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第 2 章 海岸保全施設の設計基準

2.2 港湾施設の設計基準

2.2.3 港湾の施設の技術上の基準・同解説

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方公共団体又は国が建設し,又は改良する係留施設

- 漁業を行うために必要な施設(港湾管理者が建設し,又は改良する港湾施設を除く)

- 砂防法に規定する砂防工事等として国土交通大臣又は都道府県知事が建設し,又は改 良する港湾の施設

- 海岸保全施設に関する工事等として海岸管理者が建設し,又は改良する港湾の施設 - 河川工事等として河川管理者が建設し,又は改良する港湾の施設

- 港湾計画において,大規模地震対象施設として定められておらず,かつ,都道府県地 域防災計画・市町村地域防災計画においても定められていない緑地及び広場

多賀谷の詳解によって,港湾区域,臨港地区,公告水域外の海岸保全施設は技術基準対 象施設ではないこと,さらに,港湾区域,臨港地区,公告水域内であっても,海岸管理者 によって設けられる海岸保全施設は,技術基準対象施設ではないことがわかる.このこと は逆に,港湾区域等の中に港湾管理者によって設けられる海岸保全施設は技術基準対象施 設であることを示している,ここで,港湾管理者と海岸管理者が同一の都道府県知事であ ったとしても,法的人格は異なると理解されている.このことから,港湾区域等の海岸保 全施設においては,海岸保全施設の技術上の基準・同解説と港湾の施設の技術上の基準・

同解説の両方が適用されると解されている.

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される以外の性能規定を設定し,要求性能を満足することを確認することや直接要求性能 を満足することができれば,当該施設は基準に適合するものと考えることができる.

図2.3 港湾の施設の技術上の基準の性能の階層及び性能照査の位置づけ2)

(港湾の施設の技術上の基準・同解説では,図-2.1.2)

以上のように,港湾の施設の技術上の基準は,海岸保全施設の技術上の基準以上に明確 な性能設計を導入している.そして,港湾の施設の技術上の基準・同解説にも,技術上の 基準に示した要求性能を『当該施設が果たすべき最低限の役割として定めている.』(2.1.3 技術基準対象施設の目的)ことが示されている.

このような性能設計を導入した港湾特有の背景は,港湾の施設の技術上の基準 第 1 章 1.1 港湾の施設の技術上の基準の改正(性能規定化)の目的中にうかがうことができる.

1.1節には『また,WTO(国際貿易機関)に加盟している我が国は,TBT(貿易の技術的障 壁に関する)協定により,ISO(国際標準化機構)等において策定される国際規格を遵守す ることが義務付けられていることから,ISO2394「構造物の信頼性に関する一般原則」等に 対応した技術基準の策定が必要である.そして,この技術基準の国際整合化は,我が国産 業の国際活動の促進や外国企業の参入によるコストの縮減をもたらし,事業者や消費者の 負担を軽減することにつながる』と記載されており,国際規格への適応が性能設計導入の 背景にあったことがわかる.

港湾法をはじめとする一連の法令と港湾施設の技術上の基準では,性能設計の導入に伴 って,セーフティネットの枠組みを設けている.その枠組みについても,多賀谷の詳解が わかりやすいので以下に転載する.

(性能規定化)

従来,この意味での技術基準の確保は,国土交通大臣が省令,告示により設計方法(構 造物の規格(材料,寸法等)等細部を規定する仕様基準)を施設の種類ごとに定め,その 設計方法に準拠して建設・改良・維持されることで図られてきた(昭和四十八年改正によ

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り導入).国の直轄工事,補助事業においては,この仕様基準に合致しているかの審査が工 事の妥当性にかかる審査に含まれ,また,港湾管理者も当然仕様基準に準拠して,水域施 設・外郭施設・係留施設等を建設等することとされてきた.専用岸壁等の水域施設等につ いては,都道府県知事への届出に際して,技術上の基準に適合しているかのチェックがな され,適合していない場合には,必要な改善命令を受ける仕組みが設けられてきた(五十 六条の三第二項)

然るに,施設等の安全性を国が一律に定める仕様への合致によって確保するのではなく,

国は求められる安全性等にかかる性能上の基準のみを定め,その性能に合致する仕様・設 計は民間の発意に委ねられるべきであるという,いわゆる「性能設計化」平成十八年改正 により港湾の施設についても導入された.

(基準適合性確保の仕組み)

国土交通大臣が省令,告示によって定めた仕様基準に合致した設計方法を用いる場合に は,従来と同じようにその適合性審査がなされる.これに対し,性能基準にのみ準拠して 対象である港湾の施設を建設・改良・維持しようとする場合においては,

① 公共の安全その他公益上影響が著しいと認められる港湾の施設である場合には,その性 能基準適合性について,仕様基準の場合と比較するとより高度な検証が必要であり,こ の高度な検証は国自体もしくは国の評価を代行する登録確認機関によって行われる.

(二項)

② それ以外の施設については,港湾管理者による評価(自ら建設する場合,ならびに三十 七条一項)による許可をする場合),都道府県知事による評価(五十六条の三による水 域施設等の建設・改良の届出)がなされることとなる.

上に記された国土交通大臣が省令,告示によって定めた仕様基準に合致した設計方法が,

第五十六条の二の二第三項のただし書きの設計方法(多賀谷の指摘する仕様基準に合致し た設計方法)であり,港湾の施設の技術上の基準・同解説に「告示 第五十六条の二の二 第三項のただし書きの設計方法」および「巻末資料 巻末1. 第五十六条の二の二第三項の ただし書きの設計方法の標準式」として記載されている.

港湾の施設の技術上の基準・同解説における要求性能等を付録の付表 1 右欄に示す.基 準中の準用規定については,筆者の責任で適宜,記載の順序を入れ替えて記述している.

また,本研究に関係しない構造形式についての記載は適宜省略している.

これまでの内容から,港湾の施設の技術上の基準・同解説の性格をまとめると以下のと おりとなろう.

港湾法56条の2の2に規定する港湾の施設の技術上の基準であって,要求性能を当該 施設が果たすべき最低限の役割として定めている.

性能規定化された基準が設計者に正しく理解されるための附属資料である.

国際基準,学会基準等を上位基準として性能設計を導入している.

しかし,従来の仕様設計型の照査手法も「ただし書きの設計方法」として記載してい

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護岸の要求性能は,防潮堤の要求性能を準用し,防潮堤の要求性能は係船岸の要求性 能を参照する.

防潮堤の性能規定では,設計津波に対する照査において設計津波に先行する地震の作 用を受けることを適切に考慮することとされている.

設計津波又は偶発波浪から背後地を防護する必要がある防潮堤にあっては,設計津波 又は偶発波浪から背後地を防護するために所要の諸元を有する.

主たる作用が設計津波,偶発波浪又はレベル 2 地震動である偶発状態に対して,要求 性能に応じて,作用による損傷の程度が限界値以下であること.

海岸護岸に対するレベル 2 地震動の作用による損傷の程度の限界値は,具体的には示 されていないが,耐震強化施設のレベル 2 地震動に対する変形量の限界値の標準的な 考え方を参照して設定することができる.

2.3 海岸護岸の照査にかかる海岸保全施設の技術上の基準・同解説の記述と港湾の施