• 検索結果がありません。

リー群とリー代数の関係

ドキュメント内 東京大学理学系研究科 上田研究室 (ページ 45-48)

第 3 章 リー群の基礎 41

3.2 リー代数の一般的性質

3.2.1 リー群とリー代数の関係

リー群Gの元gは実の連続パラメータ t := {tn} (n = 1,2,· · ·, d) よって特徴づけられる: g=g(t)。ここで、群の単位元1にはパラメータ t= 0 (すなわち、t1=· · ·=td= 0)が対応しているものとしよう。

g(0) = 1 (3.21)

表3.1: 様々なリー群と対応するリー代数およびその次元。U(n)SU(n) O(n)SO(n)Sp(2n,R)はコンパクト群(パラメータスペースが有界閉 集合な群)、それ以外はノンコンパクト群である。

群の名称 記号 群の元 リー代数の元 次元

複素一般1次変換群 GL(n,C) 複素正則行列 任意の複素行列 2n2

複素特殊1次変換群 SL(n,C) 行列式が1の トレースがゼロの 2n22

複素正則行列 複素行列

実一般1次変換群 GL(n,R) 実正則行列 任意の実行列 n2

実特殊1次変換群 SL(n,R) 行列式が1 トレースがゼロの n21

実正則行列 実行列

ユニタリ群 U(n) ユニタリ行列 エルミート行列 n2 特殊ユニタリ変換群 SU(n) 行列式が1の トレースがゼロの n21

ユニタリ行列 エルミート行列

複素直交群 O(n,C) 複素直交行列 複素交代行列 n(n−1) 直交群 O(n) 実直交行列 実交代行列 n(n−1)/2 特殊直交群 SO(n) 行列式が1 実交代行列 n(n−1)/2

(回転群) 直交行列

シンプレクティック群 Sp(2n,R) 2n次実行列 2n次実交代行列 n(2n+ 1) ATJ A=J XTJ+J X = 0

ローレンツ群 O(3,1) 4次実行列 4次実行列 6 ATgA=g XTg+gX = 0

このとき、群の元の表現である線形演算子もまた同じパラメータによって 記述され、D(t)と書かれる。(3.21)に対応して、表現D(t)

D(0) = 1 (3.22)

を満足するものとする。ここで、右辺の1は表現がn次元の行列のときは nn列の単位行列である。D(t)t= 0 の周りでテイラー展開すると D(dt) = 1 +idtnXn+· · · (3.23) ここで、2度現れる添え字についてはn= 1,2,· · ·, dについて和を取るア インシュタイン規約(Einstein convention)に従うものとする。(3.23)に現 れるXnがリー群の生成子である。これから生成子は

Xn=−i

∂tn

D(t)

t=0 (n= 1,2,· · ·, d) (3.24) で与えられることがわかる。特に、ユニタリ表現に対しては Xn はエル ミート演算子となる。有限のtに対するリー群の表現は無限小変換(3.23)

を繰り返し適用することによって得られ、

D(t) = lim

N→∞

( 1 +itn

NXn )N

=eitnXn (3.25) で与えられる。

(3.24)から、リー代数はリー群の単位元近傍の局所的な性質によって決

まることがわかる。逆に、リー代数はリー群の単位元を含む単連結部分の 全体(これは普遍被覆群と呼ばれる)を決定する5

次元がdの線形リー群は、d個のリー代数の元X1,· · · , Xdから構成さ れ、リー群の各元gd個のパラメータt1,· · · , tdによって特徴づけられ る。リー代数の任意の元Xから構成されるeiXはリー群Gの元であるが、

Gの任意の元gg = eiX と表されるとは限らない。しかし、単位元の 近くではそのようなことが可能である。このことを示そう。パラメータを tn =λxnとスケールし、λ= 0 のときにg(0) = 1となるようにする。λ の微小変化に対して

g(λ+δλ) =g(δλ)g(λ) (3.26) と書ける。実際、群が閉じているためにはg(λ+δλ)g1(λ)は群の要素で なければならないが、今は群の要素は1つのパラメタ―で特徴づけられて いるのでそれはg(δλ)と書かれるはずである。よって(3.26)が得られる。

ここで、g(δλ)≃1 +iδλXと書けるので、

d

dλg(λ) =iXg(λ) (3.27)

この解は

g(λ) =eiλXg(0) (3.28)

で与えられる。g(0) = 1なので、線形リー群の単位元近傍の元は微小パ ラメータtn を用いて次のように書ける。

g= exp (itnXn) (3.29)

しかし、単位元の近傍にない元については必ずしも(3.29)のように書 けるとは限らない。実際、SL(2,R)の元

g(t) =

( −et 0 0 −et

)

(−∞< t <∞) (3.30)

5そして、リー群に含まれる離散部分群を求めてそれに対する商群を作ることで単連結 でない部分を含む連結部分の全体も決定される。

はSL(2,R)のリー代数の元Xを用いてeiλX のように表すことはできな い。この例のように群のパラメータの変域が無限区間にあるものはノンコ ンパクト群という。ノンコンパクト群の元は必ずしもeiλX の形には書け ない。パラメータ変域が有限な群をコンパクト群と言う。

直交群の場合は、その部分群であるSO(n)の元は常に(3.29)の形で書 けるが、行列式が1の部分群はそのようには書けない。SO(n)はO(n) の(単位元に連続的につながっているという意味で)連結部分とも呼ばれ る。(3.30)とは異なり、SO(2)の元

( 1 0 0 1

)

(3.31)

はSO(2)の単位元に連結していることに注意しよう。実際、SO(2)の元を

(

cosθ sinθ sinθ cosθ

)

(3.32) と書くと、θ= 0が単位元、θ=πが(3.31)で、両者はパラメータθによっ て連続的に結び付いている。これはSO(2)がコンパクト群であることに よる。ただし、コンパクト群が必ずしも単連結であるとは限らない6

ドキュメント内 東京大学理学系研究科 上田研究室 (ページ 45-48)