7 日本の再生可能エネルギーポテンシャル評価と属性分析
7.6 太陽光ポテンシャルに関する要素の分析
7.6.3 大規模太陽光ポテンシャルの分析結果
103 57%と大きい割合を示した。全天水平面日射量の日積算量の年平均値は、オレンジで示した
3300Wh/m2/day未満のポテンシャルが北海道、東北、北陸に集中して評価された。そして
図中赤で示した3600Wh/m2/day以上のポテンシャルが近畿、中国、四国に集中して賦存し ている傾向を示した。
さらに、各地域の傾斜面方位に注目すると、北陸と四国地域において南(南西から南東)
に位置する世帯のポテンシャルがそれぞれ約15%と20%と全国平均値(30%)と比較して、
小さな値となった。北陸地域ではその一方で東(北東から南東)に位置する世帯のポテン シャルが約 41%と全国平均値(34%)と比較して大きくなった。四国地域では、北や西に 位置する世帯のポテンシャルがそれぞれ24%(全国平均値18%)、23%(全国平均値18%) と大きく評価された。
以上のように、太陽光ポテンシャルの構造要素は全国平均に対してそれぞれの地域が特 徴をもった値を示した。
(a) (b)
Fig. 7-11 日本各地の家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果(シナリオ1)
104
Fig. 7-12 日本全国の大規模太陽光ポテンシャルの分析結果
ⅰ 発電設備設置シナリオによる評価結果の変化
各シナリオの比較からポテンシャル評価の前提の変化による評価結果の変化について分 析した。まず、各シナリオにおけるポテンシャルの合計量は、もっとも土地利用率を小さ く想定した場合のシナリオ1(土地利用率 0.1%)において約 55,000GWh、もっとも土地 利用率を大きく想定した場合のシナリオ4(土地利用率10%)において約5,500,000Whと なり、シナリオ4では、シナリオ1の約100倍の値と大きな増加を示した。太陽光発電の 大規模な導入は風力発電や中小水力発電と比較して土地の占有率が大きいため、大規模太 陽光発電のポテンシャルを算出する上では土地利用率を慎重に設定するべきである。シナ リオ4の想定では非常に大きな太陽光ポテンシャルが算出されるが、実際に全土地の10%
に太陽光発電を導入することは困難であると考えられる。
ⅱ 水平面全天日射量の日積算量の年平均値
次に、水平面全天日射量や傾斜面方位、人口密度といった太陽光ポテンシャルに関する 要素について分析した。これらの要素を議論する上で、本節では最も控えめな値としてシ ナリオ1の値を基に議論を行った。
まず、シナリオ1では水平面全天日射量の日積算量の年平均値について、3300Wh/m2/day 未満のポテンシャルが約18,500GWh(約34%)、3300Wh/m2/day以上3600Wh/m2/day未
105 満のポテンシャルが約 29,400GWh(約 53%)、3600Wh/m2/day 以上のポテンシャルが約 7,360GWh( 約 13 %) と な っ た 。 家 庭 向 け 太 陽 光 の ポ テ ン シ ャ ル と 比 較 す る と 、 3300Wh/m2/day 未 満 の ポ テ ン シ ャ ル の 占 め る 割 合 が 大 き く 、3300Wh/m2/day 以 上
3600Wh/m2/day未満のポテンシャルが占める割合が小さくなった。これは居住地域がもと
もと日射の良好な地域に好まれて形成されていることが原因の一つと考えられる。
ⅲ 傾斜面方位
次に、傾斜面方位については、東(北東から南東)に位置するポテンシャルが約9,550GWh
(約 17%)、北(北東から北西)に位置するポテンシャルが約 12,300GWh(約 22%)、西
(北西から南西)に位置するポテンシャルが約13,300GWh(約24%)、南(南西から南東)
に位置するポテンシャルが約20,100GWh(約36%)となり、南斜面に多くの大規模太陽光 ポテンシャルが賦存する結果となった。
ⅳ 人口密度
さらに、人口密度については、1km2 あたり 50 人未満の地域のポテンシャルが約
38,300GWh(約 69%)、50 人以上300 人未満の地域のポテンシャルが約 8,730GWh(約
16%)、300人以上4000人未満の地域のポテンシャルが約6,990GWh(約13%)、4000人 以上の地域のポテンシャルが約1,334GWh(約2%)と、人口密度が小さく、広い土地を有 する地域に集中して賦存する傾向を示した。これは家庭向け太陽光ポテンシャルの分布傾 向とは逆の分布傾向を示す結果となった。
ⅴ 大規模太陽光ポテンシャルに関する要素の関係
まず、全天水平面日射量の日積算量と人口密度の関係に着目すると、上記で大規模太陽 光のポテンシャルは人口密度が1km2あたり50人未満の小さい地域に多く賦存する傾向を 示したが、その人口密度が小さい地域では Fig. 7-12 中赤で示した全天水平面日射量が
3,300Wh/m2/day 未満のポテンシャルが占める割合が多くなっていることを示した。これ
は、上述したように居住地域が日射量の良好な地域に多く形成される傾向があること、そ して日本において大きな面積を占める北海道や東北地域において全天水平面日射量が小さ い傾向にあることが原因の1つと考えられる。
ⅵ 大規模太陽光ポテンシャルに関する要素の地域的傾向
Fig. 7-13にシナリオ1を想定して、日本の各地域の大規模太陽光ポテンシャルを集計し
て示した。Fig. 7-13 (a) に北海道、東北、関東、北陸、中部地域の大規模太陽光ポテンシ ャルを示し、Fig. 7-13 (b) に近畿、中国、四国、九州、沖縄の太陽光ポテンシャを示した。
Fig. 7-13では、その面積の広さから北海道と東北地域に大きなポテンシャルが賦存してい
ることを示した。しかし、これらの大規模太陽光ポテンシャルはFig. 7-13中にオレンジで 示したように、その大部分は全天水平面日射量が3300Wh/m2/day未満のポテンシャルであ るため、その活用の際には日射量が十分に得られるかどうか、調査が必要である。このほ かに、北陸地域の大規模ポテンシャルの大部分は、全天水平面日射量が3300Wh/m2/day未
106 満のポテンシャルである傾向を示した。その一方で中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄 の大規模太陽光ポテンシャルはその大部分が 3300Wh/m2/day 以上のポテンシャルとなっ た。
(a) (b)
Fig. 7-13 日本各地の大規模太陽光ポテンシャルの分析結果(シナリオ1)