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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

GISを用いた再生可能エネルギーポテンシャル評価に 関する研究

分山, 達也

九州大学大学院工学府

https://doi.org/10.15017/22003

出版情報:Kyushu University, 2011, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

GIS を用いた再生可能エネルギー ポテンシャル評価に関する研究

分山 達也

2011 年度

(3)

目次

1 緒言 ... 1

1.1 背景 ... 1

1.1.1 エネルギー需給の社会的背景 ... 1

1.1.2 再生可能エネルギーに関する取り組みの状況 ... 5

1.1.2.1 導入促進策 ... 5

1.1.2.2 環境保護策 ... 7

1.1.3 再生可能エネルギーに関する社会的課題 ... 8

1.2 再生可能エネルギーの利用可能性調査に関する先行研究... 9

1.2.1 様々な意味での利用可能性研究 ... 9

1.2.2 再生可能エネルギーのポテンシャル研究 ... 10

1.3 本研究の概要 ... 12

1.3.1 再生可能エネルギーのポテンシャル研究の意義 ... 12

1.3.2 再生可能エネルギーのポテンシャル評価による研究対象 ... 12

1.3.3 再生可能エネルギーのポテンシャル研究の視点 ... 13

1.3.4 本研究の目的 ... 14

1.3.5 本論文の内容 ... 14

2 再生可能エネルギーポテンシャル研究の理論と方法 ... 16

2.1 再生可能エネルギーポテンシャル評価の概要 ... 16

2.2 GIS(Geographic Information System)地理情報システムの活用 ... 17

2.2.1 GRASS GIS ... 17

2.2.2 GISデータベース ... 17

2.2.3 GISデータ ... 18

2.3 気象値の推定(シミュレーション) ... 21

2.4 有望地域の抽出 ... 22

2.5 年間発電電力量の算出 ... 23

2.5.1 年間発電電力量の算出方法の概要 ... 23

2.5.2 風力発電の年間発電電力量の算出理論 ... 24

2.5.3 中小水力発電の年間発電電力量の算出理論 ... 27

2.5.4 太陽光発電の年間発電電力量の算出理論 ... 29

2.6 再生可能エネルギーポテンシャル評価に関する議論 ... 31

2.6.1 再生可能エネルギーポテンシャル評価における恣意性 ... 31

2.6.2 再生可能エネルギーポテンシャル評価結果を基にした議論の考え方 ... 32

3 気象値のシミュレーション ... 34

3.1 河川流量のシミュレーション ... 34

3.1.1 概要 ... 34

3.1.2 理論 ... 34

3.1.3 方法 ... 36

3.1.4 結果と分析 ... 37

(4)

3.1.5 低水流量の計算結果と分析... 38

3.1.6 中小水力ポテンシャル算出への活用 ... 39

3.2 日射量のシミュレーション ... 39

3.2.1 概要 ... 39

3.2.2 理論 ... 40

3.2.3 方法 ... 40

3.2.4 結果 ... 43

3.2.5 分析 ... 43

3.2.6 太陽光ポテンシャル算出への活用 ... 44

4 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価-長崎県雲仙市の例- ... 46

4.1 緒言 ... 46

4.2 理論と方法 ... 46

4.2.1 再生可能エネルギーポテンシャル評価法の概要 ... 46

4.2.2 モンテカルロ法を用いた再生可能エネルギーポテンシャル評価 ... 47

4.2.3 風力エネルギー評価法の概要 ... 48

4.2.4 太陽光エネルギー評価法の概要 ... 49

4.2.5 中小水力エネルギー評価法の概要 ... 50

4.2.6 地熱エネルギー評価法の概要 ... 51

4.3 雲仙市の定量的再生可能エネルギーポテンシャル評価結果 ... 52

4.3.1 雲仙市におけるエネルギー量の分析 ... 52

4.3.2 雲仙市における再生可能エネルギーポテンシャルの空間分布分析 ... 53

4.3.3 ポテンシャルの空間分布と既存の発電設備の導入状況 ... 56

4.4 第4章のまとめ ... 58

5 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価-九州地域の例- ... 59

5.1 緒言 ... 59

5.2 研究方法 ... 59

5.2.1 調査対象地域 ... 59

5.2.2 広域の再生可能エネルギーポテンシャル評価法 ... 59

5.3 再生可能エネルギーポテンシャル評価結果 ... 61

5.3.1 風力ポテンシャル評価結果... 61

5.3.2 中小水力ポテンシャル評価結果 ... 63

5.3.3 太陽光ポテンシャルの評価結果 ... 65

5.4 ポテンシャルの評価結果と導入実績との比較 ... 67

5.4.1 風力ポテンシャル評価結果と導入実績との比較 ... 67

5.4.2 中小水力ポテンシャル評価結果と導入実績との比較 ... 68

5.4.3 太陽光ポテンシャル評価結果と導入実績との比較 ... 70

5.4.4 ポテンシャルと導入実績についての考察 ... 71

5.5 議論 ... 72

5.5.1 九州地域の再生可能エネルギーポテンシャル ... 72

5.5.2 従来の調査との比較 ... 72

(5)

5.5.3 再生可能エネルギーのポテンシャル評価と条件の妥当性 ... 73

5.6 第5章のまとめ ... 74

6 議論:新しい再生可能エネルギーポテンシャル評価の視点の必要性... 75

6.1 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価の考察 ... 75

6.2 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価の課題と解決策... 75

6.3 本研究の提案 ... 76

7 日本の再生可能エネルギーポテンシャル評価と属性分析 ... 78

7.1 緒言 ... 78

7.2 理論 ... 78

7.3 再生可能エネルギーに関する共通要素の分析 ... 79

7.3.1 方法 ... 79

7.3.2 結果 ... 81

7.3.3 まとめと考察 ... 84

7.4 風力ポテンシャルに関する要素の分析 ... 85

7.4.1 方法 ... 85

7.4.2 結果 ... 86

7.4.3 まとめと考察 ... 89

7.5 中小水力ポテンシャルに関する要素の分析 ... 90

7.5.1 方法 ... 90

7.5.2 結果 ... 93

7.5.3 まとめと考察 ... 96

7.6 太陽光ポテンシャルに関する要素の分析 ... 98

7.6.1 方法 ... 98

7.6.2 家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果 ... 99

7.6.3 大規模太陽光ポテンシャルの分析結果 ... 103

7.6.4 まとめと考察 ... 106

7.7 7章のまとめ ... 108

8 土地属性に基づく多様な再生可能エネルギーポテンシャルの分類と定量化 ... 110

8.1 再生可能エネルギーポテンシャルの定量的評価 ... 110

8.1.1 方法 ... 110

8.1.2 風力ポテンシャルの評価結果 ... 111

8.1.3 中小水力ポテンシャルの評価結果 ... 112

8.1.4 大規模太陽光ポテンシャルの評価結果 ... 113

8.1.5 家庭向け太陽光ポテンシャルの評価結果 ... 113

8.2 再生可能エネルギーポテンシャルの属性分類評価 ... 114

8.2.1 方法 ... 114

8.2.2 風力ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 116

8.2.3 中小水力ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 119

8.2.4 大規模太陽光ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 121

8.2.5 家庭向け太陽光ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 123

(6)

8.3 第8章のまとめ ... 125

9 考察 ... 126

9.1 日本の再生可能エネルギーの定量的分析の視点からの考察 ... 126

9.2 再生可能エネルギーポテンシャル評価によるプロジェクト支援... 129

9.3 再生可能エネルギーの大規模導入へ向けた政策提言 ... 131

10 まとめ ... 133

謝辞 ... 135

参考文献 ... 136

参考資料 日本の社会要素分析結果 ... 141

(7)

