124-1表 建造物の造
二 特別高圧架空電線と建造物との離隔距離は,前項第号の規定に準ずること。
1.1.3 規定の制・改正の経緯
解釈第124条【特別高圧架空電線と建造物との接近】 (第1項及び第2項)の制・改正の 経緯について,当該規定を制定した大正8年の「電気工作物規程」制定時までさかのぼ って整理したため,この概要を以下に説明する。
大正 8年 ○ 電圧が15kV以下で建造物が送電線と水平距離10尺以内に施設される 場合の施設条件の中で10尺(3.03m)以上と規定された。
大正14年 ○ 単位を尺貫法からメ-トル法に変更された。 (10尺→3m)
昭和 7年 ○ 電圧が15kVを超える場合の離隔値を5mと規定された。(15kV以下3m)
昭和29年 ○ 離隔値を35kV以下と35kV超過に区分して規定された。(35kV以下3m,
35kV超過5m)
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昭和34年 ○ 35kV超過の離隔値を電圧値に応じ算定する規定方法に変更された。
(3mに35kVを超える10kV又はその端数毎に15cmを加えた値)
昭和40年 ○ 電気設備に関する技術基準制定に伴い第133条【特別高圧架空電線と 建造物の接近】として条文化された。
昭和47年 ○ 20kV以下級架空ケーブルの進展により,架空ケーブル工事の基準を定 めたことに伴い,35,000V以下の特別高圧架空ケーブルの場合の建造物 との離隔距離の緩和が新たに規定された。
昭和57年 ○ 35,000V以下の特別高圧架空電線路の電線として特別高圧絶縁電線を 使用する場合の建造物との離隔距離の緩和が新たに規定された。
平成 9年 ○ 条文構成の変更に伴い第133条→第124条へ変更された。また合わせて 第1項第二号(35,000Vを超えるものを除く)と第1項第三号が第1項第二 号に統合された。
○ 使用電圧が35kVを超える電線路にケーブルを使用する場合が追加さ れた。
表1 特別高圧架空電線と建造物との接近(第 1 項及び第 2 項)に関する規定の主な制・改正経緯
制・改正年 条 文 規定内容 備 考
大正 8 年
「 電 気 工 作物規程」
第 50 条,
細則 38 条
○電圧が15kV以下で建造物が送電線と水平距離10尺以内に施 設される場合の施設条件の中で10尺(3.03m)以上と規定
大正 14 年
「 電 気 工 作物規程」
第 50 条,
細則 38 条
○単位を尺貫法からメ-トル法に変更
・10尺→3m
昭和 34 年
「 電 気 工 作物規程」
第 99 条
○35kV超過の離隔値を電圧値に応じ算定する規定方法に変更
・3mに35kVを超える10kV又はその端数毎に15cmを加えた値
昭和 40 年
「 電 気 設 備 に 関 す る 技 術 基 準 を 定 め る省令」
第 133 条
○電気設備に関する技術基準制定に伴い,【特別高圧架空電線 と建造物の接近】を条文化
Ⅲ-1-5
制・改正年 条 文 規定内容 備 考
昭和 47 年
「 技 術 基 準」
第 133 条
○35,000V以下の特別高圧架空ケーブルの場合の建造物との離 隔距離の緩和が新たに規定
・上部造営材の上方 1.2m
・上部造営材の側方または下方 50cm
・その他の造営材 50cm
昭和 57 年
「 技 術 基 準」
第 133 条
○35,000V以下の特別高圧架空電線路の電線として特別高圧絶 縁電線を使用する場合の建造物との離隔距離の緩和が新た に規定
・上部造営材の上方 2.5m
・上部造営材の側方または下方 1.5m(電線に人が容易に触 れるおそれがないように施設する場合は1m)
・その他の造営材 1.5m(電線に人が容易に触れるおそれが ないように施設する場合は1m)
平成 9 年
「 技 術 基 準の解釈」
第 124 条
○使用電圧が35kVを超える電線路にケーブルを使用する場合 が追加
詳細は,添付資料1「解釈第124条【特別高圧架空電線と建造物との接近】(第1項及 び第2項)制・改正の概要と理由」を参照のこと。
1.1.4 規定内容の根拠
解釈第124条【特別高圧架空電線と建造物との接近】 (第1項及び第2項)の規定内容の 根拠に関して,概要を以下に説明する。
(1)建造物と第1次接近状態に施設される場合で使用電圧が35,000V以下の場合のケー ブルに係る離隔距離(第1項第二号) 〔1.2m,50cm〕
「JEAC6001-1972 架空送電規程(昭和47年6月30日 日本電気協会) 」によれば,第 12-1条の解説に「35kV以下のケーブルを使用する特別高圧架空電線の場合,建造物 の上部造営材の側方または下方,その他の造営材との離隔距離は,一般に人が触れ る危険性がないので,0.5m以上とした。しかし,建造物の上部造営材の上方につい ては,一般に人が触れる危険があるので1.2m以上とした。」と記載されている。
また,「35kV以下の架空電線路(ケーブル)に関する技術基準改正案(昭和45年9
月 電気技術基準調査委員会)」によれば,第133条の改正理由で「ケーブルの離隔距
離については,ケーブルは単独で必要な絶縁強度を有しており,さらに金属製のしゃ
へい層を接地することにしているので,あえて離隔距離を定めなくとも十分安全で
あるが,あまり接近すると接触による損傷,作業時の支障などを生ずることが考えら
れるので,建造物に対して高圧架空ケーブルに準じた離隔距離を規定している。」と
記載されている。 (本改正案では上部造営材の上方が1.0m,側方または下方およびそ
の他の造営材は40cmと記載されているが,改正はそれぞれ1.2m,50cmで行われた)
Ⅲ-1-6
また,「電気設備に関する技術基準要望書(案)別冊(平成8年9月 電気技術基準 調査委員会 送電専門委員会)」によれば,「建造物等との離隔距離」の「現行電技 の規定概要」に建造物とケーブルの離隔距離についての考察がなされてあり,これ によると「①基本的には接触しなければよいとの考え方に立ち,電線の不規則動揺 等に対する余裕(50cm)を考慮。②危険はないものの,基本的には公衆が触れるこ とは好ましくないので,屋根の上部等触れる可能性のある場合には触れないよう離 隔を大きくする。(但し,人が立ったり物を持った状況までは考慮しない。)」と記載 されている。
以上のことから,数値根拠が明確に記載されている資料は見当たらないが,1.2m,
50cmそれぞれの値は,当時既に規定されていた第82条(低高圧架空電線と建造物と の接近)の数値との整合性を考慮のうえ,この値に裕度を見込み決定したものと推 定される。
なお,第82条の数値根拠については「解説 電気設備の技術基準(第1版)(昭和 40年10月10日 東京図書)」第82条解説によれば「この値は,電気施設技術基準調査 委員会(外線専門委員会)の答申を基として定められたもので,原則として低圧の 場合は電線に(中略)ケーブルを用いたときは裸線の場合の1/3まで離隔距離を短縮 できることとし,また高圧の場合は電線に(中略)ケーブルを用いたときは1/3とし ている。しかし,建造物の上部造営材においては,あまり近づけることは一般に人 が触れる危険性もあるので(中略)ケーブル(中略)を用いた場合にのみ裸線の1/2 に短縮できることになっている。」と記載されている。
表2
項 目 ケーブル 裸線
特別高圧 低圧・高圧 低圧・高圧 上部造営材 上 方 1.2m 1.0m 2.0m
側方・下方 50cm 40cm 1.2m
その他の造営材 50cm 40cm 1.2m