九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
アクティブMMI型光RAMメモリ素子に関する研究
姜, 海松
九州大学大学院総合理工学府
https://doi.org/10.15017/21742
出版情報:Kyushu University, 2011, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
アクティブ MMI 型光 RAM メモリ素子に関する研究
九州大学大学院総合理工学府 姜 海松
2012 年 2 月
I
目 次
概要 ...1
第1章 序論 ... 3
1.1 研究背景と目的 ... 3
1.2 光バッファ(RAM)メモリ素子に関する研究 ... 6
1.3 双安定レーザーの概要 ... 8
1.4 アクティブMMI(多モード干渉導波路)双安定レーザー ... 12
1.5 本論文の構成 ... 16
参考文献 ... 19
第2章 アクティブMMI型光RAMメモリ素子の基本原理 ... 26
2.1 序 ... 26
2.2 MMIによる横モード結像の基本原理 ... 27
2.2.1 MMI導波路結像の一般原理 ... 28
2.2.2 0次モードと1次モード光の結像 ... 32
2.3 光モード間の双安定の一般条件 ... 36
2.4 アクティブMMI横モード間双安定レーザーの動作原理 ... 42
2.4.1 アクティブMMI横モード間双安定レーザーのレート方程式 ... 43
2.4.2 ヒステリシス幅と相互利得抑制係数との関係 ... 47
参考文献 ... 52
第3章 横モード間光双安定動作原理の実証 ... 55
3.1 序 ... 55
3.2 シミュレーションによる動作原理の実証 ... 56
3.2.1 MMI導波路の設計 ... 56
II
3.2.2 シミュレーションの実証結果 ... 60
3.3 実験による動作原理の実証 ... 65
3.3.1 素子の設計試作 ... 66
3.3.2 試作素子の実験実証結果 ... 67
3.4 結果の考察 ... 70
参考文献 ... 72
第4章 横モード間光双安定原理の活用による光メモリ素子の動作実証 ... 75
4.1 序 ... 75
4.2 小型化と広ヒステリシス幅の実証 ... 76
4.2.1 小型化と広ヒステリシス幅の設計手法 ... 77
4.2.2 小型化と広ヒステリシス幅の実験実証 ... 81
4.2.3 結果の考察 ... 87
4.3 4bit集積素子同一低動作電流実証 ... 88
4.3.1 4bit集積素子の設計試作 ... 89
4.3.2 4bit集積素子の同一低動作電流の実験実証 ... 90
4.4 極広ヒステリシス幅の実証 ... 94
4.4.1 部分MMI可飽和吸収領域構造の提案 ... 94
4.4.2 極広ヒステリシス幅の実験実証 ... 97
4.4.3 結果の考察 ... 101
参考文献 ... 103
第5章 低閾値電流化の検討 ... 106
5.1 序 ... 106
5.2 低閾値電流化設計原理 ... 108
III
5.3 低閾値電流の実験実証 ... 112
5.4 結果の考察 ... 116
参考文献 ... 118
第6章 ハイメサ導波路構造アクティブMMI光RAMメモリ素子の動作 実証 ... 121
6.1 序 ... 121
6.2 ハイメサ導波路構造素子の設計試作 ... 122
6.3 試作素子の動作実証結果 ... 127
6.3.1 双安定特性の実証 ... 128
6.3.2 単一波長発振の実証 ... 130
6.3.3 全光メモリ動作の実証 ... 130
6.3.4 高速メモリ動作の実証 ... 134
参考文献 ... 138
第7章 総括 ... 141
7.1 まとめ ... 141
7.2 今後の展望 ... 143
参考文献 ... 145
付録A.1半導体レーザーの発振原理 ... 146
付録A.2多重量子井戸構造 ... 151
付録A.3半導体レーザーの試作工程 ... 152
謝辞 ...155
1
概 要
本論文は、小型化と高集積化可能なアクティブ多モード干渉導波路(MMI:
MultiMode-Interferometer)型光RAM(Random Access Memory)メモリ素子に関する 研究について述べたものである。アクティブ多モード干渉導波路(MMI)の横モー ド間光双安定動作原理を提案し、その動作特性の実証結果を忠実に記述し、光 RAMメモリ素子への実用性について議論した。
将来の光通信による過大な電力消費問題への解決策の一つとして、全光ルー タの実現が期待されており、光RAMメモリ素子はその実現のためのキーデバイ スである。アクティブMMI双安定レーザー(Active-MMI BLD)を用いた光RAM メモリ素子は製作プロセスが容易、任意の遅延時間が設定可能、メモリ保持時 間が長い、動作が速い、高集積化が可能などの利点を持つため、光RAMメモリ 素子の候補として注目されている。しかし、素子サイズが比較的大きく(既報告 では1mm程度)、小型化の際同一条件で駆動するための十分に広いヒステリシス 幅(動作条件設定範囲)の確保が大きな課題であった。本研究では、片側端で共通 ポートを持つ非対称型アクティブMMIの横モード間(0次、1次間)の光双安定動 作原理を提案し、その動作特性の実験検証を行い、アクティブ MMI型光 RAM メモリ素子が小型化しても十分に広いヒステリシス幅が確保できることを実証 した。
本論文は 7 章より構成されており、横モード間光双安定動作原理を実験的に 実証した結果をまとめたものである。第1章ではアクティブMMI型光RAMメ