図表目次

Fig. 1-1 最終エネルギー消費と実質GDPの推移 ... 2

Fig. 1-2 一次エネルギー国内供給の推移 ... 2

Fig. 1-3 一般電気事業者の発電電力量の推移 ... 3

Fig. 1-4 環境エネルギー政策研究所の推計による日本の原子力発電所の行方 ... 4

Fig. 1-5 世界の自然エネルギーの増加傾向... 4

Fig. 2-1 再生可能エネルギーポテンシャル評価法の概要 ... 16

Table 2-1 太陽光発電モジュールの特性 ... 30

Fig. 3-1 各地域の一級河川における年平均流量のシミュレ―ション結果と観測平均値 ... 38

Fig. 3-2 日本の一級河川における低水流量の計算結果と観測低水流量平均値の比較 39 Fig. 3-3 全天日射量のシミュレーション結果と理科年表平年値との比較 ... 42

Table 3-1 全天日射量シミュレーション結果の比較 ... 44

Fig. 3-4 全天日射量の日積算量のシナリオ①によるシミュレーション結果と理科年表 平年値との比較 ... 45

Fig. 4-1 長崎県雲仙市 ... 46

Fig. 4-2 モンテカルロ法に用いた三角分布... 48

Table 4-1 風力ポテンシャルの算出に用いた不確実性をもつパラメータ ... 49

Table 4-2 太陽光ポテンシャルの算出に用いた不確実性をもつパラメータ... 50

Table 4-3 中小水力ポテンシャルの算出に用いた不確実性をもつパラメータ ... 50

Table 4-4 小浜温泉地域の地熱ポテンシャルの算出に用いた不確実性をもつパラメー タ ... 52

Table 4-5 雲仙温泉地域の地熱ポテンシャルの算出に用いた不確実性をもつパラメー タ ... 52

Fig. 4-3 雲仙市の再生可能エネルギーポテンシャル評価結果 ... 54

Fig. 4-4 雲仙市の再生可能エネルギーポテンシャル有望地域分布図 ... 55

Fig. 4-5 雲仙市の再生可能エネルギーポテンシャル有望地域と既存の発電設備 ... 57

Fig. 5-1 九州の既設風力発電所と幅3m以上の道路との距離関係 ... 61

Fig. 5-2 九州の既設風力発電所とすべての道路との距離関係 ... 61

Fig. 5-3 九州地域の風力ポテンシャル評価結果の分布 ... 62

Table 5-1風力ポテンシャルの評価結果の度数分布表 ... 63

Fig. 5-4 九州地域の中小水力ポテンシャル評価結果の分布 ... 65

Table 5-2 中小水力ポテンシャルの評価結果の度数分布表 ... 65

Fig. 5-5 九州地域の太陽光ポテンシャル評価結果の分布 ... 66

Table 5-3太陽光ポテンシャルの評価結果の度数分布表 ... 67

Fig. 5-6 市区町村の風力ポテンシャルと風力発電導入容量の関係 ... 68

Table 5-4 市区町村の風力ポテンシャルと風力発電導入の関係 ... 68

Fig. 5-7 各市区町村の中小水力ポテンシャルと中小水力発電導入容量の関係 ... 69

(8)

Table 5-5 市区町村の中小水力ポテンシャルと中小水力発電導入の関係 ... 70

Fig. 5-8 各市区町村の太陽光ポテンシャルと太陽光発電導入容量の関係 ... 71

Table 5-6 九州各県の再生可能エネルギーポテンシャル評価結果 ... 72

Fig. 7-1 日本の地域別面積比率 ... 79

Table 7-1 共通要素の分析に用いた土地属性区分... 81

Fig. 7-2 日本の各指定地域細区分の割合 ... 82

Fig. 7-3 日本の地形要素の分析結果 ... 83

Fig. 7-4 日本の地形要素の分析結果(割合表示) ... 83

Table 7-2 風力ポテンシャルに関する要素の分析に用いた土地属性区分 ... 86

Fig. 7-5 日本全国の風力ポテンシャルの評価結果 ... 86

Fig. 7-6 日本の各地域の風力ポテンシャル分析結果(シナリオ1) ... 89

Table 7-3 中小水力ポテンシャルに関する要素の分析に用いた土地属性区分 ... 92

Fig. 7-7使用水量・落差による代表的な水車の適用範囲 ... 92

Fig. 7-8日本の中小水力ポテンシャルの分析結果... 93

Fig. 7-9 日本各地の中小水力ポテンシャルの分析結果(シナリオ2) ... 96

Table 7-4 太陽光ポテンシャルに関する要素の分析に用いた土地属性区分... 100

Fig. 7-10 日本の家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果 ... 100

Fig. 7-11 日本各地の家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果(シナリオ1) ... 103

Fig. 7-12 日本全国の大規模太陽光ポテンシャルの分析結果 ... 104

Fig. 7-13 日本各地の大規模太陽光ポテンシャルの分析結果(シナリオ1) ... 106

Fig. 8-1 風力ポテンシャルの絞込み結果 ... 112

Fig. 8-2 中小水力ポテンシャルの絞込み結果 ... 113

Fig. 8-3 大規模太陽光ポテンシャルの絞込み結果 ... 114

Fig. 8-4 家庭向け太陽光ポテンシャルの絞込み結果 ... 114

Table 8-1風力ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 118

Table 8-2 中小水力ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 120

Table 8-3 大規模太陽光ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 122

Table 8-4 家庭向け太陽光ポテンシャルの属性分類評価結果 ... 124

Table 9-1 風力エネルギーポテンシャルのシナリオ分析結果 ... 127

Table 9-2 中小水力エネルギーポテンシャルのシナリオ分析結果 ... 127

Table 9-3 大規模太陽光エネルギーポテンシャルのシナリオ分析結果 ... 127

Table 9-4 家庭向け太陽光エネルギーポテンシャルのシナリオ分析結果 ... 127

Table 9-5 本研究によるポテンシャル評価結果 ... 128

Table 9-6 環境省ポテンシャル評価結果 ... 129

Fig. A-1 北海道の各指定地域細区分の割合 ... 141

Fig. A-2 東北の各指定地域細区分の割合 ... 141

Fig. A-3 関東の各指定地域細区分の割合 ... 141

Fig. A-4 北陸の各指定地域細区分の割合 ... 142

Fig. A-5 中部の各指定地域細区分の割合 ... 142

Fig. A-6 近畿の各指定地域細区分の割合 ... 142

(9)

Fig. A-7 中国の各指定地域細区分の割合 ... 143

Fig. A-8 四国の各指定地域細区分の割合 ... 143

Fig. A-9 九州の各指定地域細区分の割合 ... 143

Fig. A-10 沖縄の各指定地域細区分の割合 ... 144

Fig. A-11 北海道の地形要素の分析結果 ... 145

Fig. A-12 北海道の地形要素の分析結果(割合表示)... 145

Fig. A-13 東北の地形要素の分析結果 ... 146

Fig. A-14 東北の地形要素の分析結果(割合表示) ... 146

Fig. A-15 関東の地形要素の分析結果 ... 147

Fig. A-16 関東の地形要素の分析結果(割合表示) ... 147

Fig. A-17 北陸の地形要素の分析結果 ... 148

Fig. A-18 北陸の地形要素の分析結果(割合表示) ... 148

Fig. A-19 中部の地形要素の分析結果 ... 149

Fig. A-20 中部の地形要素の分析結果(割合表示) ... 149

Fig. A-21 近畿の地形要素の分析結果 ... 150

Fig. A-22 近畿の地形要素の分析結果(割合表示) ... 150

Fig. A-23 中国の地形要素の分析結果 ... 151

Fig. A-24 中国の地形要素の分析結果(割合表示) ... 151

Fig. A-25 四国の地形要素の分析結果 ... 152

Fig. A-26 四国の地形要素の分析結果(割合表示) ... 152

Fig. A-27 九州の地形要素の分析結果 ... 153

Fig. A-28 九州の地形要素の分析結果(割合表示) ... 153

Fig. A-29 沖縄の地形要素の分析結果 ... 154

Fig. A-30 沖縄の地形要素の分析結果(割合表示) ... 154

(10)

