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第 4 章 重力式海岸護岸の照査手法に関する研究

4.4 設計地震に対する護岸の照査基準

4.4.1 兵庫県南部地震における神戸港の港湾被害の特徴

文献2)からコンクリート函塊式の係留施設及び護岸について,施設の水平変位と目地の開 き量に着目して被害状況を分析した.その結果,本研究に関連する幾つかの特徴が見られ た.このことから,まず,その特徴について述べる.

(1) 施設の隅角部における断面方向水平変位の抑制

図 4.6に,特徴的な被害状況として神戸港六甲アイランド地区-4m物揚場④,-12m岸壁 W~ZバースおよびZバース取付のケーソン断面方向のケーソン毎の法線出入りとケーソン 天端開きを文献2)より概略的に図示する.図中の四角枠囲いの中の数値がケーソン番号であ り,一連の施設においては連番となっている.文献2)においては,上部工の天端出入とケー ソン天端出入の実測値が記載されている.加えて,ケーソン下端出入りがケーソン天端出 入りとケーソンの傾斜角から計算で求められている施設がある.図4.6もそのような施設で あり,3 種類の法線出入を,各々,黒(上部工天端出入り),青(ケーソン天端出入り),

マゼンタ(ケーソン下端天端出入り)で示している.ケーソン番号の上下の数値はケーソ ン天端の目地開きをcm単位で示したものである.この施設の設計上のケーソン目地間隔は 5cmと想定されたので,ケーソン天端の目地間隔が5cmを上回る箇所では上部工の目地開 きが発生している可能性が高いと考えられる.このことから 5cmを上回るケーソン天端目 地開きは赤色の数値としている.また,後に記載する目地ずれ量とケーソン回転角につい て例示している.

図4.7には,神戸港新港西地区第三突堤の断面方向の水平変位量とケーソン上端の目地間 隔の概略図を示す.図4.7では,ケーソン各函ごとの水平変位量は測定されておらず,概ね 20m 間隔に水平変位が測定されている.また,ケーソンの傾斜は測定されておらず,ケー ソン下端の法線出入も計算されていない.図中の四角枠囲いの中の数値がケーソン番号で あって一連の施設は連番となっている点は図4.6と同様である.図4.7には,後に記載する 隣接測線間の変位差と法線回転角を例示している.

図4.6を見ると,-4m物揚場とWバースの隅角部およびZバースとZバース取付の隅角 部のように,隅角部ではケーソンの水平変位が小さい傾向がある.また,被災後の施設の 法線は,緩やかに蛇行しているように見える.-4m物揚場④とWバースの隅角部に関して は,両方の施設がそれぞれ海側へ変位しようとして,互いに競り合うことで水平変位が抑 制されたものと考えられる.ZバースとZバース取付の隅角部に関しては,隅角部ケーソン が異形函であることに加え,隣のケーソンの影響で隅角部ケーソンへの作用土圧が小さく なることで,水平変位量が小さくなったものと考えられる.さらに,Zバース法線の先の施 設の無い海底においては地盤の変位は更に小さいと考えられることから,3次元的な構造の 変化による水平変位の減少も影響していると考えられる.

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図4.7 新港地区西 第三突堤の水平変位とケーソン天端開き

図4.7においても,施設両端付近の水平変位が小さい傾向があり,被災後の施設法線は蛇 行している傾向が見られる.このような傾向は,比較的多くの施設に見られ,隅角部ケー ソンと隣接するケーソン間の目地ずれ量も大きくなる傾向がある.

(2) 目地開きの発生箇所

図4.6においてケーソンの目地開きに着目すると,施設の隅角端に近いほどケーソン上端 の目地開きが大きく,目地開きが生じている箇所も多いことがわかる.これらは岸壁の法 線方向の移動によって生じているものと考えられる.兵庫県南部地震においては,岸壁や 護岸の水平方向変位の影響は100m以上に及んでいることが指摘9)されている.文献9)を受 けて提案された護岸の水平変位に対する研究 10)においても,護岸の水平移動の埋め立て地 側への影響は概ね200m程度で収まっているようである.しかし,図4.6,図4.7を見てわ かるとおり,目地開きは隅角部から100~200m以上離れた中ほどの場所でも生じている.

図4.6のケーソン下端の法線出入りに注目すると,ケーソン目地開きが発生している可能 性の高い(赤色で表示している)箇所が,法線出入りが海側に凸になっている箇所および 凹となっている箇所の近傍で多いようにも見える.突堤間に位置している-4m物揚場④につ いては,W~Zバースと比較して,目地開きが小さい傾向が伺える.

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図4.7の神戸港新港地区西第三突堤のケーソンの目地開きでは,施設両端が特に大きいと いった傾向は見当たらず,施設の全延長で均等に発生しているように思われる.図4.7には ケーソンの正面図のイメージを記載しているが,東岸壁を見るとわかるように施設先端に 行くほどケーソンの設置水深が深くなっている.第三突堤の被災後の延長は文献2)には記載 されていないが,施設全体が先端方向に伸びるように変位したことによって施設全体にほ ぼ均等な目地開きが発生したことが示唆される.