2
モリ素子研究を行った研究背景及び研究目的について述べる。第 2 章では、ア クティブMMI双安定レーザーの横モード間の光双安定動作原理を理論的に説明 して、広いヒステリシス幅の実現にはモード間相互利得抑制領域の確保が重要 であることを説明する。第 3 章では、シミュレーション及び実験による横モー ド間光双安定動作原理の実証について述べる。第 4 章では、横モード間双安定 動作原理の活用により、小型化及び広いヒステリシス幅の実現、4bit集積素子の 同一動作電流の実現、極広ヒステリシス幅の実現について述べる。第5章では、
アクティブMMI横モード間双安定レーザーの低閾値電流化の実証について述べ る。第6章では、ハイメサ導波路構造を用いたアクティブMMI横モード間双安 定レーザーの単一波長発振及び全光高速メモリ動作の実証について述べる。最 後に第7章では、総括として研究のまとめと今後の展望について述べる。
3
第 1 章 序 論
1.1 研究背景と目的
近年、光通信は光伝送路の持つ広帯域性や光デバイスの高速性によりめざま しい進歩を遂げている。ネットワークの急速の発展と共に、遠隔医療、テレビ 会議、スポーツ、映画などを代表例とする映像情報の増大が要因で、ネットワー クのデバイスと通信トラフィック量が急増している。今のスピードで増え続け ると、2015 年にはネットワーク接続型のデバイスが 150億台を超え、世界人口 の2 倍に達すると米国シスコ社が予測している[1]。さらに2015年には世界のネッ トワークトラフィックの総量が 4 倍に増え、年間 966 エクサバイトに達すると 予測している[1]。日本のネットワークも増え続けていて、情報省の発表による
図 1.1 日本のネットワークのトラフィックの増大と電気ルータの消費電力 の予測。ネットワークの通信トラフィック量の増加により電気ルー タでの消費電力も急増している[3]。
105 104 103 102 10
1
104 103 102 10 100 10-1 2000 2010 2020 2030 年
インターネットトラフィック[Tbps]
電気ルータ年間消費電力[億kWh]
消費電力
1.71Tbps (2010.11) 年間総発電力(2007年)
トラフィック 年率1.39倍増加
4
と、日本のネットワークを流れるトラフィックの規模は、2010年11月時点で約 1.71T(テラ)bps相当であり、2009年からの1年間だけで約1.3倍増えていた[2]。
図1.1に日本のネットワークのトラフィックの増大と電気ルータの消費電力を示 す[3]。通信量の増加と共に、ネットワーク機器の電気消費量も増え続けて、特 に電気ルータでの多大な消費電力が懸念されている。2001 年におよそ 7 億キロ ワット時と推定されたのに対し 2006 年の同じ調査ではその 10 倍以上に増加し ていることが分かる。2006年時点での国内総電力発電量は、およそ1兆キロワッ ト時であることから、ルータはその1%の電力を消費していたことになる。今後 もネットワークの通信トラフィック量は年率1.3の倍率で増加する見込みであり、
今の技術のままで行くと、2022年には電気ルータでの消費電力は2007年の国内 総電力発電量に相当する試算となり、消費電力の制約からネットワークの利用 を制限されることも懸念されている。電気ルータでの多大な電力消費の原因の 一つは光ー電気の二重変換である。図1.2に現存の電気ルータの信号処理の仕組 みを示す[4]。現在、ネットワークの光化は進んでおり、バックボーン回線での 信号転送はほぼ光化されている。しかし、ルータにおいては信号のルーティン グの役割をしている光バッファメモリ技術が確立していないため、ルータに送 られた光信号は一旦電気信号に変換して電気回路により大量のバケット信号交 換を行った後、再び光信号に変換して送りだす仕組みとなっている。このよう な二重変換による消費電力は現在ルータの全消費電力の約 25%を占めるという 試算となっている[4]。今後のトラフィック量の増加と伴い、電気ー光の二重変 換による電力消費問題は更に深刻化になると懸念されている。この多大な電力
5
消費問題を解決し、大容量で高速なネットワークを発展するには、光のままで 信号処理を行う全光ルータの実用化技術の確立が必要である。
全光ルータの実用化には、光のままで光信号をルーティングする技術が不可 欠である。その方式としては一般的に、光信号を波長単位でパスとして割り当 てる「光波長ルーティング」、行き先ごとにあらかじめまとめられたパケットを 光バースト信号として切り替える「光バーストルーティング」、そしてパケット 単位でルーティングする「光パケットルーティング」の三つの形態がある[5]。
特に、パケットルーティングは将来の光ネットワークの高速・大容量伝送に期 待される究極のパケットルーティング技術とも言われ、現在盛んに研究が行わ れている[6-8]。全光パケットルーティングの実現の最大の課題は、光技術によ るデータ転送による衝突時のバッファリングである。バッファリング機能の役
図1.2 現在ネットワーク電気ルータの信号処理の仕組みの説明図。電気ルー タでの信号の二重変換による消費電力は現在ルータの全消費電力の 約25%を占めるという試算となっている[4]。
6
割をしているのが光バッファメモリ(RAM)で、高速光通信に適する技術要求が 高いため現在のところ有効な実用化技術が確立されていない。アクティブ多モー ド干渉導波路型双安定レーザー(Active-MMI BLD)を用いた光RAMメモリ素子は 製作プロセスが容易、任意遅延時間が設定可能、メモリ保持時間が長い、動作 が速い、高集積化が可能などの利点を持つため、光RAMメモリ素子の候補とし て注目されている[9-13]。しかし、素子サイズが比較的大きく(既報告では 1mm 程度)、集積型光ランダムアクセスメモリ(RAM)の基本構成要素としては課題が あった[9]。そこで、本研究では、小型でも安定動作ができるアクティブ MMI 横モード間双安定レーザーを提案して、その動作の実験検証を行い、光RAMメ モリ素子としての実用化を目指している。