1

1 緒言

本研究は、再生可能エネルギーの利用可能性を、GIS(地理情報システム)を用いて様々 な視点から分析したものである。各地域に賦存する再生可能エネルギーの特徴を把握する ために様々な手法を提案し、それらを用いて再生可能エネルギーの利用可能性について議 論した。

1.1 背景

1.1.1 エネルギー需給の社会的背景

地球は現在、地球温暖化対策、石油資源の枯渇という世界的な課題に直面しており、こ れらの解決策の一つとして再生可能エネルギーへの関心が高まっている。日本に目を向け るとさらにエネルギーの安全保障の観点からも、再生可能エネルギーの利用促進の必要性 が高い。しかし、これまでの日本では、エネルギーの安全保障、つまりエネルギーの自給 率を向上させるための一番の方策と考えられていたのは原子力エネルギーであった。

2011年3月 11日、東日本大震災が発生した。そして福島第一原発では、地震と津波の 被害によってチェルノブイリの事故と同じもっとも深刻な事故であるレベル 7 の事故に到 達してしまった。この東日本大震災によってこれまでの原子力の安全神話は崩壊し、日本 は今、エネルギーの需給政策についてゼロベースで国民的な議論を行うことを必要として いる。この議論のなかで、再生可能エネルギーへの期待はとても大きい。しかし、その一 方で、エネルギー需給の主要な役割を担うような、これまでよりはるかに大規模な再生可 能エネルギーの利用を考えた場合に、再生可能エネルギーの利用可能性を疑問視する声も 少なくない。

本節では、まず日本のエネルギー需給の現状について概観した。エネルギー白書2010よ

り、Fig. 1-1 に「最終エネルギー消費と実質GDPの推移」を示した1)。Fig. 1-1によると、

日本の最終エネルギー消費は GDP の伸びと連動して 1970 年代から 2000 年にかけて約

11EJ(1EJ = 1018J)から、約16 EJへ増加し続けてきた。2000年以降はその増加傾向に

歯止めがかかったが、依然として約16 EJの高い水準を維持している。2008年に大きく約

14 EJにまで消費が落ち込んでいるが、これは世界的な経済不況を受けての一時的なもので

あり、今後もエネルギーの消費量は高い水準で維持されると考えられる。また、現在のエ ネルギー消費の部門比率をみると2008年時点で運輸部門が23.6%、民生部門が33.8%、産

業部門が42.6%となっている。1970年代と比較して、産業部門の消費量がおおよそ一定量

で推移していることに対して、運輸部門や民生部門のエネルギー消費の増加によって、産 業部門のエネルギーの消費比率が相対的に減少している。運輸部門、産業部門、民生部門 のそれぞれでは異なるエネルギーの消費形態があり、エネルギー政策を検討する上でそれ ぞれの部門への影響を考慮しなければならない。例えば、今回の福島原発事故を受けて市 民(民生部門)からは、多少コストが高くても良いから原子力よりも再生可能エネルギー 等安全でクリーンな電力を求める声が上がった。しかし、産業界からは従来通り、安く安 定的に供給されることを理由として原子力による電力を求める声が大きい。

(11)

2

Fig. 1-1 最終エネルギー消費と実質GDPの推移1)

Fig. 1-2 一次エネルギー国内供給の推移1)

Fig. 1-2 に「一次エネルギー国内供給の推移」を示した1)。Fig. 1-2によると、2008年で

は、国内の一次エネルギー(熱エネルギー供給を含む)の 80%以上が石油、天然ガス、石 炭の化石エネルギーによって供給されている。これに対して、新エネルギー、地熱などに よる供給は3.1%である。また、原子力による供給は10.4%であり、熱供給を含めた一次エ ネルギー供給の中では原子力によるエネルギー供給は10%程度に留まっている。

(12)

3

Fig. 1-3 一般電気事業者の発電電力量の推移1)

Fig. 1-3に一般電気事業者の発電電力量の推移を示した1)。Fig. 1-3によると、原子力発

電は電力供給の中では 29.2%と大きな割合を占めている。新エネルギー等による供給は 1.1%、一般水力による供給は7.3%となっている。エネルギー需給を考える上では、電力消 費だけでなく、熱供給を含めた議論の必要性がたびたび指摘されている。そして、熱供給 を含めた議論では、エネルギーを電力によって供給するか、熱によって供給するかといっ た需給のあり方も議論が必要である。現在、日本では民生部門の熱需要を電力によって供 給する生活様式も普及している。このような生活様式がさらに普及すれば、さらに電力需 要が大きくなり、その増大した電力需要を賄う方策の議論が必要となる。逆に、熱需要を 直接、熱エネルギーで供給することが可能になれば、必要な電力需要は少なくなる。再生 可能エネルギーによるエネルギー需給を検討する上でも、電力と熱というそれぞれのエネ ルギーの供給形態を上手く活用し、エネルギー需要を賄う方策を検討する必要がある。

Fig. 1-4 に「環境エネルギー政策研究所の推計による日本の原子力発電所の行方」を示し

2)。Fig. 1-4では、日本の原子力発電所は老朽化が進んでおり、原子力発電所の寿命を40

年として設備の更新が進まなかった場合、今後原子力発電所の急激な減少期を迎えること が指摘されている。2011年の夏には東日本大震災後に全国の定期検査によって停止してい る原子力発電所の再稼働が延期され、短期的に原子力による電力供給が減少することとな った。この時は、休止していた石炭火力発電所の稼働や企業の節電によってエネルギー需 給が調整された。設備容量的には、火力発電によって需要を賄うことが可能であることが 示された形となったが、発電コストの増加、温室効果ガスの排出量の増加が問題となった。

今後、原子力発電の急激な減少期を迎えるにあたって、原子力発電設備を更新するのか、

新規の原子力発電を導入するのか、再生可能エネルギーを利用するのか、さらにどの再生 可能エネルギーを利用するのか、火力発電を利用するのか等、様々な選択の可能性が存在

(13)

4 する。そして、これらの選択には当然、メリットとデメリットが存在する。しかし、日本 はエネルギー需給において何らかの決断をしなければならない状況にあり、エネルギー需 給政策の議論を進めることが喫緊の課題である。

Fig. 1-4 環境エネルギー政策研究所の推計による日本の原子力発電所の行方2)

Fig. 1-5 世界の自然エネルギーの増加傾向2)

(14)

5 そこで、さらに再生可能エネルギーの現状について、Fig. 1-5に「世界の自然エネルギー の増加傾向」を示した2)。Fig. 1-5では、図中青で風力発電、図中橙で太陽光発電の設備容 量の単年度増加量を示している。Fig. 1-5はすでに世界では、風力や太陽光発電の設備容量 が増加し続けていることを示している。この一方で、図中緑で示した原子力発電はその設 備容量が減少傾向を示している。また米国のWorld Watch Instituteは2011年4月、2010 年の世界の発電容量は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが原発を初めて逆転した とする報告書を発表している3)。世界では、再生可能エネルギーを主要な電力源の一つとし て促進している様子がうかがえる。

