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(1) 売買契約書の偽装(二重契約、減額覚書等)

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売買価格の偽装は、スルガ銀行に見せる本来の価格よりも高い価格の売買契約書と、

実際の価格による売買契約書を二重に作成する手法である。

スルガ銀行では、収益不動産ローンの事実上の融資基準として、「自己資金10%ルール」

が存在し(第4編第1の3の(6)参照)、事実上、売買価格の90%が融資限度額とされてい た。売買契約書の偽装は通常、このルールを潜脱するために行われるものであり、実際 にも、売買契約書が偽装された事案の多くでは、スルガ銀行に提示される売買価格の約 90%が実際の売買価格及び諸費用の合計額となるようにして、虚偽の価格を記載した売買 契約書が提出されていた。

これにより、スルガ銀行が融資できる売買価格の 90%(本来の売買価格及び諸費用の 合計額に相当する金額)の融資が引き出され、実質的に投資家が自己資金無しで不動産 を購入することができる。

同じようなやり方として、売買契約を高い価格で締結しておいて、後に減額の覚書を 作成するというやり方も存在する37

このような方法は広く浸透しており、実際、当委員会がインタビューを行った販売会 社(シェアハウスを取り扱っていた)は、スマートライフの取扱案件を販売するに当た って、当初からスマートライフの実質的オーナーとされる者から、「二重契約をして通帳 をいじれば、投資家が自己資金ゼロでやれるスキーム」であると説明を受けたと証言し ている。

実際に、スマートライフ案件で販売会社の取りまとめを行う役割を担っていたチャネ ルC社が販売会社に案件を紹介する際の説明書面(定型文)には、「資金の流れ(値引用)」 という題名が付けられており、「値引用」「実際用」という 2 種類の価格が明記された上 で、販売会社に投資家を募るよう指示が出されていて、二重契約が前提となるスキーム であったことが推認される。

また、フォレンジック調査においても、下記のように、行員側が二重契約を了知して いることを推認させる事案が発見されている。このうち印紙のみの画像を送付させる行 為は、業者と債務者側がスルガ銀行に見せる高い価格の売買契約については印紙を貼付 しないのが通常であるため38、行員が印紙の画像を業者から徴求し、その画像を銀行用の 売買契約に貼付して印紙が貼られているかのような外見を作出する行為である。

No. 時期 支店 内容

96 2014.4.29 渋谷 業者が行員に対して二重価格の資料及び投資家への案内

37 いずれの場合においても、業者が契約書を偽造しない限り、投資家は不動産の売買に関する2通の契約 書を作成することを認識することができる。従って、通帳の偽装等と異なり、投資家が全くあずかり知ら ないところで二重契約や減額の覚書が作成されるという事態は、通常は考えにくい。

38 これは、高い価格の契約は、実際の契約ではなくスルガ銀行に見せるためだけの目的で作成される契約 書であることもあり、業者と債務者側が二重に印紙を支払うのを避けようとするためである。

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資料(自己資金がゼロとなっている)を送付

97 2015.6.29 ミッドタウ

業者が行員に対して印紙のみの画像を送付

98 2015.9.1 たまプラー

業者が行員に対して二重価格の資料及び投資家への案内 資料(自己資金がゼロとなっている)を送付

99 2017.9.28 名古屋 業者が行員に対して印紙のみの画像を送付

なお、2018年8月7日時点でスルガ銀行が二重契約や減額の覚書が締結された可能性 があると認識している件数(資料の数)は、シェアハウス等(シェアハウス、簡易宿所 及びコンパクトアパートの合計)に限ると184件である。

(2) 手付金・中間金領収書の偽装

自己資金がない者について、通帳の代わりに、手付金等の領収証を偽装して、自己資 金があったかのように見せることも行われていた。

当委員会のフォレンジック調査においてこうした偽装が認められた事例は、例えば下 記の通りである。

No. 時期 支店 内容

100

2015.6.1 横浜東口 行員から販売会社に自己資金がない借入人は各種領収証

を準備せよと、領収証の偽造を指示。領収証の内容も「ス ルガ銀行以外のもの(登記費用、他行事務手数料、業者事 務手数料、固都税・管理費修繕精算金)」と具体的に指示

101

2015.9.23 渋谷 行員から業者に「手付済エビデンス、弊社に900万円入金

あり(900万円の出所、振込履歴のエビもご用意下さい)」 として、具体的なエビデンス作成を指示

102

2015.12.24 横浜東口 業者が行員に「中間金エビデンス」としてネットバンキン

グの残高のスクリーンショットを送っているが、入出金明 細の設定期間が2015年12月20日までであるにもかかわ らず、同月24日の取引が表示されている

103 2016.2.24 横浜東口 業者が預金通帳のコピー2通(手付金の額に合わせるため

に振込金額を修正したもの)を送付

104 2016.9.29 横浜東口 業者が行員に、預金通帳記載の日付と別の日付の手付金領

収証を送付、後に預金通帳の方を偽装して調整

105 2017.11.27 新宿 業者から行員に「830万の振込時間教えてください。」「分

秒数まででますが、9:00で大丈夫ですかね?」と、手付金

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の振込みを偽装するためのエビデンス作成の相談。これに 対して行員が「9時24分16秒です」と返答

106 2017.12.12 福岡 業者から行員に「手付金の額はいくらで出したらよろしい

でしょうか?」と手付金領収書の偽装を予告する連絡

4 書類の偽装の蔓延