1.2 光バッファ(RAM)メモリ素子に関する研究
光バッファというのは、光信号を一時的に溜めて記憶する機能である。例え ば、同じ方向に行きたい二つの光信号が同時に伝送されてきた場合、一方の信 号を待たせる必要がある。このとき、一方の光信号を一時的に溜めておき、他 方の光信号のルーティング処理が終了した後、溜められた光信号のルーティン グ処理を行う必要がある。このような一時的に光信号を溜めておく役割をする のが光バッファ(RAM) メモリである。光パケットルータ用の光 RAM メモリ素 子は、高速で大容量の光信号のルーティング処理をするため、速いスイッチン グスピードだけではなく、少なくとも数百ナノ秒オーダのスイッチ保持時間が 必要である[5-6]。その技術的な要求が高いため、さまざまな研究機関で盛んに
7
研究が行われてきたが[14-22]、現在のところ実用化まで至っていない。表 1.1 に最近提案された光RAMメモリ素子の技術特性について比較した。
表1.1 光RAMメモリ素子技術の比較
表1.1に示すように、最近の光RAMメモリ素子に関する研究は、光半導体レー タイプ 年 特 長 課 題 参考 Coupled laser
diodes
2001
任意遅延時間設定可能 保持時間長い
速度が遅い
同一電流設定困難 [15]
Micro-ring
laser 2004
動作速い、低エネルギー 小型化、集積可能
作製プロセス複雑
同一電流設定困難 [16]
SOA-MZI 2005
任意遅延時間設定可能 保持時間長い
動作電流高い
サイズが大きい [17]
Injection locked FP laser diode
2006
動作速い、低エネルギー プロセス簡単
同一電流設定困難
動作波長依存性強い [18]
DFB laser 2008
動作速い、低エネルギー 小型化、集積可能
作製プロセス複雑
同一電流設定困難 [19]
フォトニック
結晶 2008
小型化、高集積可能 動作速い、低エネルギー
作製プロセス複雑
保持時間短い [20]
偏光双安定 VCSEL
2008
小型化、高集積可能 動作速い、低エネルギー
作製プロセス複雑 同一電流設定困難 偏光依存性強い
[21]
Active-MMI BLD
2005
作製プロセス容易
動作速い、高集積化可能
小型化が困難
同一電流設定困難 [9]
Active MMI-
DBR-BLD 2006
動作波長範囲広い
動作速い、低エネルギー
素子サイズ大きい 作製プロセス複雑
[10]
[22]
Active-MMI
BLD(本研究) 2008
作製プロセス容易 小型化、高集積可能 動作速い、低エネルギー
モード間切り替え
[11]
[12]
[13]
8
ザーによる光双安定素子とフォトニクス結晶を用いた光RAMメモリ素子が主流 となっている。フォトニクス結晶型光RAMメモリ素子は、小型化、高集積化可 能、低スイッチングエネルギー、高速動作などの利点から近年注目を浴びてい るが、製作プロセスが複雑、メモリ保持時間が短いなどの欠点から現時点では 成熟な実用化技術として確立されていない。光半導体レーザーを用いた光RAM メモリ素子は、光による任意遅延時間設定が可能、メモリ維持時間が長い、高 集積化が可能などの特長を持つ。しかし、通常の双安定レーザーは小型化の際 双安定特性である電流ー光出力のヒステリシス幅(素子の動作設定可能な電流範 囲)狭くなるため、個々の素子性能などのバラつきから集積化時に全素子の同一 動作電流の設定困難が課題となっていた。本研究で提案しているアクティブMMI 横モード間双安定レーザーは、小型化ながら非常に広いヒステリシス幅が得ら れて、全素子の同一動作電流設定が可能となった。更に、ハイメサ導波路構造 を用いて、グレーティング構造等が不要でより簡単な方法で素子の単一波長発 振を実現して、高速メモリ動作を実現した。
1.3 双安定レーザーの概要
一つの入力値に対して二つの安定な出力を持つ現象を双安定と呼んでいる。
光双安定素子は、二つの安定な出力状態を入力光によって制御できる。双安定 半導体レーザーは半導体レーザーの一種で、注入電流及び入力光に対して二つ の出力を持ち、入力光によって出力が制御できる特長を持つ。半導体レーザー の双安定動作構造を最初に提案したのは Lasher らで[23]、1964 年、半導体レー
9
ザーが発明されて間もない頃だった。1965年にNathanらはLasherらが提案した 構造に基づいてGaAs半導体レーザーの双安定動作を初めて実証した[24]。1970 年代に半導体レーザーの室温連続発振が達成され、その後、InGaAsP/InP系の半 導体レーザー及び結晶成長技術の発展と伴って、1981 年河口[25]と Harder[26]
らによって双安定半導体レーザーに関する研究が再開され、さまざまなタイプ の双安定半導体レーザーが提案・実証されてきた。半導体レーザーの双安定動 作は、波形整形、光アンプ、光メモリ、波長変換、光論理などに応用されてい る[27]。特に、入力光によってON-OFFのメモリ動作特性は、光メモリ及び光論 理素子への応用に期待され、今まで盛んに研究を行ってきた。双安定レーザー の動作原理から、屈折率の非線形性を利用した分散型、吸収係数の非線形性を 利用した吸収型、発振モードの相互利得抑制効果を利用したモード双安定型と 分かれている。
