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主観評価調査:  解析による相関の検定

 

2)   「b19  終わりの見極:  創作行為の終わりを支援者が判断すること」(合計 56 点)、

「b22  美術的評価:  支援者が創作品に対して美術的な評価を求めること」(合計 52 点)の 2 項目に関して主観評価の合計が 56 点以下であり、低い評価を得ていた。つ まり、この2つの項目は支援者から重視されている度合いが低いことがわかった。 

 

3)   各群の間の平均点が 1 点以上ある、評価の落差が大きな項目は、「b10  創作行為の 特徴:  衝動的な創作行為についての捉え方」(A 群・SA 群)、「b11  創作行為の特徴: 

反復的な創作行為・モチーフ使用についての捉え方」(SA 群・SW 群)の 2 項目あっ た。つまり、この 7 つの項目について、3 つの群の間で、重視する度合いに開きが あることがわかった。 

 

3.3  合計点と平均点の比較のまとめ 

  これは、障がいのある人の創作活動に関わる人の専門領域の違いによって、障がいの ある人の状態について重視する項目や度合いに、異なる特徴がある可能性を示している といえる。また、調査対象とした障がいのある人の創作活動の支援者は、それぞれ関係 している期間に開きがある。この期間の長さによっても、障がいのある人の状態につい て重視する項目や度合いに、異なる特徴がある可能性が示唆された。よって、主観評価 の結果から、関係月数と主観評価の結果に相関が見られるか、また、支援者の専門領域 の違いと主観評価の結果に相関が見られるかについて解析を行う。 

 

4.   主観評価調査:  解析による相関の検定   

ある人の創作活動に関係している月数(以下、関係月数と記す)との相関を分析し、結果 を表に示した(表 6.13,  表 6.14  「相関係数」欄参照)。 

 

1)   「障がいのある人についての項目表」相関分析結果 

  「a9  障がいとの関係:  障がい特性が創作行為へ与えている影響があるか」と、調 査対象者の関係月数との間に有意な負の相関があった。また、「a8  創作行為の特徴: 

反復的な創作行為・モチーフ使用があるか」、調査対象者の関係月数との間には有意 傾向のある正の相関があった。(表 6.13) 

 

2)   「支援者の持つ意識についての項目表」相関分析結果 

  「nb2  本人の価値:  創作行為に対し障がいのある人が何を重視しているのか考え ること」と、調査対象者関係月数との間に有意な正の相関があった。また、「b2  文 化・他者の影響:  文化や他者(他の利用者や周囲にいる人)が創作過程に与える影響」

と、調査対象者の関係月数との間には、有意傾向のある正の相関があった。(表 6.14)   

4.2  分散分析 

  調査対象者の専門領域の違いと、各項目の主観評価の群ごとの平均値の間に統計的に 有意な差があるかを一要因、3 水準の対応のない分散分析(Analysis  of  Variance)で調 べた。有意差が認められた場合、Ryan 法による下位検定を行い、3 群のどの対に統計 的な有意差があるかを調べた。結果をピアソンの積率相関分析の結果とまとめて表にあ らわす(表 6.13,  表 6.14  「分散分析」欄参照)。 

 

1)   「障がいのある人についての項目表」分散分析結果 

  分散分析による解析の結果、「b2  文化・他者の影響:  文化や他者(他の利用者や 周囲にいる人)が創作過程に与える影響」において、A 群:  アート関係者と SA 群: 

支援者(アート)の平均値に統計的に有意な差があった。「a9  障がいとの関係:  障 がい特性が創作行為へ与えている影響があるか」において、A 群:  アート関係者 と SA 群:  支援員(アート)の平均値に統計的に有意な差があった。また、A 群:  ア ート関係者と SW 群:  支援員(福祉)の平均値の差は有意傾向だった。「a14  身近な 評価:  創作品に対して評価を求めるか」において、SA 群:  支援員(アート)と SW 群:  支援員(福祉)の平均値の間、また A 群:  アート関係者と SW 群:  支援員(福祉) の平均値の間に統計的に有意な差があった。(表 6.13) 

   