以上のように、日本では近い将来に多くの原子力発電所が寿命を迎えることから、電力・

熱の両面から供給方策を考える必要がある。そして合理的なエネルギー需給を実現するた めの方策には、供給の在り方、消費の在り方を含め様々な方策の可能性があるが、現在、

日本は何らかの決断が必要な時期にある。日本のこのような状況、そして世界では再生可 能エネルギーの利用が促進されている状況において、再生可能エネルギーの利用可能性を 分析し、具体的な利用方策を検討・提言することが必要かつ極めて重要と考える。

1.1.2 再生可能エネルギーに関する取り組みの状況

1.1.2.1 導入促進策

(1) NEDO地域新エネルギービジョン策定事業

2011年3月11日の東日本大震災の以前から、再生可能エネルギーの利用に関する様々 な方策が検討されている。これまで、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合 開発機構)地域新エネルギー・省エネルギービジョン策定事業によって、約15年間、約1900 件の地域新エネルギー・省エネルギービジョンが地方自治体で策定された4)。この事業では、

地域の再生可能エネルギーポテンシャルを調査し、開発が有望なエネルギーやプロジェク トを調査していた。再生可能エネルギーの導入が有望であると評価された地域では、発電 設備導入のための重点ビジョン調査が実施され、導入実現に結び付けられてきた。なお、

「NEDO地域新エネルギービジョン策定事業」はこれまでに、日本全国の約45%の市区町 村で実施された。

(2) RPS法と固定価格買い取り制度

日本はこれまで、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(新エネ 等電気利用法、新エネルギー利用特別措置法、RPS法)を2003年4月から施行している。

これは、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及び新エネルギー等の普及を目的に、

電気事業者に対して、毎年その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発 電される電気の利用を義務付けたものである。RPS 法は電力市場における競争を重視する 制度であり、電力市場における競争によって新エネルギーの価格を下げることに主眼をお いた制度である。最も安い技術から普及するので、新エネルギーの価格を下げることが期 待できるとされる一方で、導入目標量自体が低すぎ、導入を妨げる要因になっているとい った問題が指摘されていた。

そこで近年、日本では固定価格買い取り制度(FIT)の導入が検討されてきた。そして平

(15)

6 成23年8月26日の第177回通常国会において、「電気事業者による再生可能エネルギー電 気の調達に関する特別措置法5)」が成立した。この法律は、再生可能エネルギー源(太陽光、

風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、一定の期間・価格で電気事 業者が買い取ることを義務付けるもので、平成24年7月1日からスタートする。電気事 業者が買取りに要した費用は、使用電力に比例した賦課金によって回収することとしてお り、電気料金の一部として国民が負担することになっている。2011年の年末以降、制度の 詳細を定める政省令が議論され、決定される。FITの導入によって、再生可能エネルギーの 導入における経済的な障壁がこれまでより緩和され、再生可能エネルギーの大規模導入が 実現されることが期待されている。

(3) 再生可能エネルギー利用に関する地域間連携

国による再生可能エネルギーの導入促進策だけでなく、再生可能エネルギーの利用促進 を目的として自治体が連携する動きも生じている。東京都と北海道、青森県、岩手県、秋 田県、山形県は2009年に再生可能エネルギー利用の地域間連携を目的とした協定を結んだ

6)。これは、地方の再生可能エネルギーの供給ポテンシャルと都市の需要とを結び付けるこ とで、地方経済の活性化と都市の CO2削減を同時に達成しようというものである。各再生 可能エネルギーの利用可能性は一部の地域に集中して賦存する傾向がある。そのため、こ れまでの自治体ごとの再生可能エネルギーの利用計画と比較して、より広範囲に連携して 利用計画を検討することで、各自治体の特徴を補完しあうことが期待される。

(4) 多様な再生可能エネルギー利用促進策の可能性

近年の再生可能エネルギーの利用促進策の特徴として、上記のように固定価格買い取り 制度、他地域との連携など多種多様な政策・計画が政府、都道府県、市町村そして、自治 体間の連携など様々なグループで検討されていることがあげられる。そして、それらの検 討内容は、特に政策・計画立案といったより戦略的段階における再生可能エネルギー利用 方策の検討が検討されていることが特徴的である。

さらに、そこで用いられる政策も多様なものになっている。例えば、NEDO の地域新エ ネルギービジョン策定事業が供給事業者を支援する補助金による「供給プッシュ」の発想に 基づく支援政策であったことに対して、固定価格買い取り制度は、市場メカニズムを活用 した「需要プル」の発想に基づく支援策である。「需要プル」のもとでは、単にコストを見る だけではなく、もっとも重要な政策を筆頭に、ファイナンス面からの検討や、制度・組織 のあり方、社会的に見た必要性と解決策など、需要面での市場環境を整えることが重視さ れる。「技術の実証」ではなく、新しい政策モデル、新しいビジネスモデルやファイナンス モデル、新しい制度・組織的なモデル、新しい社会的モデルなどを組み合わせて、事業と しての成立可能性を見極めるものである。今後、さらに大規模な再生可能エネルギーの利 用促進に向けて、再生可能エネルギーの利用を促進するための多様な方策が検討される可 能性があると考えられる。

(16)

7 1.1.2.2 環境保護策

様々な再生可能エネルギーの利用促進方策が検討される一方で、環境保護の観点から適 切な再生可能エネルギーの導入を促進するための方策の検討も実施されている。近年再生 可能エネルギーの導入プロジェクトの実施実績が多くなるとともに、再生可能エネルギー の適切な導入方法が議論となっている。現在、下記のような取り組みによって、各自治体 において地域内全体の再生可能エネルギーの導入方針を検討する自治体も存在してきてい る。これまでの「NEDO 地域新エネルギービジョン策定事業」が再生可能エネルギーの利 用可能性調査を行い、有望なプロジェクトの実現を目標としていたことに対して、下記の 取り組みは個別のプロジェクトの導入だけでなく、地域内に大規模に再生可能エネルギー が導入される可能性を想定し、その適切な開発を促す取り組みとなっていることが特徴的 な点である。今後、各自治体は下記の取り組みによって地域内における大規模な再生可能 エネルギー導入をコントロールする可能性を持つことになる。再生可能エネルギーの適切 な利用を促進するためにも、今後これらの検討は注目を集めると考えられる。

(1) 開発可能地域・条件の設定「環境影響評価条例・ガイドライン」

現在、自治体の中には「環境影響評価条例」を策定し、風力発電の開発における環境影 響評価の実施方法を指示するものや 7)、「風力発電の導入に関するガイドライン」を策定し て開発できない地域や開発可能な地域のゾーニングを行っている自治体が存在する8)。例え ば、山形県飽海郡の遊佐町風力発電施設建設ガイドラインでは、ガイドラインを遵守して、

調整手順を踏んで建設が可能な区域として、海岸線から内陸部に概ね 500m までの区域を 定め、それ以外の区域を建設が望ましくない地域としている9)。このような動きは、各自治 体がより具体的に再生可能エネルギー開発の方向性に影響を与える可能性を示している。

これらの「環境影響評価条例」と「風力発電の導入に関するガイドライン」が定める内容 は各自治体によって異なる。また、条例として定めるか、ガイドラインとして定めるかに ついては、その目的とするところに大きな違いはないが、策定プロセスやその拘束力が異 なる。しかし、拘束力の弱いガイドラインであってもそれを無視したプロセスで導入を推 し進めることは、実際には地域に理解されず困難であると予想される。