分散型双安定半導体レーザー[28-29]は、リング型共振器[15-16]と非線形媒質 のファブリーペロー共振器型があるが、光共振器の通過特性が、電流注入及び 光注入で生じる屈折率の変化によって帰還を受けることにより、双安定特性が 生じる[30-32]。非線形媒質ファブリーペロー共振器型は光増幅器としての応用 が多く見られる。リング型共振器双安定半導体レーザーを光RAMメモリとして の応用の報告が多く見られている[15]。最も特性がいいのは2004年M. T. Hillら により提案されたマイクロリングレーザー(Micro-ring laser)[16]で、小型で低消費 エネルギーなどの特長を持つが、製作プロセスが難しいなどの欠点がある。
吸収型双安定半導体レーザー[33-35]は、レーザー共振器内可飽和吸収体を導
10
入することで、注入電流の不均一により、注入電流及び入力光に対し出力光の 双安定特性を生じる。基本的な吸収型双安定半導体レーザーは、図1.3(a)に示す ように、2分割された電極を持ち、注入電流の不均一によって図1.3(b)に示すよ うな電流ー光出力のヒステリシス特性を持つ。このヒステリシスは素子の光双 安定特性の特徴で、広いほど安定した双安定性が得られる。双安定レーザーを メモリ素子として応用する際は、このヒステリシス幅が素子の動作電流設定範 囲であり、広いほど全集積素子の同一動作電流の設定が可能となる。ヒステリ シス幅は、可飽和吸収領域の長さにより決められ、長いほどヒステリシス幅は 広くなるが、素子の閾値電流が高くなることが懸念される。吸収型双安定レー ザーの利得領域での注入電流をヒステリシス幅内に設定して、外部から光をキャ ビティ内に入射するとレーザーが発振して、入力光がなくなっても発振が維持 されてメモリ動作を実現できる。ところが、吸収型双安定レーザーの立ち上が り、立下りは基本的にキャリア密度の変動によって律速されるため、10Gbps 程
(信号光入射)
ON
OFF
I1 I2
領域A 領域B
活性層
光出力
(a) (b)
Injection current [a.u.]
Output [a.u.]
図 1.3 吸収型双安定半導体レーザーの構造図及び電流ー光出力特性。(a) 双安定半導体レーザーの構造図。 (b)双安定半導体レーザーの電 流ー光出力特性。可飽和吸収領域の働きにより、電流ー光出力のヒ ステリシスを実現する。
11
度が限界となり、将来の高速光ネットワークへの応用は困難がある[27]。この問 題を解決するために、提案されたのがモード間双安定型レーザーである。
二つの発振モードがある半導体レーザーにおいて[9][13][21]、発振モードの間 は非線形利得により相互利得抑制効果が生じ、モード間の双安定が実現できる。
半導体レーザーは利得飽和によりホールバーニング効果が起こり、発振するモー ドが自身の利得を飽和させる以上に他のモードの利得を飽和させる特性を持っ ている[36-37]。この特性によって、二つの発振モードの間は、相互利得抑制効 果が生じ、一つのモードが発振するともう一つのモードが抑制され、二つの光 の間は双安定が得られる。モード間双安定レーザーは、外部から光を入射させ、
二つモードの光の発振状態を制御することができ、光モード間の切り替えが実 現できて、メモリとして動作する。モード間双安定型レーザーは、モード間の 切り替えを利用するため、スイッチングスピードが吸収型双安定レーザーより 極端に速い特長を持つ。通常二つの発振モードの間には強い相互利得抑制効果 が得られにくいため、素子に可飽和吸収領域を設けて、相互利得抑制効果を強 化させる。モード間双安定動作を行う半導体レーザーは、主にTEモードとTM モード間の双安定を利用する偏光型[38-40]と、横モード間の双安定を利用する アクティブ MMI 型[9-13]に分かれている。偏光型双安定レーザーは、1984 年
Chen[38]らにより初めに提案されて、半導体レーザーのTEモードとTMモード
光の間の双安定を利用してメモリ動作を実現する。Kawaguchi教授ら[21]による 動作実証されたメモリ素子は、サイズが小さく、動作エネルギーが少ないなど の特長があるが、素子のヒステリシス幅が狭く(1~3mA 程度)、動作の偏光依存
12
性が強いなどの欠点がある。アクティブ MMI 双安定レーザーは、2003 年に竹 中らによって提案され[9]、複数の異なるモードを意図的に発生干渉させるアク ティブMMIの特長を生かして、光の双安定を実現し、全光フリップフロップ動 作を実証した。しかし、彼らが提案しているアクティブMMI双安定レーザーは モード間の相互利得抑制領域が小さいため、素子のサイズが大きく、ヒステリ シス幅が狭いなどの欠点がある。これに対し、我々が提案しているアクティブ MMI 横モード間双安定レーザー[11-13]は、極端に大きい相互利得抑制領域が確 保でき、小型化の際にも広いヒステリシス幅が確保できる。
1.4 アクティブMMI(多モード干渉導波路)双安定レーザー
多モード干渉導波路(MMI: MultiMode-Interference)は、「自己結像」に基づいた 光多モード干渉を利用した導波路である[41]。多モード光に関する研究の基礎は、
今からおよそ170年昔の1836年に発見されたタルボ効果(Talboteffect) [42]に遡る。
「自己結像」に基づいた光多モード干渉現象に基づくことで、多モード光導波 路内で、入射光と同じ光フィールドが 1 個若しくは複数個、導波方向に沿って 周期的に現れる。これを利用して、例えばN入力N出力の受動合分岐光導波路 技術などとして、主に 1990 年以後盛んに研究されるようになってきた[43-44]。
1997 年、複数の異なるモードを意図的に発生させて、干渉させることが可能な
