨げたものと考えられる。

次の観測点DではCTDのラッチを完全に乾燥させおき、投入直前まで室内に置いておいたため、機器の異常はなか った。

2.3.3.4 CPR 観測(AMB04-56-04) 高村 友海

【概要】

昭和基地へ向かう南下航路上においてCPR曳航による連続動物プランクトン採集を実施する。

【実施経過】

往路の東経110度線上の南緯45度から60度の海域においてCPRの曳航を実施し,観測点L02-L03、L03-L04、L04

-L05間で計3カセット分の採集に成功した。

【問題点・課題】

特になし。

2.3.3.5 海鷹丸による海洋生態系モニタリング(AMB02-56-04) 飯田 高大

【概要】

これまで「しらせ」船上において海上保安庁が担当していた基本観測(海洋物理・化学)が、JARE54から海鷹 丸により実施されることとなった。「しらせ」では海洋物理・化学観測と同時に海洋生態系調査を実施してきて おり、中でもプランクトン調査は1960年代から長期間実施し、中長期的な変動を明らかにしてきた。「しらせ」

においては現在も海洋生態系モニタリング観測は継続して行なっているが、海鷹丸は「しらせ」に約1ヶ月遅れ で東経110度ラインを通過する。そのことから、海鷹丸が「しらせ」と同じ海洋観測点および航路上で海洋生態 系モニタリング調査を実施することにより、そのデータを補完するとともに、季節変動を捉えることも可能とな った。南大洋において、このような海洋生態系のモニタリング観測を行なっている国は例がなく、国際的にも非 常に重要なデータとなりうる。 以上のような背景から、植物・動物プランクトン群集の分布、量、種組成の変 動パターンを詳細に把握すること、また、データを蓄積することで環境変化に伴った表層プランクトン群集の中 長期的変動を抽出することを目的とした、各種海洋モニタリング観測を実施した。

【実施経過】

基本観測点である、東経110度ラインの南緯40度、45度、55度、60度、65度の5観測点において、CTD-RMSを用 いた採水を実施し、各層におけるクロロフィルa濃度、植物プランクトン試料を採集した。また、同観測点にお いてノルパックネットを用いて動物プランクトンサンプルを採集した。さらに、往路、東経110度ラインの南緯 45度から60度、及び復路、南緯63度から52度の間においてContinuous Plankton Recorder(CPR)を曳航し、空間 連続的に動物プランクトンサンプルを得た。

フリーマントル出港後の2015年1月12日から2015年2月4日にかけて海鷹丸設置の表層環境モニタリングシステ ムを運用し、時間連続的な表層クロロフィルa蛍光値を得た。また適宜海水くみ上げポンプより採水し、クロロ フィルa 濃度サンプルを取得した。

【問題点・課題】

特になし。

2.3.4 陸上生態系モニタリング

2.3.4.1 自動気象観測装置(AWS)の保守点検とデータ回収(AMB06-56-01) 辻本 惠

【概要】

生物分布域であるラングホブデ、スカルブスネス露岩域の気象特性を捉えるために長期自動観測を続けている 気象観測装置の保守点検(センサー交換を含む)とデータ回収作業を実施した。現在のAWS観測装置はラングホ ブデ雪鳥沢中流域、スカルブスネスきざはし浜において51次隊から運用している。

【経過】

作業実施日:スカルブスネスきざはし浜(1月13日)、ラングホブデ雪鳥沢(1月31日)

【特記事項】

本隊で用意されたパソコンのAWSソフト(PS200W v.3.3)には、予め現地に設置されているデータロガーが設定 されておらず、データ回収が行えなかった。代わりに、持参していた54次隊員貸与のパソコン(AWSソフトに使 用中のデータロガーが設定済み)でデータ回収を行った。

きざはし浜に設置されたAWSの紫外線計に取りつけられた日光遮断カバーがなくなっていた。

【問題点・課題】

AWS観測装置のデータ回収を行う際には、データ回収ソフト内に、設置されたデータロガーの設定が必要であ る。今回は設定マニュアルがなかったために、本隊で利用していたパソコンでの回収が行えなかった。また、AWS ソフトを用いたデータ回収については事前に講習を受けておらず、詳細な資料もなかった。未経験者の隊員に対 しては、出発前の事前講習や詳細な資料の提供をお願いしたい。

