ユニット2:サービス・ポートフォリオ管理
2.2 サービス・ポートフォリオにおけるサービス・プロバ イダのサービスの記述、およびビジネス・サービスをITサ
ービスに関連付ける方法
サービス・ポートフォリオ
サービス・ポートフォリオは事業上の価値の面からサービス・プロバイ ダのサービスを説明するものです。サービス・ポートフォリオは、ビジ ネス・ニーズと、それらのニーズに対するサービス・プロバイダの対応 を明確に示しています。事業上の価値の用語(マーケティング用語な ど)は、さまざまなプロバイダのサービスの競争力を比較するのに役 立ちます。サービス・ポートフォリオは、次のような戦略的な問いを明 確にすることで意思決定を支援します。
顧客はなぜこれらのサービスを購入しなければならないの
y
か?顧客はなぜこれらのサービスを我々から購入しなければなら
y
ないのか?価格設定モデルや課金モデルはどのようなものか?
y
自分たちの強みと弱み、優先度、リスクは何か?
y
自分たちのリソースと能力をどのように割り当てるべきか?
y
(出典:『サービスストラテジ』)
組織はサービス指向のプロセスを一連の戦術的プログラムと見なし がちです。サービスの概念的な理解だけで装備し、サービスの成果の 産業化に突き進む組織がよくありますが、その勢いで、組織の変更や プロセス再設計の取り組みを立ち上げることになります。そのような取 り組み自体も重要な最終目標かもしれませんが、定めた規律に従うこ とが不可欠です。
この規律は必須ではありませんが、次のような2つの重要な役割を果 たします。
第一に、規律を定めていると、どのようなサービスを提供する
y
べきかを知らずに組織の設計を実行するといった誤ったステ ップへの警告となる。
第二に、規律を定めていると、サービス・ポートフォリオへの
y
初期のニーズを思い出すことができる。これは、サービス戦略 を設計しサービス投資を管理するうえでしばしば見逃される インプットである。
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My N otes
財務マネージャは、顧客のリスクと報酬の概要に従って投資のポートフォリオを調整します。しかし、その概要に関係なく、達成目標は常に、
受容可能なリスク・レベルで利益を最大化することです。ポートフォリ オは変化する状況に一致していなければなりません。ポートフォリオ の管理には、それに見合ったプラクティスを適用する必要があります。
サービス・ポートフォリオに価値があるのは、戦略と計画立案にとって 明確であると同時に、変更を予測できるからです。
サービス・ポートフォリオ管理
サービス・ポートフォリオ管理は、企業全体のサービスマネジメントへ の投資を統制し、価値を生むようにそれらを管理するための動的な方 法である。
(出典:『サービスストラテジ』)
ここでのキーワードは「方法」です。サービス・ポートフォリオは、サー ビス、アプリケーション、資産、プロジェクトを単に列挙したものだと見 なされることがよくあります。基本的にポートフォリオでは、同様の投 資を、規模、領域、または戦略的価値ごとにグループ分けします。ITポ ートフォリオ管理、プロジェクト・ポートフォリオ管理、SPMの間の違い は、実施の詳細にあります。根本的に、これらはすべてガバナンスのた めの実現ツールです。
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ビジネス・サービス ITサービス
ビジネス・プロセス ITアプリケーシ ョン
管理
人材
ナレッジ
情報
ア プリ ケーション
インフラ ストラ クチャ ワーク フロー
有用性
管理
人材
ナレッジ
情報
アプリ ケーション
インフ ラ ストラクチャ ロジ ック
有用性
サービス・プラットフォーム 可用性
継続性
キャパシティ セキュリティ 保証
サービス・プラットフォーム 可用性
継続性
キャパシティ セキュリティ 保証
ビジネス・サービス ITサービス
ビジネス・プロセス ITアプリケーシ ョン
管理
人材
ナレッジ
情報
ア プリ ケーション
インフラ ストラ クチャ ワーク フロー
有用性
管理
人材
ナレッジ
情報
アプリ ケーション
インフ ラ ストラクチャ ロジ ック
有用性
サービス・プラットフォーム 可用性
継続性
キャパシティ セキュリティ 保証
サービス・プラットフォーム 可用性
継続性
キャパシティ セキュリティ 保証
ビジネス・サービスとITサービス
ビジネス・プロセスは、複数の技術、アプリケーション、地理的範囲、ユーザ間に分散する場合がありますが、
それを束ねているのはデータセンタ1個所です。ビジネス・プロセスを統合するために、ITでは通常ボトムア ップ・アプローチを採用します。これは、ビジネス・プロセスの層では相互作用するように意図されていない アプリケーション・コンポーネントを技術と結び付けるものです。このアプローチでは、まとまりも柔軟性も ないITソリューションとなり、事業の最終目標を満たせません。