「アクティブ(Active)」MMIデバイスが浜本教授によって提案・実証された[45]。 図1.4は提案されたアクティブMMIレーザーの概要図を示す[45]。MMI導波路 部においてマルチモード光が発生し、干渉しながら周期的に結像されている。
13
アクティブMMIは光増幅器用励起レーザーとして多く検討され[46-47]、最大光
出力1.46W、1W出力時の駆動電圧1.75Vという優れた素子性能が報告されてい
る[47]。半導体レーザー以外でも、アクティブMMIは光アンプ、光スイッチ[48-49]
にも応用される例が報告されている。近年は、アクティブMMIの応用領域は更 に発展され、MMI 現象を利用する高出力 SLED[50]、モード制御を利用する光 RAMメモリ素子[9-13]、単一波長レーザー発振[51]などにも応用されている。
アクティブ MMI 双安定レーザーは、MMI 導波路での二つのモードの相互干 渉により生じるモード間相互利得抑制効果と可飽和吸収領域の働きにより二つ の発振モード間の双安定を実現している。製作プロセスが簡単、高集積化が可
(b) (a)
1×1-MMI Coupler
Optical Field Output-Beam
Single-Transverse-Mode Waveguide Region
図1.4 Active MMIレーザーの概要図[45]。(a)導波路上面図、(b)ビーム伝
搬法による光フィールド分布計算結果。MMI導波路部においては マルチモードが発生し、周期的な干渉を経てシングルモードとし て出力されている。
14
能、任意遅延時間設定が可能、メモリ保持時間が長いなどの特長がある。図1.5(a) に2003 年に竹中ら[9]により提案されたアクティブMMI双安定レーザーの構造 を示す。このアクティブ MMI は二つの入力ポートと二つの出力ポートを持ち、
二つの対称経路の発振モードがある。二つの発振モードはMMIカプラの交叉し ている部分で干渉し合うことでモード間の相互利得抑制効果が生じる。この相 互利得抑制効果だけでは二つのモードの間は充分な双安定性が得られないため、
図 1.5 アクティブ MMI 双安定レーザーの構造図。(a)既報告アクティブ MMI 双安定レーザー、二つの光モードの間の相互利得抑制領域は MMIカプラの内のごく一部のみである。(b)アクティブMMI横モー ド間双安定レーザー、片側の共通ポートを利用することで、より大 きなモード間相互利得抑制領域が確保できる。
(b) 相互利得抑制領域
相互利得抑制領域
可飽和吸収領域 可飽和吸収領域
(a)
15
素子に可飽和吸収領域を設けている。二つのモード間の相互利得抑制効果と可 飽和吸収領域の働きによって、安定した光双安定性が得られ、素子の電流ー光 出力のヒステリシスが実現できる。このヒステリシス幅内に動作電流を設定し、
外部から一方のポートから光を入射すると、この経路の発振モードが励起され、
メモリはON動作を実現する。この時、入射光が消えても、メモリはON状態を 維持する。この発振状態で、もう一つの経路から光を入射すると、入射経路の モードがすべての利得を奪い、発振することになり、対称経路での発振は止まっ てしまい、メモリは OFF動作を実現する。このような動作で、全光で制御する 1bitメモリ動作を実現し[10][22]、更にこの原理の適用により40Gbpsパケットス イッチング動作も実現した[52]。
しかし、この構造のアクティブMMI双安定レーザーは、素子サイズが比較的 大きく(既報告では 1mm 程度)、ヒステリシス幅が狭い、動作電流が高いなど集 積型光ランダムアクセスメモリ(RAM)の基本構成要素として課題があった。動 作電流を低減するために、有効な方法は素子の小型化であるが、素子を小型化 する際、二つの光モードの間の相互利得抑制領域はMMIカプラの内のごく一部 にのみであるため、全体に占める相互利得抑制領域の割合は更に小さくなり、
十分な双安定性が得られないので、結果としてヒステリシス幅が狭くなる。可 飽和吸収領域を長くすることで、ヒステリシス幅は広くなるが、素子の閾値電 流も高くなり、低動作電流の実現は難しくなる。そこで、我々はアクティブMMI の二つのモード間の相互利得抑制領域を大きくする方法について検討して見た。
図1.5(b)に示すような、レーザーの入力を一つのポートにすれば、入力ポートの
16
部分はすべて二つのモード間の相互利得抑制領域となり、MMI カプラ内の相互 利得抑制領域まで加えると、二つの入力ポートを持つ構造より極端に広い相互 利得抑制領域が実現できると考えた。ところが、同じ入力端を使用する場合、
通常同一波長の光では同一経路を伝搬するため、二つの発振モードを実現する ことができない。この問題を解決するために、我々は光のモードに着目し、0次 モード光と1次モード光間の双安定を利用するアクティブMMI横モード間双安 定レーザーの動作原理を提案した[11]。二つの独立の横モード(0次モード、1次 モード)が、片側の共通ポートから入射し、MMIカプラ内でそれぞれ異なる経路 を通って、異なるポートから出力できれば、モード間により大きな相互利得効 果が得られ、可飽和吸収領域を短く設計しても充分なヒステリシス幅が得られ ると考えられる。更に、入射ポートの長さが素子全長に占める割合を変えるこ とによって、モード間の相互利得抑制領域の割合を変更することが可能となり、
素子のヒステリシス幅がコントロルできると考えられる。この原理を用いて、
我々は 315µm まで素子を小型化し、39mA の低閾値電流と共に広いヒステリシ
