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結果

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 102-105)

7 日本の再生可能エネルギーポテンシャル評価と属性分析

7.5 中小水力ポテンシャルに関する要素の分析

7.5.2 結果

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94 取水率を一定として、低水流量率の変動の影響を考えるためシナリオ1(取水率 20%、 低水流量率30%を想定)の結果とシナリオ3(取水率20%、低水流量率50%を想定)の結 果を比較した。シナリオ3におけるポテンシャルの合計量は約307,000GWh/yearとなり、

シナリオ1の約1.7倍の値となった。つまり、低水流量を基準に使用水量を考える場合、日 本のほとんどの河川の低水流量率が20%~60%(平均 40%)であることから、低水流量の 変化による全体のポテンシャルの変動幅は、シナリオ1に対して1.7倍前後であると考えら れる。今後、各河川における観測によって正確な低水流量率を把握することで、この変動 の大きさは小さくすることができると考えられる。

次に、低水流量率を一定として、取水率の変動の影響を考えるため、シナリオ1の結果 とシナリオ4の結果を比較した。シナリオ4(取水率40%、低水流量率30%を想定)にお けるポテンシャルの合計量は約369,000GWh/yearとなり、シナリオ1の約2.0倍の値とな った。河川流量に対して、どの程度の流量を利用するかは、各河川において環境への影響 などを配慮し、適切に議論し決定すべきものであり、全国の河川に対して一定の値を想定 することは望ましくない。ポテンシャルの評価では、取水率の前提によって大きく評価結 果が変化する可能性を含んでいるため、注意が必要である。

ⅱ 1か所あたりの発電出力

次に、1か所あたりの発電出力や使用水量、有効落差といったポテンシャルの局地的な性 質について分析した。まず各土地属性におけるポテンシャルの比率は、シナリオ1におい

て10kW未満が約21%、10kW以上100kW未満が約33%、100kW以上1000kW未満が

約40%、1000kW以上が約6%となった。低水流量率や取水率の変動によって1か所あたり

の発電出力は大きく変動するが、今回はFig. 7-8中では、発電出力による分類を10kW未

満、10kW以上100kW未満、100kW以上1000kW未満、1000kW以上と、10の累乗によ

って分類しているため、各分類におけるポテンシャルの比率は大きく変化せず、各シナリ オで共通して100kW以上1000kW未満のポテンシャルが最も大きい割合(約40~43%)を 示し、次に10kW以上100kW未満のポテンシャルが占める割合(約22%~約33%)が大 きい傾向がみられた。ただ、シナリオ 6(取水率 40%、低水流量率50%を想定)において

のみ、100kW以上1000kW未満のポテンシャル(41%)に次いで、1000kW以上のポテン

シャルが占める割合(25%)が大きくなった。

ⅲ 使用水量

さらに使用水量については、評価されたポテンシャルの多くが使用水量の多いポテンシ ャルである結果となった。以下では、控えめなシナリオとしてシナリオ 2(取水率 20%、 低水流量率40%を想定)を例に挙げて説明した。シナリオ2では、評価されたポテンシャ ルのうち約74 %がFig. 7-8中に赤で示した使用水量が0.5m3/s以上のポテンシャルとなっ た。さらに使用流量0.1m3/s以上~0.5m3/s未満のポテンシャルが占める割合が約13%、使 用流量 0.1m3/s 未満のポテンシャルが占める割合が約 13%となった。使用水量が 0.5m3/s 以上のポテンシャルが占める割合が多い結果となった。

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ⅳ 有効落差

有効落差については、Fig. 7-8 中に薄い青、緑、赤で示した。シナリオ2 では、落差が 5m以上30m未満のポテンシャルが占める割合が約66%と多い結果となった。次いで、落 差が5m未満のポテンシャルが約30%を占めた。落差が30m以上のポテンシャルは約4%

と小さくなった。

ⅴ 各要素の関連

シナリオ2では、使用水量が0.5m3/s以上であり、落差が5m以上30m未満のポテンシ ャルが占める割合が約45%と最も大きい結果となった(Fig. 7-8中薄い赤)。さらにこれら のポテンシャルは10kW以上100kW未満のポテンシャルが約7.6%、100kW以上1000kW 未満のポテンシャルが約29%、1000kW以上のポテンシャルが約9.0%と評価された。次い で、使用水量が0.5m3/s以上であり、落差が 5m未満のポテンシャルが約25%と大きく評 価された(Fig. 7-8中濃い赤)。さらにこれらのポテンシャルは10kW以上100kW未満の ポテンシャルが約12%、100kW以上1000kW未満のポテンシャルが約11%と評価された。

これらの他には、使用水量が0.1m3/s以上0.5m3/s未満であり、落差が5m以上30m未満 のポテンシャル(Fig. 7-8中薄い緑)が約10%と大きく、10kW以上100kW未満のポテン シャルの中で大きい割合を示した他、使用水量が0.1m3/s未満で落差が5m以上30m未満 のポテンシャル(Fig. 7-8中薄い青)が約11%存在し、10kW未満のポテンシャルのうちの 多くを占める結果となった。

以上のことから、中小水力ポテンシャルとして、一定の性質をもったポテンシャルが大 量に賦存しているのではなく、流量の大きさ、落差の大きさ、そして想定される出力の大 きさによって多様な中小水力ポテンシャルが賦存すると考えられる。

ⅵ 中小水力構造要素の地域的特徴

上述した日本全国の「1か所あたりの発電出力」、「使用流量」、「有効落差」と中小水力ポ テンシャルの分布の関係は地域的に異なった関係(傾向)を示した。Fig. 7-9に日本の各地 域における「1か所あたりの発電出力」、「使用流量」、「有効落差」と中小水力ポテンシャル との関係を示した。ポテンシャルの算出シナリオにはシナリオ2(取水率 20%、低水流量 率40%を想定)を用いた。まず、Fig. 7-9は地域的なポテンシャルの分布傾向として中部地 域と東北地方に大きな中小水力ポテンシャルが分布していることを示した。中部地方の中 小水力ポテンシャルは約55,100GWhと評価され、これは日本全国の中小水力ポテンシャル

約246,000GWhの約22%に相当する。東北地方の中小水力ポテンシャルは約39,700GWh

と評価され、日本全国の中小水力ポテンシャルの約 16%に相当する。このように中部地方 と東北地方はともに大きな中小水力ポテンシャルを持つが、Fig. 7-9では、中部地域におい

て100kW以上1000kW未満であり、落差が5m以上30m未満と大きい性質のポテンシャ

ルが特に多く賦存していることを示した。その一方で、東北地域の中小水力ポテンシャル は落差 5m 未満のポテンシャルが占める割合が中部地域よりも大きいことを示した。Fig.

7-9 ではそれぞれの地域において中小水力ポテンシャルが有する落差に地域的な特徴があ

96 る傾向を示していると考えられる。北海道や東北地方、関東地方と比較して、近畿、中国、

四国、九州地域においてFig. 7-9中薄いオレンジで示した落差が5m以上30m未満の中小 水力ポテンシャルが占める割合が大きくなっている傾向を示した。

Fig. 7-9 日本各地の中小水力ポテンシャルの分析結果(シナリオ2)

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