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リー群の諸定理

ドキュメント内 東京大学理学系研究科 上田研究室 (ページ 60-65)

第 3 章 リー群の基礎 41

3.3 リー群の諸定理

が得られる。この両辺にad(Xc)を掛けてトレースをとり、(3.91)を用い ると

fabc = ig1Tr{[ad(Xa),ad(Xb)]ad(Xc)}

= ig1Tr{[ad(Xb),ad(Xc)]ad(Xa)} (3.93) が得られる。最後の等式はトレースの巡回性から示される。(3.93)から

fabc=fbca (3.94)

が言える。この結果と(3.41)から構造定数が次の完全反対称性を満足す ることが分かる。

fabc=fbca=fcab=−fbac=−fcba=−facb (3.95)

の元gと上に導入した曲線fa(t)に対して、f˜a(t) := gfa(t)g−1を定義す ると、これは連続曲線であり、f˜a(0) =e∈G0なのでf˜a(1) =ggag1 G0に属する( ˜fa(t)が連続曲線なので)。よって、gG0g1 =G0 が成立し、

G0Gの不変部分群であることが分かる。

Theorem 17 Gの元gを含む連結部分C(g)C(g) =gG0 =G0gと書 ける。

証明 gG0 =G0gG0が不変部分群であることによる(定理16)。G0の 任意の元gaと単位元を結ぶG内の連続曲線fa(t)をとり、h(t) :=gfa(t) を定義すると、h(0) =g, h(1) = ggaなので、ggagG内で連続的に 結ばれている。よって、gG0 ⊂C(g)である。逆に、C(g)の任意の元cg を連続的に結ぶ曲線k(t)を選び(k(0) =g, k(1) =c)k(t) :=˜ g1k(t) 定義するとk(0) =˜ e,k(1) =˜ g1cなので、g1c∈G0、すなわち、c∈gG0 となる。従って、C(g)⊂gG0 なので、C(g) =gG0 が示された。

定理17より、リー群Gは同値類の直和に分解できることが分かる。

G=g1G0⊕g2G0⊕ · · · ⊕gnG0 (3.96) g1,· · ·, gnのうちの一つは単位元である。また、定理16よりG0は不変部 分群なので、商群

G/G0 ={g1G0, g2G0,· · · , gnG0} (3.97) が導入できることが分かる。

Theorem 18 G0は線形リー群であり、そのリー代数はGのリー代数と 同じである。

証明 G0は線形リー群Gの部分群なので、それ自身が線形リー群である。

G0の単位元とその近傍はGのそれと一致しているので、両者の無限小変 換の生成子であるリー代数も一致する。

この定理からO(n)SO(n)が同一のリー代数を持つことが分かる。以 下、いくつかの重要な定理を証明抜きで与えよう。詳しくはこの講義ノー トの冒頭で紹介したリー群の教科書などを参照のこと。

線形リー群の単位元近傍の元はリー代数の元Xを用いてeiXと書ける が、単位元近傍以外の元については次の定理が成立する。

Theorem 19 (i)連結な線形リー群、あるいは、一般の線形リー群の単位 元を含む連結成分の任意の元gは、そのリー代数の有限個の元X1, X2,· · · , Xn を用いて次のように表せる(ただし、表現の仕方が一意とは限らない)。

g=eiX1eiX2· · ·eiXn (3.98) (ii) コンパクトで連結な線形リー群Gの任意の元gはそのリー代数の適 当な元Xを用いてeiXと表せる。従って、リー代数の基底をX1,· · · , Xd とすると、適当な実数パラメータt1,· · · , tdを用いて

g= exp (

i

d i=1

tiXi

)

(3.99) と表せる。

具体的には、U(n), SU(n), SO(n), Sp(2n,R)は連結なコンパクト群であ り、その元は(3.99)のように表すことができる。

以上のようにリー群の元は(3.98)(3.99)のように書けるが、今度は 逆の問題を考える。すなわち、(3.45)-(3.48)を満足する抽象リー代数が与 えられた時、対応するリー群はどの程度定まるだろうか。

Theorem 20 抽象リー代数が与えられると、それに対応する単連結な線 形リー群が一意に定まる。

この単連結な線形リー群を普遍被覆群(universal covering group)という。

Theorem 21 与えられた抽象リー代数に対応する普遍被覆群G˜の適当 な離散的な不変部分群Zを選ぶと、同じ抽象リー代数をもつ連結リー群 Gは商群G/Z˜ と同型になる。

G∼= ˜G/Z. (3.100)

この定理から、ある抽象リー代数から構成される連結リー群は、普遍被覆 群に含まれるすべての離散的な不変部分群を求めることで与えられること が分かる。

例として、2次元回転群SO(2)を考える。この1次元表現はR(x) =eit (0≤t <2π) 1次元抽象リー代数は1で生成される((3.99)式と比較 せよ)t = 2πt = 0と同一視されるので、SO(2)のパラメター空間 は単連結ではない。この1次元抽象リー代数に対応した普遍被覆群は1 次元の並進群である。これは加法群Rに等しく、1次元表現T(x) =eix

(−∞< x < ) をもつ。抽象リー代数はやはり1で生成される。E1 の パラメター空間を2πで分割して、

{2πn≤x <2π(n+ 1), n= 0,±1,· · · } → {0≤t <2π, x= 2πn+t}

なる対応を考えると、これはE1からSO(2)への準同型写像であり、Z :=

{x= 2πn, n= 0,±1,±2,· · · }はその核である。よって、準同型定理によ り E1/Z = SO(2)であることが分かる。

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