第2章 アクティブ MMI 型光 RAM メモリ素子の基本原理
2.3 光モード間の双安定の一般条件
36
70%以上強い、即ち二つの経路の利得差が7dB以上であるため、x=W/4の経路
が安定した発振となると考えられる。同じ原理で、1次モードはx=3W/4の経路 が安定した発振となる。その為、0次モードと1次モードの発振はそれぞれ独立 して、異なる経路を通って異なるポートから出力できると考えられる。
37
る[10-12]。
一つの光モードの非線形利得は次のように表す[10]。
(2.26)
ここで、gi0は線形利得で、Iiは光モードの強度である。ɛiiは自己飽和利得係数で ある。ɛiiIi <<1の場合、式(2.26)はgi(Ii)=gi0(1−εiiIi)となる。
レーザーなどで二つの発振モードを持つ場合、二つの発振モードの強度変化 はお互いの強度に非線形的に依存している。その強度の時間的な変化を(2.27)の ように表す[9]。
ここで、ɛ11とɛ22は自己飽和係数で、ɛ12とɛ21は相互利得抑制係数である。定 常状態において、 1 =0, 2 =0
dt dI dt
dI であるため、方程式(2.27a)と(2.27b)は
を満たす。我々は、式(2.28) に基づいて、I1 を横軸、I2を縦軸として、ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21
の時の二つの光のモードの強度と自己飽和係数と相互利得抑制係数との関係グ ラフを図 2.6 に示す[11]。図 2.6に示すように、二つのモードの相互利得抑制効 果が弱い時、即ち ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21の場合、二つのモードの定常状態を満足させるの は三つの点である。I1軸及びI2軸にある点は、I1もしくはI2のモードが発振して いない状態である。二つのモードの強度が 0 でないのは、X(x1,x2)の点であり、
この点が、定常状態の二つのモードの強度の関係である。
) 1
) (
( 0
i ii i i
i ε I
I g
g = +
0 0
2 1
=
= I I
1 1
2 22 1 21
2 12 1 11
= +
= +
ε I ε I
ε I ε I
or or
(2.28a) (2.28b) )
1 (
) 1
(
2 22 1 21 2
2 2
2 12 1 11 1
1 1
ε I ε I
I dt g
dI
ε I ε I
I dt g dI
−
−
=
−
−
= (2.27a)
(2.27b)
38
I2
I1
0 0
X(x1,x2)
1/ɛ11 1/ɛ21
1/ɛ22
1/ɛ12
İ1>0 İ2>0
İ1<0 İ2<0 İ1>0
İ2<0
İ1<0 İ2>0
図2.6 ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21の時の二つの光のモードの強度と自己飽和係数と相互 利得抑制係数との関係グラフ。二つのモードの定常状態を満足さ せるのは三つの点である[11]。
続いて、二つのモードの相互利得抑制効果が弱い場合(ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21)と強い (ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22)場合、二つのモードの強度の変化について検討してみる[9]。図 2.7 にそれぞれ異なる飽和係数及び相互利得抑制係数を用いて計算した二つのモー ドの強度の変化について示す。相互利得抑制効果が弱い場合、即ち ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21
が満たす時、図 2.7(a)~(c)に示すように、一つまたは二つの光のモードの安定動 作が得られる。この場合は二つのモードの間は安定した双安定状態を得られに くい。その一方、相互利得抑制効果が強い場合、即ち ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22を満たす時、
) (
) (
) (
) (
22 11 12 21 11 21 2
22 11 12 21 22 12 1
ε ε ε ε ε ε x
ε ε ε ε ε ε x
−
−
=
−
−
= (2.29a)
(2.29b)
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安定した双安定状態が得られている。図2.7(d)に示すようにXが位相面の第一象 限にある場合、二つのモードの間は双安定性が得られる。まだ、ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22 の
ɛ12/ɛ22=0.7 (a) ɛ21/ɛ11=0.7
(d) 1.4 1.4
(b) 0.7 1.1
(e) 0.9 1.4
(c) 1.1 0.7
(f) 1.4 0.9
0 0.5 1.0
Mode1の強度
Mode1の強度
0 0.5 1.0 Mode2の強度Mode2の強度Mode2の強度
1.0 0.5 0
1.0 0.5 0
1.0 0.5 0
