韓国語の代表的な伝聞表現は‘-다고 하다(takohata)’、‘-대(tay)’であるが、日本 語伝聞表現「そうだ、ようだ、らしい、という、って、とか、とのことだ、ということだ」8 つに当たる韓国語伝聞表現は、‘-다고 하다(takohata)’、‘-대(tay)’を含め少なくとも
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3756種にのぼり、①伝聞に用いられる表現の数が多く、②複雑な縮約・省略段階を経ていて、
③動詞・名詞・形容詞といった述語の種類により異なる接続ルールがあり、④文の種類を、
平叙文・命令文・勧誘文・疑問文の四つのうちどれかに区別しなければならない、⑤膠着語 ならではの特徴が伝聞表現にも現れ、接辞が複雑に重なっている。このように韓国語伝聞表 現は独特な接続ルールを有している上に、複雑な縮約・省略過程を経て文法化されている。
当然これらの表現は日本語伝聞表現と 1 対 1 の関係を成さないため、ただ単に日韓両国語の 伝聞表現を対照するだけでは物足りないと言える。
また、前述した通り、韓国語はムードが存在しテンスの役割を兼ねているため、‘-더(te)-’や‘-던(ten)-’は、テンスを表しながら、話し手の過去の経験・体験を表すムー
ド形式でもある。通常の報告にも用いられ、‘-더라(tela)’、‘-던데(tentey)’のように文終結形に組み込まれると話し手の過去の感覚的経験・体験を、‘-다더라(tatela)’、‘-다던데(tatentey)’は、他人の言葉、つまり伝聞を表すが、周知の通り日本語伝聞表現は
「(し)そうだ」、「(する)そうだ」以外にこのような形態的繋がりは見られない。
こ れ ま で の 先 行 研 究 は モ ダ リ テ ィ の 体 系 確 立 の み を 重 視 し 、 ‘ 더라(tela) 、
-다더라(tatela)’、‘-더군(tekwun)、-다더군(tatekwun)’ に組み込まれているムード形
式‘-더(te)-’や、一部の文終結モダリティ形式‘-구나(kwuna)、-네(ney)、-지(ci)’に のみ主眼が置かれ、文終結モダリティ表現の研究は疎かになっていると言っても過言ではない。しかし例えば‘-더(te)、-던(ten)’や‘-더라(tela)、-던데(tentey)’の意味が‘-다더라(tatela)、‐다던데(tatentey)’にそのまま引き継がれるかというと、必ずしもそう
ではない。そのため、少なくとも伝聞表現においての話し手の表現意図を把握するためには、ムード形式に対する考察だけでは不十分であると思われ、文末伝聞表現からムード形式を分 離せず、一つの固まりとしてコミュニケーションの場という伝聞の特殊な状況を考慮すべき であり、このような広義の意味のモダリティ研究が必要だということを指摘したい。
今回、日本の小説の日韓対訳文庫約 40 冊、日本の映画 10 本の韓国語訳、韓国映画 10 本 の日本語訳、韓国ドラマの日本語訳(10 巻/200 本)から、日本語伝聞表現「そうだ、ようだ、
らしい、という、って、とか、とのことだ、ということだ」に対応する韓国語伝聞表現を以
56 韓国語伝聞表現は平叙文以外にも疑問・命令・勧誘が可能であるため、多くの伝聞表現が‘-다/냐/자/라(ta/nya/ca/l a)’と、それぞれ4つのパターンを持つ。そのため、例えば‘-다고 하다(takohata)’においても‘-냐고 하다/자고 하 다/라고 하다(nyako hata/cako hata/lako hata)’が可能であるため、韓国語伝聞表現の数はさらに増える。本稿では これらの代表格として‘-다고 하다(takohata)’のみ提示し、韓国語伝聞表現の量的負担を最小限にしている。さらに 本稿では37の韓国語伝聞表現を取り上げているが、これは用例収集において日本語伝聞表現8つに対応していた韓国語伝 聞表現が37あったということであり、韓国語伝聞表現が全体が37であるという意味ではない。
138 下の<表 13>のように纏めた。
<表 13. 韓国語伝聞表現>
다고 (말)하다
(tako (mal)hata) 대(tay) 답니다(tapnita) 단다(tanta) 다고 하던데
(tako hatentey) 다던데(tatentey) 다던가(tatenka) 다데(tatey)
다고 하더라고
(tako hatelako) 다더라고(tatelako) 다더라(tatela) 다고(tako)
다고 하네
(tako haney) 다네(taney) 다고 듣다 (tako tutta)
다고들 하다 (takotul hata)
다고 하는데
(tako hanuntey) 다는데(tanuntey) 다는 거다 (tanun keta)
다고 하는 거 있지 (lako hanun ke issci)
다지 뭐야
(taci mweya) 다지(taci) 다더구만(tatekwuman) 다나(tana), 다고 하더군
(tako hatekwun) 다더군(tatekwun) 다고 하니까
