第三章 動詞句と動詞句にまつわる問題
3.3 動詞連続構造
3.3.2 動詞の自他による組み合わせ
3.3.2.2 他動詞+自動詞
他動詞+自動詞の連続パターンにおいては、2 つの動詞には連結型と分離型の両方のパタ ーンが存在する。まず連結型について述べる。
(118) ŋuaʔ44 sia51 pa43 lau43 . 我 食 饱 了
1SG 食べる 満腹 ASP
「私は食べてお腹いっぱいになった。」
(119) siu21miŋ35 sia51 tsue21 o . 小明 食 醉 去
人名 食べる 酔う ASP
「小明は(酒を)飲んで酔った。」
他動詞+自動詞のパターンにおいては、目的語を他動詞の後ろに置くことができない52。
(120) *siu21miŋ35 sia51 tsiu43 tsue21 o . 小明 食 酒 醉 去
人名 食べる 酒 酔う ASP
「小明は酒を飲んで酔った。」
目的語を文に出現させる場合には、次のように動詞をコピーして用いなければならない。
(121) siu21miŋ35 sia51 tsiu43 sia51 tsue21 o . 小明 食 酒 食 醉 去
人名 食べる 酒 食べる 酔う ASP
「小明は酒を飲んで酔った。」
以上の例において、2つの動詞の主語が同一のものである。主語が異なる場合もある。
(122) siu21miŋ35 ԑ51 puaʔ44 tɔ43 o . 小明 □ □ 倒 去
人名 押す 転ぶ 倒れる ASP
「小明が押されて転んで倒れた。」
(122)における「転んで倒れた」のは「小明」である。同時に「押す」の目的語である。し かし、「押す」の主語が文に現れていない。「押す」の主語を文に導入する場合、受身構文を 用いなければならない。次のようになる。
52 「siu21miŋ35 sia21 tsiu35 tsue21 o」の形式は存在する。しかし、この場合は、2つの動詞が全体で一つのまとま
りをなして、声調交替が起こっている。「酔っ払い」を意味する。
(123) siu21miŋ35 khyʔ21 siu21uɔŋ43 ԑ51 puaʔ44 tɔ43 o . 小明 乞 小王 □ □ 倒 去
人名 AGT 人名 押す 転ぶ 倒れる ASP
「小明が王君に押されて転んで倒れた。」
(122)において、小明の動作を表すのに2つの自動詞を用いている。そのいずれも省略する
ことができない。
(124) *siu21miŋ35 ԑ51 puaʔ44 o . 小明 □ □ 去
人名 押す 転ぶ ASP
「小明が押されて転んた。」
(125) *siu21miŋ35 ԑ51 tɔ43 o . 小明 □ 倒 去
人名 押す 倒れる ASP
「小明が押されて倒れた。」
これは文頭にある名詞の有生性に関係する。つまり、(122)では、2 つの自動詞が必要なの は、文頭にある名詞が有生物のためである53。例えば、無生物「木」にすると、以下のよう に表現が成立する。
(126) tshieu21 ԑ51 tɔ43 o . 树 □ 倒 去
木 押す 倒れる ASP
「木が押されて倒れた。」
2つの動詞が連結型のパターンにおいては、2つの動詞は、動作と結果の関係、または原因 と結果の関係にある。また、後項動詞の方が文全体の意味を担う。
次に2つの動詞が分離型のパターンについて述べる。分離型には次の二つのタイプが存在 する。
53 有生物でも可能な場合がある。例えば、
siu21miŋ35 pha21 seʔ21 ko . 小明 拍 □ 去
小明 殴る 気絶するASP「小明が殴られて気絶した。」
したがって、有生性の有無はそのうちの1つの制限に過ぎない。ほかの制限については、今後さらに究明してい く。
(127) ŋuaʔ44 sia51 ԑ42 pa43 . 我 食 会 饱 1SG 食べる AUX 満腹
「私は食べて満腹になれる。」
(128) tsy51 tɔ44 o42 li tshoʔ21 . 书 驮 有□ 出 本 取る AUX 出る
「本を取り出せる。」
(127)(128)において、いずれも 2 つの動詞の間に動作と結果可能性の関係である。しかし、2
つの動詞の間に介在されているものが異なる。後項動詞が方向を表すものはo42 li〈有□〉を 介在しなければならない。一方後項動詞が方向動詞以外のものはԑ42〈会〉を介在させる。