7 日本の再生可能エネルギーポテンシャル評価と属性分析
7.6 太陽光ポテンシャルに関する要素の分析
7.6.2 家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果
日本全国の家庭向け太陽光ポテンシャルの評価結果をFig. 7-10に示した。Fig. 7-10では、
それぞれ、上からシナリオ1、2、3、4を想定した場合の評価結果を示した。Fig. 7-10 中では、各シナリオにおいて人口密度について分類し、ポテンシャルを集計した。また、
全天水平面日射量の日積算量の年平均値が3300Wh/m2/day未満のポテンシャルを【オレン ジ 色 】、3300Wh/m2/day 以 上 3600Wh/m2/day 未 満 の ポ テ ン シ ャ ル を 【 水 色 】、
3600Wh/m2/day以上のポテンシャルを【赤色】で示した。さらに、各色の濃淡で傾斜面方
100 位の東西南北を示した。
Table 7-4 太陽光ポテンシャルに関する要素の分析に用いた土地属性区分
Fig. 7-10 日本の家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果
要素 土地属性
気象要素 全天水平面日射量 3300Wh/m2/day未満の地域
3300Wh/m2/day以上3600Wh/m2/day未満の地域 3600Wh/m2/day以上の地域
傾斜面方位 東(北東から南東)の地域 北(北東から北西)の地域 西(北西から南西)の地域 南(南西から南東)の地域 人口密度 50人未満の地域
50人以上300人未満の地域 300人以上4000人未満の地域 4000人以上の地域
101
ⅰ 発電設備設置シナリオによる変動性の影響
各シナリオの比較からポテンシャルの変動性について分析した。まず、各シナリオにお けるポテンシャルの合計量は、もっとも世帯当たりの導入容量を小さく想定した場合のシ ナリオ1(10m2(約1kW)集合住宅形式)において約71,700GWh、もっとも世帯当たり の導入容量を大きく想定した場合のシナリオ4(25m2(約2.5kW)切妻屋根形式)におい
て約179,000GWhとなり、シナリオ4では、シナリオ1の約2.5倍の値と大きな増加を示
した。各世帯には、一戸建のものから集合住宅まで様々な居住形態が考えられる。また、
一戸建においても、その屋根の形式によって導入可能なパネル容量は制限されるため、全 世帯についてシナリオ 4 の想定で家庭向けポテンシャルを算出することは、評価が過大に なる恐れがある。
ⅱ 水平面全天日射量の日積算量の年平均値
次に、水平面全天日射量や傾斜面方位、人口密度といったポテンシャルの局地的な性質 について分析した。これらの性質を議論する上で、本節では最も控えめな値としてシナリ オ1の値を基に議論を行った。まず、シナリオ1では水平面全天日射量の日積算量の年平 均値について、3300Wh/m2/day未満のポテンシャルが7,720GWh(11%)、3300Wh/m2/day 以上3600Wh/m2/day未満のポテンシャルが56,611GWh(79%)、3600Wh/m2/day以上の ポテンシャルが7,370GWh(10 %)と、日本に賦存するポテンシャルの80%近くが、水平 面全天日射量の日積算値が3300Wh/m2/day以上3600Wh/m2/day未満の地域の家庭に賦存 していることを示した。
ⅲ 傾斜面方位
次に、傾斜面方位については、東(北東から南東)に位置する世帯のポテンシャルが約
24,300GWh(34%)、北(北東から北西)に位置する世帯のポテンシャルが約13,200GWh
(18%)、西(北西から南西)に位置する世帯のポテンシャルが約12,800GWh(約18%)、 南(南西から南東)に位置する世帯のポテンシャルが約21,500GWh(約30%)と、日本の 家庭向け太陽光ポテンシャルの多くは、東や南の斜面に位置する世帯のポテンシャルであ ることを示した。これはもともと日射が良好な南斜面が居住地域となっていることが原因 と考えられる。
ⅳ 人口密度
さらに、人口密度については、1km2あたり50人未満の地域のポテンシャルが525GWh
(約1%)、50人以上300人未満の地域のポテンシャルが3470GWh(約5%)、300人以上 4000人未満の地域のポテンシャルが26,600GWh(約37%)、4000人以上の地域のポテン
シャルが41,100GWh(57%)と、家庭向け太陽光発電のポテンシャルは人口密度の大きい
地域への集中傾向が顕著である結果となった。しかし、これらの人口密度が 4000 人/km2 以上の人口集中地域では、その大部分の居住形態が集合住宅であると想定される。近年集 合住宅の各世帯向けの太陽光発電設備の導入事例も見られるが、未だ主流ではない。その