(2) 戦略的環境アセスメント

環境アセスメントの分野でも、環境への影響を広く把握するために、従来実施されてい た計画熟度が高まった事業の実施段階で行う環境アセスメント(いわゆる「事業アセスメ ント」)に対して、計画の早期の段階(戦略的段階:政策・計画・意思決定など)で「戦略 的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment)」を行うことが活発に なっている 10)。従来の環境アセスメントが事業実施直前に行われていたため、自由度が少 なかったことに対して、戦略的環境アセスメントの考え方は、より効果的な段階、すなわ ち政策・計画・プログラムの段階でのアセスメントへ展開していこうという考え方である。

戦略的環境アセスメントの利点と便益として、事業段階の環境影響評価より、予防原則に 取り組むことができること等があげられる。戦略的環境アセスメントの結果として、環境 影響評価条例やガイドラインの策定が期待されている。

(17)

8

1.1.3 再生可能エネルギーに関する社会的課題

以上のようなエネルギー需給における社会的な変化に伴い、新たな再生可能エネルギー の促進策、適切な開発を促すための方策の検討が必要になる中、再生可能エネルギーの利 用可能性を分析することの必要性が広い範囲で想定される。そして、社会的な変化を受け て、再生可能エネルギーの利用可能性を分析する上で、本節では重要と考える 2 つの視点 を下記にあげた。それは、「大規模な再生可能エネルギー導入を想定した議論の必要性」と

「多様な方策の可能性(シナリオ)の検討」である。

(1) 大規模な再生可能エネルギー導入を想定した議論の必要性

再生可能エネルギーによる電力需給を議論する際、従来もっとも大きな関心事の一つだ ったのは、そのコストパフォーマンスであったと考える。これまで様々な政策によって再 生可能エネルギーの経済的競争力を向上させ、再生可能エネルギーの導入を促進すること が議論されてきた。このような議論のなかでは、再生可能エネルギーの導入は他のエネル ギーに対して経済的競争力を持つもののみ導入すべきという意見が多数を占めていたので はないだろうか。しかし、近年、特に2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーを 含めた電力需給の在り方が大きな議論となっており、さらに具体的に日本の再生可能エネ ルギーに電力供給の一翼を担う能力があるかどうか、そしてどのように再生可能エネルギ ーを主要な電力供給源とした電力需給が可能になるかが議論となっている。つまり、再生 可能エネルギーの大規模導入を想定して、それを実現可能にするための方策を議論し、将 来のエネルギー需給の在り方を判断することが求められている。「再生可能エネルギーの大 規模導入の想定」は近年、研究を行う上での重要な視点の一つとなっていると考える。

(2) 多様な方策の可能性(シナリオ)の検討

再生可能エネルギーの大規模な導入を目指す中では、どのエネルギーを利用するか(風 力、太陽光、地熱、水力、バイオマスなど)、どの地域の再生可能エネルギーを利用するか、

どの程度の地域を範囲としてエネルギーの利用を検討するか、さらに各自治体はどのよう なコントロールを実施するかなど、多様な可能性が考えられる。このような中で、各自治 体が再生可能エネルギーの利用方針を決定する上では、様々なシナリオを想定し、後述す る様々な要素についてメリット・デメリットを考慮しながら住民も交えた議論を行い、意 思決定を行うことが必要である。今後のエネルギー需給を決定する上では非常に多くのシ ナリオが想定されるため、そのすべてを網羅し分析することは困難な作業になるかもしれ ないが、住民との合意形成を図る上では可能な限り多様な可能性を検討する必要があると 考える。

本研究において、再生可能エネルギーの利用可能性を分析する上で、この 2 つの視点を 近年の社会的な変化を受けての重要な視点として設定した。大規模な再生可能エネルギー の導入を想定した場合に、どのような方策の可能性があり、それらのメリットやデメリッ トを分析する必要がある。この課題に対して再生可能エネルギーの利用可能性の研究によ

(18)

9 ってどのように応えていくかを重要なテーマと考える。

1.2 再生可能エネルギーの利用可能性調査に関する先行研究

1.2.1 様々な意味での利用可能性研究

本節では、これまでの再生可能エネルギーの利用可能性調査に関する先行研究について 考察した。再生可能エネルギープロジェクトでは、発電量がそれぞれの地域の特性によっ て大きく変化し、その発電量の変動がプロジェクトの経済性を左右することになる。また、

再生可能エネルギーによる発電施設の導入には経済性の他にも社会的な条件、地形的な条 件、自然環境への影響、景観への配慮など様々な条件を配慮する必要がある。再生可能エ ネルギープロジェクトの有望性は様々な要因によって変化し、プロジェクトを実施する地 域によってその有望性は大きく異なると考えられる。そのため、再生可能エネルギーの導 入を検討する上では、それぞれの地域でプロジェクトごとに、様々な観点から導入可能性 を分析することが必要である。これまでに様々な観点から導入可能性(利用可能性)を分 析する研究が実施されているが、単に「再生可能エネルギーの利用可能性」と表現した場 合、その表現が指し示す範囲は大変幅広くなるため、まずその全体について下記に述べた。

下記では、これまでの再生可能エネルギーの利用可能性に関する評価・研究・調査を「気 象パラメータに関する研究・調査」、「定量的な再生可能エネルギーの利用可能性評価・研 究」、「特定プロジェクトの経済性評価」に分けて説明した。これらの再生可能エネルギー の利用可能性評価は、「再生可能エネルギーの導入支援」という共通の大きな目的のもと、

各ステークホルダーが再生可能エネルギーの導入を検討実施する上で、それぞれの課題の 解決に役立っている。

(1) 気象パラメータに関する研究・調査

再生可能エネルギーの経済性は、まずそのエネルギー源となる気象要素によって大きく 変化し、その気象要素は地域的・空間的な特徴を持つことが多い。そのため、各地域の導 入検討主体が再生可能エネルギーの導入を検討する場合、それぞれの導入地点における気 象要素を知ることが必要である。気象要素のデータを得るためには、年間を通しての気象 観測やシミュレーションが必要である。しかし、再生可能エネルギー導入検討の初期段階 においてそれぞれのプロジェクトの有望性を大まかに把握する段階では、個別にこれらの 作業を行うことは時間やコストの観点から困難である。

そこで、再生可能エネルギーの導入を促進する多くの国々では、再生可能エネルギーに 関する気象要素の観測結果やシミュレーション結果からデータベースを構築し、公開して いる。例えばアメリカのNREL(National Renewable Energy Laboratory)では、GIS(地 理情報システム)チームによって、各再生可能エネルギーのデータが公開されている 11)。 これらのデータベースは、個別のプロジェクトが再生可能エネルギーの導入を検討する際 に、プロジェクトの有望性を図るための指標の一つとして用いられる。特に、プロジェク トの初期段階において再生可能エネルギーの導入の有望性を図るうえで、重要な情報源の 一つとなっている。

日本では、再生可能エネルギーの利用可能性を明らかにするために、その利用可能性に

(19)

10 影響を与える大きな要因の一つである風速、日射量などといった気象データが観測やシミ ュレーションによって全国的に明らかにされ、データベースとしてまとめられている。例 えばNEDOの局所風況予測モデルによって風況情報が公開されている12)。これらのデータ ベースの構築によって、再生可能エネルギーの導入検討主体がプロジェクトの初期段階に おいてデータを引用し、再生可能エネルギーの導入可能性を検討することが可能になった。

