本研究は、再生可能エネルギーの利用可能性を、GIS(地理情報システム)を用いて様々 な視点から分析したものである。各地域に賦存する再生可能エネルギーの特徴を把握する ために、様々な手法を提案するとともに、その結果をもとに再生可能エネルギーの利用可 能性について議論した。議論の結果得られた結論を下記にまとめた。
再生可能エネルギーのポテンシャルを評価する際は、様々な評価方法のメリットとデ メリットを理解し、評価や分析の目的に応じた評価法を選択し、複数の評価結果をも とに、地域の特徴を分析する必要がある。
再生可能エネルギーポテンシャルを市区町村単位で定量的に評価する上において再生 可能エネルギーの恣意性や変動性を明らかにし、モンテカルロ法や空間的なポテンシ ャルの分布の分析を実施することで、客観的に市区町村における再生可能エネルギー 賦存の特徴を明らかにすることを可能にした。
長崎県雲仙市で再生可能エネルギーポテンシャルを評価した結果からは、雲仙 市では、地熱45MWe、風力7.64MWe、太陽光1.08MWe、中小水力1.68MWeと なり、地熱と風力の値が大きい結果となった。モンテカルロ法を用いた分析では、
太陽光の最確値付近の値が発生する確率が低くなった。これは算出の結果に大き く影響を与える一戸あたりの太陽光設置容量が不確定なパラメータとして与えら れていることによる。ポテンシャルの空間分布を分析した結果からは、ポテンシ ャルの有望地域は雲仙市の一部の地域に集中して賦存している傾向が明らかとな った。
九州地域など広域で、一定条件下で再生可能エネルギーポテンシャルを評価すること で、再生可能エネルギーポテンシャルの空間的な局在性を明らかにし、各市区町村の 特徴を相対的に明らかにすることを可能にした。
九州地域でポテンシャルを評価した結果からは下記のことが明らかとなった。
長崎県、大分県、鹿児島県の沿岸部や熊本県や大分県の山間部の市区町村で は、風況が良好であり、傾斜の小さい地形によって500 GWh/yearを超える 大きな風力ポテンシャルが評価された。熊本県の南部や宮崎県の北部の市区 町村では、風況が良好であるが、傾斜が大きい地形のため、200 GWh/year 前後の中小規模の風力ポテンシャルが評価された。
熊本県、大分県、宮崎県内の市区町村では、流量の大きな一級河川を持ち、
上流・中流の急峻な地形を含む市区町村において、大きな流量と傾斜によっ
134
て500 GWh/yearを超える大きな中・小ポテンシャルが評価された。また、
福岡県や佐賀県の市区町村では、一級河川を持ちながら流量が少ないことや 傾斜が小さいことから、100~200 GWh/year の中小規模の中小水力ポテンシ ャルが評価された。
各県の県庁所在地を中心に、沿岸の平坦な場所に位置する人口の多い市区町
村で100 GWh/yearを超える大きな太陽光ポテンシャルが評価された。一方
で、九州各県の山間部の人口の少ない市区町村では、10GWh/year 未満とな りポテンシャルが小さく評価された。
日本全国で、地形、社会構造、各再生可能エネルギーに関する要素について対象地域 の属性を分析することで、森林地域や農業地域といった特定の地域が多くのポテンシ ャルを持つ一方で、それらのポテンシャルは地形や社会構造の異なる土地属性を持つ 多様性を明らかにし、対象地域の再生可能エネルギーポテンシャルの属性情報を明ら かにする方法を可能にした。
日本に賦存する再生可能エネルギーのポテンシャルを定量的に分析した結果からは、
日本には、風力、中小水力、太陽光といった多様な再生可能エネルギーが存在するこ とを明らかにした。
日本では日本全国の発電端電力量976,300GWh(2010年度)に対して、有望な 風力ポテンシャルが15.6%(変動幅:0.83倍~2.39倍程度)、有望な中小水力ポテ ンシャルが13.3%(変動幅:0.74倍~2.51倍程度)、有望な家庭向け太陽光ポテン
シャルが 5.29%(変動幅:1 倍~2.5 倍程度)、有望な大規模太陽光ポテンシャル
が1.86%(変動幅:1倍~100倍程度)に相当する量が存在する。この結果は、各
再生可能エネルギーが日本の発電端電力量に対して、陸上風力や中小水力が 10%
以上の比率のポテンシャルを有し、大規模太陽光や家庭向け太陽光がシナリオの 設定次第では、それぞれ 10%程度に相当する利用可能性が存在し得ることを示し ている。また先行研究において大きな地熱ポテンシャルの存在も明らかにされて いる。
本研究の結果から、大規模な再生可能エネルギーの利用を促進するためには、地域に 存在する多様な再生可能エネルギーポテンシャルの活用方策を、地域の情報・観測デ ータと組み合わせて検討する「地域エネルギー事務所」が必要と考えられる。また、再 生可能エネルギーの利用を新しい土地利用形態の一つとして法律・制度の中に定める 必要があると考えられる。
135
謝辞