102 ため集合住宅が多い地域において、一般の戸建住宅世帯への場合と同等の導入比率が実現 可能であるか、検討が必要である。現状では、家庭向け太陽光発電の主な導入対象は戸建 住宅である。しかし、本節の評価のように各世帯が太陽光発電の導入可能性を持つと考え
た場合、Fig. 7-10では、現状の導入対象としている戸建住宅を持つ世帯はポテンシャルの
全体の一部であり、集合住宅に家庭向け太陽光の大きなポテンシャルが存在すると考えら れる。家庭向け太陽光の大規模な普及には、集合住宅への導入方策を検討することが重要 と考えられる。
V 家庭向け太陽光ポテンシャルに関する要素間の関係
人口密度と傾斜面方位との関連に着目すると、人口密度の大きい地域において、傾斜面 方位が南と東の太陽光ポテンシャルがより大きい割合を示す傾向を示した。下記では、控 えめな太陽光ポテンシャルの試算としてシナリオ 1 の場合を挙げて説明した。シナリオ 1 では、1km2あたり50人以上300人未満の地域のポテンシャルは、各傾斜面方位において 東に約404 GWh(約0.6%)、北に約527GWh(約0.7%)、西に約558GWh(約0.8%) 、
南に約794GWh(約1.1%)となっており、南斜面におけるポテンシャルが大きい傾向を示
した。これに対して、300人以上4000人未満の地域のポテンシャルが各傾斜面方位におい て東に約6,560 GWh(約9%)、北に約3,470GWh(約5%)、西に約3,400 GWh(約5%)、
南に約5,910GWh(約9%)となっており、東、南斜面への集中傾向が大きくなった。さら
に人口密度が4000人/km2以上の地域では、各傾斜面方位において東に約12,600GWh(約 18%)、北に約6,000 GWh(約8%)、西に約5,410 GWh(約8%)、南に約10,800 GWh(約 15%)となっており、さらに南向き斜面、東向き斜面への太陽光ポテンシャルが集中して賦 存している傾向を示した。
ⅵ 太陽光ポテンシャル構造要素の地域的傾向
Fig. 7-11にシナリオ1を想定して、日本の各地域の家庭向け太陽光ポテンシャルを集計
して示した。Fig. 7-11 (a) に北海道、東北、関東、北陸、中部地域の家庭向け太陽光ポテ ンシャルを示し、Fig. 7-11 (b) に近畿、中国、四国、九州、沖縄の家庭向け太陽光ポテン シャルを示した。Fig. 7-11では、人口密度について分類してポテンシャルを集計した。ま た、全天水平面日射量の日積算量の年平均値が3300Wh/m2/day未満のポテンシャルを【オ レンジ色】、3300Wh/m2/day 以上 3600Wh/m2/day 未満のポテンシャルを【水色 】、
3600Wh/m2/day以上のポテンシャルを【赤色】で示した。さらに、各色の濃淡で傾斜面方
位の東西南北を示した。Fig. 7-11では、まず家庭向け太陽光ポテンシャルの分布傾向とし て、関東と近畿地域にそれぞれ24,100GWh、12,800GWhと大きな家庭向け太陽光ポテン シャルが分布していることが明らかとなった。さらに、関東や近畿地域では評価された家 庭向け太陽光ポテンシャルのうち人口密度が 4000 人/km2以上の人口集中地域に賦存する ポテンシャルの割合がそれぞれ関東約76%、近畿約72%と大きい特徴を示した。
家庭向けポテンシャル量は関東や近畿地域の他に、中部地域(8,530GWh)や九州地域
(9,050GWh)に大きく評価された。これらの地域では、関東や近畿地方と比較して1km2
あたりの人口密度が300人以上4000人未満の地域のポテンシャルがそれぞれ約49%、約
103 57%と大きい割合を示した。全天水平面日射量の日積算量の年平均値は、オレンジで示した
3300Wh/m2/day未満のポテンシャルが北海道、東北、北陸に集中して評価された。そして
図中赤で示した3600Wh/m2/day以上のポテンシャルが近畿、中国、四国に集中して賦存し ている傾向を示した。
さらに、各地域の傾斜面方位に注目すると、北陸と四国地域において南(南西から南東)
に位置する世帯のポテンシャルがそれぞれ約15%と20%と全国平均値(30%)と比較して、
小さな値となった。北陸地域ではその一方で東(北東から南東)に位置する世帯のポテン シャルが約 41%と全国平均値(34%)と比較して大きくなった。四国地域では、北や西に 位置する世帯のポテンシャルがそれぞれ24%(全国平均値18%)、23%(全国平均値18%) と大きく評価された。
以上のように、太陽光ポテンシャルの構造要素は全国平均に対してそれぞれの地域が特 徴をもった値を示した。
(a) (b)
Fig. 7-11 日本各地の家庭向け太陽光ポテンシャルの分析結果(シナリオ1)