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下水管路施設の腐食メカニズム

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 30-35)

第 2 章 既往の技術,文献

2.1 下水管路施設の腐食メカニズム

「下水道管路施設ストックマネジメントの手引き(旧下水道管路施設腐食対策の手 引き(案))」3)を一部引用し,下水管路施設のコンクリートの腐食に関する知見をま とめる。

2.1.1 硫酸によるコンクリート腐食が発生する条件

「下水道施設に特有な硫酸によるコンクリート腐食のメカニズムを示す。

① 嫌気性状態の下水中や汚泥中での硫酸塩還元細菌により,硫酸塩(SO42)から溶存 硫化物(H2S,HS-,S2-)が生成(生物的作用)

② 液相から気相へ,硫化水素(H2S)ガスが放散(物理的作用)

③ 密閉されたコンクリート構造物の気相部内面の結露水中における好気性の硫黄酸 化細菌の活動により,硫化水素ガスから硫酸が生成(生物的作用,化学的作用)

④ 硫酸とコンクリート中の成分との反応により,コンクリートが劣化(化学的作用,

物理的作用)」3)

図2.1に,下水道施設に特有な硫酸によるコンクリート腐食のメカニズムを示す。

図2.1 下水道施設に特有な硫酸によるコンクリート腐食のメカニズム3)

「硫酸によるコンクリート腐食が発生する環境は,以下の3つの条件をすべて満足する 箇所である。」3)

「1) 溶存硫化物が生成される水質的条件

① 下水中に硫酸イオンが存在すること

下水中の硫酸イオンは,水道水に含まれているもの,し尿中に含まれるもの,洗 剤等の化学製品や薬品類に含まれるもの等が考えられる。」3)

「② 下水が嫌気性条件であること

管路施設内で下水が滞留する場合や圧送管内等で溶存酸素濃度が 0.1~1.0mg/L 程度になる場合は,硫酸塩還元細菌の働きにより,硫酸イオンが還元され溶存硫化 物が生成される。3)

③ 下水中に有機物(BOD)が存在すること

硫酸塩還元細菌は,硫酸イオンと有機物を利用して生命活動をする。」3)

「2) 硫化水素ガスが放散される水理的条件

下水中の pH は中性に近いため,下水又は汚泥の流れに乱れを生じる落差等があ る箇所では,下水中の溶存硫化物は硫化水素ガスとして気相中へ放散される。」3)

2.1.2 下水管路施設で腐食環境下となりやすい箇所

以下の箇所については,2015年の下水道法の改正で,5年に1回以上の点検が新たに 義務づけられた。

(1) 圧送管吐出し先

「圧送管内は酸素供給がないため,下水の通過時間が長い場合に嫌気性化しやすく,

溶存硫化物が生成されやすい。滞留時間がおおむね1時間以上の場合,ポンプの運転 停止時間が数時間に及ぶ場合等に高濃度の溶存硫化物が生成される可能性があり,実 態調査から圧送距離がおおむね 500m 以上の場合がその目安とされている。生成され た溶存硫化物は,ポンプ稼動とともに,吐き出し先下流部のマンホールの落差,段差 等の流れの乱れにより,硫化水素ガスとして液相から気相へと放散され,硫酸による コンクリート腐食が発生する。」3) 当該コンクリート腐食の概念図を図2.2に示す。

図2.2 圧送管吐出し先の管路施設におけるコンクリート腐食の概念図3)

(2) 落差・段差の大きい箇所

「溶存硫化物を含む下水の流れが,落差,段差等により乱される箇所において,下水 が嫌気性条件下で流下している場合は,腐食は発生しやすく,好気性条件下で流下し ている場合は腐食が発生しにくい。嫌気性条件下で流下している場合には,下水中に 溶存硫化物が生成され,流れの乱れにより硫化水素ガスが液相から気相へと放散する ため,高濃度の硫化水素ガスが滞留しやすく,コンクリート腐食が発生しやすいとさ れている。」3) 当該コンクリート腐食の概念図を図2.3に示す。

P

硫化水素 ガス放散

硫化水素 ガス放散 酸素供給

腐食箇所

圧送管

自然流下管 吐出し先マンホール

落差のあるマンホール 段差のあるマンホール

H2S

H2S

H2S

H2S

H2S

図2.3 落差・段差のあるマンホール部での硫化水素ガスの発生イメージ3)

(3) 伏越し下流部

「長大伏越しや合流式下水道の伏越し等で滞留時間が長くなるような場合は,伏越し 内部で溶存硫化物が生成され,下流部で流れの乱れが生じる箇所でコンクリート腐食 が発生することが知られている。」3) 当該コンクリート腐食の概念図を図2.4に示す。

図2.4 伏越し下流部におけるコンクリート腐食の概念図3)

自然流下管きょ

溶存硫化物生成

伏越し

伏越しマンホール

(下流)

硫化水素 ガス放散

流れ方向

汚泥堆積 腐食箇所

物が沈殿,腐敗,嫌気性化し,溶存硫化物が生成される可能性がある。」3) これが下 流部で流れの乱れがある箇所で,硫化水素ガスとして気相部に放散され,管きょの腐 食の原因となる。当該コンクリート腐食の概念図を図2.5に示す。

図2.5 小流量時や不等沈下等が原因で最小流速を確保できない箇所 の上下流部におけるコンクリート腐食の概念図3)

② ビルピット排水が排出される箇所

都市部では近年,ビルピットからの排水が原因の臭気が急増している。「地下階を 有するビルでは,ビルピットに汚水を一時貯留しポンプにより排水することが多い。

排水ポンプの起動水位の設定の高すぎる場合や,ピットの容量が大きすぎる場合等,

適切な設置管理が行われない場合,ビルピット内での汚水の滞留時間が長くなること で嫌気性化し,溶存硫化物が生成される。生成された溶存硫化物は,ポンプ稼動とと もに,管きょへの流入部での流れの乱れにより硫化水素ガスとして液相から気相へと 放散される。」3) 当該コンクリート腐食の概念図を図2.6に示す。

図2.6 ビルピット排水が排出される箇所の上下流部における コンクリート腐食の概念図3)

汚泥堆積 (溶存硫化物生成)

不等沈下 (管きょのタルミが発生)

マンホール マンホール マンホール

腐食箇所

硫化水素 ガス放散

※ 下流部で落差、段差のあるマンホール等、流れの乱れが生じる箇所で硫化水素が放散し、

硫酸によるコンクリート腐食が発生。

ビルピット排水槽 取付管

自然流下管きょ 硫化水素

ガス放散 流れ方向

溶存硫化物生成

腐食箇所

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 30-35)