• 検索結果がありません。

第 7 章 櫛形鋼矢板壁の照査手法に関する研究

7.3 櫛形鋼矢板壁の設計のケーススタディ

7.3.3 構造物断面内の作用応力

(1) 櫛形鋼矢板壁を用いた護岸の動的地震応答解析

地盤改良困難区間の護岸断面に,図7.6の櫛形鋼矢板を配置し,動的変形量解析を行った.

解析の標準断面図を図7.7に,解析メッシュの全体図を図7.8に,鋼矢板と地盤との境界条 件を図7.9に示す.鋼矢板と地盤の境界条件は,第5章で提案した設定Dを用いた.

図7.7 櫛形鋼矢板壁断面

178

図7.8 櫛形鋼矢板壁断面解析メッシュ

図7.9 櫛形鋼矢板と地盤の境界条件・固定条件

図7.10には,櫛形鋼矢板壁断面の動的変形解析の結果として,護岸の変形図と櫛形鋼矢 板壁の壁部の最大最小曲げモーメントを示す.第 5 章の動的遠心模型実験などから予想さ れたことではあるが,櫛形鋼矢板壁の設置前と比較して,水平変位量が約1m大きくなって いる.しかし,変形としてはすべり破壊のようなモードは見られず,海側に水平移動する ようなモードである.また,護岸前面の捨石部の傾斜は捨石の安息角(40°)内に収まっ ていた.このことから,水平変位は大きくなるものの護岸が倒壊やすべり破壊を起こす可 能性は小さいことがわかる.最大・最小曲げモーメントの鉛直方向の分布は,動的遠心模 型実験に対する解析値よりも中澤ら1)の振動台模型実験に対する解析の結果に近い.

図7.11には壁部で最大の曲げモーメントが生じる要素(要素番号3392)のモーメント時刻 歴を,図7.12には護岸天端の水平変位の時刻歴を示す.最大曲げモーメントは58.79 秒で 発生しており,67.85秒までは曲げモーメントが300N・m/mを超えるモーメントが現れる,

一方護岸の水平変位は,解析終了の 200 秒で最も大きくなるが,最大曲げモーメントが発 生する59秒付近では最大水平変位の50%程度,モーメントが比較的大きい68秒では最大水

平変位の 80%程度の水平変位が発生している.このことから,最大曲げモーメントと護岸

の最大水平変位を重ね合わせて照査することが適当であると考えられる.

179

図7.10 櫛形鋼矢板壁断面の解析結果

図7.11 最大曲げモーメント発生要素の曲げモーメント時刻歴

図7.12 護岸天端の水平変位の時刻歴

180 (2) 壁部矢板の応力

表7.4に解析結果から得られた壁部の断面と断面力から矢板に作用する応力(軸応力とせ ん断応力)を求めた結果を示す.解析時間の全延長について,要素ごとに最大の作用力と 最小の作用力を抽出し,その値から要素ごとに最大と最小の応力を示している.ただし,

曲げ応力の算定に当たっては,継手効率α1=0.8を考慮7)している.表7.4の結果より,壁 部への作用応力は,曲げモーメントによって発生する圧縮が最も大きいことがわかる.表 7.3 の結果と比較すると,津波の作用による軸応力は地震の作用の約 7%程度であり,この ケースでは,地震作用の方が支配的である.

表7.4 櫛形鋼矢板 壁部の応力

7.3.4 櫛形鋼矢板壁延長方向への作用応力