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実験結果

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 144-152)

第 4 章 本防食被覆材の補強効果の検証

4.5 鉄筋コンクリート製円形管に対する補強効果の検証

4.5.2 実験結果

実験結果を,表4.18,図4.29に示す。かぶりを欠損させた減肉管(Case2 鉄筋露出)

は,破壊荷重が基準管の48%となった。また,かぶり欠損分を本防食被覆材で修復し,

管厚を基準管(116mm)と同等まで修復させた補強管Case3 は,破壊荷重が基準管と同 等程度であった。さらに,鉄筋のかぶりまでコンクリートを欠損させた後,本防食被覆 材で管厚を基準管より約10mm薄い状態まで修復した補強管Case4の破壊荷重は,基準

管より20%低下した。なお,補強管のひび割れ荷重は,いずれも基準管を上回った。

表4.18 供試管*1の仕様と実験結果一覧

単位 基準管 減肉管 補強管

Case1 Case2 Case3 Case4

口径 (mm) 1200 1200 1200 1200

長さ (mm) 1200 1200 1200 1200

コンクリート厚 (mm) 116 88 89 90 塗布前状況 (コンクリートによる

かぶり)

鉄筋露出 鉄筋露出 鉄筋露出

塗布厚 (mm) - - 31 18

塗布後状況 (コンクリートによる

かぶり) (鉄筋露出) 本防食被覆材 によるかぶり

本防食被覆材 によるかぶり

管厚計 (mm) 116 88 120 108

ひび割れ (kN/本) 76.7 53.5 114.3 113.1

荷重*1 比率 (1.00) (0.70) (1.49) (1.47)

破壊荷重*2 (kN/本) 183.6 88.3 174.0 148.0

比率 (1.00) (0.48) (0.95) (0.81)

下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(JSWAS A-2)1種管

コンクリート圧縮強度:50N/mm2以上に準拠して製作。

Case2Case3n=2の平均値を記載。Case1Case4n=1である。

*1 ひび割れ荷重(規格値):44.2kN/m×1.2=53.04kN/本

*2 破壊荷重(規格値) :86.3kN/m×1.2=103.56kN/本

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

基準管 Case1

減肉管 Case2

補強管 Case3

補強管 Case4

荷重(kN)

破壊荷重 ひび割れ荷重

規格破壊荷重(103.56kN)

規格ひび割れ荷重(53.04kN)

4.5.3 考察および課題

供試管とした推進管φ1200mm の配筋仕様は図 4.30 に示すように複鉄筋である。外 圧強度試験において最大曲げモーメントが発生する管頂部と管底部では,コンクリー トひび割れ発生以降,内側鉄筋が引張力を分担し,降伏点まで抵抗し最大荷重値に達 する。しかし,減肉管では,鉄筋の露出により鉄筋とコンクリートとの有効な応力伝 達ができないため,破壊荷重値が低下する。一方,露出した鉄筋を防食被覆材で覆っ た補強管では,本防食被覆材により,既設コンクリートと鉄筋が一体化することで,

コンクリートと鉄筋の応力伝達が回復したものと推察される。

また,防食被覆材の引張強さを考慮した補強管の最大引張力は,表4.19に示すよう に,鉄筋のみで構成された基準管の1.7倍程度である。しかし,防食被覆材の弾性係 数(6.66kN/mm2,表4.15))は,鉄筋の弾性係数(200kN/mm2)の1/30程度と低いため,主 として鉄筋が応力分担することになる。

なお,供試管とした推進管φ1200mmの鉄筋は,複鉄筋配置で最大曲げモーメントが 発生する頂部と底部の引張側に配置されている。しかし,近年多く使用されている,

鉄筋コンクリート製の組立マンホール(2号:内径120cm程度まで)のように,単鉄 筋がコンクリート断面の中心部に配置されている場合は,鉄筋より管の内側に塗布さ れている本防食被覆材の補強効果(破壊荷重値増)が得られた可能性がある。

表4.19 鉄筋と本防食被覆材の比較

鉄筋(鉄線)*1 本防食被覆材*2 断面仕様等 φ4.5mm@55mm,18本 1000mm×31mm(塗布厚) 有効断面積 As=15.9×18=286mm2 Acot=1000×31=31,000mm2

引張強さ fy=700N/mm2(SWM-B) fcot=11.2N/mm2 引張強さを考慮した

最大引張力

T=Asfy=286*700*10-3

=200kN

Tcot=Acotfcot=31,000*11.2*10-3

=347kN

*1鉄筋(鉄線)の仕様は,供試管における値。鉄筋コンクリート管の鉄筋(鉄線)の仕様は,JIS の規定はなく製造メーカや工場によって異なる。

*2塗布厚はCase3におけるかぶり31mmとして算出。

図4.30 供試管(φ1200mm 下水道推進工法用鉄筋コンクリート管1種管)の配筋図

以上より,鉄筋コンクリート管への適用については,鉄筋露出状態であっても,鉄筋 が有効であれば,既設管と同等のかぶりまで本防食被覆材を塗布することで,管路断面 を縮小させることなく,原管と同等程度の耐荷性能が確保できる。なお,鉄筋コンクリ ート製の組立マンホールについても同様の効果が期待できる。

