第 4 章 本防食被覆材の補強効果の検証
5.2 本防食被覆材塗布厚の設計方法の提案
5.2.2 耐力評価方法の検討
(1) 鉄筋コンクリート構造物との対比
前述までの外圧強度試験等および数値解析での検討結果から,本防食被覆材を塗付し た場合の挙動は,鉄筋コンクリート構造物の挙動に類似していると判断できた。本防食 被覆材と鉄筋コンクリート構造物との挙動の対比を図5.19に示す。
このため,本防食被覆材を塗布した場合の耐力評価は,鉄筋コンクリート構造物と同 様の概念で評価可能であると判断した。
状態 鉄筋コンクリート 構造物
本防食被覆材を塗布した場合の 無筋コンクリート構造物
A 弾性範囲 弾性範囲
B ひび割れ発生 ひび割れ発生 C ひび割れ進行 ひび割れ進行 D 鉄筋の降伏 本防食被覆材の破断
E 終局 終局
青:コンクリートの挙動 赤:鉄筋または本防食被覆材の挙動
図5.19 鉄筋コンクリート構造物の破壊挙動との対比
最大耐力
常時使用状態
ひび割れ発生荷重
無筋の場合
たわみδ
荷重P
A B
C
D
E
A:純弾性状態(ひび割れ発生前)
B:初期ひび割れ発生 C:ひび割れ進展段階 D:最大荷重
E:終局状態
変位
(2) 耐力算定式の検討
本防食被覆材を塗布した場合と鉄筋コンクリート構造物の最大荷重時の状態を考え ると図5.20のように考えられる。ここでの本防食被覆材は,鉄筋コンクリート構造物 での引張鉄筋の役割を果たしており,引張力(T)を負担していると考えられる。した がって,鉄筋コンクリート構造物の曲げ終局耐力算定式(式(1))を基に,鉄筋に関す る変数を本防食被覆材の物性値に置き換えることで,最大耐力を評価できる。
一方,数値解析結果より,本防食被覆材の塗布厚が薄い場合は,本防食被覆材の破壊 荷重がコンクリートのひび割れ発生荷重を下回る可能性があり,その場合はコンクリー トのひび割れ発生荷重が最大耐力となる。したがって,本防食被覆材は以下の2つの評 価式(式(2)および式(3))を比較し,大きい方を最大耐力とすることとした。
図5.20 曲げモーメントのつり合い条件
引張鉄筋 防食被覆材
d d
hcot hc
C
T M
鉄筋コンクリート 防食被覆材を塗布した 無筋コンクリート
b b
[評価式1:曲げ終局耐力]
鉄筋コンクリート構造物の曲げ終局耐力式は一般的に以下のよう示されている。なお,
ここでの圧縮応力の分布は等価ブロックの考えを適用している。
𝑀𝑀𝑢𝑢=𝑏𝑏𝑑𝑑2・𝑝𝑝𝑓𝑓𝑦𝑦�1− 𝑝𝑝𝑓𝑓𝑦𝑦
1.7𝑓𝑓𝑐𝑐� …式(1)
ここで,Mu:鉄筋コンクリートの曲げ終局耐力(N・mm) b:幅(mm)
d:圧縮縁から鉄筋重心までの距離(mm)
p:鉄筋比(-)
fy:鉄筋の降伏点(N/mm2)
fc:コンクリートの圧縮強度(N/mm2)
本防食被覆材を塗布した場合の終局状態を考えると,圧縮縁のコンクリートは圧縮破 壊に至っていないため,引張側の本防食被覆材の応力が引張強度に達する時点の発生圧 縮応力として考える必要がある。したがって,上記式の鉄筋に関する変数を本防食被覆 材の物性値に置換するとともに,コンクリートの圧縮強度を本防食被覆材と既設コンク リートの剛性比および面積比による関数として置換することで評価できると考えた。以 下に評価式(式(2))を示す。なお,中立軸位置(x)は平面保持を仮定し本防食被覆材 とコンクリートの剛性比から求めている。
𝑀𝑀𝑢𝑢1=𝑏𝑏𝑑𝑑2・𝑝𝑝𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑓𝑓𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐�1− 𝑝𝑝𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑓𝑓𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐
1.7�𝑑𝑑−𝑥𝑥𝑥𝑥 �・𝑓𝑓𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐・𝐸𝐸𝑐𝑐
𝐸𝐸𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐
� …式(2)
ここで,Mu1:本防食被覆材を塗布した無筋コンクリートの曲げ終局耐力(N・mm) b:幅(mm)
d:圧縮縁から防食被覆材重心までの距離(mm) pcot:防食被覆材の面積比(-)
fcot:防食被覆材の引張強度(N/mm2) Ec:コンクリートの弾性係数(kN/mm2) Ecot:防食被覆材の弾性係数(kN/mm2) hcot:防食被覆材の層厚(mm)
x:圧縮縁から中立軸位置までの距離(mm)
𝑥𝑥=−ℎ𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐸𝐸𝐸𝐸𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐
𝑐𝑐 +��ℎ𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐸𝐸𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐
𝐸𝐸𝑐𝑐 �2+𝑑𝑑 �2ℎ𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐸𝐸𝐸𝐸𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐
𝑐𝑐 �
[評価式2:コンクリートのひび割れ発生耐力]
無筋コンクリートの曲げ終局耐力は,コンクリートのひび割れ発生耐力であり,コン クリートの曲げ強度により評価される。
本防食被覆材は,コンクリートより低弾性であるため,コンクリートのひび割れ発生 荷重の向上には寄与しないが,プライマーの塗布により,1.3倍程度の曲げ強度の向上 が認められている。第4章4.2.1では,新設したモルタル供試体の試験において,プラ イマーの塗布による破壊荷重値の補強効果として1.3倍が検証されている。老朽化した コンクリートにプライマーを塗布する実際のマンホールでは,プライマーが含浸しやす く,より大きな補強効果があるものと推定され,1,3 倍は安全側であると考えられる。
したがって,このプライマーの効果を考慮することで,より合理的な耐力評価になると 考えられ,以下の式により,ひび割れ発生荷重を求めることとした。
𝑀𝑀𝑢𝑢2=𝑏𝑏ℎ6𝑐𝑐2𝑓𝑓𝑏𝑏 …式(3)
ここで,Mu2:本防食被覆材を塗布した無筋コンクリートの曲げ終局耐力(N・mm) b:幅(mm)
hc:コンクリートの高さ(mm)
fb:コンクリートの曲げ強度※(N/mm2)
※プライマーの効果を考慮し1.3倍とする
(2)で検討した耐力算定式により求めた曲げ終局耐力(Mu1とMu2のうち大きい方)か
ら,リングの公式[M=PR(0.3183-0.5sinθ)]を用いて最大荷重値を算定した結果と,前 述の試験値との比較を表 5.7 に示す。提案した耐力算定手法による最大荷重値は,
Case1 ,Case2では試験値の90%程度であり,合理的な終局耐力が算定できている。
Case3は,塗布厚が薄いため,試験値では防食被覆材の塗布厚に加わる素地調整分の
表5.7 曲げ耐力算定式による最大荷重の算定結果
解析 最大荷重(kN/m) 算定式/
ケース 試験値 算定式 試験値
Case1 - 127 116 0.91
Case2 表面目粗 194 174 0.90
Case3 表面目粗 180 120 0.67