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インタビュー調査結果: 2 つの項目表

 

内容についてインタビュー結果とあわせて考察を行う。 

   

1)   「素材・道具(選定):  素材・モチーフ、道具・画材の選定について主体性があるか」

(合計 19 点) 

  保坂・服部は「作品評価との関連」、保坂・服部・今中・福森は「障がいのある人 の状態」の視座から回答していた。項目の観点として、「選定の支援と本人の主体性 の意味」(保坂・今中)、「言葉以外で表れる選定と主体性の意味」(福森)、「創作行為 としての判断と主体性の意味」(服部)などがあった。例えば、「選定の支援と本人の 主体性の意味」という観点に対し、保坂は「障がいのある人の創作行為の特徴でも あるので支援者が選んでもいい」という見解を持つ。一方、今中は「支援者が選定 することはパーフェクトにない。彼ら(障がいのある人本人)がきめることである」

という見解を持ち、真逆の意味合いの回答であった。これらから、著者はそれぞれ この項目を大変重視しているが、項目には多様な観点があり例え同じ観点であって も重視する方向性が真逆な場合もあることがわかった。 

 

2)   「創作行為の特徴:  独自の創作行為があるか」(合計 18 点) 

  保坂・服部は「作品評価との関連」、服部・今中・福森は「障がいのある人の状態」

の視座から回答していた。多様な観点が出たため抜粋する。「作品評価における独自 の創作行為の意味」(保坂・服部)において保坂は、見たことの無い創作行為だった場 合にポイントが高いとしていた。「スペシャルなことと独自の創作行為の意味」(福 森)では、創作行為とは一見認識されにくい、見たことも無い行為やその人にとって スペシャルなことを大切に思う視点を持っていた。これらから、一般的な創作行為 と異なる見たことのない行為に価値を見出す視点がみられた。 

 

3)   「完成イメージ:  創作するものについて完成イメージを持っているか」(合計 10 点)    この項目は著者が重視する度合いが低かったが、著者によって評価に大きな落差 があった。保坂・服部は「作品評価との関連」、服部・今中・福森は「障がいのある 人の状態」の視座から回答していた。項目の観点として、「作品評価における完成イ メージの意味」(保坂・服部)、「本人にとっての完成イメージの意味」(服部・今中・

福森)などがあった。服部・福森は、完成イメージの有無は個人差があるとし、今中 は自身のアトリエの現況から持っていないと推察している。いずれも状態をそのま ま把握する姿勢であり、評価も 1.  全く重視していない、3.  どちらとも言えないと いう回答だった。それに対し、保坂は 5.  非常に重視しているとしており、目的のな

い身体的な喜びとして行われた作品はあまり評価をしないケースが多いとしてい た。服部は、作品の面白さには関係しないとしており、同じ美術の専門家でも大き く異なる見解であることがわかった。 

 

5.2  支援者が持つ意識について重視する項目 

  「支援者が持つ意識についての項目」のインタビュー内容を分析した結果、著者の視 座の違いを 2 つに弁別できた。1 つは、制作の場で支援をする人の支援のあり方を捉え る視座から、支援の状態や必要とされる意識、知識や技術について著者の直接的・間接 的な経験をもとに論じる「支援のあり方」の視座から回答していた。もう 1 つは、作品 評価をするという視座から、どのような支援がなされたかを作品から推察するという

「作品評価」を軸として回答した内容であった。それぞれに「支援のあり方」「作品評 価との関連」と見出しを付け、各項目にて分類を行った。「支援のあり方」は著者全員 に見られたが、「作品評価との関連」は作品を評価する立場にある、保坂・服部にのみ 見られた。 

  以下、主観評価の結果が特徴的だった項目について、なぜそうなったか、また意味す る内容についてインタビュー結果とあわせて考察を行う。 

 

1)   「環境(心的):  心のあり方に配慮した制作環境作り(不安、制限、要求など)」(合計 18 点) 

