第 3 章 下水汚泥焼却灰を活用した樹脂系防食被覆材の開発
3.2 開発目標の設定
開発目標の設定に当たり,下水道事業の重要課題の1つである,汚泥の資源化拡大に 貢献できるよう,粒度調整灰を可能な限り多く活用できることを条件とした。
また,既往の技術基準に規定されている塗布型ライニング工法に求められる基礎的 な性能を有すること,下水管路施設の厳しい施工条件にも適応可能であること,下水 管路施設特有の性能である水理性能や維持管理性能の確保が可能であることを開発目 標とした。これらの開発目標は,表2.10に示した「下水管路施設に適用可能な防食被 覆材の開発に向けた課題」に対応している。
表3.1に開発目標及び開発内容を示す。
表3.1 開発目標及び開発内容
具体的な目標 主な開発内容
設計
開発目標
① 粒度調整灰 の活用
〇質量比で粒度調整灰を20%以上.防 食被覆層に活用できること。
①防食被覆材の層構成,仕様(3.3参照)
・粒度調整灰との混練性の良好なエポキシ樹脂 を選定
②防食被覆層の配合設計(3.4参照)
・粒度調整灰とエポキシ樹脂等との混練性など を考慮し,暫定配合(粒度調整灰の最大添加量 55%)を決定
・作業性の改善等のため,配合を見直し最終配合
(粒度調整灰20%)を決定 開発目標
② 管路施設内 の厳しい施 工環境下で の作業性及 び品質の確 保
〇施工時間や施工空間の制約等,管路 施設内の厳しい施工環境への対応
・安全に人力作業で施工できること。
・内径90㎝,深さ2mの標準的なマ
ンホールを1日・8時間で塗布でき ること。
・養生時間2時間で下水を通水させて も変形しないこと。
・薄塗り(5mm)と厚塗り(2cm)が可能 であること。
①防食被覆材の層構成,仕様(3.3参照)
・人力施工の安全性を考慮し,非揮発性のエポキ シ樹脂を選定
・硬化時間,水中硬化性を考慮し,ポリアミン系 硬化剤を選定
・断面修復層と防食被覆層を同一仕様とし兼用 することで,作業時間を短縮
②防食被覆層の配合設計(3.4参照)
・混練時間が短縮可能な配合
・軽量化が可能な配合
③検証
・一回塗り厚2㎝が可能であることを検証(3.5.1 参照)
・2時間での硬化性を検証(3.5.3参照) 開発目標
③ 水理性能,
維持管理性 能の確保
〇耐荷性能,耐久性能を確保しつつ,
防食被覆材厚を薄くできること。
①防食被覆材の層構成,仕様(3.3参照)
・断面修復層と防食被覆層を同一仕様化し兼用 することで薄層化
②検証
・断面修復層に求められる性能を確保できるこ とを検証(3.5.1参照)
・防食被覆材厚が薄くても,耐荷性能を確保でき ることを検証 (第4章参照) (第5章参照) 開発目標
④ 事例の多い マンホール 内の腐食環 境への対応
〇防食被覆材厚が薄くても,平均硫化 水素濃度5~50ppmを想定した塗布 型ライニング工法規格 C 種の要求 性能を満足すること。
①防食被覆材の層構成,仕様(3.3参照)
・防食性の高いエポキシ樹脂を選定
・断面修復層と防食被覆層を同一仕様化し兼用 することで,層間の剥がれを防止
・トップコートと防食被覆層の二層による防食 性能の強化
②検証
・防食被覆材厚が薄くても,防食被覆材に求めら れる耐久性能を確保できることを検証(3.5.2 参照)
現場施工
開発目標
⑤ 現場の実施 工における 目標施工時
○人力で施工可能であること。
○標準的なマンホールについて,
1日・8時間で施工完了できること。
○求められる品質が確保できること。
①検証
・実工事において,人力で施工できることを検証
・実工事において,8時間以内に施工できること を検証
・実工事において,厳しい施工環境下でも品質が
(1) 開発目標①:粒度調整灰の活用
断面修復層を兼ねる防食被覆層において,粒度調整灰を質量比で20%以上配合するこ とを目標とした。
