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回答者の基本情報と意識についてのアンケート

  さらに、各著者が障がいのある人の創作活動に対してもつ基本的な思いや認識のあり 方を知ることで、項目表に対する回答の分析を深めるため、意識調査もあわせて行った。

調査の内容は、回答者の専門領域や関わる立場、障がいのある人の創作活動に関わる理 由や目的、障がいのある人の創作活動で使用される呼称に対する意見についてであった。

意識調査に対する主観評価の結果を表に整理(表 5.11〜表 5.13)したうえで分析し、考 察を行う。 

 

7.1  意識調査に関する主観評価の結果 

障がいのある人の創作活動に、あなたが関わる理由、目的は何ですか? 

 

   

  障がいのある人の創作活動に、各著者が関わる理由や目的を尋ねたセクションで は、主観評価は軒並み高い値を示している(表 5.11)。「作品や作者に魅力を感じる」

「芸術や福祉など言葉の意味を捉え直す」は、回答した全員が 5(非常に合致する)と 回答していた。これらの結果から、回答した著者らは総じて、仕事ととして障がい のある人の創作活動に関わりながらも、作品や作者、創作の現場に魅力を感じてお り、関わりを通して、美術界への積極的な働きかけや、社会のあり方や日常生活を より豊かにしていくことに対する目的意識も持っていることがわかった。 

  「障がいのある人の自己実現」は、著者間で回答が分散しており、施設長である 今中、福森は比較的高く評価し、美術史の著者である保坂、服部はやや低く評価す る傾向が見られた。 

  また、「障がいのある人の仕事創出・経済的自立」に関しては、アーティストとし ての経済的自立を目標におき、現代アートのマーケティングにチャレンジを続ける 今中は 5(非常に合致する)という回答だったが、施設長である福森、美術の専門家で ある保坂、服部は、低い評価をつけており、目的意識としてあまり重視していない と考えた。 

  「美術作品として評価を得る」に関して、福森以外はポジティブな回答を行って いる。美術の専門である著者達は美術作品としての評価に高い関心を持っているが、

アーティストとしての自立を視野に入れている今中と、項目表のインタビューの回

答において、「美術として認められることが一番ではない」と回答した福森の意識の 差が見て取れた。 

  「その他」に関しては服部のみ回答があり、「真理の探究」という障がいのある人 の創作活動とは何なのか、美術史の著者として研究し見極めていきたいという強い 動機が見て取れた。 

 

障がいのある人の創作活動への関わりに、あなたはどのような意識を持っていますか? 

 

   

  障がいのある人の創作活動に、著者が関わることに対してどのような意識を持っ ているのかを尋ねたセクションでは、評価軸を、1.全く強くない  2.あまり強くない  3.  どちらとも言えない  4.やや強い  5.非常に強いに、0.意識したことがないを加え た 6 件法を用いた。先のセクションよりもやや回答が分散する結果となった(表 5.12)。おしなべて高い評価を得た質問はなかった。 

  「創作活動への関与に対するあなたの積極性」「創作過程への関与に対するあなた の積極性」について、保坂のみ 1(全く強くない)と回答していた点が特徴的であっ た。 

  「自分自身もアーティスト(表現者)だというあなたの思い」も保坂、今中が 1(全 く強くない)という回答に対し、服部は 5(非常に強い)と回答しており、研究や活動 に関わることを通して自身の表現もしているという意識が見られた。 

  また、「あなたが感じる、創作活動の社会的価値」と「あなたが感じる、創作活動 の美術的価値」に関しては、著者によって評価はややバラけたものの、全員が、両 方を同じ値で評価したことがわかり、社会と美術、両方に同じだけの価値を感じて いることが見て取れた。 

 

障がいのある人の創作活動に用いられる呼称について、あなたの考えを教えてください.

あなたの考えや関心に合っている呼称は何ですか?また、用いている呼称は何ですか? 

 

   

  障がいのある人の創作活動に関して使われることのある呼称について、各著者の 考えや関心に合致しているのかを尋ねたセクションでは、すべての呼称に対して合 致する度合いを主観評価で回答してもらい、理由についてはインタビューを行った。

(播磨に関しては、全体のインタビュー内容から、各項目のコメントに当てはまるも のを、振り分け整理を行った。) 

  第 2 章や、第 4 章で項目表を案出する際に調査対象とした書籍からもわかるが、

各著者は、各呼称を使用した活動を展開している。保坂はアール・ブリュットとい う観点から持論を展開しており、服部は日本におけるアウトサイダー・アート研究 の第一人者として知られている。今中は、自身が理事長・施設長をつとめるアトリ エ  インカーブの活動において、一時期アウトサイダー・アートを使用していたが、

現在は現代アートという枠組みでの活動を行っている。福森も一時期アウトサイダ ー・アートという呼称を用いていたが、ある時期から使用を止め、アートという言 葉を用いている。播磨は、エイブル・アート・ムーブメントの提唱者であり、エイ ブル・アート・ジャパンの理事長も務めている。 

  主観評価から、興味深い結果が得られた(表 5.13)。まず、美術史の著者の保坂は、

自身が使用しているアール・ブリュットも含め、固有の名称に関してすべて、1(全 く合致しない)0.(意識したことがない)と低い評価をつけていた。同じく美術史の著 者である服部は逆に、すべての呼称に関して 4.(やや合致する)5.(非常に合致する)と いう高い評価をつけていた。障がいのある人の創作活動を語る際に、使用してきた 呼称と他の呼称に差をつけなかったことには、どのような示唆が含まれているのか。 

  今中は、「現代アート」と「アート」を 5.(非常に合致する)とし、他の呼称に関し ては、合致しないとしている。 

  福森は、美術の用語である「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」「現 代アート」は 3.(どちらとも言えない)としており、「エイブル・アート」と「障がい (害)者アート」を 0.(意識したことがない)としたことが特徴的だった。 

  全体的に評価合計が低めであり、著者によってばらつきが大きい結果となったが、

「アート」に関してのみ、全員が 3 以上の評価をつけていた。また、「特定の呼称は 用いない」に関して、今中以外の 3 名が 5.(非常に合致する)と回答しており、日頃 の使用している呼称とその主張と、主観評価の結果の差異がどこで生まれているの か、これらはインタビュー結果とあわせて検証を行うこととする。 

 

7.2  意識調査に関する主観評価結果の相関分析結果   

  意識調査の主観評価結果を用いた相関分析の結果から、保坂、今中、福森に正の有意 な相関が見られた(表 5.14)。これから著者 3 名の創作活動に関係する目的、理由などの 意識は類似していることがわかった。また、服部・今中の間には有意な負の相関が見ら れた。これは、前述した表 5.13 の結果から、使用する呼称についての意識の差が大き いことが原因と考えた。