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ビデオリレーサービス:サインビデオ SignVideo の事例

ドキュメント内 ろうあ連盟表紙 (ページ 63-68)

第Ⅲ章 イギリス:情報・コミュニケーション保障の現状と課題

3. 現在の手話通訳派遣のしくみ

3.3 ビデオリレーサービス:サインビデオ SignVideo の事例

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を行っている。ドイツでは、ドイツテレコムの通信会社がビデオリレーサービスの費用を 支払っているが、他の国では政府が払っている。

EU は自由市場なので、もしどこかの国で電話会社が負担すれば良いと決めるようなこ とがあれば、他のEU加盟国がそれに追随する危険がある。

イギリスでは、ビデオリレーサービスについての費用負担について、しっかりとイギリ ス政府が対応するということにはなっていない。ただし、「就労へのアクセス支援事業」

(ATW)などの障害者制度を利用することによって、対応することができる。

たとえば、就労へのアクセス支援事業(ATW)を通して、就労場面で手話通訳を利用す ると、サインビデオを使って、①健聴者と電話をすることができる、②電話会議をするこ とができる、③同僚やマネジャー、顧客と打ち合わせをすることができる、④いつもの手 話通訳者が休みのときにバックアップすることができる、⑤書かれた英語からイギリス手 話へ、またはその逆への翻訳をすることができる、⑥話すことができる聴覚障害者が音声 を使って話をし、それの返事を手話でおこなう「ボイス・キャリー・オーバー」を利用す ることができる。

ただし、聴覚障害者が、自分で職業上このようなサービスが必要であることを行政のニ ーズ・アセスメントの担当官に説明できるかどうかが重要な課題である。それがきちんと 説明できない人は、支援の必要性を理解されずサービスが利用できない。

なお、ATW以外にも、障害学生手当(DSA)や個人自立給付(PIP)を活用して、サイ ンビデオを利用することができる。たとえば、重複障害のため手紙が読めない人から、手 紙を読んでほしいとの依頼が入れば、手紙の内容を手話にして伝え、ろう者が手話をした 内容を文字化して返事の手紙を書くこともある。このような生活に関するものは、個人自 立給付(PIP)を活用することもできる。

2003年コミュニケーション法で、通信コミュニケーションの保障は健聴者だけでなく 聴覚障害者等を含めた全ての人の情報保障をすると規定した。

(3) サインビデオの利用者

サインビデオの1ケ月平均利用者数は約 1200 人である。ただし、夫婦やろう学校など が利用者の場合は、利用者が複数いても1人分とカウントするので、延べ利用者はもっと 増える。ただし、イギリスには約1万7000人のイギリス手話(BSL)ユーザーがいると されており、それを踏まえると利用者数はかなり少ない。その理由は、行政の公的資金を 利用してサインビデオを利用するには、面接を受けて、ニーズ・アセスメントを受けなけ ればならないため、手続きが煩雑であることが要因と考えられている。ビデオリレーサー ビスがコミュニケーション法の改正できちんと位置づけられれば、もっと利用できるよう になると考えられる。

利用者では、40歳以上の利用者が多い。当初は若い聴覚障害者の利用が多いと想定して いたが、予想以上に利用者の年齢層は高かった。難聴の利用者も少しはいる。難聴者の場

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合は、口話を読み取る時に音声と通訳者の声が重なって、伝わりにくくなるので、手話と は別の工夫が必要となる。

利用者のサービスへの不満等に関しては、苦情処理制度で対応している。手話の中継と はいえ、時にチェックが必要になる場合もある。イギリスでも地域によって手話が異なる。

手話通訳者のオペレーターが確認したつもりでも通じていない場合があり、1年に1、2 回程の苦情がある。ビデオリレーサービスをするにしても、地方の独自の手話表現や高齢 者の手話は確認がとりにくいことが多い。

