第 4 章 本防食被覆材の補強効果の検証
4.3 無筋コンクリート製円形マンホールに対する補強効果の検証
4.3.4 考察
(1) 最大曲げモーメント
円環の最大曲げモーメントは,リングの公式から式(1)で表わされる4)。
<円環の最大曲げモーメント>
MB=0.3183・PB・r (1) ここに,MB:最大曲げモーメント(kN・m/m)
PB:破壊荷重値(kN/m)
r:管厚中心までの半径(m)
本研究で対象としている無筋コンクリート製円形マンホールは円環であることか ら,式(1)を適用して表4.12の通り最大曲げモーメントを求めた。
表4.12 最大曲げモーメントMB(管長1mあたり)
分類 case 破壊荷重値 管厚中心 最大曲げモーメント
No PB 半径r MB
(kN) (m) (kN・m)
原マンホール 200-0 132 0.550 23.1 補強マンホール 150-5 91 0.573 16.6
150-10 106 0.570 19.2
150-20 190 0.565 34.2
*管厚中心半径rは,本防食被覆材を含む断面で算定
(2) 原マンホールに生じる曲げ応力
表4.12に示した破壊荷重値を(1)式に代入して求めた最大曲げモーメントMBから,
図4.21に示すように原マンホールの破壊部位を矩形断面はりと仮定して,破壊荷重作 用時の発生曲げ応力 σBを試算した。
σB=(MB/I)・y (2)
=23.1kN・m/66667cm4・10cm・103=3.46N/mm2 ここに, σB:破壊荷重時の発生曲げ応力 MB:最大曲げモーメント(表4.11)
I:断面二次モーメントI=1/12BH3
B=100cm, H=20cm,I=1/12・100・203=66667cm4 y:中立軸からの距離, 20/2=10cm(壁厚中心)
上式を用いた破壊荷重作用時の発生曲げ応力の算出結果から,破壊部位の発生応力 3.46N/mm2は,コンクリートの引張強度1.63N/mm2(ftk=0.23・fck2/3=0.23・
18.72/3=1.62N/mm2,fckは表4.10参照)の約2.1倍であり, コンクリートの曲げ強度
(圧縮強度fck=18.7N/mm2の1/5~1/86)より,2.34~3.74N/mm2,fckは表4.10参照)と 一致した。この結果から原マンホールは曲げ強度相当の応力が作用することでひび割 れが発生し,速やかに破断したものと推察される。
(3) 本防食被覆材による補強効果
外圧強度試験の結果から,部材厚さを減じた無筋コンクリート製円形マンホールに 本防食被覆材を塗布したケースでは,原マンホールと比較して単位厚さあたりの破壊 荷重値の増加が認められた。表4.1に示したように,本防食被覆材は,弾性係数がコ ンクリートの1/4~1/3程度と低いものの,コンクリートの8倍以上の引張強度を有す る。このため,本防食被覆材が補強材料,例えば鉄筋コンクリート構造物における鉄 筋と同様の機能を担うものと推測される。そこで,図4.21に示すような破壊部位のコ ンクリート断面の本防食被覆材を鉄筋に置き換えた単鉄筋断面を想定し,実験から得 た最大曲げモーメントと本防食被覆材の引張強度との関連を検証した。
部材高 As
単鉄筋矩形断面梁
クラック
クラック
クラック
クラック
補修材 補修材矩形断面梁
部材幅B d
hec
補修材
円形管
x←圧縮縁 C’(コンクリートの圧縮合力)
x/3
防食被覆材
防食被覆材
防食被覆材 はり はり
本防食被覆材降伏時の曲げモーメントに対する断面耐力(曲げ終局耐力)は,式(3) から導き出される。なお,コンクリートによる圧縮合力の作用位置は,本防食被覆材 降伏時にはまだ弾性域にあると考え,コンクリートの圧縮応力を圧縮縁から中立軸ま での範囲で三角形分布として,x/3(xは中立軸位置までの距離)とした。
Mycot=Tycot・(d-x/3+ hcot/2) (3)
ここに, Mycot: 本防食被覆材降伏時の曲げモーメント(N・mm) Tycot: 本防食被覆材の引張力(N)
d :有効高さ(mm), 150mm(コンクリート部材厚) x :中立軸位置(圧縮縁からの距離)(mm)
hcot:本防食被覆材塗布厚(mm)
ここで本防食被覆材の引張力Tycot並びに中立軸位置xは次式(4),(5)で算定できる。
Tycot=Acot・ftcot (4)
ここに,Tycot: 本防食被覆材の引張力(N) Acot: 本防食被覆材の断面積(mm2) Acot= hcot・B
本防食被覆材厚hcot:5,10,20mm 部材幅B:1000mm
ftcot: 本防食被覆材の引張強度(表4.9より13.5N/mm2) x=ncot・Acot/B{-1+√(1+2Bd/ncotAcot)} (5)
ここに,ncot: 本防食被覆材とコンクリート(18N/mm2)のヤング係数比 ncot=Ecot/Ec=5.0/22.0=0.227,
Ecotは試験値(表4.10より5.16→5.0:端数処理), Ecはコンクリート(18N/mm2)の一般値(表4.1参照)
Acot:本防食被覆材の断面積(mm) B : 部材幅1000mm
d : 有効高さ(mm), 150mm(コンクリート部材厚)
算定結果を表4.13に示す。150-20,150-10のケースでは,本防食被覆材降伏時の 曲げモーメントMycotと実験から得られた最大曲げモーメントMBが概ね一致している。
このことから,補強マンホールでは,本防食被覆材による引張力への抵抗が終局耐力 の向上に寄与することが明らかになった。
なお,150-5のケースでは,算定された降伏時の曲げモーメントよりも実験で得ら れた最大曲げモーメントの方が高くなっているが,これは本防食被覆材塗布厚が5mm と少ないため,素地調整として塗布する防食被覆材(図3.1参照)の影響が大きくな るためと推察される。
表4.13 本防食被覆材降伏時の曲げモーメントMycot算定結果
項目 単位
150-5 150-10 150-20
防食被覆材 塗布厚 hcot mm 5 10 20 部材幅 b mm 1000 1000 1000
断面積 Acot mm2 5000 10000 20000
弾性係数 Ecot N/mm2 5000 5000 5000 引張強度 ftec N/mm2 13.5 13.5 13.5 コンクリート 有効高 d mm 150 150 150
弾性係数 Ec N/mm2 22000 22000 22000
ヤング係数比 ncot - 0.227 0.227 0.227
中立軸位置 x mm 17 24 33
防食被覆材の引張力 Tycot N 67,500 135,000 270,000 防食被覆材降伏時の Mycot N・mm 9,903,098 19,847,806 40,260,538 曲げモーメント kN・m 9.9 19.8 40.3 最大曲げモーメント MB kN・m 16.6 19.2 34.2
4.4 無筋コンクリート製円形マンホールの破壊時挙動の検証