(3) ケーソンの捻れ変形

図4.6の-4m物揚場④の上部工法線出入およびケーソン法線出入とケーソン下端出入を比 較すると,両端付近のケーソン番号2, 3, 20において上部工(黒)およびケーソン天端の回 転方向(青)とケーソン下端(マゼンタ)の回転方向が逆向きであることがわかる.この ことは,ケーソンが水平方向に捻れるような変形をしていることを示唆している.ケーソ ンが本当にこのように捻じれていたかどうかについては,疑問に思うところでもある.測 量のミスや作図時のミスの可能性もある.しかし,他の施設においてもこのような例が見 られること,当時の関係者がケーソン相互の変位差については正確に測量したと語ってい ること,目視ができるところのケーソンの挙動であり,ミスであれば(被災後の混乱の中 であっても)誰かが気付いたであろうと思われる.これらのことから,本研究では,文献

2)の被災調査結果が文献 2)内で明らかな相互矛盾が無い限り,正しく計測されたものとして 取り扱うこととした.

(4) 舗装の種類が施設上部工の水平変位に及ぼす影響

文献2)の被災施設の標準断面図を見ると,当時の神戸港の係留施設及び護岸は舗装が,ア スファルト舗装であるもの,ケーソン本体に相当する幅もしくは数メートルがコンクリー ト舗装で残りがアスファルト舗装のもの,コンクリート舗装の幅が広いもの(おそらく岸 壁エプロンまでコンクリート舗装であるもの)の 3 種類の舗装が混在した状況にあったと 考えられる.本研究で兵庫県南部地震の港湾被害を分析するなかで,これらの舗装の種類 と幅の違いによって上部工法線出入りの大きさやケーソンの水平方向の回転角が異なる可 能性に気付いた.しかしながら,作用地震動がほぼ同じであって構造もほぼ同じ,舗装の みが異なるような都合の良い施設を見出すことができなかった.そこで,文献2)において施 設の水平変位量が数値で記載されているコンクリート重力式の係留施設および護岸のうち,

舗装の種類が概ね特定できたものについて,施設の水平変位量を舗装ごとに仕分けし,頻 度分布を作成した.ここでは,図4.6のようにケーソン各函毎に法線出入りが測量されてい るものも図4.7のように測線毎に法線出入りが計測されているものもまとめて集計した.た だし,施設の両端変位がゼロとなっており,被災前法線の取り扱いが明らかに異なると思 われる施設については除外している.また,舗装の分類は,標準断面図及び被災写真から

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判断したため,一つの施設で舗装が変化しているようなものについては考慮できていない.

後述する舗装の目地の位置も考慮できていない.集計した頻度分布を図4.8に示す.

ここで,アスファルト舗装等にはアスファルト舗装の他にレンガ舗装や平板ブロック舗 装であって標準断面図に舗装下部にコンクリート舗装のような表示がされていないものを 含んでいる.部分コンクリート舗装はケーソン上のみがコンクリート舗装となっているも のあるいはコンクリート舗装幅が数メートルのもの,コンクリート舗装は舗装エプロンま でコンクリート舗装が施されていると考えられるものである.なお,コンクリート舗装の 幅が特定できないものは便宜上コンクリート舗装に含めた.

図4.8を見ると,アスファルト舗装と部分コンクリート舗装の頻度分布に大きな差は無い が,コンクリート舗装をアスファルト舗装等と比較すると,法線出入りの平均値が0.4m程 度小さくなり頻度分布の幅も狭くなっている.また,舗装による拘束効果の大きさの順位 は,コンクリート舗装>部分コンクリート舗装>アスファルト舗装と考えられるが,この 順位で上部工法線出入りの平均値が小さくなっている.同様な比較を神戸港の地区ごとに 行ってみたところ,ほぼ同じ傾向にあった.このことから,十分に幅の広いコンクリート は,重力式係留施設や護岸の上部工の水平変位を抑制し,ばらつきを小さくする可能性が あることが示唆される.先に述べたように,文献2)においてはケーソンの傾斜からケーソン 下端の法線出入が計算されている施設がある.このことから,ケーソン下端の法線出入り についても同様な整理を行った.その結果を図4.9に示す.

図4.8 ケーソン上部工法線出入の頻度分布 図4.9 ケーソン下端法線出入の頻度分布

図4.9を見ると,アスファルト舗装に比べて部分コンクリート舗装やコンクリート舗装で はいくらかばらつきが小さくなる傾向はあるが,舗装による拘束効果が中位にあると考え られる部分コンクリート舗装の平均値が最も大きくなっている.アスファルト舗装等とコ ンクリート舗装のケーソン下端法線出入りの平均値の値は 0.22m 程度であって,ケーソン