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(1) 人員

スルガ銀行は、会社法上の大会社であり、監査役会設置会社である。

2013年4月1日以降、監査役は総数5名、そのうち2名が社内出身の常勤監査役で、

他の3名が社外監査役という体制を維持している。3名の社外監査役のうち2名は弁護士 で、他の1人は経営者(大学の理事長でもある。)である。

監査役会のスタッフは、専属の者が 1 名で、監査役補佐業務に関しては監査役が指揮 命令権を有している。

(2) 監査役会の活動状況

監査役会は、2013年4月以降、年に12回前後開催され、各監査役はほとんどすべて出 席している。

監査役会の議題は、計算書類の受領報告や監査報告書の作成、監査役報酬額の決定、会 計監査人報酬への同意等の定型的な議題の他、以下のようなものがある。

①常勤監査役による業務監査状況報告

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②内部統制システムに関する監査報告

③経営会議議事内容の報告(主に信用リスク委員会の報告等について)

④会計監査人の監査状況の報告・品質管理体制・意見交換

⑤監査方針、監査計画の策定

⑥コンプライアンス部署や監査部等との意見交換報告

⑦各種講演会・セミナー等の内容報告

⑧社長との面談報告

⑨取締役会付議議案の説明

議事録によると、社外監査役からの質問が頻繁になされており、これに常勤監査役が 回答している。

本件に多少なりとも関わる事項を上げると以下の通りである。

・2014年5月7日開催の監査役会で、監査方針等に関し、池田監査役から「個人ロー ンの管理体制を重点監査項目にすべきである」との意見が出され、6月27日開催の 監査役会では、その点を修正・反映した監査方針等が承認された。

・2014年11月7日開催の監査役会で、経営会議で行われた信用リスク委員会の議事内 容報告として、資産形成用不動産の定期調査結果が報告されているが、同委員会資 料では入居率が 90%前後とされており、特にシェアハウスについての留保も付され ていない。

・前同の報告が、2015年2月6日、同年9月17日の監査役会でも報告されている。

・2016年2月9日の監査役会でも同様の報告がなされているが、信用リスク委員会の 資料では、「目視による入居状況の詳細確認が困難」「稼働状況のみ確認することと し、合わせて口座へのサブリース料の振り込み金額を確認」との記載がある。同年6 月27日監査役会報告も同様である。同年12月20日の監査役会報告では、同様の報 告があるが、元になった信用リスク委員会の資料では、確認が困難との記載はなく なっている。

・2016年2月9日の監査役会では、審査第二に対する監査の結果が報告されているが、

問題事項は指摘されていない。

・2017年2月7日の監査役会では、審査第二に対する監査の結果が報告されており、

シェアハウスに関係する事項も対象となっている。

・2017年9月14日の監査役会で、経営会議で行われた信用リスク委員会の議事内容報 告として、資産形成用不動産の定期調査に関し、シェアハウスについては外見上全 空とみられる物件に対し、実態調査を予定していると報告されている。

・同年 10 月 19日の監査役会では、同日の取締役会の議題としてサクト及びガヤルド の破綻に関する報告がなされることが説明されている。

・2018年2月7日の監査役会で、資産形成ローンに関する報告がなされた。

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(3) 監査の基準

監査役監査の基準としては、監査役会で監査役監査基準を定めている。その内容は、

日本監査役協会の雛形をベースにしているが、一部は独自に取捨選択している。監査調 書の作成に関する条項は採用していない(2015年12月18日開催の監査役会で、同条項 が原案から削除された。同議事録。その経緯について説明を求めたが、具体的な理由は 不明である。)。また日本監査役協会では、内部統制システムに係る監査の実施基準の雛 形を定めているが、スルガ銀行監査役会はこれを定めていない。制定を検討したが、実 施が困難とのことで見送ったとのことである。