また、データベースを用いて発電量を概算することも可能である。

(2) 定量的な再生可能エネルギーの利用可能性(ポテンシャル)評価・研究

次に、再生可能エネルギーの利用可能性を定量的に評価する研究が行われている。これ らの研究では再生可能エネルギーの利用可能性を定量的に評価することで、特定の再生可 能エネルギーが有望な地域を明らかにしている。また、特定の地域内で異なる再生可能エ ネルギーを定量的に評価することで、その地域で有望な再生可能エネルギーを明らかにし ている。日本では、各再生可能エネルギー関連団体が再生可能エネルギーのポテンシャル を広域に評価し、日本の再生可能エネルギーの分布を明らかにしている 13)。また、NEDO 地域新エネルギービジョン策定事業 4)、総務省緑の分権改革 14)における再生可能エネルギ ー賦存量調査等では、各地域がそれぞれの視点から再生可能エネルギーのポテンシャルを 定量的に評価した結果から、有望な地点や地域内で有望なエネルギーを選出している。こ の定量的な再生可能エネルギーの利用可能性評価では、空間的な気象要素の分布を評価す る上で、従来の気象パラメータに関する研究やその結果のデータベースが利用されている。

(3) 特定プロジェクトの経済性評価

そして 3 つ目に、特定の再生可能エネルギープロジェクトの経済性を評価するものであ る。上述した通り再生可能エネルギープロジェクトでは、発電量がそれぞれの地域の気象 などの特性によって大きく変化する。そしてその発電量の変動がプロジェクトの経済性を 左右する。そのため、プロジェクトごとに発電量の予測を含めた経済性評価を行うことが 重要である。Natural Resources Canadaでは、再生可能エネルギーの経済性を評価し、再 生可能エネルギーの導入可能性を分析できるソフトウェアとして「RETScreen」を開発し ている15)

従来のプロジェクトでは、再生可能エネルギーを導入するにあたって、まず再生可能エ ネルギーの発電量を大きく左右する気象要素についてのデータベースや、広域な再生可能 エネルギーの定量的評価結果から、有望な地域や有望な再生可能エネルギー種別を選定し、

さらにプロジェクトの計画を具体化させていく中で、この特定プロジェクトの経済性評価 が実施される傾向にあった。これに対して、「RETScreen」はプロジェクトやエネルギー種 別の選定のなどの早い段階においても、それぞれのプロジェクトの経済性評価を大まかに 行うことを推奨している。早期に経済性評価を実施することで、プロジェクトの特性を理 解することができる。

1.2.2 再生可能エネルギーのポテンシャル研究

本研究では、将来の大規模な再生可能エネルギー導入の可能性の議論に資するため、こ

(20)

11 れらの再生可能エネルギーの利用可能性評価の中で、この定量的な利用可能性評価につい て研究した。本研究では、この「再生可能エネルギーの利用可能性を定量的に評価したも の」を「ポテンシャル」と呼ぶ。これまでの再生可能エネルギーのポテンシャル研究につ いてさらに下記に述べた。

(1) これまでのポテンシャル研究の種類

このポテンシャルを研究するものの中には、異なる目的を持って評価されている 2 つの 評価がみられる。まず、「国規模の再生可能エネルギーのポテンシャルを評価したもの」で ある。この評価では、広範囲を評価することで、国全体の再生可能エネルギーのポテンシ ャルの分布を明らかにしている。日本では、各再生可能エネルギー関連団体が発表してい るポテンシャルの評価13)や、環境省のポテンシャル評価16)がこれに当たる。これらの評価 では、広範囲に評価することを可能にしている一方で、その評価の解像度は小さくなって しまうことが多い。

次に、「特定地域の再生可能エネルギーポテンシャルを地域の視点で明らかにしたもの」

である。日本では、NEDO 地域新エネルギービジョン策定事業 4)、総務省緑の分権改革に おける再生可能エネルギー腑存量調査等 14)がこれに当たる。これらの評価では、各地域が それぞれの視点から再生可能エネルギーのポテンシャルを評価した結果から、有望な地点 や地域内で有望なエネルギーを選出している。地域の視点から評価することで、より具体 的な検討が期待できる一方で、他の周辺地域との関係を明らかにすることはされにくかっ た。

(2) これまでのポテンシャル研究の特徴

再生可能エネルギーによる発電施設の導入には経済性や社会的な条件、地形的な条件、

自然環境への影響、景観への配慮など様々な条件によって利用可能性が限定されるため、

利用可能性を定量的に評価する際、それらの影響を考慮した評価が重要である。例えば、

NEDO の地域新エネルギービジョン策定事業では、賦存するすべてのエネルギーを物理的 に算出する潜在賦存量と、再生可能エネルギーを実際に利用する際の経済的、社会的な制 約を踏まえて利用可能な量(期待可採量、利用可能量、導入ポテンシャルなどと呼ばれる。

以下期待可採量とする)を算出し、様々な条件を考慮した利用可能性を議論していた。こ の期待可採量は潜在賦存量よりも現実的な値として認識され利用されている。しかし、算 出された期待可採量は算出条件の設定によって変化する量として利用されるべきであるこ とに注意しなければならない。

(3) これまでのポテンシャル研究の問題点

期待可採量が評価条件の設定によって変化しうる量であるという性質から、これまでの 再生可能エネルギーの利用可能性評価では様々な観点から評価が実施されている。

まずNEDOの地域新エネルギービジョン策定事業では、全国で統一的な評価基準は設け られておらず、各市区町村の視点(評価基準)で利用可能性が評価されている。地域の視 点や評価基準で利用可能性を評価することは、導入可能な量を推定する上で有効な方法の

(21)

12 一つである。しかし、市区町村ごとの独自の基準で評価が実施された結果、周辺地域と比 較した場合それぞれの市区町村がどのような特徴を有しているのか明らかにされていない。

次に分山・江原(2009)では、長崎県雲仙市において、各再生可能エネルギーの期待可 採量を推定するために、モンテカルロ法を用いた分析を行っている 17)。モンテカルロ法を 用いることで、確率分布を持つ再生可能エネルギーの期待可採量を算出している。

そして環境省の評価では、複数のシナリオに基づいて条件を変化させた場合の日本の導 入可能なポテンシャル量(導入ポテンシャル)を全国的に推計し、有望なポテンシャルを 持つ都道府県を明らかにしている 16)。環境省の評価では、導入ポテンシャルが都道府県内 の市区町村にどのように分布しているのかについては議論されていない。

再生可能エネルギーのポテンシャルを評価する上で、何らかの基準においてその評価条 件を設定しなければならないが、そのため評価結果は恣意的になることが予測される。従 ってその恣意性を考慮したうえで、各々の目的に応じた評価結果を得るために現状では 様々な視点からポテンシャルが評価されていると考える。

1.3 本研究の概要

1.3.1 再生可能エネルギーのポテンシャル研究の意義

今後、再生可能エネルギーの大規模導入を想定したエネルギーの需給方策(シナリオ)

の検討において、再生可能エネルギーポテンシャル評価が様々な場面で必要であると考え る。上述した通り、再生可能エネルギーのポテンシャル評価では、再生可能エネルギーに よる発電施設の導入に関する経済性や社会的な条件、地形的な条件、自然環境への影響、

景観への配慮など様々な条件を考慮する必要がある上に、評価のための前提条件設定によ って評価結果が大きく変化することになる。そして、再生可能エネルギーのポテンシャル 評価は、ある時は一定条件下で全国的に評価する必要があり、ある時はモンテカルロ法を 用いたポテンシャルの変動性の評価が必要であり、またある時は地域の視点から独自の基 準でポテンシャルを評価する必要があると考えられる。

