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手話通訳に関する制度

ドキュメント内 ろうあ連盟表紙 (ページ 57-60)

第Ⅲ章 イギリス:情報・コミュニケーション保障の現状と課題

3. 現在の手話通訳派遣のしくみ

3.1 手話通訳に関する制度

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・同僚への障害者に関する研修費

例)会社に障害者が雇用される場合、会社スタッフの障害理解のための研修

・就職面接でのコミュニケーション支援

ろう者は職場で手話通訳等が必要な場合、自分で「就労へのアクセス支援事業」(ATW)

を管轄している事務所である(就労支援センターに福祉機能を追加した)「ジョブセンタ ー・プラス」(Jobcentre Plus)の「ATW運営サポート課(Access to Work Operational

Support Unit)」に行く。そして申込書に記入の上、ATWの面接を受ける。その結果、

一週間に何日、何時間ATWの支援が必要なのかが判断される。上限はあるが、上限を超 えない範囲は、その範囲で自分で必要なサービスを利用することができる。

ATWで活動する手話通訳については、フリーランスの手話通訳者に依頼することもあれ ば、ろう者が直接雇用する場合もある。日本のように手話通訳者が手話通訳派遣事業を行 っている自治体またはその委託団体に1ケ所に登録されている訳ではない。例えば、自分 で手話通訳者を選択し、雇用した場合、その手話通訳者から請求された費用を ATW に請 求し、ATWから手話通訳者に費用が支払われることになっている。この制度の良い面は、

自分の好きな手話通訳者、つまり、自分の癖を把握した通訳者や、職場に毎回新しい通訳 者が来るのではなく、一から説明する必要のない慣れた通訳者を選べることにある。

聴覚障害者は、事務支援や会議、カンファレンスのつなぎ役として、手話通訳者や、ま たは(手話通訳等の専門的な訓練や資格のない)コミュニケーション・サポート・ワーカ ー(Communication Support Worker: CSW)を利用することができる。ただし、実際に は、手話通訳者よりコミュニケーション・サポート・ワーカー(CSW)の方が安価なため、

CSWで対応しているケースも多いようである。政府は、CSWのことを「手話通訳者」と いう言い方をしていないが、実情は手話通訳者として活動している状態である。

具体的な利用については、例えば、仕事の研修会を開催する場合、舞台上の手話通訳 費用は主催者が持つが、参加するろう者が、休憩などの時間で他の人と話すために手話 通訳を頼みたい場合は、ろう者本人が「就労へのアクセス支援事業」(ATW)を利用する。

また、主催者で手話通訳を配置できない場合には、ろう者がATWを使えるように行政と 交渉するケースもある。その結果、ATWの支給対象となる場合と、ならない場合もある。

手話通訳の必要を行政がどのように理解するかにかかっている。

テレビ電話(インターネット通信含む)を利用した手話通訳サービスである「サイン ビデオ」(SignVideo)の費用も ATW で支給される。例えば、以下のような活用がなさ れている。①英語がうまく書けないろう者が、テレビ電話で書きたい内容をオペレータ ーに伝え、その内容をオペレーターが文章化する。②ろう者が会合に出る場合、サイン ビデオを通して会合の内容を手話で伝え、ろう者が発言する際は、オペレーターが英語 に通訳をする。③遠隔通訳も可能で、誰かと電話をしたい場合は、連絡ができる。

サインビデオは、比較的短時間の依頼内容の者が対象となり、費用は実質的にかかっ

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た時間により計算される。手話通訳者の派遣を依頼する場合は、最低3時間分の費用が かかることになっている(例えば、手話通訳時間が30分であっても、3時間分の費用が かかる)。そのため、政府は、費用が安いサインビデオの活用を望んでいるが、サインビ デオによる情報保障は、短時間のものに限定されている。このようなこともあり、サイ ンビデオの会社が立ち上がった際、手話通訳者の仕事がなくなるのではないかと懸念の 声が出たが、コミュニケーション支援における役割が異なるため、実際の手話通訳派遣 が減ることはなかった。

以上のように、ATWは障害者の職場支援のために設けられた制度である。多くの雇用 主は、障害者を雇用するコストが高いと誤解をしている。ATWを使えば会社の費用負担 がないことなどを説明し、障害者就労についての理解を進める必要がある。

ATWについては、2009年度に全体で 3万7290人の利用者がいたが、2011年度には 3万750人にまで減った。ここまで利用者数が減少した理由は、政権交代のためATWの 支出抑制がなされたこと、不況のために解雇された障害者が多くでたことによると考え られる。障害者が働けるよう雇用対策の充実が求められている。

(2) 障害学生手当(DSA)103

障害・精神的問題、慢性疾患、失読症等の特別な学習障害などを持つ、イングランド に住む高等教育(大学の学部・大学院)の学生に対して、障害学生手当(Disabled Student’s Allowance:DSA)が給付される。この手当は、所得調査はなく、個別のニー ズに基づいて給付されるものであり、貸付ではないので返済の必要もない。「一般手当」

(General Allowance)の給付は、上限が年1724ポンド(フルタイム学生の場合)とな っている。専門的な設備などが必要な場合は。「専門的対応手当」(Specialist Equipment

Allowance)として上限5161ポンド(全コース)が支給される。ただし、これも「就労

へのアクセス支援事業」(ATW)と同じように、「ニーズ・アセスメント」が行われて、

手当額が決定され、多くの場合はこの上限額以下になる。学生の場合は、この障害学生 手当を利用して、手話通訳を利用することになる。

(3) 個人自立給付(PIP)104

個人自立給付(Personal Independence Payment:PIP)は、2013年4月8日より障 害者生活手当(Disability living allowance:DLA)に置き換って実施されている、16歳 から64歳までの障害または慢性疾患を抱えている人に対して、障害や慢性疾患により追 加的な費用がかかっていることに対して金銭給付をする制度である。個人自立給付は2 部構成(日常生活(Daily Living Component)と移動(Mobility Component))になっ

103 イギリス政府の施策情報サイトを参照した。

https://www.gov.uk/disabled-students-allowances-dsas

104 イギリス政府の施策情報サイトを参照した。https://www.gov.uk/pip

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ており、また、ニーズ・アセスメントに基づいて2つのレベル(標準(Standard)と高 度(Enhanced))になっており、全部で4つの給付がある。

日常生活部分については、標準が週53ポンド、高度が週79.15ポンドになっている。

移動部分については、標準が週21ポンド、高度が週55.25ポンドとなっている。ただし、

4週毎にまとめて支給されるので、上記の数字に4倍した金額が支給されることになる。

この日常生活部分の「コミュニケーション」の困難を理由として、ニーズ・アセスメン トに基づいて必要と判断された場合は、聴覚障害者にも個人自立給付が支給される。こ れによって、日常生活でコミュニケーション支援が必要な場合には、この給付を利用し て手話通訳等を利用することができるようになる。

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