より効果的なアプローチは、事業活動を抽象化してモデル化したものに焦点を当てることです。これによっ て、さまざまな事業活動がさまざまな形で表されます。ビジネス・プロセスは、1つのビジネス・サービスまた はビジネス・サービス一式、アプリケーション一式または個別のアプリケーション機能、個別のトランザクシ ョン、履行要素一式などとして表されることがあります。いずれの場合も、そのプロセスは事業の領域に存在 します。
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きめが粗い
きめが細かい
サービス重視
プロセス重視
サービスの詳細度
技術 プロセスの背景 事業
きめが粗い
きめが細かい
サービス重視
プロセス重視
サービスの詳細度
技術 プロセスの背景 事業
(サービスの観点の図には、EAI、ESA、SOAといった略語の定義はありません。)
SOA: Service-oriented Architecture (サービス指向アーキテクチャ)
ESA: Enterprise Services Architecutre
(エンタープライズ・サービス・アーキテクチャ) EAI: Enterprise Application Integration (エンタープライズ・アプリケーション統合)
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サービスの観点
ビジネス・サービスを定義できるのは事業だけです。ITが事業にサー ビスを提供していても、事業がそのサービスを事業内容の一部と見な さない場合、それはITサービスです。サービスが創出する価値を重視 すると、ITサービスとビジネス・サービスの間の境界があいまいになり 始めます。事業の観点またはITの観点を採用するときには、顧客を考 慮する必要があります。ビジネス・サービスであれ、ITサービスであれ、
それぞれのサービスは価値の基盤を提供し、ガバナンス、提供、および サポートを必要とします。結局、ITサービスマネジメント(ITSM)とビジ ネス・サービスマネジメント(BSM)は、サービスマネジメントという同 じ概念からの観点なのです。
ビジネス・サービスマネジメント BSMとは何でしょうか?
ビジネス・サービスマネジメントとは、ITとITが影響を与えるビジネス・
サービスを統治し、モニタし、報告する継続的なプラクティスである。
(出典:『サービスストラテジ』)
ITの優先度は、事業上の価値を生み出す他の推進要因と一致していな ければなりません。ITが事業達成目標に沿ってサービスを体系化する ためには、ビジネス・プロセスやビジネス・サービスにかかわるべきで す。そのためITリーダは、事業オーナとコミュニケーションを取り、求め られる成果を明確に理解する必要があります。
インフラストラクチャの管理とサービスの管理には大きな違いがあり ます。インフラストラクチャの管理ではコンポーネントの運用上の可 用性に注目する必要がありますが、サービスの管理では顧客と事業の ニーズに焦点を当てる必要があります。インフラストラクチャが正しく 機能しているかどうかに関する運用情報だけでは十分ではありませ ん。多くの場合、IT組織は活動を事業達成目標に関連付けたいと考え ていますが、事業の活動とIT実施との関係をどの程度まであらわにす るかについて苦心しています。
最近の組織は、事業パートナと内部でアプリケーションを統合して、エ ンドツーエンドのビジネス・プロセスを自動化することをより重視して います。重要なのは、ビジネス・サービスの運用上の達成目標を実現 することと、それを常に念頭に置いておくことです。BSMは、ITインフラ ストラクチャを事業の観点に適合させやすくするという課題に対処す るのに役立ちます。
サービス・プロバイダは、BSMを通じてビジネス・サービスを管理でき ます。このようにビジネス・サービスに焦点を当てることで、プロバイダ は次のことができるようになります。
インフラストラクチャへの投資および運用活動を事業達成目
y
標に整合させやすくなる。
事業中心の測定基準を策定し、事業が将来のニーズにより簡
y
単に対応できるようにする。
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BSMの主要な利点は、因果関係に基づいて、サービス資産を関連するビジネス・サービスに結び付けるこ とです。そうすると、ITインフラストラクチャの視点が、資産とサービスの関連性を示す依存関係のモデルへ と移ります。これにより、インフラストラクチャのイベントを事業成果に結び付けることができるようになりま す。
サービス
ビジネス・
プロセス
サービス
リソースと能力
要員
抽象化または混成 分解
インタ ーネット サービス
ビジネス・
プロセス
サービス
リソースと能力
要員
抽象化または混成 分解
インタ ーネット