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ディンキン図

ドキュメント内 東京大学理学系研究科 上田研究室 (ページ 88-91)

第 5 章 ルートとウエイト 75

5.4 ディンキン図

となりγ = 0と矛盾する。従って、単純ルートは互いに線形独立である。

このことから、任意の正のルートは単純ルートに非負の整数をかけた線形 結合

ϕ=∑

α

nαα, nα0 (5.67)

で表される。

単純ルートは互いに線形独立なだけではなく、完全である。従って、単 純ルートの数は代数のランク、すなわち、カルタン部分代数の生成子の数 に等しい。実際、もしそうでないとするとすべての単純ルートαと直交 するベクトルχが存在しなければならない:

α に対してaHa, Eα] = 0 (5.68) ところが、χaHaは他のカルタン部分代数の生成子とも交換するので、そ れは代数のすべての生成子と交換してしまい、半単純であることに矛盾す る。こうして、全代数が単純ルートから構成されることが分かる。

例としてSU(3)を考えよう3(5.58)からSU(3)の場合は、2つの単純 ルートα, βは長さが等しく、互いの角度は2π/3である。ルートの長さを 1に規格化すると、

(α)2 = (β)2= 1, (α, β) =1

2 (5.69)

これから、SU(3)2つの単純ルートは α= (1/2,

3/2), β = (1/2,−√

3/2) (5.70)

で与えられることが分かる。α+βはルートであるが、2α+βα+ 2β はルートではない(図5.5参照)。

H1 H2

s sh s

s s

s s

A AA A AAU

AA AAU simple α

simple β

α+β

図 5.5: SU(3)の2つの単純ルートと他のルート。y軸の右側のルートは 正、左側のルートは負である。正のルートは昇演算子、負のルートは降演 算子に対応している。α+βはルートであるが、2α+βα+ 2βはルー トではない。

j j5π/6 - G2

j j3π/4 - SO(5) j j2π/3 - SU(3)

j jπ/2

図5.6: ランク2の単純リー代数のディンキン図。

単純リー代数は単純ルートを与えることによって一意に決定される。一 方、単純ルートは、その長さとルート間の角度を与えることによって決ま る。あるいは、次のカルタン行列(Cartan matrix)を与えることによって 決まる。

Cαβ = 2(α, β)

(β, β) (5.72)

カルタン行列(5.72)の対角成分は明らかにCαα= 2、非対角成分は(5.56), (5.57)より

Cαβ =−n2, Cβα=−n1 (5.73)

これから非対角成分は0,1,2,3しかとれないことが分かる。

リー群 θαβ cos2θαβ n1 n2 Cαβ Cβα カルタン行列 SU(3) 2π/3 14 1 1 1 1

(

2 1

1 2 )

SO(5) 3π/4 24 1 2 2 1 (

2 2

−1 2 )

G2 5π/6 34 1 3 3 1

(

2 3

−1 2 )

一般にランクrのコンパクト単純リー代数の単純ルート系にはr個の丸 印をつないだ図形が1:1に対応する。従って、コンパクト単純リー代数の 分類はあらゆる可能なディンキン図を書き下すことに帰着する。その結果 を下の表に示す。

ルートの内積が正定値(α, α)0および∑

i(α,ei)2 (α, α)より、ディ ンキン図は次の性質を有する(証明は斎藤光 p.255)。

(i) 閉じた図形はない。

(ii)一つの図形の中に3つ以上の2重線、2つ以上の3重線は存在しない。

(iii) 一つの丸印につながる線分は高々3本である。

コンパクト単純リー代数の分類

クラス ランクr リー代数の次元d コンパクト群 Ar 1,2,3,· · · (r+ 1)21 SU(r+ 1) Br 1,2,3,· · · r(2r+ 1) SO(2r+ 1) Cr 1,2,3,· · · r(2r+ 1) Sp(2r,R) Dr 3,4,5,· · · r(2r−1) SO(2r)

Er 6 78 E6

Er 7 133 E7

Er 8 248 E8

F4 4 52 F4

G2 2 14 G2

この表からわかるように、ランクがr= 1,2,3の時は、異なるクラスの ディンキン図が同一のディンキン図を与える場合がある。この場合、異な るクラスのリー代数は同型であり、対応する群は準同型である。従って、

準同型定理により不変部分群(中心)に関する商群の間に同型関係が成立 する。

A1 =B1=C1 : SU(2)/Z2 =SO(3)∼=Sp(2,R)/Z2 (5.74) B2 =C2: SO(5)∼=Sp(4,R)/Z2 (5.75) A3 =D3 : SU(4)/Z2 =SO(6) (5.76) コンパクト群の中心は以下のように一般に巡回群Znである。

SU(n) : Zn (5.77)

SO(2n), Sp(2n,R) : Z2 (5.78)

E6 : Z3 (5.79)

E7 : Z2 (5.80)

上の表のその他の群の中心は1である。

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