そこでこれらの様々な評価の特徴を活かしながら、適切にポテンシャルの特徴を把握し、

再生可能エネルギーの需給方策(シナリオ)を検討するためには、再生可能エネルギーポ テンシャル評価法の体系的な理論・方法の研究が必要である。

1.3.2 再生可能エネルギーのポテンシャル評価による研究対象

具体的には下記のような課題の解決策を検討する上で、様々な再生可能エネルギーのポ テンシャル評価を実施することが必要であり、有効であると考えられる。

(1) 全体最適化の議論の必要性

ここで、再生可能エネルギーの大規模導入を想定した場合、従来の導入に関する社会的 問題のほかに、これまでと異なる広範な視点からの計画の検討が想定される。例えば、都 道府県レベルの地域間連携を想定した大規模な再生可能エネルギーの導入を検討する場合、

これまでの各プロジェクトの計画検討においてプロジェクトごとの計画の合理性が検討さ れていたことに対して、これからは各プロジェクト、各市町村などの枠組みを超えて大規

(22)

13 模な導入を想定することで各プロジェクトが統合された地域全体としての合理性が求めら れる。具体的には、下記の事項を考慮し、無秩序な開発ではなく、発電施設の導入推奨地 域の設定や導入目標量・ロードマップの設定などによる計画的な導入の推進が望ましいと 考える。再生可能エネルギーポテンシャルを定量的に評価することによって、地域の特徴 を明らかにし、これらの視点から地域全体で最適化されたエネルギー需給のシナリオを複 数検討することが期待される。

(2) 地域に賦存する再生可能エネルギーポテンシャルの効果的な活用

これまで、再生可能エネルギーの導入検討では、地域新エネルギービジョンのように、

はじめに特定の自治体・地域への導入が前提にあり、その対象地域のなかでより有望な再 生可能エネルギー利用の種類・立地・方法が選択されていた。しかし、都道府県レベルの 地域間連携のような大規模な導入をより広範囲に検討する際には、これまで特定の地域内 で有望と考えられていたポテンシャルが、他の地域と比較するとあまり有望でないケース も考えられる。これまでよりさらに広い範囲で再生可能エネルギーの発電設備の導入を検 討することで、より有望性の高いポテンシャルの活用が期待される。

(3) 環境への悪影響の減少

これまで再生可能エネルギーの導入の際に、各プロジェクトにおいて環境影響評価など の実施によって、環境への悪い影響を少なくするための立地や開発方法が検討されている が、大規模な導入を検討する場合、複数のプロジェクトを統合した地域全体として再生可 能エネルギー開発による環境への悪い影響を少なくすることも必要となると考えられる。

(4) 発電設備に係るインフラ整備の効率化

発電施設の導入を検討する上で、系統連係や建設のための道路といった既存インフラの 有無はプロジェクトの経済性に大きく影響する。発電施設の導入の際に新規のインフラが 必要となる場合、そのプロジェクトの経済性は悪くなってしまうが、ある地域内の複数の プロジェクトを統合して検討した場合、新規のインフラ導入に対する個別のプロジェクト 当たりの負担が小さくなり、個別プロジェクトの経済性が向上する場合が十分考えられる。

1.3.3 再生可能エネルギーのポテンシャル研究の視点

1.3.2節で示した各種課題に応えるため、本研究では再生可能エネルギーのポテンシャル

評価について研究した。その中で、まずポテンシャル評価の特徴を理解するための 3 つの 視点を下記にあげた。再生可能エネルギーのポテンシャル評価によって、各地域の再生可 能エネルギーについて下記の視点から分析し、それらの結果を組み合わせることで地域の 特徴を明らかにすることができると考えられる。そして、それらの分析結果を基に1.3.2節 で示した各種課題に取り組むことが期待される。

(1) ポテンシャルの空間的な分布

再生可能エネルギーの導入を検討する上では、今後も各市区町村が持つ役割は大きいと

(23)

14 考えられる。しかし、その一方で、未だに多くの市区町村でどのような再生可能エネルギ ーが有望か明らかにされていない。再生可能エネルギーポテンシャルは地域的な局在傾向 があるため、各地域が主体的に再生可能エネルギーの利用計画や政策を検討するには、ま ず全国的な広域的視点からポテンシャルがどのように賦存しているのか、次にそれぞれの 市区町村内でどのようにポテンシャルが分布しているのか明らかにする必要がある。

(2) ポテンシャルの定量的な分析

算出された再生可能エネルギーポテンシャルは算出条件の設定によって変化する量とし て認識されている。この条件設定の中で、再生可能エネルギーポテンシャルは特定の地域 に対してどのように導入するか(発電シナリオ)と、どの地域に導入するか(導入地域の 条件)の前提の変化によって評価結果が変化する。

まず発電シナリオの変化によってポテンシャルの全体量が変化することが考えられる。

例えば、風力発電において風車の設備容量や風車の設置間隔の前提を変化させると、そこ から想定される風力のポテンシャル量も変化する。

次に、導入地域条件の変化による量的な空間分布の変化が考えられる。例えば、風力発 電において、どのような地域に風車を導入するかの前提条件の変化(年間平均風速5m/s以 上の地域に風力発電を導入する場合と、年間平均風速6m/s以上の地域に風力発電を導入す る場合の違い等)によって、評価されるポテンシャルは大きく変化する。この場合、さら にポテンシャルの空間的な分布も変化することになる。

このような変動性のもと、どのようにデータを客観的に示すかが重要となる。

(3) ポテンシャルの土地属性の分析

再生可能エネルギーのポテンシャルを定量的に評価する場合、評価されたポテンシャル の活用の容易さが、評価地点の土地属性によって異なることが考えられる。例えば同じ風 力ポテンシャル量が評価された地点においても、各地点の傾斜・標高・風速など活用する ための条件が異なる場合、その活用の容易さが異なる。また、農業地域と森林地域では、

量的に同じポテンシャルが評価されたとしても、その活用のためにはそれぞれの土地属性

(農業地域または森林地域)に適した方策を検討する必要がある。そのため、定量的に評 価されたポテンシャルの土地属性を把握することが重要となる。

1.3.4 本研究の目的

本研究では、体系的に再生可能エネルギーポテンシャル評価法の理論・方法を研究する 目的から、再生可能エネルギーポテンシャル評価の3つの視点・特徴について研究した。

1.3.5 本論文の内容

まず、第 1章で本論文の概要・目的を述べた後、第2章では再生可能エネルギーポテン シャルの理論・方法として、再生可能エネルギーポテンシャル評価の方法論や評価を行う 上で必要な理論や情報について整理した。第 3 章では、再生可能エネルギーポテンシャル 評価を行う上での前処理として、河川流量や日射量のシミュレーションを行った。第 4 章

(24)

15 では、市町村規模におけるポテンシャルの空間的な分布と、ポテンシャルの定量的な分析 について研究する目的から、長崎県雲仙市で再生可能エネルギーポテンシャル評価を行っ た。第 5 章では、再生可能エネルギーポテンシャルの広域的視点からの空間分布について 研究する目的から、九州全域の各市町村において再生可能エネルギーポテンシャル評価を 行った。第6章では、第4章と第5章の結果を受けて、新たな再生可能エネルギーポテン シャルの分析の必要性について議論した。第 7 章では、日本に賦存する再生可能エネルギ ーポテンシャルの特徴を明らかにする目的から、地形要素、社会的要素、再生可能エネル ギーに関する各種要素の視点から日本の再生可能エネルギーポテンシャルが持つ土地属性 を分析した。第8章では、第7 章の結果を踏まえて、日本に賦存する再生可能エネルギー ポテンシャルを土地属性に基づいて分類し定量的に評価した。さらに第 9章では、第7章 と第 8 章の結果から日本の再生可能エネルギーポテンシャルを定量的な視点から考察する とともに、これらの研究成果を用いて再生可能エネルギーの導入を支援する方法と政策に ついて考察した。そして第10章で、本研究で得られた結論をまとめた。

