第 3 章 下水汚泥焼却灰を活用した樹脂系防食被覆材の開発
3.4 防食被覆層の配合設計
3.4.2 粒度調整灰を最大量添加可能な暫定配合の決定
粒度調整灰の製造設備とフローを図3.4に示す。粒度調整灰は,下水汚泥焼却灰を分 級機で粒径80μmを境に大小グループに選別する。選別した粒径80μm以上の粗い粒径 の焼却灰は粉砕機により微粉化する。粒度調整灰は鉄筋コンクリート管,コンクリート セグメント等のコンクリート製品の材料として,これらを製造・販売する企業に販売し ている。また,製造された粒度調整灰入りコンクリート製品は,全て東京都の下水道事 業で買い取り使用している。
図3.4 粒度調整灰の製造設備とフロー
粒度調整灰は,粒子の凝集により団粒化した焼却灰を粉砕によって分散したものであ る。その結果,粒度分布は図1.8に示したように1~100μmの範囲内に収まり,粉末度 も増大している。
また,発生する処理場によって異なる焼却灰の粒度について,粉砕などの簡易な改質 により均一化を図ることができる。粒度の均一化は本防食被覆材の均質化に寄与する。
(2) 粒度調整灰とエポキシ樹脂の混練実験
粒度調整灰と主剤及び硬化剤との混練実験を行い,粒度調整灰の最大添加可能量を 検証した。
本実験では,エポキシ樹脂(主剤:エポキシ樹脂,硬化剤:ポリアミン,主剤質量:
硬化剤質量=100:50)を使用し,粒度調整灰以外の充填材は使用しなかった。粒度調 Incineration
ash
Raw material
silo
Iron Removal
device
Classifier
Fine powder
Fine powder Grinder
Coarse powder
Product silo
下水汚泥 焼却灰
原料
サイロ 除鉄器
分級機
粗粉
微粉
微粉
製品 サイロ 粉砕機
整灰は,主剤,硬化剤ともに同じ割合で配合することとした。評価項目は,混練の可否,
粘度及び混合後の良好な取扱性の3項目とした。
たとえば,粒度調整灰の質量比55%の場合の配合は以下のように計算できる。
主剤と粒度調整灰の混合物質量224g
55%= 粒度調整灰(124g)
主剤(100g)+粒度調整灰(124g) 硬化剤と粒度調整灰の混合物質量112g
55%= 粒度調整灰(62g)
硬化剤(50g)+粒度調整灰(62g)
(3) 暫定配合の決定
実験結果を表3.4及び写真3.1~写真3.4に示す。
粒度調整灰を質量比で 33%添加したケースでは,粒度調整灰との混練は可であり,混 合物の粘度は主剤,硬化剤とも液体状態であった。50%のケースでは,混練は可,主剤 はプラスチックな状態,硬化剤は液体状態であった。
一方,55%のケースでは,混練は可で,混合物の粘度は,主剤はぱさぱさ状態,硬化 剤は液体状態であった。また,混錬時に突発的な粘度低下が発生するとともに,混練に 時間を要した。なお,60%のケースでは粒度調整灰が多く混練できなかった。
混練後の突発的な粘度低下,混練時間に課題はあるものの,「質量比で粒度調整灰55%,
エポキシ樹脂 45%」を暫定配合として決定した。また,これらの課題を改善するため,
粒度調整灰の一部を他の充填材に置換する配合の見直しを行うこととした。
表3.4 粒度調整灰の添加実験結果
粒度調整灰の質量比 33% 50% 55% 60%
① 粒 度 調 整灰 と 主剤 及 び硬化剤の混練の可否
主剤,硬化
剤とも可 可
主剤,硬化 剤とも可
主剤,硬化 剤とも不可
②粒度調整灰と の混合物の粘度
主剤 液体状態 プラスチッ
クな状態 ぱさぱさ状態 混練不可 硬化剤 液体状態 液体状態 液体状態 混練不可
③ 主 剤 と 硬化 剤 の混 練 後の取扱性
不適 (液体状態)
不適 (液体状態)
(ダイラタン ト状態※)
適 (不安定な
粘度)
-
備考
主 剤 と 硬 化 剤 の 混 練 後 に 沈 降 分 離 を確認
主 剤 と 硬 化 剤 の 混 練 後 に ダ イ ラ タ ン ト 状 態 を 確認
主剤と硬化剤 の混練時に突 発的な粘度低 下が発生 混練に時間を 要する
-
総合評価
不適
粘度不足
不適
粘度不足
条件付き適 (粘度及び混練
時間が課題)
不適
混練不可
※ダイラタント状態:
図3.5に示すように,早くかき混ぜると負圧個所が生じ,固体のように粘度が上昇 する。一方,ゆっくり混ぜると,液体のように粘度が低下する状態
図3.5 ダイラタント状態の説明図
主剤 粒度調整灰との混練可
粒度調整灰との混合物の粘度:液体状態 硬化剤 粒度調整灰との混練可 粒度調整灰との混合物の粘度:液体状態
主剤と硬化剤の混練後に沈降分離を確認 主剤,硬化剤の混練後の粘度が低く液体状態 写真3.1 粒度調整灰の質量比33%のケース
主剤 粒度調整灰との混練可 粒度調整灰との混合物の粘度:プラスチッ クな状態
硬化剤 粒度調整灰との混練可 粒度調整灰との混合物の粘度:液体状態
主剤 粒度調整灰との混練可 粒度調整灰との混合物の粘度:ぱさぱさ状態
硬化剤 粒度調整灰との混練可 粒度調整灰との混合物の粘度:液体状態
主剤と硬化剤の混練は可能であるが,
混練しにくく時間を要する
主剤と硬化剤の混合後の取扱性:適(不安定な 粘度)
主剤と硬化剤の混練後に粘度低下が発生した 状態
主剤と硬化剤の混合後の取扱性:適
(適切な粘度を確保)
写真3.3 粒度調整灰質量比55%のケース
主剤 粒度調整灰との混練不可 硬化剤 粒度調整灰との混練不可 写真3.4 粒度調整灰質量比60%のケース
3.4.3 作業性を改善した最終配合の決定