8 土地属性に基づく多様な再生可能エネルギーポテンシャルの分類と定量化
8.2 再生可能エネルギーポテンシャルの属性分類評価
8.2.2 風力ポテンシャルの属性分類評価結果
風力ポテンシャルの属性分類評価結果をTable 8-1に示した。Table 8-1から、日本の風 力ポテンシャルの特徴について分析した。まず、標高について、標高が100m以上1000m 未満の地域には、年間平均風速が7.0m/s以上の風力ポテンシャルが多く賦存しており、よ り風況が良好な傾向がみられた。
次に各種指定地域では、日本の風力ポテンシャルにおいて大きな割合を占めるのは森林 地域のポテンシャルとなった。日本の風力ポテンシャルの約 158,000GWh に対して、約
100,000GWh が森林地域に評価された。さらにこのポテンシャルは地域森林計画対象民有
林に約40,200GWhが、保安林に約34,600GWhが、国有林に約25,000GWhが評価された。
このほかには、自然公園に約 26,600GWh、農業地域に約 14,400GWh、鳥獣保護区に
12,500GWhのポテンシャルが評価された。これらの指定地域は第7章で述べたように、日
本の国土面積に占める割合が大きく、その結果、風力ポテンシャルの多くもこれらの地域 に賦存する結果となった。
さらに、それらのポテンシャルの詳細をみると、森林地域の風力ポテンシャルはその多 くが、標高100m以上1000m未満の高台に賦存する結果となった。同様に、鳥獣保護区や 自然公園のポテンシャルも標高100m以上1000m未満の高台に多く評価された。またさら に、これら高台のポテンシャルはその多くが、傾斜10度以上20度未満の地形下にあるこ とを示した。そのため、これらの地域での開発は平坦な地形下での風力開発と比較して初 期投資コストが多くかかる可能性があると考えられる。また、森林地域の中で地域森林計 画対象民有林では、標高100m未満で傾斜10度未満の地域にも大きな風力ポテンシャルが 評価された。しかし、これらのポテンシャルは居住地域から500m以上1000m未満の地域 に分布しており、地域によってはゾーニングによって風車の開発が禁止され得る地域でも あると考えられる。同様に農業地域の農用地区域でも平坦でかつ居住地域に近い風力ポテ ンシャルが多く評価された。
以上のように、日本では自然公園、森林地域、農業地域に多くの風力ポテンシャルが評 価された。これらの指定地域では、それぞれ開発に対する規制があるため、それらにのっ とった開発計画が必要となると考えられる。この点も踏まえると活用までのプロセスを考 えた場合、標高や傾斜が大きく、環境保護の関心も高く、規制が存在する自然公園におい て大規模な開発が進む可能性は少ないと考えられる。その一方で森林地域や農業地域では、
平坦な地域の風力ポテンシャルも多く、ポテンシャルの活用が期待される。しかし、これ
117 らのポテンシャルは居住地域の近くに賦存しているため、風力発電の導入の際には、人間 生活への影響が少なくなるような配慮が必要になると考えられる。さらに、農用地区域で は農地転用といった手続きも必要になる。このように、風力ポテンシャルを日本全体の視 点から俯瞰した場合、風力発電への導入障壁が全くないポテンシャルというのはなかなか 存在しない現状があると考えられる。むしろ、平坦な地域への導入と居住地域との関連、
広大な森林地域への導入と傾斜が大きいことによる初期投資コスト増や、森林開発手続き など、メリットとデメリットのトレードオフを勘案しながら、活用を検討すべき風力ポテ ンシャルがほとんどである。さらにそのメリットやデメリットもポテンシャルが持つ性質 によって様々である。
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Table 8-1風力ポテンシャルの属性分類評価結果
注)一部、細区分合計の総和が指定合計と一致しない所があるが、これは表中の数字を小 数点第1位の四捨五入によって整数表示しているためである。
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