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第 2 章 海岸保全施設の設計基準

2.2 港湾施設の設計基準

2.2.2 技術基準対象施設

具体的な技術基準対象施設は,港湾法施行令第19条で定められており,次のとおりであ る.

(港湾の施設)

第十九条 法第五十六条の二の二第一項 の政令で定める港湾の施設は,次に掲げる港湾 の施設(その規模,構造等を考慮して国土交通省令で定める港湾の施設を除く.)とする.

ただし,第四号から第七号まで及び第九号から第十一号までに掲げる施設にあつては,港 湾施設であるものに限る.

一 水域施設

二 外郭施設(海岸管理者が設置する海岸法 (昭和三十一年法律第百一号)第二条第一

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項 に規定する海岸保全施設及び河川管理者が設置する河川法 (昭和三十九年法律第百六 十七号)第三条第二項 に規定する河川管理施設を除く.)

三 係留施設 四 臨港交通施設 五 荷さばき施設 六 保管施設 七 船舶役務用施設

八 旅客乗降用固定施設及び移動式旅客乗降用施設 九 廃棄物埋立護岸

十 海浜(海岸管理者が設置する海岸法第二条第一項 に規定する海岸保全施設を除く.) 十一 緑地及び広場

本研究で対象とする護岸は外郭施設に分類される.本研究でケーススタディを行う護岸 は,第3章に示すとおり,港湾区域に所在するため港湾施設となる.

港湾法施行令第19条2と10には『海岸管理者が設置する海岸法 (昭和三十一年法律第 百一号)第二条第一項 に規定する海岸保全施設を除く.』旨が記載されている.更に,港 湾法施行規則第 28 条には,『その規模,構造等を考慮して国土交通省令で定める港湾の施 設』から除かれるものとして,次の記載がある.

第二十八条 令第十九条 及び第二十条 の国土交通省令で定める港湾の施設は,次に掲 げる港湾の施設(令第二十条 の国土交通省令で定める港湾の施設にあつては,第七号を除 く.)とする.

一 ろかいのみをもつて運転する船舶を専ら係留するための係留施設

二 都市公園法 (昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項 に規定する都市公園又 は都市計画施設(都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第四条第五項 に規定する都市 計画施設をいう.)である公園で国が設置するものに設けられる施設として地方公共団体又 は国が建設し,又は改良する係留施設

三 漁業を行うために必要な施設(港湾管理者が建設し,又は改良する港湾施設を除く.) 四 砂防法 (明治三十年法律第二十九号)第一条 に規定する砂防工事及びその砂防工 事にあわせて施行される工事として国土交通大臣又は都道府県知事が建設し,又は改良す る港湾の施設

五 海岸法第二条第一項 に規定する海岸保全施設に関する工事及び同法第十七条第一 項 の規定によるその工事にあわせて施行される工事として海岸管理者が建設し,又は改良 する港湾の施設

六 河川法第八条 に規定する河川工事及び同法第十九条 の規定によるその河川工事に あわせて施行される工事として河川管理者が建設し,又は改良する港湾の施設

七 当該港湾の港湾計画において,大規模地震対策施設として定められておらず,かつ,

当該港湾に関し定められている災害対策基本法第四十条 の都道府県地域防災計画又は同

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法第四十二条 の市町村地域防災計画において定められていない緑地及び広場

港湾の施設の技術上の基準・同解説2)では,これらの法令上の体系を図2.2のように取り まとめている.

図2.2 港湾の施設の技術上の基準の法令上の体系2)

多賀谷5)は,港湾法第56条2の2の技術基準対象施設の範囲について,以下のように詳 解している.

(技術基準対象施設の範囲)

① 水域施設,外郭施設,係留施設

本条一項が「港湾施設」ではなく「港湾の施設」と言う表現を用いているのは,港湾管 理者が設定する港湾区域もしくは臨港地区内に位置する「港湾施設」のみではなく,水域 施設,外郭施設,係留施設については,港湾区域,臨港地区外にあるものでも対象となる という趣旨によるものである.

したがって,五十六条に定める公告水域である港湾にも,企業等の専用岸壁である五十 六条の三の適用がある水域施設の水域施設,外郭施設,係留施設にも適用される.マリー ナ,シーバース等が港湾区域外,公告水域外に立地している場合でも,この技術上の基準 に準拠しなければならない.ただし,水域施設,外郭施設,係留施設のうち,海岸保全施 設,係留施設のうち,海岸保全施設・河川管理施設であるものは,海岸管理者・河川管理 者がその技術基準を担保するので除く.

② 臨港交通施設,荷さばき施設,保管施設,船舶役務用施設,廃棄物埋め立て護岸,(海 岸保全施設ではない)海浜,緑地及び広場

これらは,港湾区域,臨港地区内にある港湾法上の港湾施設である限りで,技術基準適合 性の対象となる.

③ 旅客乗降用固定施設及び移動式旅客乗降用施設

ただし,以上の三類型に該当する施設でも以下の場合は対象外である.

- 櫓櫂(ろかい)のみをもって運転する船舶を専ら係留するための係留施設

- 都市公園又は都市計画施設である公園で国が設置するものに設けられる施設として地

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方公共団体又は国が建設し,又は改良する係留施設

- 漁業を行うために必要な施設(港湾管理者が建設し,又は改良する港湾施設を除く)

- 砂防法に規定する砂防工事等として国土交通大臣又は都道府県知事が建設し,又は改 良する港湾の施設

- 海岸保全施設に関する工事等として海岸管理者が建設し,又は改良する港湾の施設 - 河川工事等として河川管理者が建設し,又は改良する港湾の施設

- 港湾計画において,大規模地震対象施設として定められておらず,かつ,都道府県地 域防災計画・市町村地域防災計画においても定められていない緑地及び広場

多賀谷の詳解によって,港湾区域,臨港地区,公告水域外の海岸保全施設は技術基準対 象施設ではないこと,さらに,港湾区域,臨港地区,公告水域内であっても,海岸管理者 によって設けられる海岸保全施設は,技術基準対象施設ではないことがわかる.このこと は逆に,港湾区域等の中に港湾管理者によって設けられる海岸保全施設は技術基準対象施 設であることを示している,ここで,港湾管理者と海岸管理者が同一の都道府県知事であ ったとしても,法的人格は異なると理解されている.このことから,港湾区域等の海岸保 全施設においては,海岸保全施設の技術上の基準・同解説と港湾の施設の技術上の基準・

同解説の両方が適用されると解されている.