具体的には,東京都の2012年度の資源化率71%を約73%に向上させることを目標とし た。粒度調整灰の2010年度の資源化利用実績量(約3,000t)に対して,約900t/年,
約30%の増加を目標とした。
これは,東京都区部のマンホール約 49万個に適用し,防食被覆工の標準的耐用年数
2)である10年サイクルで,本防食被覆工を適用した場合の試算による。
(2) 開発目標②:管路施設内の厳しい施工環境下での作業性及び品質の確保
短い施工時間,高湿度などの施工環境,狭い施工空間などの,管路施設内の厳しい施 工環境下でも施工可能で,耐久性能等の品質確保が可能な防食被覆材とする。
本研究では,狭いマンホール空間内等での施工を想定し,コテ等を用いた人力作業を 基本とした。そのため,安全な作業環境を確保することを目標とした。
また,人力施工でも目標とする施工時間内に完了できることなどを目標として設定し た。具体的には,東京都区部の標準的なマンホールを内径90㎝,深さ2mと想定し,養 生時間を含む施工時間の目標を1日・8時間に設定した。
理由は以下のとおりである。
防食被覆工の施工では,施工対象のマンホールの上流側のマンホールに仮締切等を設 置し,ポンプで揚水し施工箇所の下流側のマンホールまで仮排水する方法が一般的に採 用される。都市部では,道路交通への影響等から,これらの仮設材などを設置する道路 上の作業帯は,長くても8時間程度しか連続使用できない。このため,1箇所のマンホ ールの塗布作業に8時間以上を要する場合,仮排水設備の設置などの片づけ,設置を翌 日やり直す必要があり作業効率が低下することから,標準的なマンホールを1日・8時 間で施工できることを目標とした。
加えて,管路施設では工事完了後に,下水を速やかに通水する必要があるため,マン ホール内の下水に接する部分(インバート部)に塗布した防食被覆材が,養生2時間での 通水により,変形しない程度に硬化することを目標とした。これは既往の基準等で求め られていない本研究で独自に設定した目標である。
また,コンクリート改修技術マニュアル(処理施設・管路施設編)3)に規定する厚塗 り(2㎝)ができるよう,軽量化を目標とした。
なお,本防食被覆材は,断面修復層と防食被覆層の機能を併せ持つ必要があることか ら,断面修復層の要求性能である1回の塗り厚2cmの厚塗りが可能であることと,防食 被覆層に求められる耐久性能確保のための最小塗り厚(5mmを想定)の薄塗りが可能で あることが求められる。そのため,厚塗りの場合はコテで,薄塗りの場合はローラー等 で施工し,施工厚さ管理用スケール(25mm×300mm×厚5~20mm)を用いて管理すること とした。
(3) 開発目標③:水理性能,維持管理性能の確保
管路の下水流下性能や,マンホールの作業空間としての維持管理性能は,管路施設特 有の性能である。防食被覆材の塗布により管路断面やマンホールの内部空間が縮小され ると,下水の流下機能や維持管理作業の支障となる。このため,耐荷性能,耐久性能を 確保しつつ,防食被覆材の厚さを可能な限り薄くすることを目標とした。
(4) 開発目標④:事例の多いマンホール内の腐食環境への対応
防食被覆材厚が薄くても,コンクリート改修技術マニュアル(処理施設・管路施設編)
3)に規定する,塗布型ライニング工法規格C種の要求性能を満足する防食被覆材とする ことを目標とした。
(5) 開発目標⑤:現場の実施工における目標施工時間の順守,品質の確保
人力で施工可能であること,標準的なマンホールを1日・8時間で施工完了できるこ と,求められる品質が確保できること(接着力等),養生時間2時間後の通水に対して 防食被覆材が変形しないことについて,実施工においても達成できることを目標とした。