第 4 章の考察を通して、日本語伝聞表現は推論から由来するものと引用から由来するも の、助詞から由来するものの 3 種類があり、推論から由来しているものは他から得た情報に 話し手の主観が介入し、話し手の推論のように提示する(「そうだ」、「ようだ」、「らしい」)こ とができる反面、引用から由来しているものは他から得た情報に対し、客観性を維持しよう とする傾向が強い(「という」、「って」、「ということだ」、「とのことだ」)。また、助詞から由 来するものは情報を不確かに提示する(「とか」)。しかし、他から得た情報を話し手の推論の ように提示する場合であっても、伝聞用法「ようだ」のように情報源の提示が必要なことから、
日本語伝聞表現は客観性を維持しようとする傾向が強い特徴があると言える。以上を纏める と<表 11>のようになる。
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<表 11. 日本語伝聞表現の推論表現と伝聞表現における話し手の表現意図>
推論・伝聞・伝聞用法 特 徴 証拠依存 話者関与
伝聞「とのことだ」
伝聞機能のみを果たしているが、情報と距 離を置く客観的な伝聞表現であるため、情 報の真偽判断は聞き手に委ねられる。主に 新聞やニュース、ビジネスの場、メッセー ジなどで用いられる。
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・ 伝聞用法
「ということだ」
伝聞用法「ということだ」は、話されたも の、記録によるものはもちろん、話し手に よる情報の内容整理にも用いられることか ら、伝聞「とのことだ」よりは柔らかい伝聞 表現である。
伝聞用法「という」
主に書き言葉に用いられ、他から入手した 情報をできるだけ入手した形のまま伝え る。話し手の情報判断は保留され、情報の 真偽判断は聞き手に委ねられる。
伝聞用法「って」
他から入手した情報を直接引用に近い感じ で用いるが、「という」に比べて用法が多岐 に意味拡張しており、主に話し言葉で用い られることから、終助詞や情意を含む表現 と共起しやすい。
伝聞「そうだ」
「そうだ」の前文に命令・疑問・勧誘・丁寧 形が入らず、話し手は情報の再構築に関わ っている。伝え聞いた情報にある程度確信 を持ち、肯定的姿勢で伝える。
推論・伝聞用法
「らしい」
視覚・聴覚・内的考察・外的証拠による考 察、内面的考察・資料など文字化されたも の・人の話による思考的判断に用いられ る。証拠への依存を暗示している客観的推 論判断であるが、証拠を不確かなものとし て提示しているため、伝聞用法の「らしい」
においても、情報に対する不確かという話 し手の表現意図が窺える。
伝聞用法「とか」55 話し手は情報の真偽にはあまり興味を持っ ておらず、ただ情報を不確かなものとして
55伝聞用法 「とか」と「らしい」の位置づけに関しては、 「とか」は、不確かでありながらも他からの情報を述べていることが 予想されるのに対し、伝聞用法「らしい」は、話し手の推量であるか伝聞であるかさえ不確かに提示しているため、「と か」が「らしい」より客観的伝聞用法であると思われる。
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提示している。具体的な用法を以下の三つ に分けることができる。
①ぼかし②責任回避・距離感・衝突回避
③情報と聞き手を考慮し、聞き手のフェイ スを保つ。
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・ 高 推論・伝聞用法
「ようだ」
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・内的感覚・内的 考察・資料など文字化されたもの・人の話 といった証拠が、話し手の認識において内 面化されたものとして言語化される。主観 的判断・思考的判断に用いられるため、伝 聞用法「ようだ」においても、他から入手し た情報に話し手の主観が介入している。
推論「そうだ」
視覚・聴覚・内的感覚・内的考察・人の話 による直観的気づきを表しているため、証 拠の言語化まで時間的に短く、弱思考・弱 証拠による主観的推判断である。
以上のように推論「そうだ」>「ようだ」>「とか」>「らしい」>「(する)そうだ」>「って・と いう」>「ということだ」>「とのことだ」の順に、推論表現から伝聞表現になり、情報判断の 主体が話し手から聞き手へ移ることになる。それにより情報判断への話し手の主観の介入可 能性が少なくなり、情報への話し手の関与も低くなる。以上を図式化すると、次のページの
<図20>のようになる。
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「(し)そうだ」 > 「ようだ」 > 「とか」 > 「らしい」 > 「(する)そうだ」 > 「って・という」 > 「ということだ」 > 「とのことだ」
推論 引用に近い
自己判断 他者判断
主観的判断 客観的判断
話し手中心 聞き手中心 話者関与(高) 話者関与 (より低)
<図 20. 日本語伝聞表現における推論表現から伝聞表現までの情報とモダリティ>
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