本論文は著者が九州大学大学院工学府地球資源システム工学専攻博士後期課程に在籍中 の研究成果をまとめたものです。同工学研究院地球資源システム工学部門の江原幸雄教授 には指導教官として本研究の実施の機会を与えて戴き、その遂行にあたって終始ご指導を 戴きました。ここに深謝の意を表します。同工学研究院機械工学部門の古川明徳教授,同 工学研究院地球資源システム工学部門の藤光康宏准教授には副査としてご助言を戴くとと もに本論文の細部にわたりご指導を戴きました。ここに深謝の意を表します。同工学研究 院地球資源システム工学部門の西島潤助教をはじめとして地球熱システム学研究室の皆様 には、研究から学生生活まで幅広くサポートをしていただきました。ここに感謝の意を表 します。また、本論文の完成に至るまでには大変多くの方々のアドバイスをいただきまし た。著者にとって特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所でインターンシップを経 験したことは、各再生可能エネルギーについて政策・経済の面から勉強させて頂く貴重な 機会となりました。著者がこのインターンシップの期間に、千葉大学倉阪秀史教授と環境 エネルギー政策研究所による永続地帯研究会に参加させていただいた中で学んだことは、
本論文の第 5 章の分析において大変参考にさせていただきました。自然エネルギー政策プ ラットフォーム(JREPP: Japan Renewable Energy Policy Platform)に事務局として参加 させていただいたことは、本論文の第 1章、第2章において再生可能エネルギーの利用可 能性評価の概念や意義など根本的な部分を構築する上で大変参考にさせていただきました。
自然エネルギー・ローカルファイナンスフォーラムに事務局として参加させていただいた ことは、本論文の第 1 章における再生可能エネルギーの利用可能性評価の意義や課題の整 理に地域の視点を組み入れ、第 9 章の政策提言を考える上で大変参考にさせていただきま した。インターンシップを受け入れて頂いた同研究所の飯田哲也所長をはじめとするスタ ッフの皆様と、自然エネルギー政策プラットフォームと自然エネルギー・ローカルファイ ナンスフォーラムに参加されていた各再生可能エネルギーと金融の専門家の皆様に感謝の 意を表します。
本論文の研究の一部は、九州大学グローバルCOE新炭素資源学の助成を受けて行われま した。また、著者は、九州大学イノベーション人材養成センターの助成を受けて環境エネ ルギー政策研究所へのインターンシップの機会を得ることができました。ここに感謝の意 を表します。
最後に、大学での学生生活をサポートしていただいた九州大学職員の皆様と、時には市 民的な観点から議論の相手となり、時には温かい励ましを送ってくれた家族と親戚の皆様 に感謝の意を表します。
136
参考文献
第1章
1) エネルギー白書2011,http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm
2) ISEP 3.11後のエネルギー戦略ペーパー,http://www.scribd.com/isepjapan/collections
3) Nuclear Power After Fukushima,
http://www.worldwatch.org/nuclear-power-after-fukushima
4) 地域新エネルギー・省エネルギービジョン策定等事業,
http://www.nedo.go.jp/activities/DA_00320.html
5) 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法,
http://law.e-gov.go.jp/announce/H23HO108.html
6) 東京都報道発表資料(2010年3月掲載),
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/03/20k3va01.htm
7) 長野県環境影響評価条例ホームページ,
http://www.pref.nagano.jp/kankyo/hogo/hyoka/index.htm
8) 第2回風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会資料,
http://www.env.go.jp/policy/assess/2-5windpower/wind_h22_2.html
9) 遊佐町風力発電建設ガイドライン
http://www.town.yuza.yamagata.jp/Contents/Contents.asp?CONTENTNO=1042
10) 浅野直人,戦略的環境アセスメントのすべて,(ぎょうせい),p.68-72(2009)
11) NREL(National Renewable Energy Laboratory)The Dynamic Maps, Geographic Information System (GIS) Data and Analysis Tools Web site,
http://www.nrel.gov/gis/
12) 局所風況予測モデル,http://app2.infoc.nedo.go.jp/nedo/top/top.html
13) JWPA日本風力発電協会風力発電長期導入目標値と風力発電導入拡大への要望,
http://jwpa.jp/pdf/50-04teigen2008.pdf