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第 6 章 係留施設の断面変化箇所での水平変位の法線方向分布の

6.2 研究対象施設と被害の概要

6.2.2 水平変位量の変化とその要因

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図6.6 PC13とPC14の被災状況2)

神戸埠頭公社の施設である.国の直轄施設については,第4章4.1(3)で述べたように,当時 の関係者がケーソン相互の変位差については正確に測量したと語っているし,実測された 数値の記載もある.一方,図6.5については図のみで数値の記載が無い.これらのことから,

本研究ではPC13の変位量及び沈下量については,図6.4を正しいものとして取り扱うこと とした.PC14の変位量については,図6.6の他に,変位量を連続的に調べた図が見当たら ない.このことから,図6.5のPC13の変位量と図6.6のPC14の変位量をつなぎ合わせた 図を作成した.その結果を図6.7に示す.図6.7(a)がケーソンの水平変位,(b)が施設の施工 当時の天端高さ,(c)が施設の沈下量である.ただし,PC14 の変位量および沈下量は,図 6.6 をスケールアップして読み取ったので,PC13 側に比べていくらか不正確である.ここ で,図6.6及び図6.7と図6.4の記載にも相違がある.図6.4では,ボーリング地点bに最 も近い計測点の変位量を記載しているが,図6.6および図6.7においては,図6.4の変位に 相当する測点が見当たらない.図6.7には,ボーリング地点bの位置に,黒色の点で図6.4 の変位量をプロットしている.ボーリング地点 b に最も近い測点の位置は不明であるが,

水平変位については,PC13起点からの距離540m付近に測点があると考えると,図6.4と

図6.7(a)は概ね整合する.しかし,法線天端高さについては,図6.4の記載と図6.7(b)で整

合する箇所は見当たらない.そこで,被災直後に撮影された写真を確認してみた.図6.8に 文献2)よりPC13側から見たPC13とPC14の境界付近の写真を示す.文献2)によると被災当 時,PC14は上部工の施工が完了していたとの記述があることから,図6.8の写真の上部工 の有無が,PC13とPC14 の境界であると考えられる.両施設のケーソンの設計天端高さは 同じである.図6.6および図6.7(c)から見ると,PC13とPC14の境界でケーソンに約0.5m の高さの差が生じていることとなるが,図6.8を見るとそれほどの差が生じているようには 見えない.むしろ,PC14の最初のケーソンよりもPC13の最後のケーソンの高さが高いよ

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うにも見える.ケーソンの基礎の捨石の高さは両施設とも C.D.L.-15.8m であって,基礎捨 石は連続している.そこに0.5mの段差が現われることも奇異に思える.このことから,本 研究ではPC14の沈下量として図6.4の0.8mが正しいものとして取り扱うこととする.こ こで,PC14の沈下量を図6.4と図6.6の差の0.5m下げれば,図6.9のように沈下量が連続 することから,PC14の鉛直変位を0.5m下げた値を用いて研究することとする.

(a) PC13およびPC14の水平変位

(b) PC13およびPC14の天端高さ

(c)PC13およびPC14の鉛直変位(沈下量)

図6.7 PC13およびPC14の変位量および地盤改良などの深度

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図6.8 PC13から見たPC14との境界部分の被災状況2)

(a) 水平変位

(b) 沈下量

(c) 地盤改良深さ

図6.9 PC13およびPC13の変位量と地盤改良深さ

140 (2) 水平変位量変化の要因

図6.9に,PC13とPC14の水平変位と沈下量を示している.図6.9(a)が岸壁の水平変位,

(b)が沈下量である.図 6.9(c)には,想定される地盤改良等の深度を示している.黒の実線

は,PC13の設計計算資料から抜き出した基盤と思われる洪積砂層の高さである.赤の実線 は PC13の設計資料から抜き出した床掘下面の高さである.ここから,PC13基点からの距 離で0~約150m(設計資料によると148.8m)の間は,床掘置換砂の直下に粘性土が3.0~5.5m の厚さで残されていることとなる.148.8m~350mまでは粘性土は残されていない.図6.9(c) の赤色の破線は,PC13とPC14の境界部分での床掘下面の擦り付けの想定線である.PC13

とPC 14の床掘置換えの施工図は見出すことができなかったため,同時期に施工されていた

ポートアイランド第 2 期護岸(防波)の床掘置換えと SCP 改良地盤の擦りつけ勾配が 1:2 であったため,このように仮定した.また,黒の破線は SCP 改良地盤の改良下端の想定線 である.図6.4(b)では,SCPの改良深度の下端は-36mとなっているが,Dg1層が-37m付近 まであり,土質柱状図を見てもSCP等の改良地盤とN値に差が見られないことからこのよ うに設定した.改めて,図6.9を見ると,水平変位が変化しているところが3か所あること がわかる.図6.9の右から400m~350m,170m~140mそして70~0mである.最初の400~350m の区間は,先に述べたようにPC13とPC14で地盤改良工法が異なることに基づくものであ ると考えられる.次の170~140mについては,床掘下に残った粘性土の影響が疑われる.最

後の70~0mについては,-8.2m岸壁の存在によって変位が抑制されたものと考えられる.