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第 6 章 係留施設の断面変化箇所での水平変位の法線方向分布の

6.2 研究対象施設と被害の概要

6.2.1 研究対象施設

研究対象施設は,図6.2に示す神戸港ポートアイランド第2期のPC13およびPC14岸壁 である.PC13岸壁は西側に隣接する-8.2m岸壁に対してL形に接続しており,PC13岸壁と PC14岸壁は直線状に連続した施設となっている.

図6.2 研究対象施設位置図2)

図6.3にPC13とPC14の標準断面図を示す.PC13は粘性土を床掘置換えした構造であり,

PC14は粘性土をサンドコンパクション(SCP)工法とサンドドレーン(SD)工法で改良し た断面となっている.

(a) PC13標準断面図 (b) PC14標準断面図 図6.3 研究対象施設の標準断面図2)

図6.4にはPC13とPC14の被災状況図を示す.図6.4(a)がPC13の被災状況図,(b)がPC14 の被災状況図である.図6.4(b)のPC14の被災状況図には,被災後に実施された土質調査の 結果もあわせて記載されている 3).図 6.4 を見てわかるとおり,SCP などで改良を行った PC14の方が岸壁の水平変位が小さいことがわかる.また,(b)の被災後の土質調査の結果を

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見ると,埋立土のN値が10程度,裏込石のN値も10程度である.SCPのN値は2~50以 上であり,これはSCPの杭間粘土の部分と,砂杭の部分の相違であると考えられる.また,

敷砂部分の SCPの改良地盤のN値が30~40程度まで上昇していることがわかる.捨石部 のN値は概ね50以上である.裏込石の部分は,基礎捨石と同様の石材でありながら,N値 は7~20程度であり,まれに30,50といった値が見られる程度である.裏込石のマトリク スについては,上層より,φ2~30mm,φ30~100mm,粗砂少量角礫2~15mm位が混入す る,φ150mm程度,φ30~100位との記載がある.このことから,裏込石のN 値に小さい 部分がある原因としては,裏込石間隙に背後の裏埋土が混入した可能性や裏込石が破砕し た可能性,施設が海側に変位したことで裏込石が緩んでしまった可能性もあると思われる.

1995年兵庫県南部地震の港湾被害に関する既往の研究4),5),6),7),8)などから,神戸港で主に地 盤改良工法として使用されていた床掘置換工法の置換砂が液状化したことが,大きな被害 が生じた要因であることが知られている.ポートアイランド地区第 2 期は,被災時には築 造途中であり,裏埋め途中の状況であって,供用は開始されていなかった.このためか,

PC13に対する直接的な被災量の解析などは行われていないようである.しかし,PC13にお いても置換砂と背後の裏埋土の液状化が発生したものと考えられる.一方,PC14の土質調 査の結果を見てみると,SCP改良地盤の杭間粘性土は液状化しないと考えられる.砂杭は,

図6.4(b)の土質調査結果を見る限りでは十分に締固まっており,液状化しないと考えられる.

PC14の裏埋土は,当時の関係者の間で「山砂」と呼ばれていたまさ土が用いられている.

これは,置換砂に用いられているものとほぼ同じ材料である.PC14の裏埋土は,N値が10 程度であることから,液状化した可能性が高いと思われる.これらのことを総合するとか ら,PC13とPC14の水平変位の相違は,PC13は置換砂と裏埋土が液状化したのに対し,PC14 は裏埋土のみが液状化したことによる相違であると考えられる.したがって,施設の設計 断面の相違によって,PC13と PC14の水平変位に差が生じていると考えられる.このこと から,PC13とPC14を研究対象として選定することとした.

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(a) PC13被災状況図2)

(b) PC14被災状況図3)

図6.4 研究対象施設の被災状況

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