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2.3.3 規定の制・改正の経緯

電気温床等の施設については,農業技術の改良進歩に伴い,分野においても電気を動 力源として利用するにとどまらず,電気による発熱を利用する装置が用いられるように なった。

そのため,昭和34年に「電気工作物規程」により,野菜,水稲,甘藷等の育苗,草花,

果実等の栽培または養蚕,ふ卵,育すうなどの用途に用いられる電熱装置(これらを総 称して「電気温床等」 )について規定している。

その後,昭和38年の改正では,寒冷地などの家畜小屋などの暖房用として,発熱線を コンクリート内に埋め込む工事方法が追加された。

また,昭和47年の改正では,電気温床線の水中,泥中等に施設する場合の基準を整備 した。

更に,昭和61年の改正では,発熱線の離隔について,今まで規定されていた弱電流電 線に追加して,光ファイバケーブルに関する取扱いを規定するとともに,管の厚さが2㎜

以下の合成樹脂製電線管の使用について中止し,現在に至っている。

制・改正の経緯,及びその概要を整理したので以下に説明する。

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昭和34年 ○「電気工作物規程」の改正により,新規に制定

昭和38年 ○「電気工作物規程」の改正により,発熱線をコンクリート内に埋め込む工 事方法を規定

昭和40年 ○「電気設備に関する技術基準を定める省令」の制定により,第243条に制定

昭和47年 ○「電気設備に関する技術基準を定める省令」の改正により,電気温床線を 水中,泥中などに施設できるように整備(条文は第244条に変更)

昭和52年 ○「電気設備に関する技術基準を定める省令」の改正により,観賞用植物用 ヒーターが電気用品取締法の適用を受けるものとなったことから,これを 本条の適用から除外

昭和61年 ○「電気設備に関する技術基準を定める省令」の改正により,発熱線と光フ ァイバケーブルとの離隔距離を規程

合成樹脂管工事において,管の厚さが2mm未満の合成樹脂製電線管について は,管の厚さが薄いので使用を中止(第193条第2項第3号関連)

平成9年 ○「電気設備に関する技術基準を定める省令」の全面改正により, 第 230条に制定

詳細は,添付資料1「解釈第230条【電気温床等の施設】制・改正の概要と理由」を参 照のこと。

2.3.4 制定内容の根拠

解釈第230条【電気温床等の施設】の規定内容の根拠に関して,概要を以下に説明する。

(1)第1項第一号

「電気温床等に電気を供給する電路の対地電圧を300V以下であること」としている。

従来の「電気工作物規程」では,低圧の範囲を300V以下としており,これを準用し たと推定される。(昭和40年までは,300Vではなく,低圧と規定していた。)

また,「電気工作物規程(昭和38年9月30日 東京図書㈱)」の解説によれば,動力 等他の用途の電源(200V回路からの供給も考慮)を利用することにより電気の多角 利用ができる点を考慮し,使用上の便宜を図って300V以下(制定時は低圧)とした と記載されている。

なお,「電気工作物規程(昭和38年9月30日 東京図書㈱)」の解説によれば,「保 安上は150V以下が望ましい。」とされている。

(2)第1項第四号

「発熱線の温度が80℃を超えないように施設すること」としている。

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昭和38年「電気工作物規程」(東京図書㈱)の解説によれば,発熱線のビニル被覆 が熱により急激な劣化または軟化を招かないために,目安として発熱線の表面温度 が80℃を超えない(60℃以下となるのが望ましい)ように温度制限を設けたもので ある。

ビニル製品の多くが,常用耐熱温度の上限が80℃前後となっているが,これを根拠 に表面温度の上限を80℃に設定されたかどうかの根拠となる資料は見当たらない。

なお,解釈第228条(フロアヒーティング等の電熱装置の施設)では,「電気設備の 技術基準(平成21年3月31日 文一総合出版)」解説において,床面の仕上材又は床 上に置かれた物が損傷又は火災を生じないように80℃としている。とされており,