ス幅を実証した[12]。そして、アクティブMMI型光 RAM素子の 4bit集積素子 の同一動作電流を実証し[53]、世界最高なヒステリシス幅を確認した[54]。その 上、ハイメサ導波路構造を用いることで、光RAMメモリ素子の単一波長発振と
共に40Gbps 信号による全光高速メモリ動作を実証した[13]。
1.5 本論文の構成
本論文は7章で構成され、アクティブMMI横モード間双安定レーザーを用い
17
た光RAMメモリ素子の動作原理の提案、及び実験による検証結果をまとめたも のである。
第1章では、本研究の背景と目的を述べる。現存の光RAMメモリ素子の研究 について述べ、アクティブMMI横モード間双安定レーザーを用いた光RAMメ モリ素子に関する研究の必要性及び目的を述べる。
第2章では、アクティブMMI双安定レーザーの横モード間の双安定動作原 理を理論的に説明する。二つの光モード間の相互利得抑制領域とヒステリシス 幅との関係を理論的に解析して、モード間の相互利得抑制領域とヒステリシス 幅との関連について説明する。
第3章では、シミュレーションによる新動作原理の検証結果を示した後、実 際の試作素子のメモリ素子特性の評価結果を示す。その結果、(1)シミュレー ションから大きな相互利得抑制領域が得られること、(2)試作した結果、既報 告の半分の素子サイズにもかかわらず、8mA と比較的に広いヒステリシス幅 が得られること、を明らかにする。
第4 章では、横モード間相互利得抑制領域の割合を大きくすることによる、
更なる小型化と広いヒステリシス幅の実験実証結果を示す。その上、4bit集積 素子の同一低動作電流の実証結果と部分MMI可飽和吸収領域設計による極広 ヒステリシス幅の実証結果を示す。その結果、(1)素子長315µmと更なる小型 設計としたにもかかわらず、低閾値電流値(58mA)と極めて広いヒステリシス 幅(32mA 、対閾値電流比 55%)が得られたこと、(2)4bit 集積素子の 8mA の共 通動作電流領域および全集積素子の同一電流動作を確認したこと、(3)部分MMI
18
可飽和吸収領域構造の適用による世界最高のヒステリシス幅94mAを実現した こと、を明らかにする。
第5章では、横モード間相互利得抑制領域とヒステリシス幅の関係の実験実 証の結果を用いて、低閾値電流と共に広いヒステリシス幅が実現できる設計に よる低閾値電流化を示す。7mA(対閾値電流比18%)と十分に広いヒステリシス 幅を維持した上で、低閾値電流39mAを実現したことを示す。
第6章では、ハイメサ導波路構造を用いたアクティブMMI横モード間双安 定レーザーの試作素子の動作実証結果を示す。その結果、(1)コア層とクラッ ド層の高い屈折率の差による素子の単一波長発振を確認したこと、(2)25ps の 短い光パルス信号による全光高速メモリ動作を実現したこと、を明らかにする。
第7章では、これまでの研究結果をまとめ、今後の展望について述べる。
19
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26
第 2 章 アクティブ MMI 型光 RAM メモリ 素子の基本原理
2.1 序
我々は、既報告のアクティブMMI型光RAMメモリ素子(図2.1(a))の素子サイ ズが比較的大きく、また、ヒステリシス幅(素子の動作電流設定可能範囲)が狭い という課題を解決するために、図2.1(b)に示すような横モード間光双安定動作原 理を利用するアクティブMMI型光RAM素子を提案した。この横モード間光双 安定は、片側端で共通ポートを用いることで、光モード間の相互利得抑制領域 が飛躍的に大きく確保でき、結果として、広いヒステリシス幅が実現できると 考えられる。ところがこの構造では、通常同一波長の光が同一経路を伝搬する ため、二つの発振モードを実現するのは不可能である。そこで、我々は光のモー
ドに着目して、もし0次モード光と1次モード光が同じポートから入射され、
それぞれの伝搬経路を通って異なるポートから出力できれば、この構造で異な 図 2.1 アクティブ MMI 双安定レーザーの構造図。(a)既報告アクティブ
MMI双安定レーザー。(b)アクティブMMI横モード間双安定レー ザー。
相互利得抑制領域 相互利得抑制領域
可飽和吸収領域 可飽和吸収領域
(a) (b)
26
第 2 章 アクティブ MMI 型光 RAM メモリ 素子の基本動作原理
2.1 序
我々は、既報告のアクティブMMI型光RAMメモリ素子(図2.1(a))の素子サイ ズが比較的大きく、また、ヒステリシス幅(素子の動作電流設定可能範囲)が狭い という課題を解決するために、図2.1(b)に示すような横モード間光双安定動作原 理を利用するアクティブMMI型光RAM素子を提案した。この横モード間光双 安定は、片側端で共通ポートを用いることで、飛躍的に光モード間の相互利得 抑制領域が大きく確保でき、結果として、広いヒステリシス幅が実現できると 考えられる。ところがこの構造では、通常同一波長の光が同一経路を伝搬する ため、二つの発振モードを実現するのは不可能である。そこで、我々は光のモー ドに着目して、もし 0 次モード光と 1 次モード光が同じポートから入射され、
それぞれの伝搬経路を通って異なるポートから出力できれば、この構造で異な 図 2.1 アクティブ MMI 双安定レーザーの構造図。(a)既報告アクティブ
MMI双安定レーザー。(b)アクティブMMI横モード間双安定レー ザー。
相互利得抑制領域 相互利得抑制領域
可飽和吸収領域 可飽和吸収領域
(a) (b)
27
る光モード間の双安定が実現でき、素子を小型化しても十分に広いヒステリシ ス幅が確保できると考えた。
