調査対象者の専門領域の違いと、各項目の主観評価の群ごとの平均値の間に統計的に 有意な差があるかを一要因三水準の対応のない分散分析を用い、解析を行った。
「創作過程に関するアンケート」についてインタビュー調査の回答は文字起こしを行 い、主観評価で特徴的な結果が出た項目に関して、質的データもあわせて考察した。
調査のフィードバックとして得た回答は、内容を意味により分類し群ごとに整理した。
意識調査に関しては、主観評価の結果を項目表で行った分析と同様、関係月数との相 関を解析するためピアソンの積率相関分析と、調査対象者と群ごとの平均値の間に統計 的に有意な差があるかを調べるための分散分析を行った。また、アートに関して得られ たインタビューの回答に関しては、文字起こしを行った回答の内容を整理して表にまと めた。さらに、内容を分析し分類した上で、著者調査の結果にならいコーディング(見出 し付け)を行った。また、各呼称の理解の仕方に関して第 5 章で確認した 5 名の著者の 回答と比較し、一致の度合いを示す表を作成した。
1) 「a6 創作行為の特徴: 独自の創作行為があるか」(合計 78 点)、「a10 本人の意識:
創作行為に対する熱中、幸福感があるか」(合計 77 点)の 2 項目に関して、主観評価 の合計が 77 点以上あり、高い評価を得ていた。つまり、この2つの項目は支援者 から重視されている度合いが高いことがわかった。
2) 「a1 既存の美術教育: 従来の美術教育や美術史からの影響があるか」(合計 40 点)、
「a15 美術的評価: 創作品に対して美術的な評価を求めるか」(合計 48 点)、「a3 完
成イメージ: 創作するものについての完成イメージを持っているか」(合計 55 点)の 3 項目に関して主観評価の合計が 56 点以下であり、低い評価を得ていた。つまり、
この 3 つの項目は支援者から重視されている度合いが低いことがわかった。
3) 各群の間の平均点が 1 点以上ある、評価の落差が大きな項目は、「a1 既存の美術教 育: 従来の美術教育や美術史からの影響があるか」(A 群・SA 群、A 群・AW 群)、
「a3 完成イメージ: 創作するものについての完成イメージを持っているか」(A 群・
SA 群)、「a4 環境(物理的): 専門的な制作環境(アトリエ、創作環境)があるか」(A 群・
SA 群)、「a8 創作行為の特徴: 反復的な創作行為・モチーフ使用があるか」(A 群・
SA 群、A 群・AW 群)、「a9 障がいとの関係: 障がい特性が創作行為へ与えている影 響があるか」(A 群・SA 群)、「a11 本人の意識: 創作行為をしているという認識が あるか」(A 群・SW 群、SA 群・SW 群)、「a14 身近な評価: 創作品に対して評価を 求めるか」(A 群・SW 群)の 7 項目あった。つまり、この 7 つの項目について、3 つ の群の間で、重視する度合いに開きがあることがわかった。特に「a9 障がいとの関 係: 障がい特性が創作行為へ与えている影響があるか」は、A 群: アート関係者と SA 群: 支援員(アート)の間で 2 点以上平均点の差があり、A 群: アート関係者と SW 群: 支援員(福祉)の間で 1 点以上の平均点の差があり、A 群: アート関係者と、SW 群: 支援員(アート・福祉)の間で重視する度合いの差が大きいと示唆される。これは、
アーティストなど外部から障がいのある人を同じく表現者として接する視点と、支 援員は施設で支援をすることを仕事としていることから、障がい特性の把握も十分 におこなっているため、創作過程においても、障がい特性が反映された行為を認識 している視点との間に、差があるためだと考えた。
3.2 「支援者の持つ意識についての項目表」主観評価調査結果: 合計点と平均点の比較 19 名の支援者に対し、「あなたは支援者の持つ意識について、この項目について重視 しますか」と問い、得られた主観評価の結果を表にまとめた(表 6.8〜表 6.11)。表 6.11 は表 6.7 同様、特徴の出た項目に着色や太字で印をつけた。
評価の数値について、顕著な特徴が出た項目が示された。
1) 「b13 環境(人的): 個別性に配慮して支援者が関わること」(合計 86 点)、「b15 環 境(人的): 障がいのある人と支援者の関係性が与える影響」(合計 86 点)、「nb2 本 人の価値: 創作行為に対し障がいのある人が何を重視しているのか考えること」(合 計 85 点)の3項目に関して、主観評価の合計が 85 点以上あり、得に高い評価を得
ていた。つまり、この2つの項目は支援者から重視されている度合いが非常に高い ことがわかった。
2) 「b19 終わりの見極: 創作行為の終わりを支援者が判断すること」(合計 56 点)、
「b22 美術的評価: 支援者が創作品に対して美術的な評価を求めること」(合計 52 点)の 2 項目に関して主観評価の合計が 56 点以下であり、低い評価を得ていた。つ まり、この2つの項目は支援者から重視されている度合いが低いことがわかった。
3) 各群の間の平均点が 1 点以上ある、評価の落差が大きな項目は、「b10 創作行為の 特徴: 衝動的な創作行為についての捉え方」(A 群・SA 群)、「b11 創作行為の特徴:
反復的な創作行為・モチーフ使用についての捉え方」(SA 群・SW 群)の 2 項目あっ た。つまり、この 7 つの項目について、3 つの群の間で、重視する度合いに開きが あることがわかった。
3.3 合計点と平均点の比較のまとめ
これは、障がいのある人の創作活動に関わる人の専門領域の違いによって、障がいの ある人の状態について重視する項目や度合いに、異なる特徴がある可能性を示している といえる。また、調査対象とした障がいのある人の創作活動の支援者は、それぞれ関係 している期間に開きがある。この期間の長さによっても、障がいのある人の状態につい て重視する項目や度合いに、異なる特徴がある可能性が示唆された。よって、主観評価 の結果から、関係月数と主観評価の結果に相関が見られるか、また、支援者の専門領域 の違いと主観評価の結果に相関が見られるかについて解析を行う。
4. 主観評価調査: 解析による相関の検定