• 検索結果がありません。

障がいのある人についての項目表

4.1  「障がいのある人についての項目表」の案出結果 

  「障がいのある人についての項目表」に対し、根拠を明らかにしながら、各項目の妥 当性を考察した。そのため、各項目欄の左側に、著者の記載箇所を示す欄を付け加え、

記載がある場合は「○」で示した。また、各著者列にはA- Eのアルファベット、項目ご との行にはa1-  a15の記号を振り、考察において引用した文章の後に(行,  列)で示した (表4.5)。更に、文献を引用した「」内の内容の意味が捉え難い場合は、前後の文脈に沿 い筆者が[]内に文章を補足した。 

 

 

 

4.2  「障がいのある人についての項目表」の考察   

a1    既存の美術教育:  従来の美術教育や美術史からの影響があるか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「アール・ブリュットは美術史を必要と しない。作り手は、美術史や流行と関係ないところで作品をつくる」(a1, A)、「ア ーティストは絵の描き方を教わったことがない人ばかりだった」(a1, C)。これら

から、既存の美術教育や美術史が与える影響と、アール・ブリュットの定義との 関係または障がいのある人の状態との関係に対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「従来の美術教育や美術史からの影響がある か」を項目とした。そして、これを「既存の美術教育」という大項目に位置付け た。 

 

a2    文化・他者の影響:  文化や他者(他の利用者や周囲にいる人)からの影響があるか    この論点には4つの文献が当てはまる。「障害のある人の中には、おきまりの視 覚イメージを大胆にうち破る表現をする人が少なくない」(a2, B)、「彼らを見て 気付いたのは、それぞれのやり方で才能を発揮することはあっても、誰もお互い の真似をしないし、比較に興味がないこと」(a2, D)。これらから、障がいのある 人は社会で一般視されていることや他者から影響を受け難いことへの視点が見ら れた。 

  よって、障がいのある人について「文化や他者(他の利用者や周囲にいる人)から の影響があるか」を項目とした。そして、これを「文化・他者の影響」という大 項目に位置付けた。 

 

a3    完成イメージ:  創作するものについての完成イメージを持っているか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「[あるきっかけから]それまでに拾っ ていた物を組みあわせて作品を作った」(a3, B)、「縫うこと彫ることがただ好き。

それ意外のゴールがない」(a3, D)。これらから、完成イメージに向ってというよ り、偶発的な要因が影響したこと。行為自体が創造的であり、目的でもあること に対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作するものについての完成イメージを持 っているか」を項目とした。そして、これを「完成イメージ」という大項目に位 置付けた。 

 

a4    環境(物理的):  専門的な制作環境(アトリエ、創作環境)があるか 

  この論点には3つの文献が当てはまる。「創意に富んだアーティストならば、ど うぞ描いてくださいというような環境がセッティングされなくとも、自分から制 作に向かうはずである」(a4, B)、「制作環境では、外部の影響を受けず、他者へ の影響など意に介さない作者たちの針と糸だけの空間に没頭することができる」

(a4, D)。これらから、専門の制作環境があるかに対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「専門的な制作環境(アトリエ、創作環境)があ るか」を項目とした。そして、これを「環境(物理的)」という大項目に位置付けた。 

 

a5    素材・道具(選定):  素材/モチーフ、道具/画材の選定について主体性があるか    この論点には4つの文献が当てはまる。「空想の中でモチーフを見つける人、図 鑑から選ぶ人、インターネットで探す人、こっそり隣の人のモチーフを盗む人…」

(a5, C)、「[支援者が適した画材を勧め]水彩の点描で埋め尽くされた画面の下 からも、最初に描いた文字や輪郭線が浮かび上がるようになったらしい。こうし て独自のスタイルを獲得した」(a5, B)。これらから、障がいのある人が自らモチ ーフを選んだり、支援者の働きかけにより初めて触れる素材や画材に興味を持っ たことに対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「素材/モチーフ、道具/画材の選定について 主体性があるか」を項目とした。そして、これを「素材・道具(選定)」という大項 目に位置付けた。 

 

a6    創作行為の特徴:  独自の創作行為があるか 

  この論点には5つの文献が当てはまる。「無意識的な手の跡がそのまま残る行為 こそ、ひとりひとりのこだわりが予測をはるかに超えておもしろい」(a6, D)とい う、行為に集中した無意識の行為や、こだわりと呼ばれる行為が、独自の創作行 為を生んでいるという視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「独自の創作行為があるか」を項目とした。