2章では、アクティブ MMI横モード光間双安定レーザーの基本動作原理につ いて説明する。2.2 では、まず MMI 導波路においてのモード結像の理論を簡単 に紹介して、片側端で共通ポートを持つ構造で、0次モードと1次モード光がそ れぞれ異なるポートから伝搬できることを理論的に解析する。2.3では、二つの 光モード間の一般的な双安定動作条件について説明する。2.4では、アクティブ MMI 横モード双安定レーザーの一般動作原理を述べ、定常状態でのレート方程 式を用いて光モード間の相互利得係数とヒステリシス幅との関係を示す。ヒス テリシス幅は、二つの光モード間の相互利得抑制係数が増えるとともに、線形 的に増加できることを理論的に解析する。相互利得抑制領域が大きくなると、
光モード間の相互利得抑制係数も増え、結果として広いヒステリシス幅が得ら れることを説明する。
2.2 MMIによる横モード結像の基本原理
多モード干渉導波路(MMI: MultiMode-Interference)は、「自己結像」に基づいた 光多モード干渉が利用された導波路である[1-4]。MMI 導波路構造の中心部は、
多モードの光を許容する導波路となっていて、この導波路内で「自己結像」に 基づいた光の多モード干渉現象が生じ、入射光と同じ光フィールドが 1 個若し くは複数個、導波方向に沿って周期的に現れる。図2.2に一つの例として、MMI 導波路の中心部においての光モード伝搬のシミュレーション図を示す。中心か
28
図 2.2 MMI 導波路構造中心部においての光モード伝搬のシミュレーショ
ン図。MMI 導波路内部には入射光と同じ光フィールドが1 個もし くは複数個、導波方向に沿って周期的に現れている。
ら入射した 0 次モード光がそれぞれ違う位置で 1、3、5 個の結像をしているこ とが見られる。光モードの結像位置は、入射光の入射位置、波長、導波路の屈 折率、MMI導波路の幅などによって決められている。MMI導波路の設計はこの 結像条件に満たす必要がある。それでは、まずMMI導波路中心部の各光モード の結像の条件について説明する。
2.2.1 MMI導波路結像の一般原理
本項の説明は論文[1]に基づいている。図2.3(a)に示すようなy方向に一様な構 造をもつスラブ導波路で、TE波がz方向へ伝搬する時の各モードのフィールド 分布と伝搬定数を考察する[1]。クラッド層の屈折率は nc、コアの実効屈折率は nr、導波路の実際の幅は WMMI、グースヘンシェンシフトを考慮した仮想的な導 波路の幅、即ち導波路の実効幅は Weである。二次元のスラブ導波路の TE 波は コアの中で
2 0
2 2 0 2 2 2
=
∂ + +∂
∂
∂
y r y
y k n E
z E x
E (2.1)
29
0 0
2 λ k = π
x jk x
jkx x
e
e Β
Α − +
を満たす。あるモードにいて考えると、モードは z方向に e-jβzの依存性を持ち、
x 方向の依存性を で表すと、式(2.1)は
(2.2) となる。ここで、
(2.3) である。モードの次数をiとすると(i=0,1,2,…), 図2.3(b)よりkxは次のような形 で書ける。
(2.4) ここで、Weは導波路の実効屈折幅で、TEモードの時、
(2.5)
である。
式(2.2)から伝搬係数を求める。
図2.3 (a) y方向に一様な構造をもつスラブ導波路。(b) i=0,1の場合のx
方向のフィールド形状。
(a) (b)
WMMI We
x z
0 x
We
i=0
i=1
2 2 0 2 2
r
x β k n
k + =
e
x W
π k = (i+1)
12 2
0)( 2 )
( − −
+
≈ MMI r c
e n n
π W λ
W
30
i π
L π i β i
β 3
) 2 (
0
≅ +
−
0 2
1
0 3
4 λ
W n β β π π
L ≅ r e
= −
式(2.6)は各モードの伝搬定数とモード番号 i に関係する二次式で近似されて いることが分かる。式(2.6)を利用して二つのモードのビート長を求めることがで きる。0次モードと1次モードのビート長Lπを次のように定義する[1]。
(2.7) 同様に0次モードとi次モードの伝搬定数差は
(2.8)
である。直線状導波路における任意フィールドは、モードの重ね合わせで表現 できる。式で表現すると、
(2.9) である。0次モードの位相を基準に考えると、他のモードと0次モードの位相差
は(2.10)のように表される。
(2.10)
即ち、 L z
π i ji
e 3 π
) 2 (+
は伝搬による位相差を表している。例えば、あるz位置において、
式(2.10)の値がすべてのモードで 1(中括弧の中が 2πの整数倍)となる時、入射端
と同じ形の像が形成される。
通常のMMI導波路の結像条件は
∑
−=
i
βz j i i
y x z c φ x e i
E ( , ) ( )
∑
∑
− − +− = =
i
L z π i ji i i i
β β j i z i
β j
y i π
φe c φe
e c z x
E ( ) (3 2)
0 0
) , (
2 0 2 0
12 2 2
2 0
2 2
2 0 2 2 2 0 2
4 ) 1 } (
) 1 {(
) } 1 {(
e r r
e r
e r
x r
W n
πλ n i
W k π n i
β k
W π n i
k k n β k
− +
≈
+
−
=
∴
− +
=
−
=
(2.6)
31
(2.11) である。光モードが MMI 入射して、MMI で伝搬して同じ形で結像するために
は、 L z
π i ji
e 3 π
) 2 (+
が2πの整数倍になる必要がある。即ち、
(2.12)
になる必要がある。この条件を満たすためには、LMMI =n⋅3Lπとなる必要があ る。入射位置が左右対称時の結像条件は
(2.13)
