第Ⅲ章 イギリス:情報・コミュニケーション保障の現状と課題
4. テレビへの字幕・手話通訳
for the Deaf Broadcasting Corporation)(BSL)のオースティン・リーブス氏(Mr.Austin Reeves)の講義(2012年11月13日)を参照にした。
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4.2 1990年放送法の成立:字幕・手話放送の明記
「TVへのアクセス」運動をする中で、「実は、私の祖母も聞こえないのでテレビが見る ことができない」など、非常に多くの人々がテレビにアクセスできていないということを 知ることになった。オースティン・リーブス氏は、最初は何も分からなかったが、とにか く実態を学びたいと思い、多くの聴覚障害者等と会って話をした。その中で、テレビに関 わる法律の改正の動きがあることが分かり、この機会を利用することにした。
政府は、テレビ局に対して、市民と会合を開き、意見を吸い上げるよう指導していた。
当然、市民の中にはろう者・聴覚障害者も含まれていた。運動団体が国会へのロビー活動 をした結果、国会議員と知り合いになり、要望書を議員に提出することになった。要望書 は、与党だけでなく全ての政党に提出した。そして、1990年の「放送法」(Broadcasting
Law)にろう者への情報保障についても明記された。1990年に施行された放送法で、初め
て字幕に関する条文が入った。当時は、字幕のみで手話通訳は義務付けられていなかった。
放送法が適用された当時はチャンネル3と5だけで、BBCやチャンネル4には適用されな かった。デジタル放送に関する委員会が立ち上がることを知り、新たな運動を始めた。
4.3 2003年放送法の成立:字幕100%の目標
先の放送法の運動時は政党に要望書を渡しただけだったが、次のデジタル放送の委員 会の時は300人の議員全員に要望書を提出した。その際、6人の有力な役人にも会い、運 動の趣旨を説明した。イギリスでは関係する委員会が設置され、討議を行われた後、法案 が成立する。国会議員の果たす役割は非常に大きい。そのため、国会議員へのロビー活動 の結果、自分たちが要望していた内容よりも更に良い法案が提出されることになった。つ まり、2003年放送法において、全てのチャンネルで「字幕」と「手話」、視覚障害者のた めの「音声解説」の具体的な数値目標が年度を追って達成できるように明記された。たと えば、BBC One BBC Twoの目標は表3のようであった。また、主要TV局の達成率につ いては表4のようであった。現在は、主要なテレビ局では100%近く字幕がついている。
ただし、それに比べて手話のある番組はかなり少ない状況である。
表3 BBC(BBC One、BBC Two)の字幕放送等の目標値の推移
字幕 手話 音声解説
2005 90 3 6
2006 95 4 8
2007 97 4 8
2008 100 5 10
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出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2011)『国内外における字幕放送等に関す る調査研究報告書』p.146
表4 主要番組の字幕、手話、音声解説の達成率 2012年
字幕 手話 音声解説
目標値 達成率 目標値 達成率 目標値 達成率
BBC1 100.0% 99.9% 5.0% 5.2% 10.0% 15.5%
BBC2 100.0% 99.9% 5.0% 5.5% 10.0% 15.3%
BBC3 100.0% 100.0% 5.0% 5.4% 10.0% 21.0%
BBC4 100.0% 99.9% 5.0% 5.7% 10.0% 25.3%
ITV 1 90.0% 96.9% 5.0% 5.9% 10.0% 18.7%
Channel 4 90.0% 100.0% 5.0% 5.3% 10.0% 26.1%
Channel 5 80.0% 90.4% 5.0% 9.1% 10.0% 11.6%
出典)Ofcom(2013)Television Access Services: Full Year Report 2012,
http://stakeholders.ofcom.org.uk/market-data-research/market-data/tv-sector-data/tv-access-services-reports/2012-report
4.4 手話による番組
1980年に始まった『聞くことを見る』(See Hear)の番組は、現在も続いている。手話 のある番組は、その他に、チャンネル2で毎週放送される『BSLゾーン』(BSL Zone)と いう番組がある。『聞くことを見る』は全ての聴覚障害者を対象とした番組であるが、BSL ゾーンは主にBSL(英国手話)利用者を対象としている。
現在の運動的な課題は、字幕の質が良くないことや、放送局は手話通訳よりも字幕をつ けることが多いことである。
4.5 「TVへのアクセス」運動の教訓
オースティン・リーブス氏によれば、「TVへのアクセス」運動の目標は1つか2つに絞 り、分かりやすいものを設定し、知らない人が見ても分かるようにすることが、運動が成 功する秘訣である。また、多数を占める健聴者が不満や抵抗を感じるようでは上手くいか ない。できるだけ多くのろう団体の協力を得ることである。DBC(ろう者の放送運動)は 独立した運動団体であるため、どの団体からも支援が受けられたことがよかった。運動を 展開する方法は色々あるが、攻撃的ではなく、合理的なやり方の方が良いということであ った。
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