火災防止の観点からも80℃とされたと推定される。

(3)第2項第一号

「発熱線相互の間隔は、3cm(箱内に施設する場合は、2cm)以上であること。た だし、発熱線を箱内に施設する場合であって、発熱線相互の間に40cm以下ごとに絶 縁性、難燃性及び耐水性のある隔離物を設ける場合は、その間隔を1.5cmまで減ず ることができる。」としている。

「電気工作物規程(昭和38年9月30日 東京図書㈱)」の解説によれば,「がいし 引き工事(解釈第175条)に準じた工事方法を要求しているが,発熱線相互の間隔等 を緩和している。」とされているが,がいし引き工事(解釈第175条)において,電 線相互の間隔は6㎝以上と定められているものを,どのような解釈で「3㎝」「2㎝」

「40㎝m」「1.5㎝」に緩和した根拠となる資料は見当たらない。

(4)第2項第一号

「発熱線と造営材との離隔距離は、2.5cm以上であること」としている。

「電気工作物規程(昭和38年9月30日 東京図書㈱)」の解説によれば,「がいし引 き工事(解釈第175条)に準じた工事方法を要求している。」とされており,がいし 引き工事(解釈第175条)の「電線と造営材との離隔距離は、使用電圧が300V以下の 場合は2.5cm以上、300Vを超える場合は4.5cm(乾燥した場所に施設する場合は、

2.5cm)以上であること。」と定められていることから,2.5㎝の値はこの条文を準 用したと推定される。

(5)第2項第一号

「発熱線を箱内に施設する場合は、発熱線と箱の構成材との離隔距離は、1㎝以上で あること」としている。

制定時の解説によれば,「がいし引き工事(解釈第175条)に準じた工事方法を要求 している。」とされているが,がいし引き工事(解釈第175条)では,箱等の構成材 との離隔に該当する項目はなく,単に箱の構成材に電線を接触させないために,具 体的な距離として1㎝と規定したとも考えられるが,根拠となる資料は見当たらない。

なお,過去の「がいし引き露出工事」に関する条文の中では,クリート碍子の使

用を想定して,電線と造営材との離隔距離を6mm以上とするという規定が明治44年か

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ら制定されていたが,昭和47年にそれまで別々の条文であった「がいし引き露出工 事」と「がいし引きいんぺい工事」を,現在の「がいし引き工事(解釈第175条)」

に統合した時点で,電線と造営材との離隔距離は2.5㎝と統一されており,過去の2 つの条文にも1㎝という値は出てこないことから,これらの条文との関連は考えられ ない。

(6)第2項第一号

「発熱線の支持点間の距離は、1m以下であること。ただし、発熱線相互の間隔が 6㎝以上の場合は、2m以下とすることができる」としている。

昭和38年「電気工作物規程」(東京図書㈱)の解説によれば,「がいし引き工事(解 釈第175条)に準じた工事方法を要求しているが,発熱線相互の間隔等を緩和してい る。」とされているが,がいし引き工事(解釈第175条)では,「電線相互の間隔は6

㎝以上」「電線の支持点間の距離は,電線を造営材の上面又は側面に沿って取り付け る場合は、2m以下であること」とされており,ただし書き以降は,がいし引き工事を 準用した物となっているが,第230条においては,電熱温床線の電線相互の間隔が3㎝

以下となっていることから,支持点間の距離も単純に半分の1mとしたと推定できるが,

根拠となる資料は見当たらない。

2.3.5 コメント

解釈第230条は,他条文(解釈第40条,解釈第201条,解釈第215条)にも関連すること から,今後当該条文を見直す必要がある場合は,他条文との整合性を十分に考慮して行 う必要がある。

以 上

(添付資料)

添付資料1 解釈第 230 条【電気温床等の施設】制・改正の概要と理由

(出典)

