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スルガ銀行では、融資手続について定めた規程等として、信用リスク管理規程、融資 事務手続、本部決裁区分、債務者格付事務手続、各種ローンの事務取扱要領、個別の通 達などがある。これらで定められている有担保ローンの関連主要規程は次の通りである。

(1) 信用リスク管理規程

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信用リスク管理規程では、「個別の融資案件については、審査役の持つ知識、経験に加 え、自動審査システムによる統計的なスコアリングモデルの結果等を参考に、融資先の 健全性、融資の返済に問題がないかを判断し、融資案件の諾否を決定する。」と定められ ている(11条)。

このように、個別の融資判断においては、統計的なスコアリングモデルによって債務 者格付けを参考としつつ、審査役が融資先の健全性や返済能力について審査すべきこと が定められている。

(2) 融資事務手続

次に、より具体的な業務手続を定めた規程として、「融資事務手続」がある。これは融 資を行う際の基本的な手続を定めたものである。

① 融資の基本事項

融資事務手続では最初に、融資の基本事項が定められており、収益不動産ローンとの 関係ではたとえば次のような定めがある。

< 取組姿勢>

・ 融資の可否、融資額の決定にあたっては経済の成行きをよく見極めのこと。

・ 債務者への説明態勢

 貸付取引(手形貸付・証書貸付・当座貸越)等の融資契約の締結にあたり、当該融 資に係る商品内容等の説明を債務者が十分理解し納得するまで行なう。

 債務者の融資取引に係る知識・経験の状況に対し、適合性の原則に則り適切な説明 を行なう。特に中小企業・個人については実態に即した説明を行なう。

・ 融資にあたっては、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断し、事 業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しないこと。

・ 反社会的勢力への対応

 反社会的勢力との取引は絶対にしない。

 反社会的勢力による不当行為は、毅然とした態度で排除する。

・ N情報先への対応

 N1情報先(反社家族、元反社会的勢力等、準暴力団(半グレ)の関係者を除く)

ならびにN3情報先(凍結口座名義人)との取引は行なわない。

<基本的原則>

・ 融資申込の都度その資金使途、返済計画の妥当性および保全等を十分検討のうえ慎重に 判断し、対応する。

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・ 独禁法上問題となる金利の変更や貸出条件の決定に関して、優越的地位の濫用と誤認さ れかねない説明はしない。

 当社の債権保全に必要な限度を超えて、担保や保証人の追加、融資条件の変更、預 金の開設等を強制しない。

 債務者に対して、要請に応じなければ不利な取扱いをする等の旨を示唆して、必要 のない借入金、当社の商品サービスの購入、当社連結対象子会社の商品・サービス の購入等を強制しない。

<信用調査>

・ 融資を行なうときにはあらかじめ融資先、保証人および手形関係人、その他、当該融資 案件に係る関係者についても、十分その信用等について調査する。

・ 特に、当該融資案件に係る不動産販売業者、仲介業者については、新規取扱時に会社詳 細情報の収集、訪問調査を徹底し、十分な確認をしたうえでチャネルPRMに詳細な情 報登録を行なう。

・ また、当該業者について、苦情や風評等により必要と認められるときには適宜、追加的 調査を行なう。

<稟議>

・ 融資を行なうときには、必ず稟議のうえ承認を得る。営業店限りで決裁しうる稟議を営 業店長専決稟議といい、審査部に決裁を求める稟議を本部稟議という。

・ 貸出稟議については原則、本部稟議とする。

<条件の厳守>

・ 稟議において、審査部が指示した条件ならびに稟議に記載し承認となった申出条件は厳 守しなければならない。

<事後管理>

・ 融資先に対しては、絶えずその業績、取引振り等に留意し、融資後の管理を怠らず常に 状況の変化に対応し得る態勢を整え、債権の保全に万全を期す。

上記のように、融資手続において、融資先の信用調査を行うべきこと、適合性の原則 など顧客保護の観点も重視すべきであること、審査部の決裁を要する本部稟議を基本と し、審査部が指示した条件を厳守すべきこと、反社会的勢力等との取引を行わないこと など、金融機関として重視すべき重要事項が定められている。

