6.1 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価の考察
第 4 章では、市町村規模の再生可能エネルギーポテンシャルについて、空間的なポテン シャルの分布の分析によって市町村内のポテンシャルの分布を明らかにするとともに、モ ンテカルロ法を用いたポテンシャルの分析によって確率分布をもつポテンシャル量を明ら かにすることを可能にした。しかし、市町村の限られた範囲内での評価のため、より広い 視点から市町村の特徴を相対的に把握することはできなかった。
第 5 章では、より広域な視点に立って定量的な評価を実施することで、各市区町村の特 徴を相対的に明らかにすることを可能にした。導入状況との比較からは、ポテンシャルが 大きな市区町村では再生可能エネルギーの発電設備も多い傾向を示したことから、本評価 法を用いて一定条件下で再生可能エネルギーの利用可能性の総量としてポテンシャルを評 価することによって、各市区町村の再生可能エネルギーの利用可能性を把握することが可 能になると考えられる。しかし、一定条件下で定量化された再生可能エネルギーポテンシ ャルは、活用するためには、発電コストや国土利用計画における開発の規制、土地の取得 など様々な全国的な課題のほかに、各地域における様々な課題を解決する必要があると考 えられる。それぞれのポテンシャル評価では、対象地域の特徴を明らかにするという分析 の目的を達成できた一方で、明らかにできない部分(デメリット)も存在した。
再生可能エネルルギーポテンシャルを定量的に評価する上では、その評価方法における 恣意性が存在しうるため、評価結果を基にした議論が困難になることが考えられる。これ に対して本研究では、第4章、第5章の結果から、再生可能エネルギーポテンシャル評価 結果の運用方法として、様々な評価方法のメリットとデメリットを理解し、評価や分析の 目的に応じた評価法を選択し、可能であれば複数の評価結果をもとに、地域の特徴を分析 することが望ましいと考える。
6.2 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価の課題と解決策
現在、環境省でも再生可能エネルギーポテンシャル評価が実施され、日本に再生可能エ ネルギーの大きなポテンシャルが存在することは明らかになりつつある。しかし、未だど のようにポテンシャルを活用していくべきかは明らかにされていない。本研究の第 5 章で も、一定条件下で定量化された再生可能エネルギーポテンシャルは、活用するためには、
発電コストや国土利用計画における開発の規制、土地の取得など様々な全国的な課題のほ かに、各地域における様々な課題を解決する必要があるとの課題を指摘した。今後は、再 生可能エネルギーのポテンシャルの活用方法を検討するための方法が必要である。
(1) 課題:多様なポテンシャルの存在
これまでの再生可能エネルギーポテンシャル評価法を顧みると、従来の評価法の特徴は、
経済性や開発規制に関する様々な条件を設定し、「有望な(開発可能性の高い)」ポテンシ ャルを発見して評価することにあった。
例えば、それぞれ独立に検討されていた従来の再生可能エネルギーの導入プロジェクト
76 における評価では、対象地域において経済性や開発規制の観点からもっとも有望な地点を 発見することは、プロジェクトにとって重要であったと考える。このような観点から抽出 された地域では、想定される様々な規制や経済性の問題を事前に控除されていることで、
導入の検討が容易であると考えられる。しかし、そのような評価で有望でないと判断され た地域に将来的に全く再生可能エネルギーの利用可能性が存在しないわけではない。
これに対して、環境省のポテンシャル評価や第 5 章の評価のように、将来的な利用可能 性も考慮に入れて一定条件下で定量化された再生可能エネルギーポテンシャルは、大きな 量が評価される一方で、それらを活用するためには発電コストや国土利用計画における開 発の規制、土地の取得など様々な全国的な課題のほかに、各地域における様々な課題を解 決する必要がある。これらの必要な活用方策が異なるポテンシャルを一括して一つの定義 されたポテンシャルとして評価していることは、異なるステークホルダーがいる中での議 論を複雑にし、ポテンシャルの具体的な活用の議論を遅らせている原因の一つとなってい ると考えられる。
再生可能エネルギーのポテンシャルには、たとえ同じエネルギー種であっても、様々な 性質・状態のポテンシャルが賦存しており、それぞれの性質や状態に応じたポテンシャル の活用方法を検討していく必要がある。例えば、同じ風力エネルギー密度のポテンシャル が農業地域と、森林地域に存在していたとする。これらを発電コストという性質で見れば、
二つの間に大きな差はないと考えられる。しかし、実際にはそれぞれの地域の開発までに 必要な手続き、周辺住民への影響、地形など様々な要素の違いがあると考えられる。
これらの多様なポテンシャルに対して、「開発の条件に適合するもっとも有望な地点を抽 出すれば、導入の検討は容易であるが、一部のポテンシャルの活用にしかつながらない可 能性がある」、そして「将来的な利用可能性も考慮に入れて一定条件下で定量化された再生 可能エネルギーポテンシャルは、大きな量が評価される一方で、多様なポテンシャルを一 括して一つの定義されたポテンシャルとして議論しているため、導入のイメージが曖昧に なってしまう」と考えられる。
(2) 解決策:多様なポテンシャルの分類と定量的評価
第 1 章でも述べたように再生可能エネルギーの大規模導入が前提となろうとしている現 在、地域内でのポテンシャル活用の最適化(最大化)、環境影響の最小化といった地域全体 でのポテンシャルと国土利用のマネジメントが求められつつある。この地域全体での再生 可能エネルギーの利用方策を考える上では、多様なポテンシャルに対して、どの地域に、
どの程度、どのエネルギーを、どうやって導入するか等、非常に多様な導入の可能性を検 討する必要がある。このような将来的な活用可能性も含めて多様な導入方策を検討するた めには、再生可能エネルギーポテンシャルの多様性を考慮して、多様なポテンシャルの分 類と定量的評価を行い、それぞれのポテンシャル分類ごとに活用方策を検討することが必 要であると考える。
6.3 本研究の提案
そこで、大規模かつ多様な再生可能エネルギー利用の可能性についてより具体的に分析
77 するために、本研究では、多様なポテンシャルの分類と定量的評価を試みた。この目的の もと、下記のように研究を提案し、実施した。
①日本の再生可能エネルギーポテンシャル評価と属性分析
まず次章(第 7 章)で日本に賦存する再生可能エネルギーポテンシャルの多様な特徴に ついて分析し、日本にどのような再生可能エネルギーポテンシャルが賦存するのか明らか にした。これまでの研究では、どのような再生可能エネルギーポテンシャルが賦存してい るのか、未だ議論が十分になされていなかった。
②土地属性に基づく多様なポテンシャルの分類と定量化
次の第8章では、第7章の再生可能エネルギーポテンシャルの土地属性の分析結果を基 に、多様な再生可能エネルギーポテンシャルを分類し、属性の異なるポテンシャルをそれ ぞれ定量的に評価することで、より具体的に多様な再生可能エネルギーの大規模導入の可 能性について議論しようと試みた。
これらの研究の結果、ポテンシャルの土地属性に基づく多様なポテンシャルの分類と定 量化が可能になることで、地域に賦存するポテンシャルの土地属性の差異を知り、活用す べきポテンシャルの優先順位や保護すべき地域の優先順位を議論し、地域の再生可能エネ ルギーポテンシャルの利用可能性についてより詳細に理解することができると期待される。
その結果、地域での再生可能エネルギーポテンシャルのマネジメントに役立てられると期 待される。