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上記2で述べた各種の事象の中で、特に重要な事象を取り上げて、下記で説明する。

(1) スマートライフに関する告発

20152 月の告発

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2015年2月3日、スルガ銀行のお客さま相談センターは、大要下記の内容の、スマー トライフ及び同社の実質オーナーに関する不芳情報(同社の内部告発文書)を受信した。

<お取引先に関するご報告>

○ スルガ銀行の取引先である株式会社スマートライフの実質的経営者は下記のような略 歴の者である。

・住専に関連した詐欺での前科がある。

・出所後は不動産業を始め数社の実質的オーナーとして経営したが、すべて会社を計画倒 産させている。

・元妻名義で法人を設立後、スマートライフに出資し、株主となっている。会社の決定権 をすべて握っており、スルガ銀行の担当者とも直接やり取りしている。

○ スマートライフの 30 年サブリース保証は家賃相場価格より倍以上の設定で収益シミュ レーションを行ない、高額のシェアハウスを販売している。サブリースの支払いは現行 家賃では回収できず、到底まかなえない状態。

上記を十分調査の上、スルガ銀行のコンプライアンス規定に問題がないか判断した上で取 引をした方が良いのではないか。

上記のように、内部告発文書は、スマートライフに不芳情報及びシェアハウスの仕組 みに問題点がある旨を告発するものであった。

この報告をお客さま相談センターから受けた経営企画部は、当該情報を審査部と共有 した。さらに、審査部長は、外部調査機関の信用情報等を確認し、このFAXの告発内容 は信憑性があると判断し、当時の岡野副社長に報告を行った。

報告を受けた岡野副社長は、同社が関与する融資を取扱中止とする旨、及び営業部門 と審査部にその旨を共有するよう指示した。

ところが、当時の横浜東口支店の所属長は、土地を仕入れたスマートライフと投資家 との間に別の不動産業者(販売会社)を噛ませ、当該不動産業者が持ち込んだ外形とす れば副社長の指示には反しないものと考え、スマートライフを前面に出して融資を実行 することができない旨のみをスマートライフに伝えた。この点について、当該所属長は 当委員会に対し、副社長の指示を、スマートライフがスルガ銀行の融資に直接的に関与 すること(具体的には、土地を仕入れたスマートライフが、投資家となる借主に対して 土地を売ること)が禁止されたものと理解したと説明し、上記のように考えたと説明し ている19

スマートライフ側は、これを受けて、2015年2月9日に、従業員の一人を代表者とし

19 但し、その後スマートライフの名前を出さないようにするなどの工作をしているので、取引禁止の趣旨 を実は正確に理解していたものと推認される。

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てアマテラスを設立させ、設立の事実を上記所属長及び横浜東口支店の推進役(所属長 の下で、営業部門の取りまとめを行う立場であった。)に2015年2月12日に通知した20。 このようなダミー会社を設立することによって、スマートライフ及び横浜東口支店が、

スマートライフの案件を、表向きはアマテラスが持ち込んだ案件として融資実行するこ とが可能となった。

なお、上記所属長は、2015年2月26日に審査部に対して、「アマテラスはチャネルC 社から紹介された会社」「代表はチャネルC社からシェアハウスのノウハウを学んで起業 した」といった、アマテラスがスマートライフと無関係な会社であるとの説明を行って いる。

このようなダミー会社の設立と並行して、上記所属長はスマートライフから2015年2 月 6 日に「被害届取り下げ及び告訴取消書」なる書面を告発者から受領したとして麻生 氏に送付し、麻生氏が審査部にこれを 2015年2月 10日に転送するなどして、内部告発 が取り下げられたとする説明も行っている。

20154 月の告発

横浜東口支店の所属長及び推進役は、上記のようなダミー会社設立によりスマートラ イフとの取引を継続することに成功したものの、2015年4月12日には、上記の内部告発 を行ったのと同じ人物が、同様の告発を行った。

これに対して、スルガ銀行は、経営企画部が横浜東口支店の所属長から事情を確認し たが、その時点では、上記のようにアマテラスを用いた偽装工作が開始されており、ス マートライフが表に出る取引は禁止することとしても融資の実行には影響が出ないよう になっていたため、実質的オーナーとされる者個人については取引がないこと及びスル ガ銀行にはスマートライフをチャネル先とする融資持込案件はないものの、同社を請負 業者とする新規案件については取扱いを中止した旨が報告された21

なお、この動きと前後して、2015年4月16日にはスマートライフの新社長が就任して いる。

20155 月の告発

20 2015212日にアマテラスの謄本と印鑑証明書がスマートライフから横浜東口支店の推進役に送付

され、所属長に転送されている。さらに、同年423日にはアマテラスの代表取締役(実質はスマートラ イフの従業員)から建設業の許可証を受領し、上記推進役が「これで安心ですね」という返答を行ってい る。また、上記推進役は同年513日にはチャネルC社から、アマテラスがサブリースを行う内容のサブ リース契約書も受領している。

