5.2 伝聞表現の文法範疇と意味範疇
5.2.1.2 接続語尾形伝聞表現
‘-다며(tamye)、-다면서(tamyense)’は聞き手が第 3 者ではなく、もとの話し手である 場合も成立するが、これについては本稿の 5.4 で詳しく確認することとし、ここでは聞き手 が第 3 者である伝聞用法のみ確認することにする。
これからは、伝聞表現の文法範疇の中で<表 17>の接続語尾形伝聞表現‘-다며(tamye)、
-다면서(tamyense)’を縮約前の形に復元して、果たして復元できるのか、また、復元した 元の表現と縮約・省略形が同じ意味を成すのかを確認するとともに、これら伝聞表現の情報 共有の確保手段、話し手の心的態度を表す戦略と、情報が聞き手に及ぼす影響を確認する。
<表 17. 伝聞表現の文法範疇-接続語尾形伝聞表現>
文法範疇・
接続語尾形 伝聞表現
다며(tamye) 다면서(tamyense)
(13)‘–다며(tamye)’
a.株主総会があるそうよ。(コ)
김 변호사 말이 주주총횐가 뭔가 할거라며?
kim pyenhosa mali cwucwuchonghoynka mwenka halkelamye?
b.マ検事また手柄だって?(ヶ)
마검사 또 한 건 했다며?
152 makemsa tto han ken haysstamye?
c.追加シーンが入ったと。(シ)
추가로 뭐 찍을 거 생겼다며.
chwukalo mwe ccikul ke sayngkyesstamye.
(14)‘–다고 하며(tako hamye)’
a.*김 변호사 말이 주주총횐가 뭔가 할거라고 하며?
kim pyenhosa mali cwucwuchonghoynka mwenka halkelamye?
b.*마검사 또 한 건 했다고 하며?
makemsa tto han ken haysstako hamye?
c.*추가로 뭐 찍을 거 생겼다고 하며.
chwukalo mwe ccikul ke sayngkyesstako hamye.
韓国語の伝聞表現はその殆どが引用表現から由来しているため、引用と伝聞の境界をは っきり画し難い特徴があるが<表 17>の‘-다며(tamye)、-다면서(tamyense)’の場合、伝聞 で用いられた際には常に平叙文で、疑問・命令・勧誘形が現れないのが特徴である。
これまで伝聞は情報の受け渡しにのみ関わるとされてきたが、‘-다며(tamye)’は、話 し手の聞き手に対する情報共有認識が窺える。‘-다며(tamye)’の話し手の情報共有の確保 手段は他から得た情報の伝達であるが、主に話された情報の伝達に多用される。話し手の心 的態度を表す戦略は情報に対する驚き・信じられない気持ち・不確かさから、情報確認を求 めることにある。ただし、‘-다며(tamye)、-다면서(tamyense)’の場合、次の二つに分け ることができる。
まず、①聞き手が話し手の用いる情報の当事者である場合は、単なる情報伝達より情報 確認の意味が強く、命令・疑問・勧誘形が可能である、②聞き手が話し手の用いる情報の当 事者でない場合は、平叙文で現れ、必ずしも聞き手に答えを求めているのではなく、話し手 が情報を何らかのルートで入手し知っているということの表明である。
しかし、上記の①の情報を当事者に確認するのは、情報の伝達という伝聞の基本的機能 を果たしているとは思えないため、本稿では伝聞としない64。さらに聞き手の立場から考え ると、聞き手に情報共有認識がある場合は話し手に聞かれたことに答える場合(逆に情報を
64 1.4.3を参照。
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提供する)もあるが、情報の共有認識がない場合は情報を不確かなものとして受け入れ、情 報の真偽判断に介入できるが、その程度は強くない。‘-다며(tamye)’は、’-고 하(ko ha)-’が復元できないことから、すでに文法化が進んでいると判断され、伝聞表現の文法範 疇とする。
(15)‘-다면서(tamyense)’
a.従弟が携帯をなくしたそうね。 (ヤ)
태무 씨 사촌 동생 핸드폰 잃어버렸다면서요?
thaymwu ssi sachon tongsayng hayntuphon ilhepelyesstamyenseyo?
b.ユン先生の噂は聞いてるぞ。研究員がやめていくってな。 (ヤ)
나도 윤지훈선생 이야기 다 들었거든. 연구사들이 남아나질 않는다면서.
nato yuncihwunsensayng iyaki ta tulessketun. yenkwusatuli namanacil anhnuntamyense.
c.警察署でも飛びかかったとか。(カ)
가해자가 경찰서에서도 자기를 죽이려고 했다면서?
kahaycaka kyengchalseeyseto cakilul cwukilyeko haysstamyense?
d.最高裁の判決に不満があるそうだな。(カ)
대법원에서 판결이 확정된 사건을 무죄라고 주장한다면서?
taypepweneyse phankyeli hwakcengtoyn sakenul mwucoylako cwucanghantamyense?
e.同じ写真をお持ちだと聞きました。(ヤネ)
똑같은 사진을 가지고 계시다면서요.
ttokkathun sacinul kaciko kyeysitamyenseyo.