2)   「支援者の持つ意識についての項目表」:  分散分析結果 

  分散分析による解析の結果、「nb2  本人の価値:  創作行為に対し障がいのあ る人が何を重視しているのか考えること」において、A 群:  アート関係者と SW 群:  支援員(福祉)の平均値の間には統計的に有意な差があった。「b21  身近な評 価:  支援者が創作品に対して評価をして、障がいのある人に伝えること」にお いて SA 群:  支援員(アート)と SW 群:  支援員(福祉)の平均値の間、また A 群: 

アート関係者と SW 群:  支援員(福祉)の平均値の間には統計的に有意な差があ った。(表 6.14) 

 

 

4.3  量的分析とインタビュー内容をあわせた考察 (付録 6.5 から 6.10 参照) 

  「障がいのある人についての項目表」の中で、「a9  障がいとの関係:  障がい特性が創 作行為へ与えている影響があるか」と支援者の関係月数に有意な負の相関が見られた (表 6.13)。これは、A 群の関係月数が長い支援者が、低い得点をつけていたことが一因 であると考える。アート関係者は、障がいのある人とアート活動や作品を通して接する ことが多く、障がいのあるなしではなく同じ表現者として対等な関係であるという意識 が強いと考えた。SA 群と SW 群では、比較的高い得点が付けられていることが多く、

支援員の専門領域に関わらず、日々の活動を支援する中で、障がいのある人の行為の中 に「障がい」による影響もあることを冷静に認識する意識があると考えた。A 群との平 均点の開きが一番大きな項目となっていることは興味深い。また、「支援者の持つ意識 についての項目表」では、「nb2  本人の価値:  創作行為に対し障がいのある人が何を重 視しているのか考えること」と支援者の関係月数との間に有意な正の相関が見られた (表 6.14)。表 6.8〜表 6.10 から、この項目は支援者全員が高い得点をつけているが、A 群は特にほぼ全員が 5 をつけており、創作行為のみでなく、その行為が障がいのある本 人にとって、どのような価値があるのか、心の奥まで考えをめぐらすことの大切さを特 に強く意識していると考える。また、「b2  文化・他者の影響:  文化や他者(他の利用者や 周囲にいる人)が創作過程に与える影響」について、関係月数との間に有意傾向のある 正の相関が見られた(表 6.14)。これも、関係月数の長い A 群の支援者が特に高い得点 をつけていたことが要因としていえる。周囲との関係をどのように感じ取っているのか、

本人を知るために非常に注意深く見る意識があると考えた。 

  また、分散分析により、各専門領域間に平均値の統計的に優位な差があるかを分析し た。「a14  身近な評価」と「b21  身近な評価」は、どちらも、SA 群・SW 群、A 群・

SW 群において、有意な差が見られた(表 6.14)。表 6.8〜表 6.10 を見ると、SW 群で得 点が高く、インタビュー回答からも良い評価をもらえることを障がいのある人自身も求 めているし、そのことを理解して次へのモチベーションへつなげる意味でも支援として も大切にしているという意見が得られた。また評価のあり方についても間接的な評価が 伝わりにくいことから伝える方法には工夫がいるが、身近な支援者が認めることの大切 さを意識していた。対して、SA 群では、障がいのある人自身は評価を求める人求めな い人どちらもいるという、やや冷静な態度だった。支援としても、ただ褒めるだけでは なくて、作品がおもしろくなければ率直に伝える、という、同じようにモチベーション を高めることを目的としながらも、伝えるのは良い評価だけではないというところに特 徴があった。アート関係者は評価に対して、障がいのある人に関しては評価を求めるか

は人によるという意見だった。支援としては、評価により、本人にどのような影響があ るか、自身の考えを真摯に本人に返すということに、より意識的であった。         

  このように、項目表をもとに得られた主観評価の結果を、量的に分析することで、こ れまで、部分的かつ質的に捉えられてきた、異なる立ち位置をとる著者が創作過程に対 して持つ意見の相違を、全体的かつ客観的な数値として把握し、比較検討できるように なると考える。また、量的分析により、特徴的な結果が出た項目に対し、インタビュー 調査の内容をあわせて分析することにより、意見の相違の要因をより深く分析できるこ とにもつながると考える。