(4) サインビデオの手話通訳者

① 手話通訳者

サインビデオの手話通訳オペレーターの資格は、手話通訳者の登録機関である「ろう 者・盲ろう者コミュニケーション専門職全国登録機関」(NRCPD)の登録が必要になる。

これは聞こえない人の専門コミュニケーション支援を行うプロの全国登録システムで、こ こに登録することは、専門職としての手話通訳資格があると理解される。登録すると専門 性を示すバッジがもらえる。NRCPDのホームページを見ると手話通訳者が登録されてい るかどうかを確認することができる。NRCPDでは、手話通訳者等が技術不足の場合は再 研修を行い、最悪の場合登録を抹消される。

② 顔の見える利用者との関係

ビデオサインでは、ビデオリレーサービスは地域の手話通訳と同様と考えている。手話 通訳者は機械の中のロボットではない。アメリカと同じような問題に陥らないか注意しな ければならない。アメリカはコールセンターに繋ぐまで誰が担当者として手話通訳者が出 てくるのか分からない。アメリカでは、大きなコールセンターに多くの通訳者がいるが、

その結果、コールセンターに手話通訳者が取られ、日常的な手話通訳を担う人がいなくな ったという。

ビデオサインでは、初めに手話通訳者の名前を提示し、手話通訳者の顔が見える形で実 施している。また、手話通訳は広域ではなく、より小さい地域を担当し、地域の様子が分 かるようにしている。また、大都市では利用が込み合うことがあるので、その場合は、近 くのコールセンターに転送するなどして依頼をして連携をとっている。また、利用者から、

男性の手話通訳者を希望する話があれば、男性の手話通訳者を探すなど、できるだけ利用 者の要望に合わせて対応している。

③ 健康対策

サインビデオでは、手話通訳者の健康にも配慮している。手話通訳のコールセンターの 業務を1週間に2日以上担うのはストレスになるので避けるようにしている。週の半分は サインビデオ、半分は地域の手話通訳を担うようにするなど調整をしている。ただ今後新 しい法律(コミュニケーション法)ができて、ビデオリレーサービスの有用性が認められ るようになると多忙になって、そのような配慮や調整がむずかしくなるかもしれないが、

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手話通訳者の健康を守るためには、バランスが重要だと考えている。手話通訳者の健康に 関しては、チームで対応しなければならない。特にメンタルが面が重要となる。新人は、

ベテラン(メンター)を横につけて仕事をさせ、何か問題等があれば援助できるよう対応 するなど工夫している。

④ 手話通訳者の研修

手話通訳職員全員に研修をしている。ビデオリレーサービスの通訳は、パートタイムと フリーランスのスタッフで対応している。特に、機器の故障やハプニング、先方が電話を 拒否した場合の対応などについても研修を行っている。研修後は、手話通訳者同士互いに 会う機会が少ないので、一緒に飲みに行く機会を作ってコミュニケーションをとっている。

手話通訳職員は手話通訳者として働くだけでなく、イベント企画等他の業務も担っている。

⑤ 文字リレーサービス113

多くの仕事は電話を使うので、ろう者にとっては大きなハンデとなることが多い。これ に対して、ブリティッシュテレコム会社(BT)は、文字リレー(TextRelay)サービスを行 っているが、他の電話会社では行われていない。文字リレーサービスとは、聴覚障害者が 先方に伝えたい内容を文字入力でタイプしてオペレーターに連絡し、そのオペレーターが 話してその内容を伝えるというものである。先方からの回答は、オペレーターが聴覚障害 者に対してタイプして伝達するという仕組みになっている。この機械は、アメリカなどで も使われている「TTY」を利用している。

なお、多くの業種では、連絡はメールでもよいとしているが、一般的ではない。ただ、

多くのろう者は、オンライン上のスカイプ(Skype)やウ-ブー(OoVoo)、iPhone の

FaceTimeなどにより手話で会話をしている人も多いという。

113 文字リレーサービスについては、2012年11月13日の英国ろう協会(BDA)におけ るインタビューによる。

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