21 なお、スルガ銀行の社内システムで全ての犯罪者を網羅している訳ではないこともあり、実質的オーナ ーとされる者について社内システムで照会が行われたが犯罪者としての登録がなく、反社会的勢力や犯罪 者に該当するか否かについてそれ以上の調査は行われなかった。

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ところが、2015年5月8日に、スマートライフがアマテラスというダミー会社を設立 して、同社を通じて取引を行っている旨の再度の情報提供が行われた。

スルガ銀行は、前回と同様に経営企画部が横浜東口支店の所属長から事情を確認した が、その内容は、スマートライフの運営は 4月 16 日に就任した新社長が行なっており、

アマテラスはスマートライフと協力関係にはあるが独立した会社であるというもの(ア マテラスの代表者がスマートライフの従業員であることも伏せられていた。)であり、「ス マートライフ等の事業に対するモニタリングを継続しつつ、融資希望者への対応につい ては、個別案件毎に慎重に対応したい」という融資の継続を希望するものであった。

しかし、この提供情報を重く見た審査部がアマテラスを2015年5月13日に取扱中止 としたため、横浜東口支店によるアマテラスを用いたスマートライフ案件の融資継続へ の目論見は外れることになった。

エ 一連の告発を受けての横浜東口支店の対応

以上のような一連の告発により、横浜東口支店では、これ以降のスマートライフ案件 について、アマテラスではない不動産会社から持ち込む外形を作出しなければならない こととなった。

そこで、横浜東口支店の所属長らは、様々な販売会社を表向きの持込業者とすること で対応することとし、スマートライフ案件の販売会社であったチャネル C 社に、スマー トライフの案件を様々な販売会社に振り分ける総代理店のような立場を担わせることと した。

このようにしてスキームが安定化したこともあり、これ以降、横浜東口支店における スマートライフ案件の融資は急増することとなった。

(2) シェアハウス会議

2016年5月27日に、麻生氏は営業本部(首都圏営業部長ら)、シェアハウスを主に取 り扱う営業店の所属長(渋谷・二子玉川・横浜東口)、審査部のメンバーを東京ビルに集 めて、シェアハウスの取扱いに関する方向性の協議を行った。

この会議の結果は議事録が残されており、下記のような指摘が行われたことを示す記 載がある。

■木造投資物件のリスクについて

・融資期間が取れない・陳腐化しやすいため出口戦略が描けない(処分時セカンダリーにロー ンが付きにくい)

■投資地域のリスクについて

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・郊外:建設余地があり競合物件が出現しやすい。現在の家賃、利回りがあてにならない。

・都市部:建設余地が少ないため現状家賃、利回りが変化しにくいので当てになる。

■無制限にシェアハウスを取り扱うリスクについて

・新築・木造物件でも収益還元法での物件評価ができるため、逆算して家賃を決める動きが出 てきている。

・アパートローンと違い、シェアハウスのみ建設・入居前であるにも関わらず入居見込家賃を ベースに評価計算をして良しとしたため、価格を釣り上げる目的で見込家賃を周辺の同等物 件と比較して高額に設定するケースがある。

・本来建築費は人件費・材料費から推定できるが、シェアハウスに関しては上記経緯から上乗 せの幅が大きい。その結果、物件価格は同条件の物件と比べて高額になる上、家賃面での競 争力がなく、当然ながら空室リスクも高くなる。

・チャネルが入居まで家賃保証をすると言われ購入を決意した債務者もいると思うが、本当に 家賃保証できる財務体質ではないところでも家賃保証を宣言する場合があり、注意が必要な のだが、オーナーはそのリスクを承知していないのではないか。オーナーに相場観があるの か。保証が空手形で終わった場合、そのリスクは債務者・銀行が負うことになってしまう。

・チャネルに裏切られ債務を背負って追い詰められた債務者は融資をした銀行にも責任がある と訴えてくることがある。その際に周辺の物件と比較して異常に高い評価をしたうえで融資 している、異常に高い家賃を想定しているなど、銀行の融資姿勢が疑われる余地があるのは 非常に良くない。

・積算評価以上に物件価格を高く設定した分だけストレートにチャネルの利益になったり、家 賃保証の原資になるなどしている。内部留保の少ないチャネルが次から次へと自転車操業的 に家賃保証の原資を集め、使って、としているのではないか。チェーンが一度外れればこけ てしまう。

以上のようなリスクの指摘に対し、同会議では、「属性、地域を絞る。新築アパートが 建たない地域など、立地、価格を間違えなければ出口戦略はある。」、「シェアハウス取扱 いは無くすのではなく絞るべき」、「駐車・駐輪スペースは無いので、郊外ではなく必然 的に都心駅近が望ましい立地となる。利便性を考えれば東京23区に限定するべきではな いか」といった議論がなされたことが議事録に記載されている。

そして、東京22区については現状の家賃や利回りが変化しにくいので、未入居でも見 込家賃で評価して良いという現状が追認される一方で、無制限にシェアハウスを取り扱 うことのリスクを踏まえ、シェアハウスの取扱いを(無くすのではなく)絞るべきであ るという結論が出され、下記のような取扱いが決定された。

<取扱い新ルール>(抜粋)

■取扱い地域の限定・評価方法