  保坂・服部は共に「作品評価との関連」、今中・福森・播磨は「支援のあり方」の 視座から回答していた。多様な観点が出たため抜粋する。「制作空間の把握・日常、

非日常と意識の関係」(保坂)では、制作環境が、一時的に創作に利用している日常の 延長線上の空間か、アトリエなど非日常的な空間かについての意識が見られた。「外 部の人が制作環境に与える影響」(今中)では、外部の見学者などをゼロにして、障が いのある人が落ち着いて制作できる空間にすることを意識していた。「スペシャル の意味を知り、整える」(福森)では、「僕らと同じように環境は大切であるが、大切 な中身は少しスペシャルであり、その意味を知った上で環境を整える」という、一 人ひとりの大切なことを中心に置いた環境をつくることを意識していた。「ケアス タッフとアートスタッフの役割分担」(播磨)では、ケアスタッフの充実により安心 できる環境が生まれ、アートへエネルギー向かうことを意識していた。これらから、

著者は多様な観点からこの項目を大変重視していることがわかった。 

 

2)   「完成イメージ:  創作するものの完成イメージを支援者が持つこと」(合計 8 点) 

  保坂・服部は共に「作品評価との関連」、今中・福森は「支援のあり方」の視座か ら回答していた。多様な観点が出たため抜粋する。「アール・ブリュットの定義から の視点」(保坂)では、自発性が保証される環境に対し意識していた。「支援者が持つ 完成イメージが作品に与えた影響」(服部)では、作品評価の際に本人ではなく支援 者の意思を感じることを意識していた。「完成イメージを支援者が持たないように する」(福森)が、「支援員が完成イメージを持つことによる面白さの発見」(福森)で は、支援者は意外性を感じたときに驚くので、完成イメージを持つことが作品の面 白さを発見する土台にもなる認識を持っていた。とはいえ、回答者全員が、基本的 には支援者が完成イメージを持つことで障がいのある人を誘導してしまう危険性 を感じていることがわかった。 

 

3)   「環境(人的):  障がいのある人と支援者がコラボレートすること」(合計 13 点)    この項目は著者の結果がバラバラだった。保坂・服部は共に「作品評価との関連」、

今中・福森・播磨は「支援のあり方」の視座から回答していた。多様な観点が出た ため抜粋する。コラボレートは「障がいのある人の創作行為の特徴」(保坂)であり、

必要な場合は是非して欲しいという意識だった。「コラボレートは基本的にあまり して欲しくない」(服部)は、作品としての面白さやコラボレートの中身の情報開示 に違和感があるという意識だった。「コラボレートは全く回避している」(今中)は、

一種のイベントなので、そのインパクトがアーティストの日常に浮き沈みを与え、

創作に悪影響を与えることを憂慮していた。「コラボレートは向き不向き」(福森)は、

人によるのでどちらもあり。ただ、障がいのある人から了解を得ても、本人の理解 度は不明瞭な点には留意すべきであるという意識だった。「アーティストが受ける 影響、変化の重要性」(播磨)は、アーティストが、障がいのある人から影響を受け、

変わるような現場であることが重要である。通常の援助する者とされる者の反転が 起こる現場が大事だという意識だった。これらから、各著者はコラボレートに異な るイメージを持ち評価をしていることがわかった。 

 

5.3  インタビュー調査まとめ 

  インタビューの回答から、項目を捉える視座は、著者の立場により異なることがわか った。「障がいのある人の状態」や「支援のあり方」を軸とし、著者の直接的・間接的 な経験から項目を捉える視座は著者全員に見られた。一方「作品評価」を軸とし、作品 を通して「障がいのある人の状態」や「支援のあり方」を推察する視座は、美術の専門 家である保坂・服部にのみ見られた。これは、著者の立場の違いが創作過程の捉え方の

違いとして表れており非常に興味深い。また、相関分析で保坂・福森に見られた有意な 正の相関に関しても、項目に対し重視する度合いは似ているが、その視座は専門領域の 違いにより異なっていると考えた。このように、項目表に対し、定量、定性調査の結果 をあわせて分析することで、著者の立場の違いによる創作過程に対する視座の違い、各 項目に対する重要度の数値的把握とその理由、各項目に対する観点と重視する方向の差 異を比較検討することができた。これにより、2 つの項目表を活用することで、異なる 著者の論点を揃え意見の傾向を数値として客観的に捉えた上で、質的にも比較検討する ことでより深い考察につながることが示唆された。