1. 最新 電気工作物規程解説 (昭和34年 7月30日 商工出版社 ) 2. 最新 電気工作物規程解説 (昭和38年 9月30日 東京図書 ) 3. 解説 電気設備の技術基準 (昭和40年 10月10日 東京図書 ) 4. 解説 電気設備の技術基準 (昭和47年 4月10日 総合図書 ) 5. 解説 電気設備の技術基準(第2版) (昭和52年 4月30日 文一総合出版)

6. 解説 電気設備の技術基準(第4版) (昭和53年 10月30日 文一総合出版)

7. 解説 電気設備の技術基準(第5版) (昭和61年 9月20日 文一総合出版)

8. 解説 電気設備の技術基準(第8版) (平成10年 10月23日 文一総合出版)

9. 解説 電気設備の技術基準(第13版) (平成20年 3月31日 文一総合出版)

10. 解説 電気設備の技術基準(第14版) (平成21年 3月31日 文一総合出版)

Ⅲ - 2- 47

解釈230条【電気温床等の施設】制・改正の概要と理由

年月日 規 定 制・改正の概要 制・改正の理由

M29.5.9 「電気事業取締規則」

(逓信省令第5号)

規定なし

M30.6.23 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第14号)

規定なし M35.8.22 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第36号)

規定なし

M38.12.4 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第77号)

規定なし

M39.8.23 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第44号)

規定なし

M41.7.11 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第33号)

規定なし

M42.10.25 改正「電気事業取締規則」

(逓信省令第36号)

規定なし

M44.9.5 「電気工事規程」

(逓信省令第26号)

規定なし

T3.1.4 改正「電気工事規程」

(逓信省令第1号)

規定なし

T4.2.23 改正「電気工事規程」

(逓信省令第14号)

規定なし

T8.10.13 「電気工作物規程」

(逓信省令第85号)

規定なし

T13.3.3 改正「電気工作物規程」

(逓信省令第3号)

規定なし

T14.11.13 改正「電気工作物規程」

(逓信省令第84号)

規定なし

S7.11.21 改正「電気工作物規程」

(逓信省令第53号)

規定なし

S12.8.2 改正「電気工作物規程」

(逓信省令第51号)

規定なし

S14.1.19 「電気工作物臨時特例」(逓 信省令第1号)

規定なし

S24.12.29 改正「電気工作物規程」

(通産省令第76号)

規定なし

S29.4.1 改正「電気工作物規程」

(通産省令第13号)

規定なし

S30.11.17 改正「電気工作物規程」

(通産省令第60号)

規定なし

S32.3.23 改正「電気工作物規程」

(通産省令第8号)

規定なし

S34.5.1 改正「電気工作物規程」

(通産省令第47号)

(電気温床等の施設)

第186条の6 電気温床等(植物の栽培または養蚕、ふ卵、育すう等の用に供する電熱 装置をいう。以下本条において同じ。 )は、次の各号により、かつ、危険のおそれがない ように施設しなければならない。

一 発熱体は、箱内もしくは室内または地中に施設すること。

二 電気温床等に電気を供給する電路および発熱体の使用電圧は、低圧とすること。

三 発熱体は、別に告示する規格に適合するものであること。

四 発熱体は、その温度が八十度をこえないものであること。

五 発熱体相互または発熱体と電線とを接続する場合は、次によること。

イ 発熱体には、口出線以外の部分において接続点を設けないこと。

【新規:制定の経緯】

農業技術の改良進歩に伴い,近年この分野においても電気を動力源として利用するにと どまらず,電気による発熱を利用する装置が用いられるようになった。

本条では,野菜,水稲,甘藷等の育苗,草花,果実等の栽培または養蚕,ふ卵育すうな どの用途に用いられる電熱装置(これらを総称して「電気温床等」といつている。 )につ いで規定している。

★:各条文の解説はS38.7.10の欄に記載

添 付 資 料 1

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