東京都では,人力作業が可能な大口径管路の再構築について,経済性なども考慮し,

1スパン当たりの損傷が少ない場合は防食工法などによる長寿命化対策を,多い場合は

また,大口径管路では局所的な損傷が多い。施設規模が大きいことから,スパン単位 となる既往の更生工法では,コスト縮減が課題となっている。

このため,管路断面を縮小することなく耐荷性能を確保できる本防食被覆材について,

管路の長寿命化対策への利用拡大や,損傷部分のみに適用可能な部分更生技術としての 利用に対するニーズが増加していくものと推察される。

本防食被覆材は,コンクリートより弾性係数が低いものの変形性に優れるため,施 工対象とする構造物との一体性を確保しやすく,また,防食性能も有することから構 造物の耐荷性能の他耐久性能をも満足させることができる。このため,大口径管路の 断面縮小を生じない長寿命化技術として,さらに,局所的な損傷を生じた管路の更新 技術としての活用が期待できる。

このため,本防食被覆材をマンホールだけではなく,管路にも適用していくことが効 果的である。

しかし,本防食被覆材を管路に適用する場合に考慮するべき施工条件は,マンホール とは異なる。たとえば,マンホールから作業者が入坑し,狭い管路内で資機材を施工箇 所まで運搬する必要がある。また,管路上部への防食被覆材の塗布は,側面や底部より 長い作業時間を必要とする。

一方,本防食被覆材は材料開発に当たって,現場における道路使用の制約条件などを 考慮し,1日8時間で標準的なマンホールの塗布作業が完了できるよう施工サイクルを 設定し,それを可能とする配合を決定している。このため,本防食被覆材を管路に適用 するに当たっては,管路とマンホールの各作業時間の差異も考慮して,配合設計を含め た材料性状の改良を行う必要がある。

また,管路直上部への防食被覆材の塗布における,垂れ防止を考慮した材料性状の改 良なども必要である。

さらに,再構築事業に適用されている更生工法には,耐震性能など新設と同等の性能 の確保が求められている。このため,本防食被覆材を更生工法として利用する場合には,

防食被覆材の配合の変更で剛性を増す,新たに鋼材等の補助補強材を付加する等の対応 も必要となる。

このように,今後,本研究成果の管路への活用範囲の拡大を目指して,マンホール とは異なる管路の適用条件に合わせた材料性状の改良や施工方法の検討,及び耐震性 能の付加などの課題を解決していくことが重要である。

4.6 まとめ

本章は,粒度調整灰を活用した樹脂系防食被覆材について,実験を通して補強効果 とそのメカニズムを明らかにした。

その結果,本防食被覆材は,防食効果と補強効果を併せ持つ材料であり,現場打ち の無筋コンクリート製マンホールに適用することにより,腐食・劣化部位の除去厚よ りも少ない塗布厚でも,原マンホールと同等以上の耐荷性能が得られることが明らか になった。

以下に本章で得られた知見を列記する。

(1) モルタル製角柱供試体を用いた補強効果の検証

補強効果にはモルタルと防食被覆層の境界部の一体性が重要で,そのためには,プラ イマーが有効であることを明らかにした。なお,プライマーの有効性は,プライマーが コンクリートに含浸してコンクリートの表層部の引張強度を向上させる等により発揮 されるものと考えられる。また,補強効果は,主としてプライマーを含む防食被覆層に よるものであることを明らかにした。

(2) コンクリート製角柱供試体を用いた補強効果の検証

断面における防食被覆材比率が増加するほど,曲げ強度,並びに断面破壊時の変形 量が増加し,本防食被覆材の補強効果が確認できた。

また,本防食被覆材を含む部材全体の見かけの曲げ強度について,本防食被覆材を 引張側に塗布したケースは,塗布しない場合と比較して2倍以上,圧縮側に塗布した ケースは塗布なしと同程度の結果となった。

これらの結果と荷重と変位並びにひずみとの関係から,本防食被覆材を引張側に塗 布した場合の破壊メカニズムについては,本防食被覆材は弾性係数が低いため,載荷 当初は引張力をほとんど負担しないが,コンクリートにひび割れが発生した以降は,

主として本防食被覆材が引張力を負担し,その引張応力が引張強度に達したことで破 壊したものと推察された。

また,円形管の内面に本防食被覆材を塗布した部位を単鉄筋矩形断面に置き換え,防 食被覆材降伏時の曲げモーメントを試算した結果,実験で得られた最大曲げモーメント と概ね一致した。これにより,本防食被覆材による引張力への抵抗が終局耐力の向上に 寄与していることが検証できた。

(4) 鉄筋コンクリート製円形管に対する補強効果の検証

管路への本防食被覆材の適用拡大を想定し,鉄筋の有無による本防食被覆材の補強効 果の差異の検証を目的とする,鉄筋コンクリート製円形管の外圧強度試験を行った。

その結果,本防食被覆材の弾性係数は鉄筋より低いため,主として鉄筋が応力分担す るが,鉄筋露出管であっても原管のかぶりまで本防食被覆材を塗布することで,管路断 面を縮小することなく,原管と同等程度の耐荷性能が得られることが明らかになった。

本防食被覆材は,コンクリートより弾性係数が低いものの変形性に優れるため,施 工対象とする構造物との一体性を確保しやすく,また,防食性能も有することから構 造物の耐荷性能の他耐久性能をも満足させることができる。このため,大口径管路の 断面縮小を生じない長寿命化技術として,さらに,局所的な損傷を生じた管路の更新 技術としての活用が期待できる。

今後,本研究成果の管路への活用範囲の拡大を目指して,マンホールとは異なる管 路の適用条件に合わせた材料性状の改良や施工方法の検討,及び耐震性能の付加など の課題を解決していくことが重要である。

ドキュメント内 博 士 論 文 (ページ 144-152)