AWS紫外線計の日光遮断カバーは3か所の凹凸部をはめるだけの構造であり、きざはし浜のカバー紛失について は、ブリザード等の強風時に吹き飛ばされた可能性が高い。今期はビニールテープで補強を行ったが、正確な観 測や環境保全のためにはカバー設置方法の検討を推奨する。

2.3.4.2 湖沼係留観測装置の回収と設置(AMB06-56-02) 辻本 惠

【概要】

ラングホブデぬるめ池、スカルブスネス親子池・長池の3湖沼に55次隊で設置を行った係留観測装置を回収し、

データを取得した。また、これら3湖沼に新たに係留観測装置を設置した。本係留観測は親子池において45次隊 から、長池で49次隊から、ぬるめ池では53次隊から湖沼環境の長期連続モニタリングを目的に継続している。

【経過】

作業実施日:親子池(1月13−15日)、長池(1月22日)、ぬるめ池(1月27日)

【特記事項】

親子池に設置された係留観測装置は、設定されていたGPSデータから離れた地点にあり、発見に時間を要した。

また、発見当時は副フロートと主フロートが上下に重なった状態であった。

長池については、1月のブリザード(16日~17日)直前までは湖面に9割以上の面積の氷が張っていたが、ブリ ザード後に9割方の氷が融解し、1月下旬での作業実施可能となった。

【問題点・課題】

親子池の係留観測装置については、作業を開始した1月13日時点では湖面に3分の1程度の面積の氷が残り、風 向により氷が南側に流された時間のみ、装置設置地点へのアクセスが可能となっていた。さらに、装置がGPSデ ータの座標付近から離れていたこと、また副フロートと主フロートが重なった状態であったことによって、状況 把握に2日を要した。作業に習熟しない隊員の事前訓練において、過去事例とされたい。

今期においては1月16日から17日にかけて、記録的なブリザード(昭和基地では瞬間最大風速50m/sを記録)が 起こった。強風の影響で湖面の氷や湖水が撹拌された可能性が高く、ブリザード後には、それまでに結氷してい た多くの湖で氷が融けていた。長池については、ブリザードが起こらなければ今季夏期観測期間中に、係留観測 装置の設置されている中心部まで氷が融解せずに、作業が行えなかった可能性が高いと考えられる。陸上生物部 門の隊員がスカルブスネスの湖沼観測を主な観測内容としたチーム編成でない場合には、1月下旬になってもほ とんど氷に覆われている池の様子を逐次伺いながらのスケジュール調整は、負担が大きい。

湖沼観測において使用するボートや機器による湖沼間での人為的なクロスコンタミネーションには細心の注 意が必要と考えられた。今回は雪解け水によるボート洗浄、蒸留水による機器洗浄を、毎使用後に行った。湖沼 の生物多様性保全の観点において、湖沼調査におけるボート・観測機器の洗浄については、その対策を重要課題 として検討すべきである。

2.3.4.3 雪鳥沢植生モニタリング(AMB06-56-03) 辻本 惠

【概要】

ラングホブデ露岩域の中央部に位置する雪鳥沢は、第27次隊(1986年)から29次隊(1990年)に、環境と動植 物の関係を調べる目的で植物相、動物相が観測調査され、同時に中気象、微気象観測が行われた経緯がある。ま た、雪鳥沢は2002年に南極特別保護地域(ASPA)としてSCARに指定されている。陸上生物チームでは、その保全 と同時に気候変動がもたらす環境変化(気温,降雪量,流水量など)が植生にどのような影響を及ぼすのかを調 べるため、沢沿いに約30cm×約30cm枠の永久コドラートを約50ヶ所設け長期モニタリング調査を継続している。

【経過】

永続観測されている永久コドラート(蘚類15点、地衣類17点、藻類1点)について、2月1日から3日にかけて写 真撮影を行った。行動には各定点が示された地図とGPS(GARMIN GPSmap 62s)を用いた。撮影には一眼レフカメ