である。入射が左右対称の時、マルチモード導波路長が 1/4 の大きさで 1xN 分 岐構造が実現可能となる。即ち、
(2.14)
になる必要がある。そのため、LMMIは式(2.13)を満たす必要がある。
M 個入射で、N 個出力がある MMI 導波路において、入射した光を関数 fin(x) として表す場合、 Lπ
N
LMN = M 3 位置での出力関数はfout(x)の形で表すことができ る[5]。
(2.15) ただし、
] ) 2 ( exp[
3 ] ) 2
exp[ ( L j i i π
L π i
ji MMI
π
+
⋅ + =
π
MMI n L
L = ⋅3
4 3 π
MMI
n L
L = ⋅
4 ] ) 2 exp[ (
3 ] ) 2
exp[ ( i i π
j L L
π i
ji MMI
π
⋅ + + =
N π q M N φ q
N W N M q x
q q
) (
) 2 (
−
=
−
=
∑
−=
−
= 1
0
) exp(
) 1 (
) (
N
q
q q
in
out f x x jφ
x C f
32
である。ここで、q は 位置での結像の数、xqは入力光より出力光 がx方向での位置ずれ、φqは入力光と出力光の位相差を意味している。ただし、
Cは係数であり、像が逆位相で重なる時は、打ち消し合う、C = N である。こ の時、出力された各モードのパワーは
(2.17) と表す。
2.2.2 0次モードと1次モード光の結像
続いて我々が提案しているMMI導波路での0次モードと1次モードの伝搬の 様子について説明する。横モード間双安定レーザーを実現するには、0次モード 光と 1 次モード光が図 2.4 のように共通ポートから入射して、それぞれ異なる
π N L LMN = M 3
図2.4 MMI横モード双安定レーザーの0次モードと1次モード光の伝搬 予想図。0 次モードと 1 次モード光が共通ポートから入射され、
MMI導波路中心部で自己干渉を行い、異なるポートから出力され ると考えられる。
2
) exp(
) 1 (
)
( =
∑
in − q qout f x x jφ
x C P
] exp[
) exp(
1
0
0
∑
−=
+
−
= N
q
q q
MMI jφ
W π x j β L
j
C (2.16)
33
ポートから出力する必要がある。しかし、実際に 0 次モード光と 1 次モード光 が同じ入射位置から入射して、MMI 導波路内で干渉しながら伝搬し、ほぼ対称 して出力するのを実証することが難しい。そこで、我々はMMIの結像の条件に 基づいて、MMI導波路の幅と長さを決め、光の入射位置と出力位置を指定して、
それぞれの出力位置での各モードの出力パワーについて計算した。もし、0 次 モード及び 1 次モードの光の各自の出力端から出力されるパワーが同じであれ ば、独立した二つのモードとして伝搬できると考えられる。
解析をより簡単にするために、図2.5に示すように光のモード関数を-Wから W の範囲まで拡張して、-x 側は奇対称な形になるとし、境界条件 f(-W)=f(W)を 満たすと仮定する[5]。M個入射光のN 個出力があるMMI 導波路において、入 射した光を関数fin(x)として表す場合、位 置での出力関数はfout(x) が、
π N L LMN = M 3 1次モード
W x
-W 0
0次モード fin(x)
-fin(-x)
図 2.5 光のモード関数を-W から W の範囲まで拡張する時の説明図。
光のモードは-x側は奇対称な形になると仮定する。
∑
−=
−
−
= 1
0
) exp(
) 1 )(
1 ( ) (
N
q
q q
q in
out f x x jφ
x C
f (2.18)
34
であることを仮定する。MMI 導波路の幅をWとし、長さを3/4Lπとして、入射 ポートの位置がx方向の W/4の時、出力側のx方向の W/4と3W/4の位置での 出力パワーを計算する。ここで、コア層とクラッド層の比屈折率差が高いため、
導波路の幅を実効幅として仮定する。MMIの長さを3/4Lπとしているため、M=1 で、N= 4である。入力関数fin(x)がx方向のW/4位置から入射する時、伝搬方向 のLMMI=3/4Lπ位置において、q、xq、φqの値はそれぞれ(q=0, xq=-W, φq=0)、(q=1, xq=-W/2, φq=3/4π)、(q=2, xq=0, φq=π)、(q=3, xq=W/2, φq=3/4π))の四つの値を持つ。
x>0領域のみ考えると、
(2.19)
となる。これらのモードを重ね合わせると、伝搬方向がLMMI=3/4Lπ位置におい て、x方向のW/4の付近の出力関数は
となり、出力パワーPは
である。同じように、3W/4付近の出力関数及びパワーは
+ − + + − −
= )
4 exp( 3 2 ) ( ) exp(
) ( 4 )
exp( 3 2) ( ) 1 (
)
( W j π
x π f
j x π f
W j x f W x C f
x
fout in in in in
− − − − +
= )
2 1 2 ( 1
* 2 ) ( ) 1 (
)
( W j
x f x C f
x
fout in in (2.20)
+ − + − +
= )
2 1 2 ( 1
* 2) ( ) 1 (
)
( W j
x f W x C f
x
fout in in (2.22)
(2.21)
−
+
− −
=
+
−
− +
=
=
2 2
2 2
2
2 ) 2 (
) 1 ( 2
2 ) 1 4 (
1
2) 1 2 ( 1
* 2) ( ) 1 (
) (
x W W f
x f x
f
W j x f x C f
x f P
in in
in
in in
out