そして、これを「創作行為の特徴」という大項目に位置付けた。 

 

a7    創作行為の特徴:  衝動的な創作行為があるか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「制作行為は、個人の内面から突然生ま れ、継続される」(a7, B)という、瞬間的に生じた心の動きに従った衝動的な行為 に対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「衝動的な創作行為があるか」を項目とした。

そして、これを「創作行為の特徴」という大項目に位置付けた。 

 

a8    創作行為の特徴:  反復的な創作行為、モチーフ使用があるか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「しかしその狭い範囲の構成が連続(継 続)していくことによって変化が起こり、変容を生じさせ、加速する。そして、ダ

イナミックで永遠とも思える展開を見せていくのです」(a8, D)という、反復行為 により創作品が力を宿すことへの視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「反復的な創作行為、モチーフ使用があるか」

を項目とした。そして、これを「創作行為の特徴」という大項目に位置付けた。 

 

a9    障がいとの関係:  障がい特性が創作行為へ与えている影響があるか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「主に就労の意味すら分からないグルー プに属し、知的なことはうまく出来ませんが、彼らにしかできない美しさがある」

(a9, D)という、障がい故の特異な芸術のあり方への視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「障がい特性が創作行為へ与えている影響が あるか」を項目とした。そして、これを「障がいとの関係」という大項目に位置 付けた。 

 

a10  本人の意識:  創作行為に対する熱中、幸福感があるか 

  この論点には4つの文献が当てはまる。「ただ好きなことをしているとき、幸せ そうに没頭していた」(10, D)、「自分のからだに隠れている表現能力を見いだし て驚きのあまり自分の世界に没頭するところからはじまる」(a10,  E)。これらか ら、創作行為への熱中や幸福感に対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作行為に対する熱中、幸福感があるか」

を項目とした。そして、これを「本人の意識」という大項目に位置付けた。 

 

a11  本人の意識:  創作行為をしているという認識があるか 

  この論点には2つの文献が当てはまる。「作品は、拾った物を愛でながら歩く彼 の充実した通勤時間の延長線上にある」(a11, B)という、障がいのある人の創作行 為は、本人にとっては日常生活の延長や、生活の一部として必要なものであるこ とに対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作行為をしているという認識があるか」

が項目として考えらえた。そして、これを「本人の意識」という大項目に位置付 けた。 

 

a12  終わりの見極め:  創作行為を終える判断について主体性があるか 

  この論点には2つの文献が当てはまる。「大きな木の塊は、大きな器になる予定 だったのだがどこにもない。全てを彫り尽くし、木のくずにしてしまっていた。

木彫りが終わったことを自慢げに伝えると次の材料をほしがる」(a12, D)という、

意思を伝えてきたり物理的に継続不可能になるなど、障がいのある人が創作行為 を終える際、本人の意思がどう反映しているのかに対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作行為を終える判断について主体性があ るか」を項目とした。そして、これを「終わりの見極め」という大項目に位置付 けた。 

 

a13  結果への関心:  創作品に対して関心を持っている 

  この論点には2つの文献が当てはまる。「箱の中の収穫物に見入っていることが ある」(a13, B)、「驚きの布の塊が、工房のあちらこちらにころがっている」(a13,  D)。これらから、創作行為後に障がいのある人が自身の創作品に関心を示すか否 かに対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作品に対して関心を持っているか」を項 目とした。そして、これを「結果への関心」という大項目に位置付けた。 

 

a14  身近な評価:  創作品に対して評価を求めるか 

  この論点には3つの文献が当てはまる。「ただ拾うだけでなく、これを使って何 かを作れば、拾ったものをちゃんと見てくれるかもしれない、と彼なりのコミュ ニケーションを僕に求めてきたのかもしれませんね」(a14, B)、「(お客さんに作 品を認められることで)作っているものを通してそれが自信になっている」(a14,  D)。これらから、創作品を介して他者とのコミュニケーションを求めること、認 められることで自信をつけることなど、障がいのある人が身近な人の評価によっ て受ける影響に対する視点が見られた。 

  よって、障がいのある人について「創作品に対して評価を求めるか」を項目と した。そして、これを「身近な評価」という大項目に位置付けた。 

 

a15  美術的評価:  創作品に対して美術的な評価を求めるか 

  この論点には2つの文献が当てはまる。「[障がいのある人が]彼は油絵作品を 販売して生活費を稼ぎ、暮らしていきたいと将来の夢を語ってくれた」(a15, C)、

「彼らの行為の多くが社会的価値や称賛に無関心であり、自分自身のためだけの 行為であるということ」(a15,  D)。これらから、障がいのある人が創作品に対し 美術的評価を求めていること。逆に、評価に無関心であることに対する視点が見 られた。