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② 融資の実行まで

融資事務手続では、融資の開始に至るまでの大まかな手続についても定められており、

その主要な内容は次の通りである。

<基本的検討事項>

・ 融資の開始に際しては、直接申込人から詳細に事情を聴取するとともに下記諸点につ き、調査、検討しなければならない。

 申込人の法的資格

 申込人の信用状態

 融資条件の妥当性

申込人より受領した諸資料により、申込金額、融資期間、資金使途の妥当性、返済 の確実性を調査検討する。

担保ならびに保証人の適否については、担保力、保証能力を調査、検討する。

・ 融資案件受付先の記録

 案件を受付したときは、自動審査システムに登録し、申込書等の関係書類とともに 役席者以上の確認(システム上で)を受ける。

 実行時または実行中止時は、自動審査システムに必要な情報(日付等)を登録し、

関係書類とともに役席者以上の確認(システム上で)を受ける。

 役席者以上は、自動審査システムにて、各受付案件の処理状況を管理する。

<受付>

・ 融資申込を受け付けるにあたっては、資金使途・返済財源の内容ならびに申込人資質等 を漏れのないよう聴取・調査を行なう。

・ 受付は、その都度「融資申込書」の提出を受けて行う。

・ 所属長への報告と協議

 融資申込を受け付けたときは、預り物件管理表の作成ならびに自動審査システムの 登録を行ない、役席者のチェックを受ける。

その後、速やかに所属長に報告し、顧客説明マニュアルに則り十分な協議を行ない、

指示を受ける。

 報告の方法

申込書に融資取組協議書等、ならびにお客さまより提出あった資料等を必要に応じ て添付する。

 貸出条件が不明確な段階での申込みを受け付けたときにも、申込書または融資取組 協議書に判明している範囲の事項を記入し所属長に報告する。

・ 協議:申込みを受け付けた案件について、取上げの可否につき店内協議を行なう。

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<稟議>

・ 申込をうけた案件については、申込内容、業況、取引状況等を検討のうえ、承認または 決裁をうけるために稟議手続を行なう。

・ 稟議書類は稟議書を表紙として綴込み、審査部へ送付する。

<決裁>

・ 貸出稟議については原則、本部稟議とする。別に定めのあるものに限り、所属長専決で の運用を可とする。

・ 本部稟議の決裁登録は審査部において行なう。

・ 稟議決裁の確認

 営業店では、適宜決裁状況の照会オペレーションを行ない、決裁状況を確認する。

 決裁済の稟議については、決裁指令書で承認条件を確認する。

 決裁指令書は、所属長ならびに担当役席のチェック印を受ける。

<貸出条件・管理>

・ 本部稟議において審査部が指示した条件または営業店の申請条件はともに厳守しなけ ればならない。

上記のように、基本的な融資手続としては、

・ 営業店にて顧客からの融資申込みを受け付け、その際には「融資申込書」を受け取る。

・ 営業店にて、資金使途・返済財源・申込人資質について聴取・調査を行う。

・ 営業店担当者が申込人の法的資格・信用状態・融資条件の妥当性について調査・検討 し、所定のシステムに登録し、役席者のチェックを受けた後、所属長に報告して店内 協議を行う。

・ 申込案件について、承認・決裁を得るために、稟議手続にかけることとし、審査部に 稟議書を送付する。

・ 審査部にて稟議決裁を行う(本部決裁)。

・ 審査部の稟議決裁後、決裁指令書により営業店にて融資を実行する。

という手続が定められている。

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③ 不動産担保の事務手続

融資事務手続では、不動産担保にかかわる事務手続についても定められている。その なかでは、不動産担保について「長期貸付や支払承諾の求償権を保全するための(根)

担保として、銀行が利用する担保の中で大きくウエイトを占めている」と説明され、特 に担保評価の主要な事務手続について、次のように定められている。

<営業店による担保評価>

・ 不動産担保取得時の営業店における評価額算定は、路線価、基準地価、公示地価、売買 事例、(外部業者の)評価システム等にて評価する。

・ 審査部による担保再評価

個人ローンについて、下記基準を超えるとき、審査部において再評価する。

 時価額2億円以上。ただし、上記にかかわらず審査部が必要と認めるときには再評 価を行なう。審査部による再評価を行う際は、不動産担保再評価依頼書を使用する。

・ 不動産鑑定士による不動産鑑定評価

 審査部は、審査または債権管理上、特に精緻な評価が必要なときには審査部で指定 した不動産鑑定士に不動産鑑定評価を依頼する。

・ 担保取得後の担保評価・管理

 担保取得後の担保評価、管理は不動産担保評価管理システムにより行なう。

・ 資産形成用不動産に対する担保取得後の現地調査

 以下の条件に該当するときには、専門の調査担当者ならびに審査部からの指示を受 けた担当者が、1年に1度以上または随時に現地を訪問し、入居状況・管理状況・

周辺環境等の実地調査を実施する。あわせて必要なときには、当該物件を管理する 管理会社や担保権設定者に連絡を行い、実地調査内容を精査しつつ、修繕計画や入 居者募集状況等の確認を行う。調査結果は、専用の管理システムに入力し、報告を 行う。

(1)債務者1人あたりの所定の資産形成用不動産向け融資が一定額以上あるとき

(2)家賃入居状況等に異常値が認められたとき

(3)その他審査部が必要と認めたとき

上記のように、不動産担保を取得する際には、営業店において、路線価・基準地価・

公示地価・売買事例・外部業者の評価システム等を用いて不動産の評価額算定を行うこ とを基本としつつ、所定の場合には審査部にて不動産担保の再評価を行うこととされて いる。

審査部による再評価を行う際には、営業店から審査部に対し、「不動産担保再評価依頼 書」を送付することとされている。

上記のほか、融資事務手続では、担保不動産の評価基準について、①時価評価額に一