三 (略)
Ⅲ-1-108
1.8.3 規定の制・改正の経緯
解釈第 131 条【特別高圧架空電線と植物との離隔距離】 (第一号)の制・改正の経緯に ついて,当該規定が制定された明治 44 年の「電気工事規程」制定当時までさかのぼって 整理したため,この概要を以下に説明する。
明治 44 年 ○ 第 57 条として条文化された。この当時は裸線と植物との離隔距離につ いてのみ規定しており,高圧絶縁電線についての規定はなかった。
昭和 47 年 ○ 使用電圧が 35kV 以下の特別高圧架空電線に高圧絶縁電線又はケーブル を使用する場合の離隔距離が緩和された。
○ 「解説 電気設備の技術基準(昭和47年4月10日 総合図書)」によれば,
第141条の解説に「特別高圧架空電線に高圧絶縁電線を使用する場合は,
2mを50cmに緩和できる(第一号)。この場合の高圧絶縁電線とは,第6条で 規定するものであるが,耐電圧試験については使用電圧に対応した電圧で 試験すべきである。これは○
47基準で追加されたもので,特別高圧絶縁電線 の規格が定められていない関係から暫定的に高圧絶縁電線としているの である。 」と記載されている。
昭和 57 年 ○ 使用電圧が 35kV 以下の特別高圧架空電線に特別高圧絶縁電線を使用す る場合の離隔距離が緩和された。
○ 「改正点解説付 電気設備技術基準(昭和 57 年 2 月 20 日 日本電気協 会) 」によれば,第 141 条の解説に「第 133 条(特別高圧架空電線と建 造物との接近)と同様,35kV 以下の特別高圧架空電線路の電線として 特別高圧絶縁電線を使用する場合の離隔距離が新たに追加規定された。
本文は,第 135 条(特別高圧架空電線と索道との接近又は交さ)及び第 136 条(特別高圧架空電線路と架空弱電流電線等との交さ)の改正に伴 い引用条文を変更したのみで内容に変更はない。第一号は,表現方法の 変更のみで内容に変更はない。 」と記載されている。
平成 9 年 ○ 条文整理に伴い第 141 条→第 131 条へ変更され,現在に至る。
○ 使用電圧が 35kV を超える特別高圧架空電線にケーブルを使用する場合
の離隔が追加された。
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表 1 特別高圧架空電線と植物との離隔距離(第一号)に関する規定の主な制・改正経緯
制・改正年 条 文 規定内容 備考
明治 44 年
「 電 気 工 事 規程」
第 57 条
【特別高圧架空電線と植物との離隔距離を制定】
○ 制定当時は裸線と植物との離隔距離についてのみ規定
昭和 47 年 「技術基準」
第 141 条
【高圧絶縁電線又はケーブルを使用する場合の離隔距離を緩和】
○ 使用電圧が 35,000V 以下の特別高圧架空電線に高圧絶縁電線を 使用する場合の植物との離隔距離を 2m⇒50cm に緩和
○ 使用電圧が 35,000V 以下の特別高圧架空電線にケーブルを使用 する場合は植物に接触しないように施設することに緩和
昭和 57 年 「技術基準」
第 141 条
【特別高圧絶縁電線を使用する場合の離隔を追加】
○ 使用電圧が 35,000V 以下の特別高圧架空電線に特別高圧絶縁電 線を使用する場合は植物に接触しないように施設することに 緩和
平成 9 年
「 技 術 基 準 の解釈」
第 131 条
【ケーブルを使用する場合の離隔を緩和】
○ 使用電圧が 35,000V を超え 100,000V 以下の特別高圧架空電線に ケーブルを使用する場合は植物に接触しないように施設するこ とを追加
詳細は,添付資料1「解釈第 131 条【特別高圧架空電線と植物との離隔距離】制・
改正の概要と理由」を参照のこと。
1.8.4 規定内容の根拠
解釈第 131 条【特別高圧架空電線と植物との離隔距離】 (第一号)の規定内容の根拠に 関して,概要を以下に説明する。
(1)
使用電圧が 35,000V 以下の場合の高圧絶縁電線に係る離隔距離(第一号) 〔50cm〕
「JEAC6001-1972 架空送電規程(昭和 47 年 6 月 30 日 日本電気協会)」によれば,
第 12-8 条の解説に「35kV 以下の特別高圧架空電線に高圧絶縁電線を使用する場合 には,かなりの絶縁耐力を期待できるが経年劣化など若干不明な点もあるので,実 際上支障がない値として 0.5m の離隔距離を規定した。」と記載されているが,この 数値の根拠となる資料は見当たらない。
「35kV 以下の架空電線路(ケーブル)に関する技術基準改正案(昭和 45 年 9 月 電気技術基準調査委員会 配電専門委員会)」の改正理由によれば,「35kV 以下の架 空電線に高圧絶縁電線を使用した場合は絶縁電線による絶縁効果が十分あるので 20cm の離隔距離を保てばよいこととしている。 」と記載されている。
(本改正案では 20cm と記載されているが,昭和 47 年の改正は 50cm で行われた。)
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一方,低高圧は「解説 電気設備の技術基準(昭和 47 年 4 月 10 日 総合図書)」
の第 95 条【低高圧架空電線と植物との離隔距離】に「(抜粋)低圧架空電線または 高圧架空電線と植物との離隔距離は,低圧架空電線にあっては 30cm(電線が低圧絶 縁電線または多心型電線である場合は,20cm)以上,高圧架空電線にあっては 60cm 以上でなければならない。ただし,低圧架空電線が高圧絶縁電線,ケーブルもしく は低圧防護具に収めた絶縁電線等である場合もしくは高圧架空電線が高圧絶縁電 線もしくはケーブルである場合において低圧架空電線もしくは高圧架空電線を植 物に接触しないように施設するときはこの限りでない。 」と規定されている。
これらの離隔距離(昭和 47 年改正時)を整理すると下表のとおりとなる。
表2
使用電圧使用電線
35kV以下の
特別高圧 高 圧 低 圧
裸 線
低 圧 架 空 電 線 30cm
高 圧 架 空 電 線 60cm ○
特 別 高 圧 架 空 電 線 2.0m ○ ○
絶縁電線
低 圧 絶 縁 電 線
多 心 型 電 線 20cm
高 圧 絶 縁 電 線 50cm ○ ○
特 別 高 圧 絶 縁 電 線
ケーブル - ○ ○ ○
※ :上表の“○”は「植物に接触しないように施設する」を示す。
以上より,使用電圧が 35kV 以下の特別高圧架空電線に高圧絶縁電線を使用する場
合の植物との離隔距離を 50cm とした根拠は, 「JEAC6001-1972 架空送電規程(昭和
47 年 6 月 30 日 日本電気協会) 」の解説に「実際上支障がない値として 50cm の離隔
距離を規定した。」と記載されており,裸線と同様,絶縁電線も使用電圧で離隔距離
を区分することとし,実際上支障のない値として 50cm の離隔距離を規定したと推定
される。
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ここで,現行の離隔距離を整理すると下表のとおりとなる。
表3
使用電圧使用電線
35kV以下の
特別高圧 高 圧 低 圧
裸 線
低 圧 架 空 電 線 ○
高 圧 架 空 電 線 ○ ○
特 別 高 圧 架 空 電 線 2.0m ○ ○
絶縁電線
低 圧 絶 縁 電 線
多 心 型 電 線 ○
高 圧 絶 縁 電 線 50cm ○ ○
特 別 高 圧 絶 縁 電 線 ○ ○ ○
ケーブル - ○ ○ ○