図 2.7 異なる自己飽和係数と相互利得抑制係数を持つ時の Mode1 と Mode2の強度の関係グラフ(I1とI2はそれぞれ1/ɛ11と1/ɛ22までの 数値をとる)。すべてのケースについて g1と g2は同じだと仮定す る。(a)~(c) ɛ11ɛ22>ɛ12ɛ21の場合の二つのモードの関係グラフ。(d)~(f) ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22の場合の二つのモードの関係グラフ[8]。
40
状態で、x1>0,x2<0の時、図2.7(f)のようにモード2が発振する;x1<0,x2>0の時、
図2.7(e)のようにモード1が発振する。これらの結果から、二つのモード間の双
安定を得るためには、必ずモード間の相互利得抑制効果を強くする必要、即ち ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22を満たす必要があることが分かる。
通常の半導体レーザーの発振は内部損失が関わっている。ここで内部損失を 考慮した時の二つのモードの双安定動作条件について考察して見る[13]。内部損 失を考慮した二つの光のモードの強度の方程式は次の式(2.27)で示される[10]。
ここで、lはモードの利得に依存しない損失である。定常状態において、式(2.30)
は
を満たす。この三つの安定状態は、自己飽和係数及び相互利得抑制係数によっ て決定される。ここで、双安定条件を求めるために、次のように x1,x2を定義す る。
二つの光のモードはx1,x2によって発振状態が決められる[13]。
1) x1<0 x2>0 :モード1が発振する。
(2.31a) (2.31b) 0
0
2 1
=
= I I
1 0 1 0
2 1 21 2 22
2
1 2 12 1 11
1
= + −
+
= + −
+
I l ε ε I
g I l ε ε I
or g
or
2 2 1 21 2 22
2 1
1 1 2 12 1 11
1 1
1 ) (
1 ) (
I I l
ε ε I
g dt
dI
I I l
ε ε I
g dt
dI
+ −
= +
+ −
= + (2.30a)
(2.30b)
(2.32a) (2.32b) )
1 1 (
) 1 1 (
) 1 1 (
) 1 1 (
2 2 22 1
1 12 2
1 1 11 2
2 21 1
−
−
−
=
−
−
−
=
l g ε l
g x ε
l g ε l
g x ε
41
(2.34a) (2.34b) 0
0
2 1
=
= I I
1 0 1
1 0 1
2 1 21 2 2
21 1
21 2 22
2
1 2 12 1 1
1 2
12 1 11
1
= + −
− + + +
= + −
− + + +
I l ε ε I
a ε I
ε I g
I l ε ε I
a ε I
ε I g
a a
a a
or or
2) x1>0 x2<0:モード2が発振する。
3) x1>0 x2>0:モード1とモード2が同時に発振する。
4) x1<0 x2<0:二つのモードの間に双安定が得られる。
条件 4)の双安定条件を満たすためには、ɛ21ɛ12>ɛ11ɛ22になることが求められて いる。この結果は、内部損失を考慮しない時の二つのモードの双安定とほぼ同 じである。
通常双安定半導体レーザーにおいて、二つの光モード間は100%の相互利得抑 制効果を得られにくいため、可飽和吸収領域を設けることでより大きなモード 間の双安定を確保する。可飽和吸収領域を設ける際の二つのモードの強度依存 方程式は次の(2.32)に示す。
ここで、aは可飽和吸収領域での線形利得で、ɛa1とɛa2は可飽和吸収領域での自 己飽和係数で、ɛa12とɛa21は可飽和吸収領域での相互利得抑制係数である。定常 状態において、式(2.28)は
を満たす。双安定条件を求めるために、次のように式(2.34)を変換する。
2 2 1 21 2 2
21 1
21 2 22
2 1
1 1 2 12 1 1
1 2
12 1 11
1 1
1 ) (1
1 ) (1
I I l
ε ε I
a ε I
ε I g dt
dI
I I l
ε ε I
a ε I
ε I g dt
dI
a a
a a
+ −
− + +
= +
+ −
− + +
= + (2.33a)
(2.33b)
42
ここで、 1
1 1 11
11 εa
a ε g
ε′ = − ; 2
2 2 22
22 εa
a ε g
ε′ = − ; 12
1 1 12
12 εa
a ε g
ε′ = − ; 21
2 2 21
21 εa
a ε g ε′ = −
である。双安定条件を求めるために、次のようにx’1,x’2を定義する。
異なるx’1,x’2に対して、モード1とモード2の状態は次のように表される[13]。
1) x’1<0 x’2>0:モード1が発振する。
2) x’1>0 x’2<0:モード2が発振する。
3) x’1>0 x’2>0:モード1とモード2が同時に発振する。
4) x’1<0 x’2<0:二つのモードの間に双安定が得られる。
4)の双安定条件を満たすためには、ɛ’21ɛ’12>ɛ’11ɛ’22 になることが求められてい る。この場合、ɛ12ɛ21<ɛ11ɛ22になっても二つのモードは双安定状態を得られる[13]。
この結果から、双安定レーザーにおいて可飽和吸収領域を設けることで、二つ のモード間の双安定性が確保できると考えられる。