(tako hanikka) 다니까(tanikka)
다며(tamye) 다면서(tamyense) 다고 그러다 (tako kuleta)
다 그러다 (ta kuleta)
다고 해서
(tako hayse) 대서(tayse) 다잖아(tacanha) 모양이다 (moyangita)
것 같다 (kes kathta)
上記の<表13>のように韓国語伝聞表現は‘-다고 하다(tako hata)’で代表される複合語 尾伝聞表現から、‘-대(tay)’で代表される縮約形、‘-다더라고(tatelako)’のような後 文省略形はもちろん、‘-다는 거다(tanun keta)’のような連体修飾形、‘-다잖아(tacanh a)’のようなモーダル性の強い複合形伝聞表現などさまざまな形態がある。
<表13>の表現を補足すると、韓国語伝聞表現は、引用から由来しているため、その形態 も引用を基本とするが、韓国語の引用・伝聞表現は述語の品詞により違う形をとるため、動 詞(‘-ㄴ/는(n/nun)-’)、形容詞(‘ø’)、名詞(‘-이(i)-’)を文終結形の前に介在させる
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必要がある。その上、文の種類を平叙文(‘-다(ta)’)、疑問文(‘-냐(nya)’)、命令文 (‘(-으)라((e)la)’)、勧誘文(‘자(ca)’)の四つに区別する必要がある。さらに、伝聞表 現はその後部に引用格助詞‘-고(ko)’と補助動詞‘-하다(hata)’を加えるのが韓国語の引 用・伝聞の基本的な形になる。以上を表で纏めると以下の<表14>のようになる。
<表 14. 韓国語の引用・伝聞の基本構造>
文型 動詞 形容詞・存在詞 指定詞
叙述文 -ㄴ/는다고 하다 -다고 하다 -이라고 하다 疑問文 -느냐고 하다 -냐고 하다 -이냐고 하다 命令文 -(으)라고 하다 存在詞있다のみ可能 × 勧誘文 -자고 하다 存在詞있다のみ可能 ×
さらに、日本語の伝聞「そうだ」、伝聞用法「ようだ」、「らしい」などの推論由来の伝聞表 現は、前接に「命令・疑問・勧誘」が入ることができないのに比べ、韓国語伝聞表現は引用か ら由来しているため、動詞の場合‘-대(tay)’、‘-답니다(tapnita)’を含む殆どの表現が
‘
-다(ta)
’ 以 外 に ‘-래/재/냬(lay/cay/nyay)
’ 、 ‘-랍니다/잡니다/냡니다(lapnita/capnita/nyapnita)’のように「命令・勧誘・疑問」をとること
ができるため、韓国語は形式的には引用と伝聞の境界がはっきり分かれていない特徴がある が、本稿では便宜上、韓国語伝聞表現の代表形として平叙文の‘-다(ta)’形のみ提示して いる。結論から先に述べると<表 13>の韓国語伝聞表現は、大きく分けて、四つの意味機能が見 られる。まず、伝聞の第一義である「①情報伝達」の機能をなしているのは、<表 13>の表現
全てであるが、加えて②「情報確認:-다며(tamye)、-다면서(tamyense)」、③「情報要求:-다지(taci)」、④「意外性と関りを持つ:-다네(taney)、-다면서(tamyense)、-다며(tamye)」
と、単なる情報伝達以上の意味機能を兼備している。そのため、韓国語伝聞表現においては 以上の伝聞表現の四つの意味機能と、伝聞表現の使用における社会的注意(敬語・タメ口)が 最大限充足できる形で、韓国語伝聞表現をカテゴリー化し、その上で、37 の表現を 「コミ ュニケーションの場における話し手の表現意図」という側面から、①情報共有の確保手段(自 己情報か他者情報か)、②情報の入手経路、③情報に対する話し手の心的態度を表す戦略(客 観的・不確か・曖昧など)、④情報が聞き手に及ぼす影響(情報判断への介入可能性)を考察 する。 ただし、上述したように日本語伝聞表現に関わる助詞、助動詞はムード形式をとら
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ないのに比べ、韓国語伝聞表現はムード形式をとる上に、韓国語伝聞表現においてはその殆 どが引用から由来しているため、<表 14>のように終結語尾‘-다/자/냐/라(ta/ca/nya/la)’
の介在が必要であり、情報の入手経路が他者の話によるものであっても、書籍など資料によ る も の で あ っ て も い い 。 し か し 、 ‘ -다고
듣다(tako tutta) 、 -다며(tamye) 、 다면서(tamyense) ’のような一部表現に関しては平叙文のみ伝聞に用いられ、書籍など資
料による情報伝達にはあまり用いられない。よって、この章の考察においては、‘-다/자/냐/라(ta/ca/nya/la)’形をとる伝聞表現に おいては、情報の入手経路は問題とせず、①情報共有の確保(自己判断か他者判断か)、②話 し手の心的態度を表す戦略(客観的・不確か・曖昧など)、③情報が聞き手に及ぼす影響に重 点を置いて確認するが、‘-다고 듣다(tako tutta)、-다며(tamye)、다면서(tamyense) ’