(16)‘-다고 하면서(tako hamyense)’
a.*태무 씨 사촌 동생 핸드폰 잃어버렸다고 하면서요?
thaymwu ssi sachon tongsayng hayntuphon ilhepelyesstamyenseyo?
b.*나도 윤지훈선생 이야기 다 들었거든. 연구사들이 남아나질 않는다고 하면서.
nato yuncihwunsensayng iyaki ta tulessketun. yenkwusatuli namanacil anhnuntamyense.
c.*가해자가 경찰서에서도 자기를 죽이려고 했다고 하면서?
kahaycaka kyengchalseeyseto cakilul cwukilyeko haysstako hamyense?
d.*대법원에서 판결이 확정된 사건을 무죄라고 주장한다고 하면서?
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taypepweneyse phankyeli hwakcengtoyn sakenul mwucoylako cwucanghantako hamyense?
e.*똑같은 사진을 가지고 계시다고 하면서요.
ttokkathun sacinul kaciko kyeysitako hamyenseyo.
‘-다면서(tamyense)’も引用から由来しているにも拘らず、伝聞として用いられる際に は命令・疑問・勧誘形をとらない。‘-다면서(tamyense)’を用いる際の話し手の情報共有 の確保手段は、他から得た情報の伝達であるが、主に話された情報の伝達に用いられる特徴 がある。이필영(1992:154)では、‘-다면서(tamyense)’を‘-고 하(ko ha)-’非還元の融 合形であり、終結形として現れ、命題に対する事実性を確認するときに用いられるとした。
上述した‘-다며(tamye)、-다면서(tamyense)’の情報確認の背景にある、話し手の表現 意図による心的態度を表す戦略は、情報に対する驚き・信じられない・不確かといった話し 手の気持ちを明示することである。(13.a,b)、(15.c,d)も、驚き・信じられない・不確かと いった話し手の気持ちから情報の確認を求めているが、その程度は必ずしも強いものではな い。しかし、聞き手の立場から考えると、聞き手に情報共有認識がある場合は情報を提供す る場合もあるが、情報共有認識がない場合は、話し手により提示される情報を不確かなもの として認識することになり、聞き手は情報の真偽判断に介入できる。
以上用例(1)~用例(16)の伝聞表現は、縮約・省略されていると思われる‘-고 하(ko ha)-’を復元しにくく、‘-단다(tanta)、-대(tay)、-다더라(tatela)、-답니다(tapnita)、
-다나(tana)、-다지(taci)、-다며(tamye)、-다면서(tamyense)’の形で文法化が進み、意 味の移動が文法的構造変化、音韻変化を起こしたと思われることから、これらを伝聞表現の 文法範疇とする。
以上の表現は、韓国語伝聞表現の四つの機能と言語使用の社会的注意も満たしている。
つまり、これらの表現は伝聞の第一義である「①情報の受け渡し」を基本として、「②情報の 確認:-다며(tamye)、-다면서(tamyense)」、「③情報の要求:-다지(taci)」、「④意外性表 示:-다며(tamye)、-다면서(tamyense)」を満たしている。さらに、情報伝達時の社会的注意 に関しては、‘-답니다(tapnita)、-단다(tanta)’が対応でき、情報と話し手の関係という 面では、‘-대(tay)、-다더라(tatela)、-다나(tana)’が情報と距離を置きたいという話し 手の表現意図を表していると考えられる。
ここまでの考察を纏めると、これまで伝聞は情報の受け渡しにのみ関わるとされてきた が 、 韓 国 語 伝 聞 表 現 は 情 報 の 受 け 渡 し だ け で は な く 、 ‘ 다며(tamye) 、
다면서(tamyense) ’ を 用 い て 情 報 を 確 認 ・ 意 外 性 を 表 す こ と が で き 、 さ ら に 、 ‘
-
다지(taci)’を用いて情報伝達に加え、より詳細な情報を要求することもできる。また‘-155
다며(tamye)、-다면서(tamyense)、-다지(taci)’を用いる際の話し手は、聞き手と情報共
有認識がある上に、情報を不確かなものと認識していると言える。そのため、情報を確認、あるいはより正確な情報を聞き手に要求しているものの、情報確認・情報要求の程度は必ず しも強いものではない。また聞き手の立場から考えると、情報共有認識がある場合は情報を 提供する場合もあるが、情報共有認識がない場合は情報を不確かなものとして認識し、情報 の真偽判断に介入することになるが、その程度は必ずしも強いものではない(情報共有認識 の詳細は 5.4 を参照)。