(4) 監査方針及び監査計画

監査役会の定めた監査役監査基準では、重要性、適時性その他の必要な要素を考慮し て監査方針を立て、監査計画を策定することとしている(同基準32条1項)。このとき、

監査上の重要課題については、重点監査項目として設定することとしている。

2013 年度以降、2017 年度までについてみると、監査役会では、監査方針、監査計画を 決定している。内容的には、「個人ローン等管理態勢監査」や「個人ローン等実行後管理 態勢監査」といった項目はあるが、特にシェアハウスローンに着目した事項はない。そ の他、2015年度及び2016年度の重点監査項目には、「有担保ローン管理態勢」が上げら れている。

なお、監査費用の予算としては、上記期間中毎年 170 万円が予定されている。その内 訳は、旅費、研修費等である。

(5) 職務の分担

監査役は、監査役間でその職務を分担することができるが、監査役会では、その分担 の決定がなされている。2013年度以降、2017年度までについてみると、取締役会への出 席等は全監査役が共通して行い(非分担業務)、社内監査役は往査等の監査業務を担当、

社外監査役は各人の専門性を活かした監査意見の表明等を担当することとされている。

(6) 監査の方法の内容

監査の方法については、監査役監査基準では、内部監査部門との連携(同基準33条)、 重要な会議への出席(同基準 35 条)、文書・情報管理の監査(同基準 37条)、取締役・

使用人に対する調査等(同基準38条)などを実施することとしており、監査計画によれ ば、「月別計画」においてそれらの事項を含む監査対象・方法が定められている。

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シェアハウスローンに関わるものとしては、2017年11月13日の監査調書(審査第二 等への往査)がある。時期的に、既に問題化した後の監査調書であるが、ここでは、

・審査の独立性について、営業とのバランスもあるが、審査の判断が通らないケース もあり、独立性の確保を要請した。

・自己資金確認資料について、現場サイドから「現場を信じて欲しい」との要望で、稟 議には添付不要としている

・「チャネルのチェック態勢」に関し、以前は、サブリース、家賃保証等を考慮し、審 査していたが、現在は、サブリース等を前提とした取組は実施しておらず、現況家 賃で検討している

・2017年5月に、同年3月末時点で建物が完成しているシェアハウス942件の現地調査 を実施した。その結果、191 件が「入居者なし」であった。「入居者あり」の物件に ついても、入居者は2人から3人程度であると思われる。調査結果と、営業店より報 告される承認条件履行報告の入居状況に大幅な乖離を生じているケースもある。

・担保評価が確立されていない部分があり、以前は積算法で評価していたが、現在は 収益還元法で評価していることで、原価を大きく超えてしまうケースがある。バブ ル化しているともとれる状況下で、評価に非常に悩んでいる。

・シェアハウスの現地調査では入居状況の判断が難しく、物理的に困難である。

などの記載がある。

なお、審査第二に対する往査の監査調書としては、ほかに2015 年2月25日付のもの と、2016年3月9日付のものがあるが、それらでは上記のような問題は説明または認識 されていない。

内部統制に関する監査の方法としては、「内部統制システム監査チェックリスト」及び

「同(2)」を作成している。2014 年4月以降、2018 年4月作成分のチェック結果を見る と、特に問題となる事象は識別、記載されていない。

なお、2018年4月20日作成の「内部統制システム監査チェックリスト」では、「基本

方針1 (1)当社は、コンプライアンスの実践を経営理念として位置づけ、『コンプライア

ンス規程』その他の社内規定等を制定するとともに、内部統制の強化と継続的な啓発活動 により、実効性のあるコンプライアンス体制を構築しております」について、「内部統制 システムは、基本方針1に沿って構築され、運用されているか。」とのチェック項目が、

「〇」と記入されている。その後、同年 6 月6 日付の同文書では、チェック項目の文書 が「基本方針1 (1)当社は、コンプライアンスの実践を経営理念として位置づけ、『コン プライアンス規程』その他の社内規定等を制定するとともに、内部統制の強化と継続的な 啓発活動により、実効性のあるコンプライアンス体制の構築に努めております」と修正 された。

(7) 監査の結果

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監査役会の監査報告書は、基本的に日本監査役協会の雛形に準拠しており、2013 年 5 月9日作成のものから2018年6月6日まで作成のものに関しては、適法意見が述べられ ている。なお、2018年6月6日作成のものに関しては、シェアハウスローンの問題につ いて「注視していく」旨の付記がなされている。