第1次授業は、「子ども自身が生み出すメタファー表現を生かす授業」である。こ の授業における指導のねらいは次の2点である。
1.子ども一人一人がそれぞれ自分自身の電流概念を形成すること 2.科学の営みの一部に従事し、科学とはどんなものなのかを知ること
また、研究上のねらいとしては、
1.子ども達が、電流を何に見立てているかをとらえ、メタファーを分類し、
電流概念形成にどう影響するか分析する。
2.この授業プログラムにおいて、子どもの電流概念が、どの程度科学的な ものに変容するかを調べる。
ということになる。この授業で得たデータをもとに、第2授受業を構想し、次年 度実施する。
調査の流れとしては、まず事前調査で授業による電流概念の変容をとらえるため の基礎データを取った。
次に、授業において、
● どの程度の数の子どもがメタファーを生成できるか、
● またその妥当性はどうか
を、授業中のノート記録をもとに分析した。また、
● 電流と抵抗に関する心的イメージが何に基づいているか ● 比較的科学的と認められるモデルと比較してどうか
を分析した。
最後に、事:後調査では、事前調査との比較から、電流概念の変容を調べた。
調査の焦点は、次の点である。すなわち
● 子どもが生成したメタファーと、最終的な電流概念との関連を調べ、プラス に働くメタファーとマイナスに働くメタファー、さらに中間的な働きをする メタファーを明らかにした。さらに、その分析を通して、望ましいメタファ 一生成のあり方を探る。
この調査では、事前と事後で同じフォームを使った。そして、この中に描かれた 子供の描画から、メタファーの分類と最終的な電流概念の分類を行った。次に二つ のデータを関連させて分析し、メタファーと電流概念の何らかの関連を見いだそう
とした。さらにそれぞれのメタファーの科学的な理解へ生かせる点・障害となる点 28
を明らかにした。また、どちらとも取れる点については、その条件などを明らかに するなどして、望ましいメタファー生成のあり方を探った。
さらに、子どものメタファーが、授業が進むにつれてどのように変容していった か、その過程を記述することで、教授方法と子どもの概念変容との関わりを分析し た。授業の各場面で、子供は描画を行っている。それらを分析することで、その場 面場面で子供の概念がどう変容していったかをとらえることとした。
第1節 調査・授業対象
1対象児童
宮崎県内の中規模校小学6年生3クラス(95名)
対象児童を小学6年生にした最も大きな理由は、これまで概念を取り扱う理科授 業を小学校において実施することを鑑みると、最も発達段階の高い6年生であるこ
とが望ましいこと、そして中学進学の直前であることから、抽象的な電気概念の学 習への橋渡しという意味があること、の2点である。
また、調査においては3クラスとも対象にした。それぞれのクラスにおける概念 の学習は、成員が当然違っており、生成されるメタファーや話し合いの状況のクラ ス間比較を通して、科学的な電流概念に導く条件等が明らかになる可能性があるか
らである。
2単元
(1)単元名
電流のはたらき(第3次 電流による発熱)
(2)指導計画
次ページ参照
※なお指導過程については、資料1を参照
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1
2 3
4 5
本時のねらい 電流についてギた
とえ」を使って説明 することにより,電 流に関する自分の
考えを明確にし,発 展させる。
電流が流れてい る導線が熱くなる ことから,電流の発
熱作用に気付かせ
る。また,たとえを 用いての説明を、前 時と関係付けるこ
とにより,子ども一
人一人がより納得 のいく考え方に発
展するようにする。
電流の強さによ
って,電熱線の温ま り方が違うことを とらえ,たとえを使 って説明すること で、電流による発熱 に関する考え方を
さらに発展させる。
学習内容及び活動
1 学習問題「電流ってどんなもの?」をつかむ。
2 豆電球は スイッチを入れたら点灯し、切ると消灯す る事象を見て話し合う メタファーを生かした記述
2 評価 友達の発表を聞いて 自分の説明たとえを
振り返る。
(3)
3 4
修正…理由を明らかにして 修正する。
「今日の勉強で」を書いて,本時の学習を振り返る。
次回の学習のめあてを持つ。
1 西畑の学習について話し合う。
学習問題「導線に電流を流すとどれくらい熱くなるのだ
ろうか。」
2 いろいろな金属線に電流を流して熱くなるかどうか調 べる。・エナメル線 ・電熱線 ・スチールウール
3 電熱線が熱くなることを たとえを使って説明する。
前時のメタファーとの関係から説明させる。
4 乾電池の数を増やすとさらに熱くなる事象を見て,話
し合う。
5 「今日の勉強で」を書く。
6 息急の学習について知る。
1 本時の学習について話し合う。
学習問題「電熱線の温まり方と,電流の強さとはどのよう な関係があるのだろうか。」
2 これまでのたとえをもとにして 予想する。
3 実験して確かめる。
4 電流による発熱についてまとめる。
5 「今日の勉強で」を書く。
※ 下線部は、メタファーを生かした授業プログラム
3単元選定の根拠
電気は子どもにとって身近な存在で、子ども達が日常の経験から様々なイメー ジを抱いている自然事象の一つである。ところがその反面、現象を観察すること はできても、電気そのものを観察することはできない。本単元を選定した理由は そこにある。つまり、メタファーを授業に生かそうとした場合、ベースドメイン が学習者の既存の経験に共鳴するかどうかに依存することを考えれば、電気が子
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ども達にとって比較的身近であることは重要である。子どもが表現する電流に関 するメタファーは、様々な日常生活上の経験が反映され、子どもなりの論理を背 景にした学習活動が可能になるのではないかと想像できる。
電気に関する概念形成を取り上げた研究は非常に多い。その中で、対象が直接 観察できないことから、子どもの概念形成が容易に進まないとの指摘がこれまで
になされてきた。だからこそメタファーを生かす可能性がある。直接現象を見せ ても、電気に関する子どもの素朴概念は容易に転換しない。現象そのものの背後 にある電流の振る舞いや回路の各部分のはたらきを思い描き、メタファーの形で 表現し、話し合いの道具として位置づけることで、電気に関する概念形成が促進
される可能性があると考えられる。
第2節 事前調査
1調査の目的及び方法
この事前調査では次のような目的・方法で実施した。
● 授:業による電流概念の変容をとらえるための基礎データとして、事前の子ど も達の電流概念をとらえる。特に流れる方向、豆電球で消費されるのか否かと いう観点から、衝突説・減衰説・循環説・単極説などに分類した。
● また、電流による発熱現象に関する概念が、メタファーを位置づけた学習活 動により、どのように変容するかを調べた。
● メタファーの変容をとらえるための基礎データとして、事前に子どもが電流 をどのようなものに見立てているかを調べた。この中に描かれた電流の形態を 見て、子どもの電流に関するメタファーが何に基づいているかをとらえ、分類
した。
※ 実際に使用した調査フォームは、資料2参照
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