(25)

16

2 再生可能エネルギーポテンシャル研究の理論と方法

2.1 再生可能エネルギーポテンシャル評価の概要

第 1 章では、再生可能エネルギーのポテンシャルを評価する上での背景や先行研究、目 的、課題について述べた。第 2 章では、再生可能エネルギーを評価する上での具体的な理 論 や方法 につい て述べ た。こ れまで 世界 の様々な 地域で 地理情 報シス テム(GIS:

Geographic Information System)を用いたポテンシャル評価が実施されてきた。

Fig. 2-1 再生可能エネルギーポテンシャル評価法の概要

まず、Fig. 2-1に「再生可能エネルギーポテンシャル評価法」の概要を示した。ポテンシ

ャルを評価するための大まかな流れは、まず評価に用いる気象パラメータを準備し、GIS データを用いて再生可能エネルギーの導入可能地域を抽出し、その地点(地域)で得られ る再生可能エネルギーの発電量(出力)を推定する作業である。

まず第 1 に、シミュレーションによって地形や降水量のデータから日射量や河川流量等 の気象値を推定する。気象値の推定は、多くの場合観測やシミュレーションによって値を 決定する必要があるが、多くの国で風速や日射量などの気象値のデータベース(シミュレ ーションの結果の公開、観測データの公開)が整備され、公開されており、特にプロジェ クトの初期段階において有効に活用されている。

そして第 2に、GIS を用いて標高や土地利用のデータから再生可能エネルギーの導入に 対する有望地域を抽出する。有望地域を抽出する上では、地形(標高)やインフラ(道路、

区画指定など)の GIS データを活用することで効果的に作業を進めることができる。日本

(26)

17 では、国土交通省において様々なGIS データが公開されており、これらを用いることで多 様な分析が可能である。なお、この有望地域の抽出条件によって、ポテンシャルの評価結 果が大きく変化するため、その抽出の制約条件の設定方法が重要となる。

そして第 3 に、抽出された地域に対して、最大限に再生可能エネルギーの発電施設を導 入すると想定した場合に得られる年間発電電力量の合計値をポテンシャル量として算出す る。ポテンシャルは、発電出力(kW)の合計として算出される場合も、年間発電電力量(kWh) の合計として算出される場合もある。ここで評価に用いられる計算式は簡易的なものから 詳細なものまで幅広く存在する。また、評価される最小単位も、特定のプロジェクトのポ テンシャルを算出する場合から、市区町村、都道府県、国内のポテンシャルの総量を算出 するものまで様々な範囲でポテンシャルが評価されている。

これらのポテンシャルの評価プロセスを「①気象値の推定」、「②有望地域の抽出」、「③年 間発電電力量の算出」と呼ぶことにする。この第 2章では「GISを用いた再生可能エネルギ ーポテンシャル評価」、「気象値の推定」、「有望地域の抽出」、「年間発電電力量の算出」のそ れぞれについて説明する。

2.2 GIS(Geographic Information System)地理情報システムの活用

2.2.1 GRASS GIS

GISは、コンピュータ上に地図情報やさまざまな付加情報を持たせ、作成・保存・利用・

管理し、地理情報を参照できるように表示機能を持ったシステムである。人工衛星、現地 調査などから得られたデータを、空間、時間の面から分析・編集することができ、科学的 調査、土地、施設や道路などの地理情報の管理、都市計画などに利用される。GIS では実 世界から収集された空間情報をそれぞれのレイヤー(layer;層)に分けてデータ化し、デ ータベースを構築する。そこで地理的な情報は基本的に幾何情報と属性情報に分けられる。

幾何情報とは点・線・多角形(ポリゴン)によりあらわされる面などの図形を表す情報で、

属性情報とはそれが何であるかを示す属性の情報である。属性情報は質的(例えば、ある 場所においての土地利用や地質の情報)なものと、量的(例えば,標高や地下水の化学的 な濃度)なものがある。

本研究では、GISソフトウェアとしてGRASS GIS のVer.5 とVer. 6 を利用した18)

GRASS GISは無料で利用できるオープンソースのソフトウェアである。ソースコードが公

開されているため、GRASS GISで行うシミュレーションのコードを確認することができる。

本研究で行った多くの分析はラスター化されたデータの分析であり、GRASS GISは特にラ スターデータについて様々な分析が可能である点が特徴的なソフトウェアである。

2.2.2 GISデータベース

日本では国土交通省国土数値情報ダウンロードサービス 19)において自然公園や都市指定 地域等の指定地域情報、気候値や標高等の自然情報、地価や土地利用情報の土地関連情報、

道路や行政境界等の国土骨格情報、公共施設や発電所の施設情報、工業や商業統計等の産 業情報、そしてダムや河川情報等の水文情報など様々な情報が、それぞれメッシュ(100m

~1000mメッシュ)、ライン、ポイント情報として整備され、一般に利用できる。再生可能

(27)

18 エネルギーに関して言えば、GIS はすでに情報の共有手段として利用されており、たとえ ばNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公開する「局所風況マッ プ」12)や、「バイオマス賦存量及び利用可能量の全国市町村別推計」20)が存在する。「局所風況 マップ」は複雑地形上においても年平均風速が高精度で予測できる多段階ネスティングモ デルであるLAWEPS12)によって予測された、日本全国の広域の風況分布(年間平均風速な ど)を500mメッシュの分解能表示するシステムである。一方で「バイオマス賦存量及び利 用可能量の全国市町村別推計」は各自治体における5項目18種類のバイオマスの賦存量や 利用可能量の推計結果を日本地図上で表示することができる。

2.2.3 GISデータ

上述した GISデータの中から、本研究で再生可能エネルギーポテンシャル評価のために 使用したデータについて説明する。

(1) 国土数値情報都市地域データ 第2.0版(データ作成年度:平成18年度)19) 都市地域とは、一体の都市として総合的に開発し、整備し、および保全する必要がある 地域であり、都市計画法第 5 条により都市計画区域として指定されることが相当な地域で ある。以下を対象とする。

・ 国土利用計画法で指定する都市地域

・ 都市計画法第7条第1項の市街化区域

・ 都市計画法第7条第1項の市街化調整区域

・ 市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域に おける同法第8条第1項第1号の用途地域

※国土数値情報都市地域データは、国土利用計画法土地利用基本計画に基づく都 市地域について、範囲(面)、区分(都市計画法に基づき指定された市街化区域、

市街化調整区域、その他用途地域)等を整備したものである。なお、土地利用基 本計画(国土利用計画法)で定める「都市地域」の変更を伴わず、「市街化区域」

「市街化調整区域」「その他用途地域」(いずれも都市計画法で定める地域)のみ の変更があった場合、当該変更情報は本データに反映されていない場合があるの で、本データはこれら細区分のポリゴン形状について、精度を保証するものでは ない。

(2) 国土数値情報自然公園地域データ 第3.0版(データ作成年度:平成22年度)19) 自然公園とは、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園をいう。国立公園とは我が国 の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地(海域の景観地を含む)であって、環境 大臣が自然公園法第 5条第1項の規定により指定するものをいう。国定公園とは国立公園 に準ずる優れた自然の風景地であって、環境大臣が自然公園法第 5条第2項の規定により 指定するものをいう。都道府県立自然公園とは優れた自然の風景地であって、都道府県が 自然公園法第72条の規定により指定するものをいう。

Fig. 7-2  日本の各指定地域細区分の割合
Fig. A-1  北海道の各指定地域細区分の割合
Fig. A-4  北陸の各指定地域細区分の割合
Fig. A-7  中国の各指定地域細区分の割合
+7

参照

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